薬剤師のスキルアップ 更新日:2024.01.16公開日:2022.03.24 薬剤師のスキルアップ

かかりつけ薬剤師指導料・かかりつけ薬剤師包括管理料の違いは?算定要件など解説

文:秋谷侭美(薬剤師ライター)

かかりつけ薬剤師は患者さん一人ひとりに寄り添った医療を提供することが求められています。「令和4年度診療報酬改定の基本方針」においても、かかりつけ機能の充実が組み込まれており、今後ますますその傾向が強くなるでしょう。そこで、改めて確認しておきたいのが、「かかりつけ薬剤師指導料」と「かかりつけ薬剤師包括管理料」の要件です。今回は、この2つの薬学管理料の違いや算定要件、算定時のポイントについて詳しく解説します。

1.かかりつけ薬剤師指導料とは?かかりつけ薬剤師包括管理料との違い

かかりつけ薬剤師指導料とは、かかりつけ薬剤師が医師と連携して患者さんの服薬状況を一元的・継続的に把握し、服薬指導を行った場合に算定できる薬学管理料です。対象患者さんは限定されておらず、要件を満たすことで誰でも算定できます。
 
類似するものに、かかりつけ薬剤師包括管理料があります。算定要件の基本的な部分は同じですが、こちらは病院で地域包括診療料、または認知症地域包括診療科を算定している患者さんのみが対象となっています。
 
また、かかりつけ薬剤師包括管理料を算定する場合、服薬指導の内容をその都度、医師へ情報提供するとともに、必要に応じて処方提案することとされています。なお、情報提供の方法に正式なフォーマットなどはなく、医師と自由に取り決めることが可能です。具体的な算定要件は次項で解説します。

2.かかりつけ薬剤師指導料・かかりつけ薬剤師包括管理料の算定要件

かかりつけ薬剤師指導料やかかりつけ薬剤師包括管理料は、上述したように対象患者さんが異なります。それ以外は、以下の要件を満たすことで、かかりつけ薬剤師指導料が76点、かかりつけ薬剤師包括管理料が291点を算定できます(厚生労働省「保険調剤の理解のために[令和3年度]」より)。共通する算定要件となる、「施設基準」、「患者さんの同意」、「医師との情報共有」などについて見てみましょう。

 

2-1.施設基準

かかりつけ薬剤師としての指導は、より詳細に患者さんのプライベートな内容を確認することになります。こうした背景から、2020年度診療報酬改定では、「患者さんとの会話のやりとりが、他の患者さんに聞こえないよう配慮すること」が新しい施設基準として加わりました(厚生労働省「保険調剤の理解のために[令和3年度]」より)。
 
パーテンションなどで区切った独立したカウンターを用意するなど、患者さんのプライバシーが守られるように施設の環境整備を進める必要があります。

加えて、かかりつけ薬剤師となる薬剤師は、薬剤師認定制度認証機構が認証している研修認定を取得していることや、地域医療に参画していることなども施設基準の要件に含まれます(厚生労働省「保険調剤の理解のために[令和3年度]」より)。

 
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2-2.情報共有や同意に関する算定要件

かかりつけ薬剤師指導料やかかりつけ薬剤師包括管理料を算定するには、以下の事項を説明したうえで、患者さんの同意を得る必要があります。

 

・かかりつけ薬剤師の業務内容
・かかりつけ薬剤師を持つことの意義や役割など
・かかりつけ薬剤師指導料の費用
・かかりつけ薬剤師による指導が必要と判断した理由

 

同意書は薬局で保管すると同時に、薬剤服用歴に同意を得た旨を記録しなければなりません。同意を取得できる対象者は、薬局に複数回来局している患者さんです。同意を取得した当日に算定することはできませんので、次回の処方箋受付時から算定しましょう。

また、2020年度診療報酬改定では、「残薬状況を医師と情報共有すること」が算定要件に加わりました。ある程度の残薬がある患者さんは、意向を確認したうえで、残薬の状況と薬が残ってしまう理由をお薬手帳に簡潔に記載し、医師へ情報提供します。必要以上に残薬がある場合は、疑義照会などで残薬調整するといった対応が求められます。

 
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2-3.薬剤師の勤務条件 

薬剤師の勤務経験には、以下の基準があります。

 

・保険薬剤師として3年以上の薬局勤務経験がある
・当該薬局で週32時間以上勤務している。
・施設基準の届出時点で、届出を出す薬局に継続して1年以上在籍している

 

また、パートや時短勤務など薬局での勤務時間が週32時間に満たない薬剤師でも、週24時間以上かつ週4日以上勤務であれば、かかりつけ薬剤師となることが可能です(条件:すでにかかりつけ薬剤師が在籍する薬局であること)。
 
ただし、患者さんに同意を得る際は、勤務時間が通常より短いことを説明し、患者さんに渡す勤務表が短時間勤務になっていることを記載する必要があります。また、他の薬剤師と情報共有することで、かかりつけ薬剤師が不在の時も問い合わせ等などに対応できる体制を整えなければなりません。

 

2-4.厚生局への届出

算定に向けて、事前に厚生局へ届け出ておく必要があります。届出書の添付書類には、届出時点での薬剤師の薬局勤務経験年数や所属する薬局の在籍期間、1週間あたりの平均勤務時間・平均勤務日数を記載し、短時間勤務を行う薬剤師の場合は該当性についてチェックを入れます(一例として、関東信越厚生局のページから届出の様式を確認することができます)。

また、認定薬剤師などの研修認定を確認できる文書や地域活動に参加していることが証明できる書類の添付も必要です。

3.かかりつけ薬剤師指導料・かかりつけ薬剤師包括管理料を算定する際の注意点

かかりつけ薬剤師指導料やかかりつけ薬剤師包括管理料を算定するにあたり、服薬指導や手帳への記載事項など守らなければならないポイントがあります。

 

3-1.より丁寧な服薬管理・指導が求められる

患者さんが受診している全ての病院の情報を把握し、服用している処方薬だけでなくOTCやサプリメント、健康食品なども把握し、薬剤服用歴に記載しなければなりません。加えて、患者さんに他の薬局で処方薬を受取る場合は、かかりつけ薬剤師がいることを伝えるよう説明する必要があります。患者さんが他薬局で調剤を受けた場合は、服用薬などの情報を薬剤服用歴に記載しなければなりません。
 
また、調剤後も定期的に服薬状況を確認することが定められています。患者さんの容態や希望に応じて、電話や自宅への訪問時、患者さんの来局時などに服薬状況を確認しましょう。
 
また、ブルーレター(製薬企業から配布される医薬品・医療機器の添付文書改訂における安全性速報)などの服用薬に関する重要な情報を得た場合は、患者さんへ情報提供し、しかるべき対応をとったあと、薬剤服用歴に記録を残します。
 
薬物治療の状況を詳細に把握するためにも、血液検査などのデータ確認も必要です。患者さんの同意を得たうえで、服薬指導や調剤に必要な検査結果の提示を促しましょう。

 
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3-2.お薬手帳にかかりつけ薬剤師・かかりつけ薬局の情報を記載する

1人の患者さんに対してかかりつけ薬剤師になれるのは1人だけです。そのため、お薬手帳などには、かかりつけ薬剤師やかかりつけ薬局の情報を記載する必要があります。また、患者さんや家族、医師などの関係者が一元的かつ継続的に服用中の薬剤が確認できるように、患者さんの意向を確認したうえで、服薬指導などの内容をお薬手帳などに記載します。

 

3-3.かかりつけ薬剤師が不在時のサポート体制を整える

かかりつけ薬剤師指導料を算定する場合、患者さんからの問い合わせに対し24時間いつでも対応できる体制を整えなければなりません。そのため、開局時間外の連絡先を伝えたり、勤務表を渡したりする必要があります。
 
また、かかりつけ薬剤師が何らかの理由で不在となり、担当外の薬剤師が服薬指導を行う場合もあるでしょう。その際には、患者さんへかかりつけ薬剤師が不在であることを説明するとともに、かかりつけ薬剤師の連絡先を伝えることで、同じ薬局に所属する別の薬剤師が対応しても良いことになっています。
 
なお、かかりつけ薬剤師以外が服薬指導を行った場合は、薬剤服用歴管理指導料を算定します。

 
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ただし、2022年度診療報酬改定では、かかりつけ薬剤師と連携する他の薬剤師が対応した場合に算定する「服薬管理指導料の特例」が新設される予定です(中医協資料より)。かかりつけ薬剤師以外の薬剤師が服薬指導を行った場合は、算定要件や施設基準などを確認して算定するようにしましょう。

 

3-4.ブラウンバッグ運動への説明を強化する

患者さんが継続的に来局するための動機付けとして、ブラウンバッグ運動について説明することも定められています。ブラウンバッグ運動とは、服用薬やOTC、サプリメント、健康食品など患者さんの服薬状況を一元的に管理するとともに、残薬管理を行うプログラムです。

患者さんがブラウンバッグなどを用いて薬局に残薬を持参した場合は、残薬の整理などで薬学的管理を行います。場合によっては、患者さんの自宅に訪問し、服用状況を確認したうえで服用薬の整理を行うこととされています。

4.かかりつけ薬剤師指導料・かかりつけ薬剤師包括管理料と同時算定できるもの、できないもの

かかりつけ薬剤師指導料、またはかかりつけ薬剤師包括管理料を算定する場合、同時算定できる薬学管理料とできない薬学管理料があります。また、同じ月に算定できないものもあるため、算定時には注意が必要です。それぞれの条件を確認しておきましょう。

 

■かかりつけ薬剤師指導料・包括管理料算定時の薬学管理料の算定可否

算定回数 かかりつけ
薬剤師指導料
かかりつけ
薬剤師包括管理料
麻薬管理指導
加算
処方箋受付ごと ×
重複投薬・相互作用等防止加算 処方箋受付ごと 〇※ ×
特定薬剤管理
指導加算1
処方箋受付ごと ×
特定薬剤管理
指導加算2
月1回まで ×
乳幼児服薬
指導加算
処方箋受付ごと ×
吸入薬指導加算 3カ月に1回まで × ×
調剤後薬剤管理指導加算 月1回まで × ×
外来服薬支援料 月1回まで ×
服用薬剤調整
支援料1
月1回まで ×
服用薬剤調整
支援料2
3カ月に1回まで ×
服薬情報等
提供料2
月1回まで × ×
経管投薬支援料 1回まで

※重複投薬・相互作用等防止加算は2022年度診療報酬改定で算定不可となる予定です。
参照:厚生労働省保険局医療課医療指導監査室「保険調剤の理解のために(令和3年度)

 

また、かかりつけ薬剤師指導料、かかりつけ薬剤師包括管理料と同一月内に算定ができない薬学管理料は、服薬情報等提供1,2と在宅患者訪問薬剤管理指導料です。

ただし、在宅患者訪問薬剤管理指導料については、訪問薬剤管理指導の薬学的管理指導計画に係る別の疾患や負傷に関わる臨時処方を行った場合、同一月内に在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定していたとしても、かかりつけ薬剤師指導料またはかかりつけ薬剤師包括管理料を算定できます。

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5.患者さんが気軽に相談できる「かかりつけ薬剤師」になろう

かかりつけ薬剤師指導料やかかりつけ薬剤師包括管理料を算定するためには、費用がかかっても「この人に相談したい」と思われる薬剤師を目指す必要があります。そのため、かかりつけ薬剤師には、薬の知識だけでなくコミュニケーション能力や人間力を高める努力が求められるでしょう。困った時に相談したいと思ってもらえる薬剤師になることが、信頼されるかかりつけ薬剤師になるための第一歩。算定要件だけでなく、スキルアップを踏まえて取り組んでみてはいかがでしょうか。


執筆/秋谷侭美(あきや・ままみ)

薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。

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