薬剤師の働き方 薬剤師の働き方

ブランクのある薬剤師が復職を成功させるためのポイント 文:秋谷侭美(薬剤師ライター)

薬剤師の復職は難しい?復職しやすい職場の選び方と勉強法

薬剤師は専門職であることから、復職しやすい仕事といえます。しかし、復職するには、最新の医療知識が求められるうえ、長時間の立ち仕事に耐えられる体力も必要です。ブランクがあると、そうした知識面・体力面に自信が持てず、復職に不安を感じることもあるでしょう。これから復職を考える薬剤師に向けて、押さえておきたいポイントをお伝えします。

1. そもそも薬剤師の復職は難しい? 復職しやすい?

子育てや介護などを理由に、薬剤師としてのキャリアを一旦ストップする人は少なくありません。しかし、家庭が落ち着いていざ復職を考えても、「知識や体力に自信が持てない」「職場で足手まといにならないか不安」といった理由から、復職は難しいと感じる人も多いのではないでしょうか。特に、一度退職している場合、「再就職できるのか」「子育てや介護がマイナス要素と判断されるのではないか」などが気掛かりとなるかもしれません。

 

そうした不安を抱える人が多い一方で、現場での薬剤師のニーズは高い傾向にあります。2020年2月に厚生労働省が発表した「一般職業紹介状況(2020年1月分)」によると、医師・薬剤師のパートを含む有効求人倍率は3.61倍。パートを含まない有効求人倍率においては4.76倍と、とても高い値となっています。全職業の有効求人倍率が1.44倍であることからも、薬剤師は多くの現場で求められていることがわかります。薬剤師は専門職であり、簡単に資格が取れるものではないため、他の職業と比べると、たとえブランクがあっても復職しやすい仕事といえるでしょう。

2. 薬剤師の復職を成功させるためのポイント

ブランクからの復職に成功するためには、働きやすい環境を選ぶことがポイントです。より働きやすい職場を見つけるためにも、まずは以下のポイントをチェックしてみましょう。

 

2-1. 自分にとって最適な働き方を考える

ブランク明けで仕事を探す前に、自分にとって最適な働き方を考えることが大切です。まずは、正社員・派遣・パートといった勤務形態の中から、どれが一番自分に合っているのかを考えてみましょう。

 

それぞれの特徴は以下の通りです。

 

■正社員
フルタイム勤務で、収入が安定。ただし、残業や休日出勤もありえる。

 

■パート
基本的に定時で帰宅でき、業務量も少なく済む場合が多い。ただし、休めば収入も減る。

 

■派遣
時給は高い傾向にあるが、基本的に即戦力として求められる。知識や現場業務において不安がある場合には、負担が大きい。

 

勤務形態を選ぶポイントは、ブランクの長さに合わせた選択をすること。例えば、半年~1年といった短期間の産休・育休から復職する場合、比較的ブランク期間が短いため、正社員での復帰もしやすいかもしれません。時短勤務が可能な職場であれば、正社員の待遇を受けながら、家庭の時間を確保できるというメリットもあります。

 

一方、数年以上の期間にわたって子育てや介護を行ってからの復職であれば、現場復帰に対する不安は大きいものです。希望に合わせて短時間でも働けるパートからスタートすれば、少しずつ勘を取り戻せるでしょう。まずは現場の雰囲気に慣れてから、希望に合わせて正社員へステップアップを考えるのがおすすめです。

 

ブランクを経て、派遣での復職を考える場合は注意が必要です。派遣は即戦力としての能力が求められている人材であり、薬剤師としての基本的な知識や技術はもちろん、イレギュラーな対応が求められる可能性もあります。長期間のブランクがある場合、派遣からの復職は人によっては大変な思いをするかもしれません。

 

2-2. 復職に必要なスキルは?

復職を検討するうえで、どの程度のスキルが必要なのかと悩む方もいることでしょう。事前にしっかり勉強してブランクを感じさせないほどのスキルを身につけられれば、即戦力になれる可能性は高くなりますが、厳密には「この程度のレベルならOK」という基準はありません。

 

働き方やルールは職場によって異なり、特に調剤薬局であれば、調剤ルールや薬剤の配置、採用されている薬の種類は薬局ごとに変わります。使用されている機器も薬局によって異なるため、結局は実際に勤務し始めてから徐々に慣れていくことになるでしょう。

 

必要なスキルについて不安を感じるかもしれませんが、ブランクがある場合は大きな期待を持たれていることも少ないです。まずはブランク明けの復職として「謙虚に学ぼうとする姿勢」や「良好なコミュニケーション」を意識し、不足している知識やスキルを補うことを心がけましょう。

とはいえ、薬剤師としての基本的な業務については、おさらいしておくと安心です。例えば、「以前は研究職に従事していたけれど、調剤薬局に再就職を検討している」という場合であれば、未経験からでも応募できる調剤薬局を選ぶとともに、薬剤師として働いている友人に調剤の基本を聞いたり、e-ラーニングなどを活用して学んだりしておくとよいでしょう。具体的な勉強方法については後述します。

3. 復職先を探すときのポイント

新たに復職先を探す場合には、以下のポイントも確認しておくとよいでしょう。

 

3-1. 処方せん枚数に対して薬剤師が多い職場を選ぶ

医療業界の中でも、調剤薬局は接客業の側面が強く、常に待ち時間を意識し、迅速な対応が求められます。しかし、慣れないうちは鑑査や服薬指導に手間取ってしまうこともあるでしょう。ブランク明けの復職であれば、薬剤師の人員を多めに配置している調剤薬局を選ぶと、忙しい時もプレッシャーに感じることが少ないはずです。
 

例えば、総合病院の門前などにある大型の調剤薬局は、在籍する薬剤師の数が多い傾向にあります。投与日数が長い処方せんを受ける機会も多いので、処方せんの枚数に対して人員を多く配置する傾向にあることから、ブランク明けでも働きやすいかもしれません。

 

一方で、地域の医療機関に対応する調剤薬局の中には、最小限の人員で対応しているところもあります。その場合、一人ひとりの能力が薬局全体の業務効率に大きく影響するため、プレッシャーを感じることもあるでしょう。

 

また、突発的な欠勤に対応してもらいやすいのは、やはり薬剤師の人数が多い薬局です。薬剤師が3人の薬局と、10人の薬局では、1人が欠勤した時の負担が大きく変わります。子どもの発熱などで急遽欠勤する可能性が考えられるのであれば、薬剤師の在籍数は職場選びにおける重要なポイントになるでしょう。ただし、薬剤師が多くても、業務量に対して人数が足りていないという薬局も少なからず存在しますので、対応する処方せん枚数を含めた事前の情報収集が必要です。

 

 

3-2. 入社後の研修期間を確認

ブランクの期間が長ければ長いほど、薬剤師としての知識や経験は薄れてしまうものです。また、同じ疾患であっても医療の進歩とともに治療のスタンダードも変わっていきます。医療の知識をアップデートしながら、過去の記憶を取り戻す作業が必要な点も、薬剤師が復帰を難しいと感じてしまう理由ではないしょうか。

そうした不安を解消するためにも、入社後にしっかりと研修が用意されている職場を選ぶことが大切。職場見学や面接時に、研修期間やその内容、フォロー体制について確認しましょう。また、どのような知識が求められているのかも同時に確認しておくと、職場で必要なスキルを把握することができます。例えば、「応需する診療科目」や「在宅件数」、「一包化や散剤の処方頻度」などを確認するだけでも、復職後の業務をイメージしやすくなるでしょう。

 

職場見学や面接時に、復職後の業務を確認することで、向上心や学ぶ姿勢をアピールすることにもつながります。

4. 復職前に取り組むべき準備とは

復職を決めたものの、求められる知識やスキルに不安がある場合には、事前に準備をしておくとよいでしょう。復職前に把握しておきたい医療情報や、身につけておきたいスキルを見てみましょう。

 

4-1. 新薬や保険制度について最新情報を確認する

医療業界は日進月歩。毎年、新薬やジェネリック薬品が発売されているため、事前にある程度の情報を把握しておく必要があります。特に、新しい作用機序の新薬はしっかりチェックしておきましょう。

 

新薬をチェックする際には、幅広いニーズのある新薬の種類と、その同効薬を確認するのがポイントです。使い分けまで知識を深めると、復職後も余裕をもって働けるでしょう。例えば、2018年に発売された「ゾフルーザ」は、インフルエンザウイルス感染症において新規作用機序を有する新薬です(塩野義製薬ウェブサイトより)。ゾフルーザのように、老若男女問わず使用される薬は、どの薬局でも採用される可能性が高いでしょう。他のインフルエンザ薬との比較を含め、まとめて確認したほうがよい薬の一つといえます。

 

また、保険制度についても定期的に改定されますので、最新情報の確認が必要です。特に、「調剤報酬点数」は2年に1度、厚生労働省の諮問機関である「中央社会保険医療協議会」によって改定されています。新しい加算や廃止された制度などは必ず確認し、基礎知識として理解しておきましょう。

 

4-2. 取り扱うことが想定される薬に関してしっかり情報収集を行う

ブランクの間に発売された新薬だけでなく、復職先で処方頻度の高い採用薬や、診療科に関わる薬の情報収集を行うことも大切です。応需の多い診療科から処方される医薬品を事前に確認しておくと、復職後すぐに使える知識として役立つでしょう。

 

復職先の薬品情報が事前に得られない場合は、自身や家族が受診した際に処方される薬で勉強するのもおすすめです。薬品名から用法・用量・同効薬などを確認するだけでも、記憶を取り戻すきっかけになります。特に子どもの薬は、体重換算で処方されるケースもあるため、良いトレーニングになるでしょう。

 

4-3. ブラインドタッチができるようになっておく

「薬歴を書くのに時間をとられて、他の業務ができなかった」というのは、薬剤師にはよくある悩み。薬歴を終わらせるスピードが速いほど、他の業務に割く時間が増えるのは、今も昔も変わりません。

 

ひと昔前は紙薬歴が主流でしたが、今は電子薬歴を採用している薬局が多く、薬歴を書くためのパソコン操作は、現代の薬剤師にとって必要なスキルとなりました。薬歴を書く時間は限られているため、ブラインドタッチができるかどうかで、業務効率に大きな差が生まれます。時短勤務やパート勤務では残業できないこともあるため、勤務時間内に業務を終えるためにも、復職前にブラインドタッチを習得しておきましょう。

5. 復職を目指す薬剤師におすすめの勉強法

「最新の医薬品情報やスキルが必要なことはわかったけど、どうやって勉強すればいいの?」という方に向けて、おすすめの勉強法をご紹介します。

 

5-1. インターネットや本を活用

「東京都薬剤師会」が発行する「都薬雑誌」といった薬剤師向けの情報誌を日々チェックすることも、復職に向けて大切な勉強です。

 

近年では、インターネット上にも多くの資料があり、多くの専門サイトから手軽に情報収集ができます。なかでも、日経メディカルが運営する「日経DI online」は、薬剤師向けに医療情報が配信されており、利用も無料です。会員登録することで、最新情報のほか、オンデマンド動画やWeb講演会の視聴、薬剤師国家試験1日1問テストなどが利用できます。医薬関連の最新ニュースには「薬事日報」もおすすめです。また、「PMDA」といった添付文書検索ページの使い方も復習しておくと、いざという時に安心です。

 

5-2. e-ラーニングや勉強会に参加

「日本薬剤師会」が開催する研修会や、企業が提供するe-ラーニングなどを利用するのもよいでしょう。費用がかかるケースがほとんどですが、e-ラーニングは空いた時間に勉強できるという強みがあります。

 

また、こうした研修を受講する大きなメリットは、研修認定薬剤師になるために必要な単位が取得できる点にあります。特に調剤薬局には、「かかりつけ薬局」、「かかりつけ薬剤師」として患者さんの健康を一元的に管理することが求められています。そのかかりつけ薬剤師になるための条件の一つが、研修認定薬剤師の資格です。復職後に求められやすい資格ですので、取得を目指すことをおすすめします。

 

<おすすめのe-ラーニングや教材>


日本薬剤師研修センター
JPラーニング
メディカルナレッジ
MPラーニング

 

上記以外にも薬剤師向けにe-ラーニングや研修を提供する企業はたくさんあります。それぞれ扱う分野や料金、システムが異なるため、習得したい内容や予算に合わせて利用しやすいものを選びましょう。

 

また、求人情報の中には、こうした事前研修を受けるための補助制度を設けている場合もあります。復職先を選ぶ際に確認してみましょう。

6. 復職を成功させるためには、「職場選び」がカギ

元の職場への復帰や、新たな職場への転職・再就職など、復職のかたちはさまざまです。しかし、どんなかたちで復職するにしても、職場選びを間違えば、仕事と家庭の両立に疲弊してしまい、薬剤師としての仕事を続けられなくなる可能性もあります。

 

また、薬剤師は知識を積み重ねていくことも大切な仕事。その時間を確保し、薬剤師としてのキャリアを継続するためにも、まずは体力面で無理のない働き方を選ぶことがポイントです。復職前に必要な知識を学び直すとともに、体力的にも不安がないように準備しておくことが、復職を成功させるコツといえるでしょう。


執筆/秋谷侭美(あきや・ままみ)

薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。

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