ブックレビュー

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知っているようで知らない創薬の世界にふれる

創薬科学入門―薬はどのようにつくられる?

【書籍概要】

有機化学分野のわかりやすい解説に定評があり、本サイト内でもコラム「薬にまつわるエトセトラ」を連載中の著者が、薬ができるまでのプロセスや、それにともなう課題をくわしく解説。「薬をつくる」ことに関する幅広いテーマが網羅されています。さらに後半には糖尿病や高血圧、高脂血症といった疾病別の創薬に関するエピソードも紹介されています。薬剤師にとっては、近いようで意外と遠い存在である「創薬」が身近になる1冊です。

COLUMN

日頃、薬剤師としてさまざまな薬を扱っていても、それらがどのようなプロセスを経て作られているのかを意識する機会はあまりないのではないでしょうか? 本書では、医療現場で使われる薬が生み出されるまでのプロセス「創薬」に焦点が当てられています。それぞれの段階でどのようなことが行われ、何が課題になるのかといった、医薬品が完成するまでの長いプロセスを豊富な構造式も用いながら詳細に紹介されています。
 

製薬会社における研究開発費は、ほかの業界に比べて非常に高い割合を占めていることが特徴です。本書のデータによれば、世界で売上高上位を占める製薬会社10社における医薬の研究開発費は、売上高の14.6%~27.6%にも上るとのこと。
医薬品にはさまざまな条件が求められます。たとえば経口投与できるようにするためには、胃酸や消化酵素に耐える安定した化合物であることが必要です。さらに、ある程度水に溶ける物質であると同時に、細胞膜に入り込みやすい脂溶性の高い分子であることも求められます。

 

医薬に必要な要素を備えた化合物を作り出すには、相反するさまざまな条件のバランスをとり、最適な状態を見つけ出していかなければなりません。
このようにして医薬品候補の化合物が完成しても、それを実際の薬として世の中に出すためには臨床試験をクリアする必要があります。臨床試験に入った化合物のうち、新薬として承認されるのは10分の1から20分の1と非常に少ないそうです。
以上のような多くのハードルをくぐり抜けて新薬として販売される医薬品の数は、世界で年間わずか15~20種類。また、1つの薬が完成するまでには平均で12~15年の歳月と、数100億円の巨額な費用がかかるなど、非常に困難な道のりなのです。

 

本書では、このような医薬品開発のプロセスに加えて、抗生物質や高血圧、高脂血症治療薬、抗がん剤や精神病治療薬、鎮痛剤といった主要な医薬品について、それぞれの歴史や課題、今後の可能性などが紹介されています。日頃現場で扱っているおなじみの薬にどんな歴史があり、どのような経緯で開発されたかを知ることができるので、有機化学にあまり強くない人でも楽しめるのではないでしょうか。

 

またコラムでは、創薬に関する用語や薬の開発にまつわる興味深いエピソードも紹介されています。さらに薬や化学物質に関する事件の解説や特許制度の話題などが取り上げられており、創薬に関する知識や情報を幅広く得たいときにも役立ちそうな1冊です。

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