薬剤師のお悩みQ&A 公開日:2016.04.11更新日:2016.06.22 薬剤師のお悩みQ&A

第52回 鶴原伸尚 先生

近年、かかりつけ薬局が地域の患者さんの服薬情報の一元的管理を行い、医療費の適正化に寄与することが求められています。多剤・重複投薬の防止や残薬解消への取り組み、患者さんの薬物療法における安全性・有効性を保つなど、地域のなかで薬剤師が活躍する機会はますます増えるでしょう。
今回は「地域に根差した薬局」の薬剤師として患者さんに寄り添い、健康維持や改善に貢献している鶴原伸尚先生にお話をうかがいました。全5回のシリーズです。
原稿/高垣育(薬剤師・ライター)

Q
現在勤務している薬局はとても忙しく、処方箋通りに正しく調剤して薬を渡すだけで精一杯です。地域の薬剤師として、患者さんのために役立てるよう心がけるべきことは何でしょうか。
自分が本当に患者さんと向き合って仕事をしているか確認しよう
自分が本当に患者さんと向き合って仕事をしているか確認しよう
患者さんに向き合える薬局を目指して開局

 
つるさん薬局は開局して8年目になる薬局です。
開局はそれまで病院内で行っていた調剤業務が外に出されるようになった頃でした。
その頃の医薬分業における保険薬局の様子がどのようなものだったのかを振り返ると、病院と薬局がマンツーマンで開局し、薬局は病院から出された処方箋の調剤を淡々とこなす“調剤専門薬局”といった印象でした。そこには薬局や薬剤師の意思が反映されることはほとんどなく、私はそのあり方に疑問を抱いていました。
 
そこで、「患者さんにしっかり向き合う」という薬剤師の本来の姿を実現するため、そのモデルケースとなり得る薬局をつくろうと当薬局を開局しました。
開局の条件の一つとして重要視したのは、面で処方箋を受けられる薬局にすることでした。クリニックや病院とマンツーマンでオープンすれば経営が安定し、ドクターとの関係性が濃くなって処方意図などへの理解も深まるというメリットがあります。しかしその一方で、仲がいいからこそ遠慮して言いにくくなることがあるなど、請け負い業的な側面が強くなることが懸念されました。
 
現在、当薬局でメーンで応需している耳鼻科からの処方箋の集中率は50%程度。残りの50%は小児科、眼科、皮膚科、内科などさまざまなクリニックや病院からの処方箋に応需しています。
 

ドクターに提案して実践に移せる薬剤師に

 
私は自分で薬局をオープンするまでに、派遣薬剤師として100軒以上の保険薬局での勤務を経験する機会に恵まれました。その経験のなかで感じたことは、少なくない数の薬剤師が「本来向き合うべき患者さんではなく、医師の方を向いて仕事をしている」ということです。
 
問い合わせの電話を1本かけるにしても「忙しい時間帯なのに、先生は気を悪くしないだろうか……」といった考えが頭をよぎる方もいるのではないでしょうか。しかし、これでは本末転倒です。健康を損なって、私たち薬剤師の目の前で困っているのは患者さんなのです。いつでもまず患者さんの立場に立ち、患者さん本位でものごとを考えるクセづけをしていくことが大切だと考えます。
 
私の場合、患者さんの健康のために本当に必要な提案であったら、たとえ面識のない病院のドクターにでも即座にコンタクトをとり、考えを述べて、たとえば在宅医療への介入など患者さんに必要なサービスを実践に移せるようにしています。それが患者さんに真摯に向き合う薬局の在り方であり、薬剤師であると考えるからです。
 
こうした誠実な態度で患者さんに向き合い続けていると、患者さんの薬剤師に対する満足度や信頼度が徐々に向上していくので、やがてさまざまな相談や悩みが持ちかけられるようになります。すると、患者さんの薬のことだけではなく、その方の暮らしや健康に関わる一歩踏み込んだことにまで関与できるようになります。これこそが地域に根差す薬局の薬剤師として、地域に暮らす人たちに求められている大切な役割であり、薬剤師のやりがいのひとつなのではないでしょうか。
 

鶴原伸尚先生プロフィール
鶴原 伸尚先生プロフィール
株式会社ダヴィンチ つるさん薬局代表取締役。薬剤師。
患者さんから頼りにされる薬局薬剤師を目指し、患者さんへの医療機関の紹介、ノルディックウォークの普及を行う。在宅医療などの取り組みを通し、薬剤師と患者さんの間に「ありがとう」の言葉が飛び交う薬局として、地域医療に貢献している。
つるさん薬局: http://www.enifclub.jp/tsurusan/

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