インタビュー 公開日:2023.01.31 インタビュー

病気にさせない「かかる前薬局」で地域の予防医療に貢献~旭川中央薬局

病気・病院にかかる前、医療費がかかる前、他人に迷惑がかかる前の「かかる前薬局」として「第2回 みんなで選ぶ薬局アワード」で特別審査員賞を受賞した旭川中央薬局の長塚先生。検体測定室の活用や口腔ケア、多職種連携などを中心とした予防医療・健康増進の取り組みについてお話を伺いました。

 

本記事は株式会社ネクスウェイが提供する「医療情報おまとめ便サービス」特集2018年11月号P5-6「薬局インタビュー 旭川中央薬局(北海道)」を再構成したものです。

お話を聞いたのは……
 

旭川中央薬局 長塚 健太先生

旭川中央薬局
北海道旭川市金星町1-2-17
http://www.chuo-pharm.co.jp/

 

Q.薬局の現状や患者さんの特徴を教えてください。

A.いわゆる門前薬局として多様な診療科とともに、在宅にも対応しています。

近医は総合病院で、多様な診療科の処方箋を取り扱っている保険薬局です。その他にも薬剤師が厳選したOTCやエビデンスのあるオススメグッズなどの取り揃えにこだわり、健康サポートにも努めています。また在宅については個人宅2件、有料老人ホーム1件を担当している状況です。
 
地域の基幹病院には精神神経科が少ないことから、近医では統合失調症やうつ病の患者さんが多い印象です。また、あとでもお話しいたしますが歯科口腔外科を持つため、市中の歯科医院で対応困難な患者さんの治療後の口腔セルフケア指導にも力を入れています。

 

Q.病気にさせない「かかる前薬局」はどのような考えで始まったのでしょうか?

A.下流で食い止める三次予防ではなく、上流を見極める一次予防の重要性を学び、取り組みがスタートしました。

かつて公衆衛生学で学んだジョン・マッキンリーの逸話のように、現代の医療は上流からの患者を下流で治療し続ける、三次予防に追われている状態。もっと上流に目を向け、どんな理由で患者が流れてくるのかを見極めて一次予防に努めなければならない、と大学時代の恩師と話し合ったことが「かかる前薬局」のスタートでした。
 
学生時代から糖尿病予防に興味があったこともあり、まずは血液の自己測定コーナーである検体測定室を地域に先駆けて設置しました。健康維持・管理への意識付けをするためにも1回1,000円の有料制とさせていただいています。

 

 

Q.検体測定室ではどんなところに注力されているのですか?

A.糖尿病指標の測定を通して、利用者さんの健康意識を向上させる場にしていきたいです。

当薬局では利用者さんに結果の見方や受診の目安などを解説しています。個人的には、HbA1cはもちろん、いわゆる血糖値スパイクの発見のため、食後の血糖値を確認していただきたいので、利用者さんには空腹時を避けて来店いただくよう呼びかけています。
 
最近は店頭で販売している自動測定器を使って食後血糖値の変動をチェックし、血糖値スパイクを知ってもらうように努めています。



 

薬局内に設置された検体測定室。利用者さん自身によるセルフチェックで、疾病の一次予防に取り組む自己決定を促すことを目的としています。

 

求められるのは、これまでの常識に囚われず、薬局の利用の仕方をアピールしていくことですね。基本的に門前薬局スタイルなので集客に苦労し、リピーターも含め月に3件程度というのが現状ですが、こうした取り組みが新聞の取材記事として掲載されると月に20人くらい集まることもあるので、地域のニーズはあると考えています。
 
ただ、予防の分野は何も起こらないことが良いことなので、健康に資するアウトカムが分かりにくく、利用メリットを伝える難しさが課題ですね。

 

 

Q.薬剤師が口腔ケアを推進する意義とは?

A.様々な薬剤が、乾燥や腫れ、色調の変化などの口腔環境悪化を引き起こしうるため、薬剤師も素通りは出来ません。

薬剤師の仕事にとって、口腔環境のチェックはお薬手帳を確認することと同じくらい重要だと思います。口腔ケアの基本は加湿、清掃、保湿。つまり乾燥が口腔環境を悪化させるのですが普段調剤している薬の中には口渇を引き起こすものが高い確率で含まれています



 

待合室に作られたお口ケア商品コーナー。商品の取扱いだけでなく、リーフレットなどで口腔ケアの大切さを啓蒙しています。

 

また近年は肺炎による死亡率が上昇傾向にあり、その原因として70歳では約70%、90歳では約95%が誤嚥性肺炎というデータがあります。私たち薬剤師は、習慣的にコップ一杯のお水で薬を飲むことをおすすめすることがありますが、口腔内が汚れている人の場合はそれが原因で誤嚥し肺炎につながる可能性も否定できません。
 
常にマスクをしていたり、口臭が強いなど、気になる患者さんにはきちんと説明をした上で口の中を見せていただいています。乾燥を招くかもしれない場合には口腔保湿剤のサンプルをお渡しすることもあります。

 

Q.「かかる前薬局」が今後目指すのはどのような姿ですか?

A.住民の自立を支援する地域のコミュニティースペースのような薬局の在り方です。

患者さんとの距離感が近くなるほどオーダーメイドなアドバイスができるようになり、信頼関係も深まってきているように感じています。
 
最も理想的なのは、特別な用事がなくても薬局に立ち寄ってもらえるようになること。地域のコミュニティースペースのようになっていけば良いなと思っています。そこが私たちの情報発信の場として機能し、住民の自立を支援する存在でありたいと思います。

 
 

 

出典:株式会社ネクスウェイ「医薬情報おまとめ便サービス」特集2018年11月号

 
 

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