薬剤師のスキルアップ 公開日:2021.11.19 薬剤師のスキルアップ

管理薬剤師になるための要件・業務内容・年収事情は?副業はできる? 文:秋谷侭美(薬剤師ライター)

薬剤師としてのキャリアパスを考えた時に、管理薬剤師を目指す人もいるでしょう。管理薬剤師は薬局やドラックストア、病院の調剤室などの責任者として活躍できるほか、工場や製薬企業などでも資格が生かせます。特に、医薬品を取り扱う企業や工場の責任者は、薬剤師免許が必須条件となるため、薬剤師にしかできない仕事といえるでしょう。今回は、管理薬剤師になるために必要な要件や仕事内容などについてお伝えします。

1.管理薬剤師になるための要件

管理薬剤師になるために、薬剤師資格のほかに必要な資格はありません。薬剤師の資格があれば、取り扱う医薬品の種類に関係なく薬局やドラックストアの管理薬剤師、製薬企業や工場の責任者を務めることができます。
 
ただし、薬局の管理薬剤師は、薬剤師認定制度認証機構から認証を受けたプロバイダーの研修を受け、認定薬剤師の資格を取得することが求められています。加えて、薬局における実務経験が少なくとも5年以上であることが重視されており(日本薬剤師会「薬局における法令遵守体制整備の手引き」より)、薬局の管理薬剤師になるには、ある程度の実務経験と自己研鑽が必要でしょう。

 

また、薬局の管理薬剤師は「実地に 管理しなければならない」と定められています(厚生労働省「管理薬剤師等の責務の内容について」より)。そのため、ひとつの店舗に一定時間以上勤務しなければなりません。明確に勤務時間が定められているわけではありませんが、一般的に1日あたり8時間(1週あたりおよそ40時間) 以上勤務する必要があるようです。
 
一方、製薬企業や工場では、管理薬剤師と呼ばれることは少なく、製造する医薬品の種類や職種によって名称が以下のように異なります。

 

・医薬品の製造の管理をする人を医薬品製造管理者
・医薬部外品または化粧品の製造の管理をする人を医薬部外品等責任技術者
・医薬品・医薬部外品または化粧品の品質管理及び製造販売後安全管理を行う人を医薬品等総括製造販売責任者

(「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」十七条より)

 

医薬品製造管理者と医薬部外品等責任技術者は工場の責任者、医薬品等総括製造販売責任者は製薬企業などの責任者を指し、他にも医療機器や再生医療等製品を扱う場合も責任者を置くことが定められています。
 
医薬品を取り扱う場合は、薬剤師資格を持つ人が責任者を務めなければなりません。ただし、医薬品のなかでも一定の要件を満たした生薬や医療用ガス類、医薬部外品や化粧品、医療機器、再生医療等製品の製造販売業や製造業についても、薬剤師以外の人が一定の条件を満たすことで責任者を務めることが可能です。


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2.管理薬剤師の仕事内容

管理薬剤師の仕事内容は業種によって異なります。業種ごとの違いについて確認しておきましょう。

 

2-1.薬局

薬局の管理薬剤師は、薬剤や医薬品の在庫・品質を管理したり、従業員の指導や教育を行ったりするのが主な業務です。特定生物由来製品や麻薬、毒薬などの医薬品の在庫管理や、薬局内の室温などを記録した帳簿の保管などは、管理薬剤師の重要な仕事です。

日本薬剤師会は、近年発生している薬局開設者の薬機法違反をふまえ「薬局における法令遵守体制整備の手引き」を作成し、薬局の管理薬剤師の職務を以下のように記載しています。

 

「管理者は、保健衛生上支障を生ずるおそれがないように薬局等の業務を行うために必要があるときは、薬局開設者等に対し、意見を書面により述べなければならない」

(日本薬剤師会「薬局における法令遵守体制整備の手引き」より)

 

管理薬剤師は薬局内の業務における問題点や改善案などを薬局開設者に意見する場合は書面で述べ、さらに書面を3年間保存することとしています。薬局内の慣習や、エリアマネージャー・薬局開設者など上司からの指示について、法令遵守の点で問題がないか確認するとともに、抵触すると判断した際には意見を述べる対応が求められます。

 

 

2-2.ドラックストア

ドラックストアや医薬品を扱うスーパー・コンビニなどの管理薬剤師は、薬局と同様、医薬品の管理業務や副作用情報などを収集しスタッフに周知する業務を担います。医薬品だけでなく、日用品やサプリメント、健康食品などに関する幅広い知識を求められます。

 

2-3.病院

病院では、管理薬剤師を設置する法的な決まりはありません。多くの場合、病院内の調剤室において管理責任を担うのは、薬剤部長や薬科長などです。医薬品の管理や一般の薬剤師への指示・教育等は薬局と変わりませんが、医師やコメディカルスタッフと連携を取るための業務があります。院内カンファレンスへの参加や、院内感染症の対策チームなど院内活動への参画、製薬企業や卸業者との面談や治験業務のサポートなどは、病院ならではの業務と言えるでしょう。

 

2-4.工場や製薬会社など

工場や製薬企業の責任者は、品質管理と安全管理を行いながらGMP(医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準)の遵守に努めます。医薬品製造管理者や医薬部外品等責任技術者は、GMPに基づいて薬品の品質チェックを行い、原料や資材の受け入れ試験や製造工程内の検査、出荷前の最終試験などを実施して製品の品質を管理することが主な仕事です。

医薬品等総括製造販売責任者は、社内の品質保証責任者や安全管理責任者へ指示を出したり報告を受けたりと、自社製品の品質管理や安全管理の総括的な責任を負います。副作用などの情報収集や薬剤の在庫管理、DI業務、行政機関に提出する書類の作成や文書の保管などを適正に行えるよう管理するのが仕事です。


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3.管理薬剤師や責任者になるメリット

たくさんの役割が課される管理薬剤師や責任者ですが、一方でメリットもあります。

 

3-1.高度な知識・スキルが身につく

薬局の管理薬剤師は他のスタッフ以上に医薬品や治療ガイドラインについて、勉強を深める必要があり、高度な知識が身につきます。薬局の経営にかかわる法律を学ぶ機会も増えるため、一般の薬剤師とは異なる視点を持てるようになるでしょう。

工場や製薬企業の責任者は、医薬品の知識だけでなく、製造・管理に必要な法律や自社の商品を販売するまでの手続きなどを学びます。人間関係を配慮しながらリーダーとしてまとめる役割も担うため、コミュニケーション能力も身につきます。

 

3-2.年収アップが見込める

管理薬剤師や責任者になると、役職手当を支給されることが多いため、年収アップが期待できます。手当の名称や金額は企業によって異なるため、事前にリサーチしておくと、どのくらいの年収アップが見込めるのかわかります。

 

3-3.転職に有利

管理薬剤師はスキルアップの機会に恵まれており、現職での経験が転職に有利にはたらくことがあります。管理薬剤師や責任者としての採用ではなかったとしても、業務内容を理解しているため、転職先の上司から頼りにされるでしょう。その後のキャリアパスでも管理薬剤師としての経験が活きてくるはずです。


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4.管理薬剤師や責任者を務めるデメリット

続けて、管理薬剤師や責任者になるデメリットを見てみましょう。

 

4-1.業務量が増える

管理薬剤師や責任者は、仕事の負担や責任が重くなりがちです。スタッフの指導や教育、管理業務などに加えて、繁忙期には通常業務に加わることもあるでしょう。シフト管理を行う管理薬剤師や責任者は、人手が足りない日などに自身が出勤することで人手不足をカバーすることがあるかもしれません。

 

また、管理薬剤師や責任者の仕事は、一般のスタッフから理解されにくい側面もあります。店舗業務が忙しい時にパソコンに向かって作業をしていると、スタッフから白い目で見られてしまうことがあるかもしれません。多くの業務をこなさなければならないうえ、スタッフの理解を得る必要がある点などは、管理薬剤師の大変なところです。

 

4-2.副業が禁止されている

薬機法の第7条において、薬局の管理薬剤師は薬剤師としての副業が基本的に禁止されています。ただし、都道府県知事の許可を受けた時は、副業が認められます。これは、地域医療を支えることを目的としているためで、管理薬剤師でも薬剤師が不足している薬局でのアルバイトが可能です。他薬局のサポートを行う場合は、事前に許可を受けるようにしましょう。


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5.管理薬剤師と一般薬剤師の年収の違い

人事院が行った「2019年職種別民間給与実態調査」によると、一般薬剤師(平均年齢37歳)の平均月収が36万8,365円であったのに対し、薬局長(平均年齢50.2歳)は50万3,863円でした。この金額からボーナスが4か月分支給されると仮定すると、一般の薬剤師の年収は約590万円、薬局長は約806万円になります。薬局長が管理薬剤師である場合(そうではないケースもあります)、管理薬剤師と一般薬剤師には200万円程度、年収に差があると考えられます。


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6.管理薬剤師や責任者になるには

薬局の管理薬剤師は、認定薬剤師の資格と実務経験が5年以上あれば、誰でも目指せます。知識と経験を積み重ねつつ、管理薬剤師を目指していることをアピールすれば、現職で役職を得る可能性が高まります。現職のままで管理薬剤師を目指すのが難しいのであれば、転職を視野に入れると良いでしょう。

製薬企業などの責任者になる方法も、法令上の要件は明示されていませんが、一定の経験が必要です。薬局の管理薬剤師と同様に、現職での昇給を目指すか、ある程度の経験を積み責任者の求人に応募することになります。

7.管理薬剤師や責任者として転職する時の注意点

転職先でも管理薬剤師として活躍したい場合には、業務内容や労働条件をしっかり確認したうえで応募することが大切です。管理薬剤師や責任者の仕事は法律で決まっているものの、職場によって多少の差があります。転職後のミスマッチを防ぐためにも、事前に情報収集が必要です。企業によっては、管理薬剤師に残業代が出ないこともありますので、条件面の確認も欠かさないようにしましょう。
 
管理薬剤師の経験がなく新たなキャリアを踏み出したい場合には、研修制度の有無や研修内容を確認しましょう。研修で補えない部分は、入局前に自身で学ぶ必要があります。


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8.管理薬剤師や責任者の経験はスキルアップにつながる

管理薬剤師や責任者の経験は、医薬品の知識や管理方法が身につくだけでなく、法律への理解も深まります。マネジメント力やコミュニケーションスキルなど、経営的な視点も養えるでしょう。管理薬剤師や責任者を経験できるチャンスはそう多くはありません。チャンスがあれば挑戦し、スキルアップを目指しましょう。


執筆/秋谷侭美(あきや・ままみ)

薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。

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