薬剤師のスキルアップ 公開日:2016.08.08 薬剤師のスキルアップ

患者さんのためにできること。検査値記載を活かした薬害予防を

検査値記載を活かして患者さんを薬害から守る体制づくりを

院外処方箋に患者さんの血液検査値を記載する医療機関が増えています。医薬連携のさまざまな取り組みがあるなかで、処方箋への検査値記載には大きな役割があります。記載される検査値の項目や基準は病院によって異なりますが、情報が開示されたことでより安全性の高い薬剤処方が可能になりました。そうはいっても、記載された検査値を活用できるかは薬剤師のスキル次第。検査値記載が行われるようになった背景を理解し、薬害予防のために薬剤師ができることを改めて考えてみましょう。

院外処方箋に検査値が記載されるようになった理由

今までは薬剤と検査値を照らし合わせる必要がある場合、薬局薬剤師は患者さんから検査表を見せてもらわなければなりませんでした。患者さんが検査表をいつも持っているとは限らず、処方監査を十分に行えないまま薬を渡していたこともあったでしょう。
検査値に応じて用量を変えなければならない薬や、異常検査値が出た臓器には禁忌の薬も多くあります。特にがん治療においては、薬局での薬物療法は高度化するなかで、薬の効き具合や副作用の有無などを検査数値から確認する必要もあります。薬物療法が安全に行われているか、副作用が出ていないかという判断の指標とするためにも、処方箋への検査値記載が重要視されています。

記載された検査値を活かすテクニック

院外処方箋に記載されるのは、eGFRやCREといった腎機能検査値やAST、ALTのような肝機能検査値などが一般的です。さまざまな血液検査項目があるなかで、特に薬剤との関連性が高いのは腎機能に関わる数値といえるかもしれません。数値に合わせて薬の用量調節を行う必要があるものも多く、カリウムや血小板数の値によっては禁忌の薬もあります。
 
では、実際に腎機能検査値を活かした処方や疑義照会のあり方について考えてみましょう。
例えば、記載されたCRE値が典型的なCKD(慢性腎臓病)と考えられる高値であった場合。腎機能の低下に伴い、排せつ機能も低下していることが考えられます。処方箋にある薬の量を確認し、過量投与にならないよう注意しなければなりません。該当する薬の添付文書を確認し、検査数値を考慮して薬剤の量を計算します。
 
このとき、医師の処方が明らかに減量すべき数値であれば、疑義照会が必要になります。この場合は単に検査値から過量投与になると報告するだけでなく、添付文書やガイドラインを基に、訂正投与量や腎機能に影響が少ない代替薬を提案することが大切です。
患者さんの症状によっては薬の減量にリスクが伴う場合もあり、医師の意見をしっかり聞く必要があります。また、検査数値によって薬の変更や減量を提案した場合、それで終わりではなく、処方後の患者さんの状態や検査値を継続的に観察していくことが大切です。

検査値を分析して、薬剤師のスキルを高めよう

検査値を確認することは、処方監査のスキルを高めることにもつながります。記載された検査値を十分に活用できるよう、まずは主な検査の正常値を覚えましょう。毎回、正常値と検査結果をにらめっこしているようでは患者さんを待たせてしまいます。
 
薬局全体で読み取りスキルの向上を目指すなら、空き時間に薬剤師同士で勉強会を行うのもよいでしょう。正常値と異常値を織り交ぜた検査値と処方薬を書き並べ、「異常値はどれか」「この薬は患者さんに処方できるか。できないとすれば、代わりの薬は何がいいか」などを話し合ってみましょう。問題を解く方も出題する方も、添付文書や薬学関係の本などを手に取る機会が増え、より高い専門性が身につきます。
また、検査値の意味合いがわかるようになると、疑義照会の回数は自然と増えていきます。医師と対等に話ができるよう医学書にも関心を持ちましょう。コミュニケーションを兼ねて、担当の医師にお勧めの本をたずねてみるのはいかがでしょうか。

検査値の読み取りから、薬害予防意識を高めよう

院外処方箋に検査値が記載されたことから、医療現場では薬剤師のスキルがますます求められていることがわかります。医師たちの期待を裏切らず患者さんの薬害予防に努めるためには、薬剤師としての専門性を高めることが大切です。

【参考URL・書籍】

「検査値を活かす」 DI  2015 12月号 20~33p

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