”漢方”に強くなる! まるわかり中医学 公開日:2015.12.22更新日:2023.02.28 ”漢方”に強くなる! まるわかり中医学

西洋医学とは異なる理論で処方される漢方薬。患者さんから漢方薬について聞かれて、困った経験のある薬剤師さんもいるのでは? このコラムでは、薬剤師・国際中医師である中垣亜希子先生に中医学を基本から解説していただきます。基礎を学んで、漢方に強くなりましょう!

第8回 「中医学と西洋医学の結合」とは?

近年、中医学と西洋医学(現代医学)を結合した『中西医結合医学(ちゅうせいいけつごういがく)』の研究が盛んに行われ、東西の医学の長所を最大限に引き出す医学として注目されています。
臨床では、元来の中医学的な方法である「弁“証”論治」だけでなく、新たに「弁“病”論治」といって、西洋医学の病理学や検査データなどが中医学の治療に実践・応用され、非常によい効果をあげています。(参考:中医学の3つの特徴(後編)

血液検査や画像診断など西洋医学的な診断法で「病名」を確定すると同時に、中医学的な診察法(四診)で「弁証」し、免疫力や病勢など全身的な状態をつかみ、2つの医学で治療を行います。
ただし、この「中西医結合医学」においても「弁証論治」が基本であるということが大前提。この前提を踏み外すと、様々な弊害が起きてしまうのです。

漢方薬の処方による「誤治(ごち)」とは

最近では処方箋やOTCでも漢方薬が使われる機会が増えています。しかし、体質を無視した処方によってかえって悪化するケースがあります。

漢方薬がひろく知られ、用いられるようになったのは非常に喜ばしいことです。しかし血液検査の数値だけを目安に漢方処方が選ばれ、疾病が治った臨床例の多さだけを頼りに処方されているケースが多いように思われます。安易に用いられることが増えた結果、「漢方薬の副作用」が添付文書に次々と書き加えられることになりました。

漢方の専門家は証を見極め、証に従って治療することが大原則です。体質によって起きやすい副作用を予測し、副作用が起きそうな生薬をどうしても用いる必要があるときは、副作用が極力起きないように処方を組み立てます。

証に合わない薬を飲んで不調が生じることは、「副作用」とはいいません。中医学では薬の間違った使用による「副作用」は、「誤治(誤った治療)」といいます。誤治とは、不適切な治療により症状をかえって悪化させる、あるいは、新たな病気を生じさせること。西洋医学でいう「医療過誤」「医療ミス」にあたります。

漢方薬の副作用としては、牛乳やそばなどの食物アレルギーと同じように、純粋な生薬アレルギーによるじんましんや胃腸不調などがあげられます。

次回は、たまに見かけるこのマークの意味、『陰陽学説(いんようがくせつ)』についてお話しします。

中垣 亜希子(なかがき あきこ)

すがも薬膳薬局代表。国際中医師、医学気功整体師、国際中医薬膳師、日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー、管理薬剤師。
薬局の漢方相談のほか、中医学・薬膳料理の執筆・講演を務める。
恵泉女学園、東京薬科大学薬学部を卒業。長春中医薬大学、国立北京中医薬大学にて中国研修、国立北京中医薬大学日本校などで中医学を学ぶ。「顔をみて病気をチェックする本」(PHPビジュアル実用BOOKS猪越恭也著)の薬膳を担当執筆。

すがも薬膳薬局:http://www.yakuzen-sugamo.com/

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