薬剤師のためのお役立ちコラム 公開日:2021.08.26 薬剤師のためのお役立ちコラム

薬剤師は大変な仕事?実体験とやりがい・魅力を紹介

文:秋谷侭美(薬剤師ライター)

薬剤師は、患者さんの命に関わるような薬を調剤することもある重要な仕事。そのため緊張感の高い現場で神経を集中させたり、ハードな労働環境が必要とされたりすることもあります。特に薬局薬剤師は、医療を提供する立場であると同時に、接客業の側面もある職業です。それゆえに、接客業ならではのトラブルやクレームがあることも事実。今回は、実際にあった薬剤師の苦労話から、その対策方法をお伝えします。

1. 薬剤師が大変さを感じる瞬間とは?

薬剤師の仕事が大変だと感じるポイントは、薬局や病院など働く職場によってさまざまです。ここでは、実体験とともに薬剤師の大変さをエピソードとともに紹介します。

 

1-1. 待ち時間へのクレーム対応に困った

「いつまで待たせるの? 急いでいるんだけど。次の病院の予約に間に合わないから早くして!」という患者さんからの待ち時間の長さに対するクレーム。こんな声を聞くのも薬剤師の職場ではよくあることです。

 

処方薬は1種類だけでも、受付番号が10番目ともなれば患者さんの待ち時間が長引きます。来局してから5~10分で患者さんがイライラしている様子が感じられることもありますが、だからといって優先してしまえばその患者さんよりも先にお待ちいただいていた患者さんからの二次クレームが起きるのは目に見えています。

このような待ち時間へのクレームへの対処方法としては、患者さんの話を丁寧に聞き、お待たせしてしまう理由をしっかりお話するしかありません。よくあることとはいえ、度重なるクレーム対応に大変さを感じることがあります。

 

 

1-2. 薬剤師の説明を信じてもらえない

患者さん対応で大変な場面は他にもあります。

 

「実はコレステロールの薬、怖くて飲んでないのよ。週刊誌に書いてあったけど、この薬飲むと身体に悪いんでしょ?」というように、テレビや週刊誌の情報を鵜呑みにして、薬剤師の言葉を信じない患者さんが意外といらっしゃいます。薬剤師が正しい情報を伝えてもなかなか信じてもらえず、大変な思いをすることがあります。

 

こうした患者さんを説得するには話の順番が重要です。まずは話を傾聴し、患者さんの不安を受け入れることが大切。その次に「効能・効果」、「副作用の発生率」、「服用しないことのリスク」などの正確な情報を提供するとよいでしょう。

 

1-3. 薬歴がたまりすぎて残業することも

薬局薬剤師は、薬歴を書くために残業しなければいけない場合があります。次々に患者さんがやって来る薬局では、日中の業務をこなしながら薬歴を書くタイミングを見つけるのは難しいものです。落ち着いた時間帯にまとめて書こうとして昼休みを使ったり、残業したりするのもよくあること。どうしても薬歴がたまってしまう場合は、スタッフと協力して、薬歴を書く時間を作り出すこともひとつの方法です。

 

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1-4. 職場の人間関係が悪くて働くのが苦痛

薬局内の限られたスペースでは、スタッフ同士が肩を並べて調剤や鑑査を行うことがよくあります。狭い局内で長時間一緒に過ごしていれば、ちょっとしたことが目につき、不満に感じてしまうこともあるものです。加えて、仕事が立て込んでくれば「仕事が遅い」「気遣いが足りない」「雑談が多すぎる」などの発言からトラブルに発展することも。

同じような発言でも、人間関係が良好なら「指導」だと素直に受け止められますが、中には「悪意」と受け取られてしまい人間関係が悪化するケースもあります。日頃からコミュニケーションを密にし、お互いの信頼関係を高めながら、柔軟に対応できるスキルを身につけておきたいものです。

 

 

1-5. 患者さんのアドヒアランスが向上しない

どんなに説明してもアドヒアランスが向上しない患者さんへの説得はとても大変です。例えば、糖尿病の患者さんのケースで、高血糖のリスクを何度説明しても「今のままで不自由ないし、これで目が見えなくなっても仕方ないよね」と、まったく伝わらないことがありました。ときに薬剤師には、患者さんの考えを180度変えるほどの説明力や説得力が求められます。医学的知識だけでなく、相手に納得してもらえるように伝える技術を高めておくことも大切です。

1-6. 相談対応に時間がかかってしまう

地域の患者さんから薬や健康に関する相談をしてもらえるのは嬉しいですが、中には時間がかかってしまう対応もあります。たとえば、小児科の門前薬局で多い、「子どもが薬を飲んでくれない」という相談です。

 

3~4歳の子どもは、薬が苦くて飲みづらいということを認識し始めます。そのため、露骨に薬への嫌悪感を表し、飲もうとしないケースがあります。保護者から「アイスやジュースに混ぜても薬を飲まない」と相談を受けることもありますが、その際には、「味噌汁に混ぜる」「服薬ゼリーに混ぜてストローで飲ませる」「思い切って錠剤に切り替える」などの方法を提案してみましょう。

 

こうした相談に立て続けに対応する場合、時間がかかり、他の患者さんを待たせてしまうことがあります。他の患者さんの様子を気にしながら説明は丁寧にする必要があり、薬剤師の数が少ない場合などは大変に感じることもあるでしょう。患者さんから相談が多い薬局では、相談のケースごとにあらかじめ資料を作成しておき、説明時間の短縮化を図ると余裕をもって業務に取り組めるでしょう。

2. 薬剤師に向いている人の特徴

薬剤師の大変さが分かるエピソードを紹介してきました。では、そうした大変さを克服するためにどのような能力が必要になるのでしょうか。薬剤師に向いている人の傾向をまとめました。

 

2-1. いい意味でマイペース

どんな時でも落ち着いて作業できる人は薬剤師に向いているでしょう。患者さんが何人も待合室で待っている時に、「早く薬を渡さないとクレームがきてしまう」と慌てたり、クレームを受けた後やミスをした後にソワソワして落ち着かなかったりすると、その後の業務にも支障をきたします。どんな状況でも、心を乱さず落ち着いて作業ができる人は、「いい意味でマイペース」。薬剤師に必要なスキルのひとつかもしれません。

 

2-2. 勉強家

患者さんの中には、自分の病気のことをあらゆる方面から調べている人もいます。そのためちょっとした質問に答えられないと「薬剤師なのに知らないの?」と患者さんからの信頼を損ねてしまうかもしれません。日進月歩の医療現場においては、薬に関する勉強会に参加することはもちろん、週刊誌やネット、テレビの情報にもアンテナを張って、患者さんの悩みや疑問に答える準備をしておく必要があります。

2-3. 傾聴が得意

薬剤師の仕事は、まずは患者さんの話を聞くことから始まります。どんな疾患で、どんな症状があり、何が悩みなのか、治療に関してどう思っているのかなど、あらゆることを聞き出してアドヒアランスの向上を目指します。聞き出すスキルはもちろん、傾聴するスキルも大切です。

 

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3. 薬剤師がやりがいを感じる瞬間

薬剤師は大変なことも多く高度な知識・能力が求められる仕事ですが、やりがいもあります。

 

患者さんの中には、医師以上に薬剤師を頼って相談してくれる人もいます。世間話の延長から「実は先生には言ってなかったんだけど……」と相談を受けたこともあり、信頼関係を築けていることを実感できる瞬間です。

アドヒアランスにつながる深い情報を得て、患者さんの健康維持・向上に貢献できる機会は、薬剤師としてのやりがいを感じる瞬間です。薬剤師の仕事は大変な部分もありますが、患者さんとの信頼関係を築きながら、大変さを上回るやりがいも見出せます。患者さんに寄り添い、地域貢献する実感こそが、薬剤師の魅力といえるのかもしれません。

 

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4. 薬剤師は大変だが魅力のある仕事

薬剤師は、患者さんの命を預かる責任重大な仕事です。自分が思う通りに仕事が進まずストレスを感じることがあっても、どんなに大変でも、患者さんの笑顔や「ありがとう」で、全てが報われる瞬間があります。また、自分の知識やスキルを最大限に活かしながら、医師よりも身近な存在として患者さんの健康を支えることができるのは、薬剤師ならではの魅力です。

 

仕事が「大変」だと感じたら、職場の先輩や上司に相談するなどして改善の方法がないか一緒に考えてもらいましょう。職場の人間関係で大変な思いをしていて相談がしづらい場合は、職場を変えてみるのもひとつの方法です。


執筆/秋谷侭美(あきや・ままみ)

薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。

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