薬剤師のスキルアップ 公開日:2022.07.21 薬剤師のスキルアップ

連携強化加算とは?算定要件と調剤報酬改定から考えるこれからの薬剤師像

文:秋谷侭美(薬剤師ライター)

国内の医療体制における課題として、超高齢社会への対応に加え、非常時でも医療資源を十分に活用できるシステムの構築などが挙げられています。2022年度診療報酬改定で新設された「連携強化加算」は、非常時に対応できる体制を整えた調剤薬局を評価するものです。今回は連携強化加算について詳しく解説するとともに、今後求められる薬剤師像・薬局像について考えます。

1.連携強化加算とは

連携強化加算は、2022年度の診療報酬改定で新設された調剤技術料です。地域支援体制加算を算定している薬局が要件を満たすことで、調剤基本料に2点加算できます。連携強化加算を算定する薬局は、災害や新興感染症の発生時などに、調剤薬局としての機能を十分に果たせるよう、体制を整えておかなければなりません。

 

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2.連携強化加算の算定要件

厚生労働省が公表している資料「令和4年度調剤報酬改定の概要(調剤)」によると、連携強化加算の算定要件は、「地域支援体制加算に該当する場合であって、別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険薬局において調剤を行った場合に所定点数を加算する」とされています。

 

連携強化加算を算定するには、地域支援体制加算の要件をクリアしていることが第一条件です。さらに連携強化加算の要件をクリアし、厚生局などに届出を出さなければなりません。地域支援体制加算も2022年度の改定で見直されているため、連携強化加算の算定を目指す調剤薬局は、まず地域支援体制加算の施設基準を確認し、連携強化加算の算定要件・施設基準をチェックする必要があるでしょう。

 

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3.連携強化加算の施設基準

連携強化加算の施設基準は以下の通りです。

 

<連携強化加算の施設基準>

1.他の保険薬局等との連携により非常時における対応につき必要な体制が整備されていること。

2.上記の連携に係る体制として、次に掲げる体制が整備されていること。
 (ア)災害や新興感染症の発生時等に、医薬品の供給や地域の衛生管理に係る対応等を行う体制を確保すること。
 (イ)都道府県等の行政機関、地域の医療機関若しくは薬局又は関係団体等と適切に連携するため、災害や新興感染症の発生時等における対応に係る地域の協議会又は研修等に積極的に参加するよう努めること。
 (ウ)災害や新興感染症の発生時等において対応可能な体制を確保していることについて、ホームページ等で広く周知していること。

3.災害や新興感染症の発生時等に、都道府県等から医薬品の供給等について協力の要請があった場合には、地域の関係機関と連携し、必要な対応を行うこと。

 

(厚生労働省 保険局 医療課「令和4年度調剤報酬改定の概要(調剤)」より)

 

前述した通り、連携強化加算は地域支援体制加算を算定している薬局で、さらに上記の施設基準をクリアしている場合に算定できます。

地域支援体制加算は、地域医療へ貢献するための体制や実績を評価されるものです。算定するためには、在宅医療へ参画し、地域の医療機関や調剤薬局などと連携体制を整える必要があります。さらに24時間体制調剤、在宅対応体制を整備するなど、さまざまな施設基準をクリアしなければなりません。

 
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連携強化加算の算定は、上記の条件に加え、災害や新興感染症の発生時などに、行政の要請に応じて連携に協力できるよう備えることも求められています。
 
近年の日本は、地震や台風などの大きな自然災害が毎年のように起こり、新型コロナウイルス感染症拡大も続いています。こうした非常事態に、行政と連携して協力できる医療機関や調剤薬局が求められています。

4.連携強化加算の届出方法

連携強化加算を算定するには、地方厚生局長などに届出を出す必要があります。提出するのは、届出書と添付書類(2種類)です。届出書には、今までに不正に届出を行ったり、診療報酬の請求など不正を認められたりしたことがないなどの確認項目が記載されており、すべて適合していることが届出を出す要件となります。
 
2種類の添付書類のうち、1つは、災害時や新興感染症の発生時に対応できる体制を整えているといった確認項目をチェックする書類。もう1つは、PCR等検査無料化事業に関わる検査実施事業者の登録が自治体などのホームページなどで公表されていることを確認する書類です。ホームページのコピーなどを準備し、添付しましょう。

5.連携強化加算の事務連絡で追加された要件

連携強化加算は、厚生労働省保険局医療課からの事務連絡という形で、4つの施設基準が示されました。資料をもとに、それぞれ詳しく見てみましょう。

 

5-1.非常時の対応

1つめは非常時の対応として「災害や新興感染症の発生時等に、医薬品の供給や地域の衛生管理に係る対応等を行う体制を確保すること」とされています。

災害や新興感染症の発生時などに医薬品の供給や人員派遣などを行い、医薬品の供給施設として機能を維持するための協力などを行うもので、例えば、地震などで避難所や救護所などに医療施設を設置する場合、医薬品を供給したり、管理したりするための人材が必要です。調剤薬局が協力体制を整えておくことで、必要な場所に必要な人材を派遣できます。災害時なども地域住民が安心して医療を受けられる体制を整えることが可能です。

 

また、適切な対応を行えるよう研修を行うなど、知識やスキルの習得や向上も求められています。災害時などは通常とは異なる状況・業務を行うことになるため、さまざまなシチュエーションを想定して、備えておく必要があるでしょう。起こってしまった後に対応を考えるのではなく、あらかじめ研修等で知識を得ることで、落ち着いて対応できるのではないでしょうか。
 
日本災害医学会では、災害医療認定薬剤師認定制度を設けており、知識習得のために資格取得を目指すのも一案です。

 
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5-2.研修等の受講頻度

2つめは「都道府県等の行政機関、地域の医療機関若しくは薬局又は関係団体等と適切に連携するため、災害や新興感染症の発生時等における対応に係る地域の協議会又は研修等に積極的に参加するよう努めること」とあります。

年1回程度の頻度で、研修などに定期的に参加できるよう計画を立て、必要に応じて地域の医療機関や保険薬局などと情報共有することが大切です。地域の医療機関や調剤薬局と連携して、研修内容などを共有し、新しい情報を得られる環境を整えておきましょう。
 
また、日頃から地域の医療機関などとコミュニケーションをとることは、非常時にもスムーズに連携できる体制作りに役立ちます。災害時の混乱が少しでも緩和できるよう、地域の協力体制を構築しておくことが重要です。

 

5-3.地域住民への周知活動

3つめは周知活動について、「災害や新興感染症の発生時等において対応可能な体制を確保していることについて、ホームページ等で広く周知していること」とされています。

災害や新興感染症の発生時などに対応できる体制を整えていることを薬局内に掲示したり、ホームページで公表したりするように求められています。加えて、自治体や薬剤師会のホームページなどでも公表し、広く周知されていることが望ましいとされています。

 

このことから、地域の医療機関や調剤薬局と連携をとるだけではなく、地域住民に周知しており、非常時は調剤薬局に相談できると認知されるところまで徹底することが、非常時に対応できる体制作りといえます。

 

5-4.検査実施事業者の登録と実施

4つめは、「災害や新興感染症の発生時等に、都道府県等から医薬品の供給等について協力の要請があった場合には、地域の関係機関と連携し、必要な対応を行うこと」とあります。
 
PCR等検査無料化事業に係る検査実施事業者として登録・実施をしていること。さらに、自治体等のホームページ等において広く周知されていることが要件となっています。
 
診療報酬改定の施行前日に発表されたこともあり、この追加要件に驚き、自治体のホームページで検査実施事業者の募集を確認した調剤薬局も少なくないのではないでしょうか。
 
4月当初は、募集を中止している自治体もあり、しばらく算定できない現実に直面した調剤薬局もあることでしょう。徐々に募集を再開している自治体も見られますが、検査実施事業者の募集期間は自治体によって異なります。タイミングによっては申請できないこともあるため、登録を考える調剤薬局は、こまめに自治体のホームページを確認しましょう。
 
また、事務連絡には「本取扱いについては、令和4年4月から当面の間の取扱いを示すものであり、今後、見直す可能性があることに留意すること」とされています。施設要件が変更される可能性が考えられるため、今後も行政からの発表に注目しておきましょう。

6.連携強化加算で薬剤師が求められることを読み解く

新型コロナウイルス感染症の流行で、医療体制が充実しているとされる日本でも医療崩壊が起こる可能性が十分にあることがわかりました。調剤薬局は医療資源を最大限活用して地域住民が少しでも安心して過ごせるよう、体制を整えることが求められています。また、薬剤師は今まで以上に非常時に対応できる知識とスキルを身につけることが望まれています。

加えて、連携強化加算の要件にある「公表・周知」といった点から、「調剤薬局は薬をもらう場所」というイメージを変える動きが感じられます。
 
緊急時において、医療機関は混雑しがちであり、多くの人が一斉に集まると正常に機能しなくなってしまう恐れがあります。その点、調剤薬局は、医療機関に比べて軒数が多く、地域住民が立ち寄りやすい環境にあります。緊急時には、最初に薬局を訪ねるように認知されれば、人の流れが分散され混乱を最小限に抑えることも可能でしょう。連携強化加算は、薬局の在り方が変わることも期待されているのではないでしょうか。

7.連携強化加算から考えられる薬剤師像・薬局像とは

連携強化加算では、非常時に調剤薬局が地域医療に貢献できるよう他薬局や多職種と連携し、薬剤師や調剤薬局が職能を十分に発揮することが求められています。さらに、今後の薬剤師像・薬局像を示したものと受け取ることもできるでしょう。地域医療や地域住民とどう向き合っていくのかを今一度考えるタイミングなのかもしれません。

 
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執筆/秋谷侭美(あきや・ままみ)

薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。

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