医薬ニュース楽読 公開日:2021.09.28 医薬ニュース楽読

最新 薬剤師業界のTopicsをラク〜にまとめ読み 医薬NEWS超楽読

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2022年夏を目途に導入予定となっている「電子処方箋」。コスト削減や情報共有推進といったメリットがある一方、費用負担や医療機関・薬局ごとに格差が生まれる点など、実用にあたっては様々な課題も見えています。ここでは、電子処方箋の概要、導入のメリット、薬剤師が注意すべき点について解説します。

電子処方箋はいつから?導入メリットと薬剤師が気を付けたいこと

ポイント

電子処方箋とは、オンライン上で登録・閲覧・管理ができる処方箋のこと。厚生労働省がデータヘルス改革の一環として進める取り組みであり、サーバー上で処方・調剤データを管理し、医療機関・薬局・患者さんがアクセスできる仕組みの構築を目指している。2022年夏の本格運用が予定されている。

目 次

1. 電子処方箋とは?

電子処方箋とは、オンライン上で登録・閲覧・管理ができる処方箋のことです。厚生労働省がデータヘルス改革の一環として進めている取り組みで、電子処方箋のサーバー上で処方・調剤データを管理し、医療機関・薬局・患者さんがアクセスできる仕組みの構築を目指しています。

処方箋の情報(薬剤の種類とその服用量、投与方法など)が電子化されることで、重複投薬を回避するなど、より安全・安心な医薬品の提供が期待されるだけでなく、これまで横のつながりの薄かった、医療機関・薬局間での情報連携を活性化する仕組みとしても注目されています。

電子処方箋の導入については、厚生労働省の医療情報ネットワーク基盤検討会において2008年初めから検討が重ねられてきました。現在は運用ルールや医療連携ネットワークの整備・普及が進められており、2022年夏の本格運用が予定されています(厚生労働省資料「 電子処方箋の仕組みの構築について」より)。

2016年3月、処方箋の電子化に伴う電磁的記録による作成、交付および保存を可能とするための省令改正が行われ、併せて「電子処方箋の運用ガイドライン」が策定されました。このガイドラインは、ほぼすべての薬局が電子処方箋に対応できる状態になることをめざし、その本格運用までに至るプロセスを整理したものになっています。2020年4月には「電子処方箋の運用ガイドライン(第2版)」が公表されており、処方箋を電子化した実証事業の成果が反映されています。その検証結果によれば、運用に問題のあるトラブルはほぼなかったとされています。

現在の日本では、患者さんが受け取った処方箋をどの薬局に提出しても調剤を受けられる「フリーアクセス」という仕組みになっています。電子処方箋に対応できない薬局でも調剤を受けられるように、本格運用までの間は、紙と電子どちらの処方箋でも対応可とする移行期間が設けられます。移行期間の運用や運用の効率化など、新たに改善できる点が明らかになればガイドラインに反映されるとのことですので、最新のガイドラインをこまめに確認してみてください。

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2. 電子処方箋の導入による患者さんのメリット

電子処方箋の導入によって、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。まずは患者さんにとってのメリットを見ていきましょう。

患者さんのメリット① 遠隔診療でも処方箋が入手しやすい

IT技術の進歩とともに遠隔診療(オンライン診療)の導入が進み、新型コロナウイルス感染症をきっかけにさらに加速しました。オンライン診療において、紙の処方箋を郵送やファクシミリで受け渡しするケースが多いですが受け取るまでに手間や時間がかかります。これが電子処方箋であれば、薬局で直接データにアクセスできるため、処方箋の到着を待つことなく薬を渡してもらえます。また調剤時の待ち時間も短くなります。

患者さんのメリット② 服薬管理がしやすくなる

電子処方箋のサーバーにアクセスすればいつでも服薬情報を見ることができるので、患者さん自身が服薬内容を把握・管理しやすくなります。これまではお薬手帳を薬局に持参するのを忘れてしまうケースがありましたが、そもそもお薬手帳を携帯する必要がなくなります。患者さん自身で一元的に管理できることで服薬アドヒアランスの向上も期待できます。

患者さんのメリット③ 病状を正確に把握してもらえる

複数の医療機関・薬局にかかっている場合でも、処方・調剤情報の共有が相互に可能になるため、より病状を正確に把握してもらいやすく、受けられる医療の質が向上します。また救急時や災害時などに、お薬手帳を携帯していなくても、正確な情報を医療従事者に把握してもらえ的確な治療が受けられます。特に、毎日必要になる降圧薬やインスリンなどの情報は、治療が滞らないようにするためにも重要です。

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3. 電子処方箋の導入による医療者のメリット

次に、電子処方箋の導入によって医療機関側にはどのようなメリットがあるかを見ていきましょう。

医療者のメリット① 情報活用により業務負担を軽減できる

薬局から医療機関に調剤結果をフィードバックすることで、次回の処方時に医療機関に参考にしてもらうことができます。患者さんの情報がアップデートされていくことによって、リスクを回避できるだけでなく、疑義照会や患者さんへのヒアリング、調剤情報の確認等にかかる業務負担を軽くすることにもつながります。

医療者のメリット② より質の高い医療を提供できる

電子処方箋の運用が本格化すれば、他の医療機関や薬局でも処方情報や調剤情報を閲覧できるようになります。これまでは詳細に知ることができなかった他の医療機関・薬局での情報を把握することで、患者さんの経過をより正確にとらえることができ、質の高い医療の提供につなげられます。医薬品の相互作用、アレルギー情報、重複投薬などについて患者さんが伝え忘れることがあっても、データから正確な情報をつかむことが可能です。

医療者のメリット③ コスト削減や偽造防止につながる

薬局では調剤済みの処方箋や調剤録を3年間保管しなければならないことになっています。電子処方箋でペーパーレスになることで空いたスペースを有効活用できるといったメリットがあります。また紙の処方箋の発行にかかっていた印刷費用の削減にもつながります。また、カラーコピーによる処方箋の偽造や再利用などの不正防止効果も期待できます。

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4. 電子処方箋の課題は?

電子処方箋の運用は、オンライン資格確認の基盤を活用したサーバーを設置することで進められます。そのため、電子処方箋のメリットを発揮できるほど普及させるためには、まずいかにオンライン資格確認を普及させられるかが課題といえそうです。オンライン資格確認ではマイナンバーカードで本人確認をしており、この本人確認をもって薬剤師は電子処方箋を取得できるようになります。

一方で、マイナンバーカードの交付率は全国で36%(2021年8月1日現在)にとどまっています。マイナンバーカードを持たない患者さんへの対応について、厚生労働省「電子処方箋の仕組みの構築について」では「電子処方箋の取得、薬局システムの取込みに関しては、引き続き具体的対応を検討する」「過去の処方調剤情報の参照はできないが、アラートを発することは可能」などとしています。

5. 薬剤師が注意すべき点は?

処方箋の取り扱いがこれまでとは大きく変わるため、薬剤師は患者さんへの丁寧な説明が求められます。とくにオンラインシステムに慣れていない患者さんは、不安になったり抵抗感をもったりすることが考えられますので、気持ちに寄り添いサポートしていきましょう。患者さんの要望やシステム障害に備えるため、紙による対応も可能ではあるようですが、まずは電子処方箋の仕組みを充分に理解して本格導入に備えましょう。

<参考URL>
電子処方箋の仕組みの構築について|厚生労働省 資料
電子処方箋の運用ガイドライン 第2版2020|厚生労働省
マイナンバーカードの市区町村別交付枚数等について(令和3年8月1日現在)|総務省

※本記事は2021年8月時点の情報をもとにしています。最新の情報は厚生労働省のホームページをご確認ください。

河村武志(かわむら たけし)

編集者。医療系専門出版社で臨床看護誌・看護学習誌・看護学教科書の企画・編集に携わったのちに独立し、編集プロダクション・ナレッジリングを設立。医学書・医療書の製作と医療系ネットメディアの編集に携わる。

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