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辛い、辞めたい、転職したい!人間関係に悩める薬剤師さんへ 薬剤師ストレス研究ラボ vol.2

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薬剤師辞めたい原因「人間関係」を脳科学的に分析|人間関係あるある

ストレス研究ラボ 第2回 脳科学者 中野信子さんの メッセージ前編

「悩みの9割は人間関係にある」と言われるほど、社会のなかで人との良好な関係性を築いていくのは難しいものです。マイナビ薬剤師の調査(※)によると、薬剤師を辞めたい理由の1位は「職場の人間関係がうまくいかない」でした。職場の先輩や後輩、医師や患者さんとの人間関係で躓いてしまったら…。薬剤師を悩ます人間関係“あるある”について、脳科学者・中野信子さんがアドバイス!
構成/岩川悟(slipstream) 写真/佐藤克秋

Index

人間関係に心を痛めるのは…
根拠のない憶測で人を判断するから

「あの人は一体なにを考えているのだろう」
「どうして、いつもわたしに冷たいのかな」
「もっと親しくなるにはどうしたらいいのだろう」

人間は社会的存在ですから、どうしても周囲の人のことが気になります。誰だって人から嫌われたくないし、人に認めてもらいたいし、人よりちょっとだけ上に立ちたいものなのです。

あなただけでなく、まわりの人もみんながそうであるだけに、人間関係は難しいもの。結果、いらぬ探り合いをしたり、気をつかいすぎたり、ときには根も葉もない噂話に気を揉んだりして、互いの溝を深めていきます。

わたしたちが人間関係に心を痛め、混乱してしまうのは、このように根拠のない臆測によって人を判断してしまうからです。

あなたに敵意を持って接してくる人は…
「自分への敵意」を勝手に感じている可能性があります

アメリカの精神医学者アーロン・ベック(ペンシルベニア大学教授)が、興味深いことを指摘しています。

ベック氏によれば、サイコパシー傾向の強い人の中には、「周囲の人間が自分に敵意を持っている」という思い込みに近い認識を持っているケースがあるそうです。だからこそ彼らは「自己を守るために」敵意を持って対抗してくるのです。

彼らは、「奪う側になることで奪われる側になることを避けているのであり、そのために、自分には社会のルールを破る権利が与えられている」とすら思っている節があります。

周囲はなにも奪おうとはしていないのに、そういう思考が働いてしまうのです。

やたらとヨイショをしてくる人は…
あなたに「こうあってほしい」と思っているかも

心理学に「ラベリング効果」というものがあります。相手に「こうあってほしい」というラベル、つまりレッテルを先に貼り付けてしまうことで、そこへ誘導することができるというものです。

例えば、資料作成が雑な部下にそれを頼むとしましょう。このとき、「いつもちょっと雑だから、もっと丁寧にやってくれよ」などと言ってしまったら反感を買うだけです。それよりも、「いつも丁寧な仕事をしてくれてありがとう。この資料もよろしく頼むよ」と、「いつも丁寧な仕事をする」というレッテルを先に与えてしまえば、部下はまんまと、あなたが望む方向へ誘導されるでしょう。

この効果について、逆から考えることもできます。あなたをやたらとヨイショする人がいたら、レッテル貼りに精を出しているのかもしれません。そのときは、「この人はわたしに、こうあってほしいと思っているんだな」と解釈し、それをやってあげれば相手はよろこびます。

乗せられたふりをして主導権を握ってしまえばいいのです。

頼まれた仕事はけっして断らない人は…
「とってもいい子」ほど、人一倍消耗しています

忙しいときに面倒な仕事を頼まれても断らず、ニコニコ素直に引き受ける人が、あなたの会社にもひとりやふたりはいるのではありませんか? 「ありがたい存在ではあるけれど、あの人を基準にされると、わたしたちがちょっと困るのよね」という気分にさせる人が。

実は、そういう人たちは人一倍、消耗しています。本当は、面倒な仕事など引き受けたくないのです。

ただ、普段から不安な気持ちを抱きやすく、なかなか自分に自信が持てないために、どうしても周囲の意向をくみ取って動こうとします。自分が褒められたいとか、ほかの人よりもいい評価が欲しいというよりも、そういうふうに動くことをやめられないでいるだけなのです。

人の悪口ばかり言っているあの人は…
自分の脳を傷めていることに気づかない哀れな人

あなたの近くに、人の悪口ばかり言っている人がいたら、どうしますか?

「そんなことを言うのはやめなよ」と注意する。本意ではないけれど、適当に相づちをうっておく。どちらも、あまり得策ではありません。できれば、その場を離れましょう。

わたしたちの脳は、交わされた言葉をしっかりと覚えており、それを後から繰り返す性質を持っています。そのときに、主語や目的語を正しく判断しません。
Aさんが言ったのかBさんが言ったのか、Cさんに向けられたのかDさんに向けられたのかという点を整理することなく、その言葉が脳内で繰り返されます。

つまり、人の悪口を言えば、それはそのまま自分に対して繰り返されるし、そばで聞いていただけでも同様の結果となります。

しょっちゅう人の悪口を言っている人は、そうした負のスパイラルにどっぷりはまり込んでいるのです。関わらないで放っておきましょう。

頼んでもないのに親切にしてくれる人は…
「自分が上に立てる上下関係」を築こうと目論んでいるかも

わたしたちは親切にしてくれる人が好きです。そして、そういう人を悪人だとは思いません。だから、自分にとても親切にしてくれていた人が、突然怒り出すようなことがあれば、理由がわからなくても「もしかしたら自分がなにか悪いことをしてしまったのかもしれない」と考え、謝罪してしまいます。

すると、相手は謝罪したあなたの態度を褒め、自尊心をくすぐり持ち上げます。そして、再びいい人に戻った相手を見て、あなたはほっとします。

このように、根拠もなく、言葉と態度のアメとムチを繰り返し使う人は、両者の関係において主導権を握り、相手を操作しようと考えている可能性があります。

こういう人とは付き合わないほうが無難。不自然なほど親切な人には要注意です。

薬局や病院etc職場の上司とは…
リーダーが優秀だと思ったら失敗します

学生を被験者にして、リーダーに選ばれやすい人間のタイプについて調べた実験があります。その結果、リーダーになるのは「支配性」が高い人だということがわかっています。

ただし、このときの支配性というのは、人を恫喝したり押さえ込んだりというものではありません。彼らは、いつも最初に発言しているのです。

また、ほかの学生に比べ、確信に満ちた強い調子で話す傾向も見てとれました。ただし、その「確信」の内容が、本当に確かなものかどうかはわかりません。

この実験結果から言えることは、人は実力のある人をリーダーに選ぶのではなく、確信に満ちた様子で先に発言する人を選んでいるだけだということです。

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※「マイナビ薬剤師」調べ。「薬剤師700人アンケート」より「薬剤師を『辞めたい』『辛い』『転職したい』と思う理由の回答から抜粋。実査委託先:楽天インサイト(2018年10月)。

お話を聞いたのは…

中野信子(なかの・のぶこ)さん

脳科学者、医学博士、認知科学者。東日本国際大学特任教授。東京大学工学部応用化学科卒業、同大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程修了。2008年から2010年まで、フランス国立研究所ニューロスピン(高磁場MRI研究センター)に勤務。脳科学、認知科学の最先端の研究業績を一般向けにわかりやすく紹介することで定評がある。コメンテーターとしてテレビ番組に出演する傍ら、ベストセラーも多数。近著に『サイコパス』(文春新書)、『あの人の心を見抜く脳科学の言葉』(セブン&アイ出版)、『ヒトは「いじめ」をやめられない』(小学館新書)、『不倫』(文藝春秋)、『メタル脳 天才は残酷な音楽を好む』(KADOKAWA)などがある。

『あの人の心を見抜く脳科学の言葉』

中野信子 2017年 セブン&アイ出版
本コラムは同書を元に再構成しています。

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