薬剤師の接遇マナー・テクニック 公開日:2016.06.15更新日:2023.03.23 薬剤師の接遇マナー・テクニック
困ったときに薬(やく)立つ、薬剤師の接遇・マナー
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薬の銘柄変更が納得できない患者さん
薬の銘柄変更が納得できない患者さん

医師からの指示で銘柄を変更した薬があるのですが、患者さんに新しい薬を渡したところ、「これまでの薬で問題なかったのに、どうして変更になるのですか?」と言われました。「先生の方針で」と伝えても「私には前の薬の方が合うと思う」と、納得できない様子です(服用前なのですが……)。どのように説明をしたらよいのでしょうか。

Answer
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説明がなかった場合は医療人代表として謝罪を

銘柄変更で多いのは併売品へ変更するというケースでしょう。併売品への変更は病院側の都合による場合も多く、必ずしも患者さんの状況に合わせて変更できるとは限りません。いずれにしても、このケースは状況によって対応が異なります。
まず、医師が薬の変更について患者さんに説明していない場合。患者さんにしてみれば、突然これまでとは違う薬を渡されるため、驚いて当然です。可能であれば、医師から患者さんへ、たとえ一言でも説明してほしいところですね。このような場合、薬剤師としては「私のせいじゃない」と不満に思うかもしれません。しかし、目の前の患者さんに対して「いきなり薬が変更になったら不安になりますよね。申し訳ございません」と、医療人代表としてのお詫びができると、その後の流れがスムーズになります。患者さんとしても「薬剤師さんが気持ちをわかってくれた」と溜飲が下がると思います。

なぜ変えたくないのか本当の理由を探る

もう一つのケースは患者さんが医師から説明は受けているものの、その場では何も言えず、でも納得できないため薬剤師に訴えるケースです。医師に対して萎縮や遠慮をしてしまい、言いたいことが言えないという患者さんはとても多いものです。「別の薬に変えます」と言われたときに、なぜ変えるのか質問できない、まして変えたくないと意見するのは到底無理という患者さんもいるでしょう。つまり「医師には言えないけど薬剤師さんには言える」と、本音を話せる相手として選ばれたわけです。そのことを光栄に思って患者さんの声に耳を傾けましょう。
 
まずは、なぜこれまでの薬にこだわっているのかを探ります。「ただなんとなく不安を感じている」ということであれば、2つの薬の成分表を並べて「まったく同じ薬で、メーカーと形状が異なるだけなんですよ」と説明すると、患者さんも安心できます。
あるいは、過去に副作用を経験したことがあり、薬そのものに不信感があって「知らない薬は恐い」と思っている可能性もあります。その際も成分は同じ薬であることを伝え、「以前の薬で副作用が出なかったのであれば、今度の薬も副作用が出る可能性は極めて低い」ということをしっかり説明します。また、薬代が高くなることを心配していることも考えられるので、価格を比較して説明することも有効でしょう。
 
薬剤師や医師にとっては常識でも、患者さんにとっては知らないことがたくさんあります。たとえ成分が同じ薬であっても、患者さんが納得するまで説明することが大切です。
「大丈夫ですよ」という言葉だけでは患者さんの不安はなくなりません。しっかりと根拠を示して説明を!
「大丈夫ですよ」という言葉だけでは患者さんの不安はなくなりません。しっかりと根拠を示して説明を!

村尾 孝子
村尾 孝子(むらお たかこ)
薬剤師、医療接遇コミュニケーションコンサルタント。
株式会社スマイル・ガーデン代表取締役。
薬剤師として総合病院薬剤部、漢方調剤薬局、調剤薬局で20年以上にわたり調剤、患者応対を経験。管理薬剤師として社員の人材育成に注力する。
現在は医療現場経験を活かし、医療接遇コミュニケーションコンサルタントとして活躍中。
株式会社スマイル・ガーデン : http://smile-garden.jp/
ブログ「いつもワクワク Always Smiling!」: http://smilegrdn.exblog.jp/
薬剤師さんからの質問大募集!村尾孝子先生が、あなたの質問にお答えします
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