薬剤師の職場 公開日:2015.11.16 薬剤師の職場

3Dプリンタで製造された薬がアメリカに登場! 薬局への影響と専門家の見解は?

3Dプリンタで製造された錠剤がアメリカで承認されました

3D印刷技術の進歩はめざましく、各製品のプロトタイプ製造をはじめ、さまざまな業界で利用されています。そしてついに、3D印刷で作られた錠剤がアメリカの市場に登場することになりました。3D印刷技術が医薬産業に与える影響について、専門家はどのように考えているのでしょうか。

3D印刷で製造された薬「スプリタム」が登場

2015年8月、FDA(米国食品医薬品局)が、3D印刷によって製造された薬を初めて承認しました。今回承認されたその錠剤とは、製薬会社アプレシアの抗てんかん補助薬「スプリタム」(一般名:レベチラセラム)です。
スプリタムの製法は通常とは異なり、有効成分と非有効成分の層を3Dプリンタで「印刷」し、重ねていくことで形作られています。それぞれの成分ごとに服用量を1つの層にして重ねていくので、従来の製法で作られた錠剤よりも効きやすく、また、服用後の崩壊速度は10秒未満です。この崩壊速度は高用量の薬としては極めて速く、てんかんの患者さんにとっても、正しい量の薬を投与するのに苦労する医師にとっても有益だといえます。

3Dプリンタによる製薬と薬局の未来

今後、他の薬もスプリタムと同じプロセスで製造されることによって、より効きめの高いものになることが期待されます。この「印刷」という製法がもたらす多層構造が、他の方法では生み出すことのできない医学的効能などをもたらす可能性もあります。しかしながら、医薬品業界で3D印刷が爆発的な成功を収めるかどうかは依然として不明です。
3D印刷は一つひとつ、カスタマイズされたものを作り出すことには向いていますが、大量生産に有利な製法とはいえません。つまり、医薬産業における3D印刷の新たな有用性があるとすれば、患者さんごとに必要な個々の薬をオンデマンドで作るという方向ではないかと考えられているようです。
いつか病院や診療所に製薬用の3Dプリンタが置かれ、患者さんごとにカスタマイズされた錠剤をその場で「印刷」する日がくるかもしれません。

専門家が考える、3D印刷が医薬産業に与える影響

ウィスコンシン大学、アメリカ薬史学研究所のグレゴリー・ヒグビー教授は、3D印刷が今後の医薬産業に及ぼす影響はさほど大きくないだろうという見解を述べています。
なぜなら、たとえ3Dプリンタが薬局に普及したとしても、プリンタに材料となる薬剤を入れる必要があるからです。それを用意できるのは、やはり大きな製薬会社に限られるでしょう。仮にそんな未来がきたとしても、一般的な薬に関しては大量に常備しておかなくてはなりません。工場で作ったものを買う方が効率がいいため、わざわざ現場で印刷する必要性はそれほど高くなさそうです。
 
他の業界でも、3D 印刷技術の参入による革新が起こっていない例があります。例えば書店業界。オンデマンド印刷の技術がありながら書店には普及することなく、代わりにAmazonやKindleの需要が高くなっています。
ヒグビー教授の見解によると、アメリカの医薬品の未来を左右するものは、3D印刷よりも製薬会社と医療保険会社を仲介するPBM(Pharmacy Benefit Manager:薬剤給付管理会社)(*)だそうです。
*製薬会社と薬の値段交渉などを行い、医薬保険会社やドラッグストアに薬剤を提供する会社。医薬品業界において存在感が増しており、ドラッグストア業界などでは昨今このPBMを傘下に収める動きが目立っている。
 
3D印刷技術は今後の医薬産業において、どのような役割を担っていくのでしょうか? 今回FDAがスプリタムを承認したことで、業界関係者だけでなく消費者の関心も高まっています。

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