INDEX
- 1.薬剤師に英語は必要?
- 1-1.臨床現場の薬剤師
- 1-2.製薬企業やCROの薬剤師
- 2.薬剤師が英語力を高めるメリット
- 2-1.海外の人に接客や服薬指導が行える
- 2-2.英語の論文や資料などが読める
- 2-3.転職活動で有利になる
- 3.薬剤師に求められる英語力のレベル
- 3-1.調剤薬局、ドラックストア、病院は日常会話レベル以上
- 3-2.製薬企業やCROはビジネス対応の高いレベルが求められる
- 4.薬剤師が英語力を生かせる職場は?
- 4-1.外国人が多く滞在する地域にある病院や調剤薬局
- 4-2.観光客の多い地域のドラックストア
- 4-3.製薬企業全般
- 5.英語力を高めるための勉強法
- 5-1.接客や服薬指導での英会話スキルを高める勉強法
- 5-2.ビジネスレベルの英語力を身につける
- 6.薬局で使える簡単な英会話実例
- 7.薬局店頭で使える英語ツールを用意しておこう
- 8.英語力を高めることで薬剤師の活躍の場が広がる
1.薬剤師に英語は必要?
薬剤師は薬の専門家として、それだけでも十分に価値のある存在です。しかし、近年、薬剤師の数も増え、地域医療への貢献など多くの付加価値が求められるようになりました。そうしたなか、さらに求められるのが外国人へのスムーズな対応です。今後は英語力のある薬剤師が重宝されるでしょう。
1-1.臨床現場の薬剤師
日本企業が海外進出したり、外資系企業が日本に支店を構えたりするなど、グローバル化によって日本に住む外国人が増えています。また現在は新型コロナウイルス感染症の流行によって一時的に観光目的の訪日外国人は減少していますが、今後回復する可能性が考えられます。こうした背景から、薬剤師に英語力が期待されるようになりました。
石川県薬剤師会が行ったアンケート調査の結果では、県内全体の約60%以上の薬局が外国人に投薬等の応対を行った経験があると回答。北海道科学大学薬学部が行った「薬剤師の英語使用の実態と必要性の認識及び学部時代の教育への評価に関する調査研究」では、国内で働く薬局薬剤師・病院薬剤師240名にアンケート調査を行ったところ、両者ともに英語の必要性を感じるという結果となっています。
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1-2.製薬企業やCROの薬剤師
製薬会社や医薬品開発業務受託機関(CRO)で働く薬剤師にとっても英語力が重要です。外資系企業はもちろん、昨今では日系企業でも英語力が求められます。1998年8月、ICH-E5 ガイドライン「外国臨床データを受け入れる際に考慮すべき民族的要因について」が公表されてから、医薬品開発がグローバル化されたこともあり、企業側も対応しています。
国際共同治験や海外の臨床試験データを日本の申請に用いるブリッジング試験(海外で実施された治験データが日本でも代用ができるかを調査する臨床試験)などが可能となり、英語翻訳や読解力、専門用語の理解などを求める求人案件が増えています。
2.薬剤師が英語力を高めるメリット
薬剤師が英語力を高めるメリットについて見ていきましょう。
2-1.海外の人に接客や服薬指導が行える
日本を訪れる外国人のなかには、日本語をまったく話せない不安を抱えながら、医療機関を利用する人がいます。また、日常会話レベルの日本語が話せる方であっても、専門的な医療用語となれば、コミュニケーションが難しいことがあります。
そのため、薬局に英語ができる薬剤師がいれば、薬の使い方などを正しく伝えることができ、安心して服薬してもらえます。
2-2.英語の論文や資料などが読める
英語を正しく翻訳できるスキルも仕事の幅を広げます。特に臨床開発や研究職、MRなどの仕事では、英語文献の読解力が求められることもあります。また、日本で承認を受けていない医薬品や希少疾患の症例など、詳しい情報を得たい場合も、英語力があればスムーズに海外の情報を読解できます。
2-3.転職活動で有利になる
英語力を高めると選択できる業種の幅が広がりやすく、キャリアアップも目指せます。外国人客が多い薬局やドラッグストアでは、英会話スキルが高いと重宝されるため、就職に有利に働くでしょう。
一方、臨床開発や研究職など英語文献の読解や資料作成といった業務を行う職種では、英語力が高いことがアピールポイントとなり、採用においても好印象を与えます。たとえば、TOEICの点数や英会話レベルが採用条件に含まれている場合、転職による給与アップも期待できます。
3.薬剤師に求められる英語力のレベル
業種によって、求められる英語力は異なります。臨床現場で求められる英語力と製薬企業やCROで求められる英語力について見ていきましょう。
3-1.薬局、ドラックストア、病院は日常会話レベル以上
薬局やドラッグストアの中でも、比較的外国人の来局が多い地域では、日常会話レベル以上の英会話スキルが求められる傾向にあります。服薬指導をするのであれば、医療英語を習得しておくと安心です。
外国人の来局が少ない地域なら、英会話シートなどを準備し、指差しをしながら確認するといった方法で対応してもよいかもしれません。いずれにしても、薬局やドラックストア、病院などでの英会話スキルは、医学的な専門用語を英語で理解し、伝えることを意識することが大切です。
ただし、英語文献を読んだり学会発表を行ったりする場合には、ビジネス対応レベルの英語力が求められる可能性があります。臨床現場で働く薬剤師に求められる英語力は職場や業務内容によって異なるため、見合った英語力を身につける必要があるでしょう。
3-2.製薬企業やCROはビジネスレベル以上
研究開発職であれば、医学論文や社内資料、研究レポートなどを英語で読んだり書いたりできるスキルが求められます。グローバル会議が行われる企業では、英語での会議となることもあり、ビジネスレベルの聞き取りと会話力が必要でしょう。製薬企業やCROへの転職を考えているのであれば、TOEICなどで好成績を残しておくと安心です。
また、外資系企業のなかには、社内公用語を英語としているところがあります。グローバル化を目指す企業ほど英語力を求める傾向にあるため、外資系・日系に関わらず製薬企業やCROへ就職を考えているのであれば、ビジネスレベルの英語スキルは必須といえるでしょう。
4.薬剤師が英語力を活かせる職場は?
すでに英語力が高く、薬剤師としての仕事に活かしたいと考えるなら、より活躍できる職場を探してみてはいかがでしょうか。職場別に薬剤師が英語力を活かせる場所を紹介します。
4-1.外国人が居住する地域にある病院や薬局
東京都をはじめとする大都市圏や観光地、大使館など多くの外国人が滞在する地域では、病院や薬局にも外国人が訪れます。そうしたエリアでの医療機関では、服薬指導や投薬管理において、英語力を活かした働き方が可能です。
4-2.外国人観光客の多い地域のドラックストア
外国人から人気の観光スポットや空港内にあるドラッグストアなどは、英語を使う機会が多くあります。特に外国人観光客は日本の化粧品やOTCなどをお土産として持ち帰ることも多く、商品の選び方や使い方などについて質問されることもあるため、英語が話せる薬剤師は重宝されます。
また、外国人旅行者は、病院を受診するほどではない症状を緩和したい時に、ドラックストアで市販薬を購入することがあります。英会話ができる薬剤師がいる店舗は、外国人が安心して来店できるとして、宣伝効果もあり、経営面にも大きな利点があるでしょう。
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4-3.製薬企業全般
製薬会社のなかには、採用条件としてTOEIC750点以上が条件とされているケースがあるなど、高い英語力が求められます。社内公用語を英語とする企業は少ないものの、海外のスタッフとの会議では英語を使うことになるでしょう。
また、研究レポートや資料を英語で作成するなど、日常的に英語を読み書きしたり、外国人社員とコミュニケーションをとったりすることもあります。そのため、ビジネスレベルの英語力がある薬剤師はスキルを活かせる職場といえます。
5.英語力を高めるための勉強法
英語力を向上させる勉強方法は、どのようなスキルを高めたいかによって異なります。目的別に方法を見ていきましょう。
5-1.接客や服薬指導での英会話スキルを高める勉強法
接客や服薬指導に必要な英会話スキルは、日常会話レベルの英語力と使用頻度の高い医療用語の単語力です。英会話スクールなどを利用して、英会話スキルを高めていくとよいでしょう。近年では、オンラインで学べるスクールも増えています。自宅で気軽に受講でき、時間的な制約も少ないため続けやすい方法です。
対面での英会話レッスンに抵抗がある場合は、英会話教材やe-ラーニングを使う方法もあります。隙間時間で勉強できるため自由度が高いのが魅力です。無料アプリや無料動画などで英語を勉強できるツールもありますが、効率よく実践的に身につけたいのであれば、プロの手を借りるのがおすすめです。
5-2.ビジネスレベルの英語力を身につける
ビジネスレベルの英語力を身につけるためには、TOEICなどの英語資格で高得点が取れるよう勉強するのが近道でしょう。TOEICの高得点を目指して勉強すれば、英文法や読解力、listeningなどのスキルが総合的に高まります。
ただし、TOEICでは英会話スキルが身につきにくいので、並行して英会話スクールでも勉強することをおすすめします。英語を話すことに慣れれば、聞き取りや英文法などの理解もしやすくなるため効果的でしょう。
6.薬局で使える簡単な英会話実例
英語はすぐに身につくものではありません。実践的な対応ができるよう、まずは基本となる会話だけでもマスターしておきましょう。
ここでは、薬局窓口で必要な英会話の具体例を紹介します。薬局を訪れた外国人の患者さんへの対応を想定して、一連の流れをまとめました。シーン別で必要な会話をリスト化し、受付や投薬台に準備しておくとよいでしょう。
What is the problem? | なにかお困りでしょうか? |
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How could I help you today? | 今日はどうされましたか? |
Do you have your prescription? | 処方せんをお持ちですか? |
Is this your first visit to this pharmacy? | この薬局は初めてですか? |
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Do you have your health insurance card with you? | 健康保険証をお持ちですか? |
If you don’t have a health insurance card, you will have to pay the full fee in cash. | 保険証をお持ちでないと自費になります。 |
Please fill out this questionnaire. | 問診票に必要なことを記入してください。 |
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In order to know about the safe use of medicines. | お薬を安全に使用していただくために質問しております。 |
Please wait here until your name is called. | お名前が呼ばれるまで、こちらでお待ちください。 |
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As there are many patients waiting now, please wait here for about 10minutes. | 今、混んでいますので、ここで10分ほどお待ちください。 |
7.薬局店頭で使える英語ツールを用意しておこう
外国人の応対に役立つさまざまなツールがサイトや書籍で展開されています。
石川県薬剤師会のウェブサイトでは、薬局やドラックストアに訪れる外国人の応対に役立つツール集を掲載しています。英語だけでなく、中国語、韓国語、ポルトガル語もあり、症状の確認や服薬説明に活用できるイラスト付きの資料ですので、ぜひ参照してみてください。また田辺三菱製薬やケーエスケーなどのサイトでも会話集が紹介されています。
なお、ツール使用の際には「私的使用目的の利用」「医療機関内での掲示物」「患者説明用資料パンフレットなどの無料配布物」など使用範囲に条件が提示されているケースもありますので、事前に必ず確認しましょう。薬局や病院で使われる英会話をまとめた書籍も販売されているので、職場に合った英会話ツールを用意しておくと、いざという時に安心です。
8.英語力を高めることで薬剤師の活躍の場が広がる
薬剤師に求められる英語力は、職場や業種によって異なります。求められる英語力に差がありますが、在住する外国人応対の精度向上や薬剤師としてのスキルアップのために、英語力が役立つスキルであるのは間違いありません。今後目指すキャリアプランに応じて、英語力を高めるための勉強を開始してみてはいかがでしょうか。
執筆/秋谷侭美(あきや・ままみ)
薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。