映画・ドラマ

公開日:2016.03.22 映画・ドラマ

「たまには仕事に関連する映画を見てみようかな」と感じたことはありませんか? 医療や病気に関する映画・ドラマ作品は数多くありますが、いざとなるとどんな作品を見ればいいのか、迷ってしまう人もいるのでは。このコラムでは看護師ライターの坂口千絵さんが、「医療者」としての目線で映画・ドラマをご紹介します。

vol.4 「ロレンツォのオイル/命の詩」(1992年・アメリカ)

オドーネ夫妻の愛息ロレンツォ・オドーネ(ザック・オマリー・グリーンバーグ)は、5歳の健康な少年だった。しかし、あるときから徐々に運動機能の低下による歩行困難、視力の低下、知能障害の症状が現れはじめる。医師から「副腎白質ジストロフィー(ALD)」で余命2年以内との宣告を受け、計り知れない恐怖と不安にさいなまれた夫妻。しかし、何としてでも愛息の命を救いたいと、独学で勉強し、ついには国際シンポジウムの開催にまでこぎつける。あらん限りの努力をする一方で、どんどん病状が悪化していくロレンツォに夫妻は新開発したオイルを食餌療法として用いる決断をする。

この作品は1982年に起きた実話を元にした映画です。日本では1993年に公開されました。

 

副腎白質ジストロフィー(ALD)は、先天性の脂質代謝異常により、脳や脊髄に蓄積した極長鎖脂肪酸がミエリン(髄鞘)を損傷し、難聴や言語障害などさまざまな症状を引き起こす病気です。1982年当時、ALDは発症から約2年以内に死亡するケースがほとんどで、有効な治療方法もありませんでした。
 

ALDを発症した愛息ロレンツォのために、オドーネ夫妻がさまざまな試行錯誤の末に発見したのは、極長鎖脂肪酸の蓄積を減らす作用がある「オレイン酸とエルカ酸の混合オイル」を用いた食餌療法。ロレンツォはこの治療法を開始した2ヵ月後に血中脂肪酸が正常値となり、他者と意思の疎通ができるまでに回復しました。

 

医学についてはまったくの素人だったにも関わらず、息子のために死に物狂いで勉強し、治療法を発見したオドーネ夫妻。ALDの診断を受けてからオイルの投与までに要した期間はわずか28ヵ月という驚きの早さでした。

 

作中で、ALDが母親からしか遺伝しないことを知った母ミケーラが衝撃を受けるシーンがあります。その後のミケーラは非常に感情的で、ヒステリックな言動や行動が目立っていたように感じました。
「我が子を救いたい」という必死の思いだけでなく、「自分のせいで、息子が病気になってしまった」という強い自責の念から感情をコントロールできなくなっているようにも見えます。

 

人の生死を左右するできごとが起きたとき、感情的になるのは当然のことです。私自身も若い頃には同年齢で予後不良の患者さんを思うあまり、私情を挟んだ行動をとってしまったこともありました。また、交通事故で意識障害となった患者さんにできる限りのことをしたいと必死になり、冷静な判断ができなくなった経験もあります。しかし、そんなとき心の助けとなったのは、冷静に対処する同僚の存在でした。だからこそ、必死に自分の感情を抑えて、現実に向き合おうとする父オーギュストの存在が非常に印象に残っています。

 

強い感情はときに爆発的なモチベーションとなりますが、エネルギーを消耗しやすいぶん、身体的・精神的にも疲労をきたしがちです。これほど短期間で治療法を発見できたのは、ミケーラの強い思いと、オーギュストの冷静さとのバランスが取れていたからなのかもしれないと思いました。

 

治療で用いられた混合オイルは、息子の名にちなみ「ロレンツォのオイル」と呼ばれるようになりました。実際の治療効果については賛否両論がありましたが、治療法が確立していない難病に光を投げかけたことは確かです。作中に登場するニコライス教授のモデルになったモーザー教授は、その後16年にわたってオイルの臨床実験を続け、2005年に「“ロレンツォのオイル”はすでに症状が進行した患児には無効だが、血中VLCFA値が高値を示す児の発症予防や症状軽減には有効」との論文を発表しています。

 

決して諦めることなく治療薬の開発に挑み続けたオドーネ夫妻の熱意は、まさに圧巻です。薬剤師の方なら、患者家族と研究者の間で繰り広げられる「新薬」の使用をめぐるドラマも、興味深い見どころのひとつなのではないでしょうか。

 

坂口 千絵(さかぐち ちえ)

看護師/カウンセラー/ライフコーチ/セミナー講師/WEBライター
看護師歴20年。カウンセリング、コーチングなど、さまざまな資格を活かして人々の悩みに寄り添い、問題解決へと導く個人セッションを行っている。
医療現場で長年、多職種と共に勤めた経験などを活かしながら、現在はカウンセラーやセミナー講師としても活動中。

HP:http://infinity-space.jimdo.com/

ブログ:http://ameblo.jp/counselor-chisa/

坂口 千絵(さかぐち ちえ)

看護師/カウンセラー/ライフコーチ/セミナー講師/WEBライター
看護師歴20年。カウンセリング、コーチングなど、さまざまな資格を活かして人々の悩みに寄り添い、問題解決へと導く個人セッションを行っている。
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