映画・ドラマ

更新日:2016.02.15公開日:2016.01.26 映画・ドラマ

「たまには仕事に関連する映画を見てみようかな」と感じたことはありませんか? 医療や病気に関する映画・ドラマ作品は数多くありますが、いざとなるとどんな作品を見ればいいのか、迷ってしまう人もいるのでは。このコラムでは看護師ライターの坂口千絵さんが、「医療者」としての目線で映画・ドラマをご紹介します。

Vol.2「レナードの朝」(1991年・アメリカ)

【あらすじ・作品紹介】
1920年代に流行した嗜眠(しみん)性脳炎によって、30年もの間、半昏睡状態のレナードは、意識はあっても話すことも身動きもできない。彼に強い関心を抱いた新任ドクターのセイヤーは、レナードに試験的な新薬を投与し、機能回復を試みる。そしてある朝、レナードは奇跡的な“目覚め”を迎えた……。
人間の尊厳と愛と友情を描き、全世界の話題を独占した2大名優ロバート・デ・ニーロとロビン・ウィリアムズの初共演も見逃せない。監督に『ビッグ』のペニー・マーシャル。第63回アカデミー賞®作品賞、主演男優賞、脚色賞ノミネート作品。

この作品の鍵となるのは、1960年代に開発された「レボドパ(L-ドーパ)」という薬です。

 

レボドパはパーキンソン病の治療薬として極めて有効なものの、単剤だと体内で分解されやすいという性質があります(現在では主にレボドパと分解を防ぐ成分を配合した「レボドパ配合剤」が用いられています)。

 

この作品の舞台となった1960年当時、レボドパはパーキンソン病に対する治療薬として認知されてはいましたが、レナードが罹患している嗜眠性脳炎に対しての効果は未知数でした。

 

しかし、セイヤー医師は嗜眠性脳炎の患者の機能回復を図るため、レボドパの内服治療を試みます。
その結果、30年以上も昏睡状態であったレナードをはじめとするセイヤー医師の患者たちは、自らの意思で行動し、個性を発揮するなど、まるで「奇跡」とも呼べる回復ぶりを見せました。

 

パーキンソン病患者の脳内はドーパミンが不足した状態であるため、ドーパミンを含んだレボドパを投与すれば、症状の改善が期待できます。しかし、レナードの場合は嗜眠性脳炎によるパーキンソン「症候群」であったため、レボドパの投与による改善の効果は一時的なものでした。

 

失われた時間を取り戻すように人生を謳歌するレナードには、「生きる力」があふれています。夜半の病室で、セイヤー医師に生きていることの素晴らしさや尊さを興奮気味に語るシーンでは、人生の何気ない日常の重みにあらためて気づかされ、ハッとする思いでした。

 

しかし、そのエネルギーもレボドパの過剰投与によるところが大きく、しだいに幻覚や精神的興奮、体中が不規則に動いてしまう不随意運動(ジスキネジア)などの副作用がレナードを襲います。生きることを諦めきれないレナード。薬はどんどん増量され続け、副作用の発作は身体の限界を超えつつありました。

 

やがて自らの運命を悟ったレナードは、恋をした女性ポーラに別れを告げます。ポーラはレナードと握手した手を離さず、そのままレナードをダンスへと導きました。

 

「命を与えて、また奪うのが親切なことかい?」
病院のカフェテリアでの二人の悲しい別れを見ていたセイヤー医師が、看護師に向かってつぶやく言葉です。
自分のしたことが正しかったのか、間違っていたのか。セイヤー医師に限らず、このような苦しい自問自答をしたことがある医療者の方は少なくないと思います。

 

私も、「本当に患者にとって良い決断だったのか」を幾度となく考え、苦悩したことがありました。
治療方針について、ご家族と医療者の意見が合わないまま、患者さんの容態だけがどんどん悪化していく……。そんな苦しい経験をしたこともあります。

 

本作品では生きる歓びや感動とともに、患者・家族・医療者それぞれの葛藤が描かれています。薬剤師として患者さんに関わる皆さんも、職業を超えていろいろなことを考えさせられるのではないでしょうか。

 

坂口 千絵(さかぐち ちえ)

看護師/カウンセラー/ライフコーチ/セミナー講師/WEBライター
看護師歴20年。カウンセリング、コーチングなど、さまざまな資格を活かして人々の悩みに寄り添い、問題解決へと導く個人セッションを行っている。
医療現場で長年、多職種と共に勤めた経験などを活かしながら、現在はカウンセラーやセミナー講師としても活動中。

HP:http://infinity-space.jimdo.com/

ブログ:http://ameblo.jp/counselor-chisa/

坂口 千絵(さかぐち ちえ)

看護師/カウンセラー/ライフコーチ/セミナー講師/WEBライター
看護師歴20年。カウンセリング、コーチングなど、さまざまな資格を活かして人々の悩みに寄り添い、問題解決へと導く個人セッションを行っている。
医療現場で長年、多職種と共に勤めた経験などを活かしながら、現在はカウンセラーやセミナー講師としても活動中。

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