薬剤師のスキルアップ 公開日:2022.02.24更新日:2022.07.25 薬剤師のスキルアップ

在宅患者訪問薬剤管理指導料とは?算定要件や居宅療養管理指導との違いを解説 文:秋谷侭美(薬剤師ライター)

全国的に高齢化が進むなか、薬剤師による在宅医療への介入が求められています。2020年の診療報酬改定では、地域医療算定加算の算定条件である在宅患者訪問薬剤管理指導料の実施回数が、1回から12回に増えました。今回は、在宅患者訪問薬剤管理指導料について解説するとともに、居宅療養管理指導との違いや薬剤師による在宅医療の実施状況についてお伝えします。

1.在宅患者訪問薬剤管理指導料とは

在宅患者訪問薬剤管理指導料とは、病院へ定期的に通うのが難しく、在宅で療養している患者さんに対して、薬剤師が医師の指示の下、患者さんの自宅に訪問して薬歴管理や服薬指導などを行った時に算定できる薬学管理料です。
 
在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定するには、薬学的管理指導計画の作成や医師への情報提供を文書で行う必要があります。また、2020年の診療報酬改定で在宅医療を受ける患者さんに対しても、オンラインによる服薬指導が可能になりました
 
「在宅患者オンライン服薬指導料」は、医薬品医療機器等法が改正され、情報通信機器を使ったオンライン服薬指導が例外として認められたことをきっかけに新設されました。

在宅時医学総合管理料に規定する訪問診療を実施している患者さんに対してオンライン服薬指導を行った場合、月1回に限り算定できます。在宅患者訪問薬剤管理指導料を月1回算定していることが条件となっており、オンライン服薬指導のみの介入は認められていません
 
その他、在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料は算定不可や、保険薬剤師1人につき在宅患者訪問薬剤管理指導料1~3と合わせて週40回に限り、週10回まで算定できるなどの規定があります。


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2.在宅患者訪問薬剤管理指導料の算定要件

在宅患者訪問薬剤管理指導料は、地方厚生局長へ届け出ることで算定できます。また、同意書の作成義務はありません。その他の算定要件についてお伝えします。

 

2-1.診療報酬点数

在宅患者訪問薬剤管理指導料は、単一建物の患者数によって診療報酬点数が異なります。

 

<在宅患者訪問薬剤管理指導料の診療報酬点数>
① 単一建物患者 1人 650点
② 単一建物患者 2~9人 320点
③ 単一建物患者 10人以上(①および②以外) 290点

調剤報酬点数表[令和2年4月1日施行])より

 

いずれの場合も、患者さん1人あたり月4回(末期の悪性腫瘍の患者等の場合は週2回かつ月8回)まで、保険薬剤師1人につき週40回までが限度です。

末期の悪性腫瘍の患者さんや中心静脈栄養法の対象となる患者さんを除いて、月2回以上算定する場合は、算定する日の間隔を6日以上空けなければなりません

 

2-2.単一建物患者の考え方

例えば、夫婦で在宅医療を受けているケースでは、650点を算定するのか、320点を算定するのか悩むかもしれません。在宅患者訪問薬剤管理指導料では、以下の3パターンにおいて「単一建物患者1人」として650点が算定できます。

 

・同居する同一世帯に指導を行う患者さんが2人以上いる
・患者数が建築物の戸数の10%以下
・建築物の戸数が20戸未満で、指導を行う患者が2人以下

(厚生労働省「調剤報酬点数表に関する事項」より)

 

なお、認知症対応型共同生活介護事業所については、それぞれのユニットにおいて、在宅患者訪問管理指導料を算定する人数を単一建物患者の人数とみなすことができます。
 
なおユニットとは、複数の個室や居間、食堂、台所などで構成されている生活空間のことです。認知症対応型共同生活介護事業所については1ユニットの人数が5~9人とされています(厚生労働省 介護サービス情報公表システムより)。

 

2-3.対象患者さんの要件

対象となるのは、在宅で療養を行っている患者さんです。つまり、保険医療機関または介護老人保健施設で療養を行っている患者さん以外のケースを指します。医師または薬剤師が在籍する病院や診療所、施設などに入院・入所している場合、または他の医療機関や保険薬局の薬剤師が訪問薬剤管理指導を行っている場合は対象となりません
 
ただし、「要介護被保険者等である患者について療養に要する費用の額を算定できる場合」、「特別養護老人ホーム等における療養の給付の取扱いについて」等に規定する場合を除きます。


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2-4.薬学的管理指導計画書の作成と見直し

算定には、薬学的管理指導計画書を作成する必要があります。これは、処方医からの情報提供をもとに、処方医や他の医療関係職種と情報共有を行いながら作成する指導計画書です。患者さんの特性や処方薬剤などから、薬剤の管理方法や副作用・相互作用などを確認したうえで、実施すべき指導内容や訪問回数、訪問間隔などを記載します。

薬学的管理指導計画書は、患者さんの自宅へ訪問する前の策定を基本とし、処方薬剤の変更や他職種からの情報提供などがあった場合に見直します。変更等がない場合でも少なくとも月1回は見直し、常に患者さんに適した服薬管理ができるように努めましょう。

 

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3.在宅患者訪問薬剤管理指導料が算定できないケース

上記のような算定要件を満たしているように見えても、在宅患者訪問薬剤管理指導料が算定できないケースがあります。詳しく見ていきましょう。

 

3-1.患者さんの身体機能

在宅患者訪問薬剤管理指導料は、定期的に訪問して薬剤管理を行った場合に算定できるものです。そのため、継続的な支援が必要ない患者さんや通院できる患者さんに対しては、安易に算定してはいけないことになっています。例えば、1人で歩くことが可能な患者さんや、家族やヘルパーなどのサポートなしに来局できる患者さんは対象にならないでしょう。

 

3-2.薬学管理料の同時算定

在宅患者訪問薬剤管理指導料は、他の薬学管理料との同時算定について規定があります。
以下の薬学管理料は同一月に算定できません。

 

・外来服薬支援料
・服薬情報等提供料


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なお、以下の薬学管理料は、患者さんの薬学的管理指導計画書に関わる疾患とは別の疾患、またはけがなど臨時の処方箋による調剤を行った場合は同一月でも算定できます

 

・薬剤服用歴管理指導料
・かかりつけ薬剤師指導料
・かかりつけ薬剤師包括管理料

 

在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定する時は、上記の薬学管理料についての確認が必要です。

 

3-3.患者さんの自宅と調剤薬局の距離

患者さんの自宅と調剤薬局の距離が16キロメートル以上離れている場合は、16キロメートル圏内に在宅患者訪問薬剤管理指導を行うことを届け出ている薬局が存在するかどうかを確認しなければなりません。自身の薬局より近い場所に在宅医療を行っている調剤薬局がある場合、医師の指示がなければ、在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定することができず、自費となります


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4.在宅患者訪問薬剤管理指導料と居宅療養管理指導の違い

在宅医療を行ううえで、在宅患者訪問薬剤管理指導料と居宅療養管理指導の違いについて理解しておく必要があります。それぞれの違いについて確認しておきましょう。

 

4-1.医療保険と介護保険

在宅患者訪問薬剤管理指導料は医療保険に、居宅療養管理指導は介護保険に分類されます。在宅療養を行っている患者さんに対して薬剤管理指導を行った場合、患者さんが要介護または要支援の認定を受けていると介護保険で算定します。一方、認定を受けていない場合には医療保険で算定しなければなりません。
 
また、介護保険のなかでも、介護認定が要介護または要支援によっても算定項目が異なります。要介護認定を受けている患者さんは「居宅療養管理指導」を算定し、要支援認定を受けている患者さんは「介護予防居宅療養管理指導」を算定します(介護保険法第8条より)。

つまり、要介護認定は居宅療養管理指導、要支援認定は介護予防居宅療養管理指導を算定し、いずれの認定も受けていない患者さんは在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定することになります。

 

4-2.居宅療養管理指導の算定単位について

居宅療養管理指導または介護予防居宅療養管理指導を行うと、以下の単位を算定できます。

 

① 病院または診療所の薬剤師
・単一建物居住者が1人 ……565単位
・単一建物居住者が2~9人 ……416単位
・単一建物居住者が10人以上 ……379単位

② 薬局の薬剤師
・単一建物居住者が1人 …… 517単位
・単一建物居住者が2~9人 ……378単位
・単一建物居住者が10人以上 ……341単位

(厚生労働省「令和3年度介護報酬改定における改定事項について)」より)

 

在宅患者オンライン服薬指導料が新設されたことから、2021年の介護報酬改定でも薬局の薬剤師に限り、情報通信機器を使用した服薬指導を行うことで居宅療養管理指導を算定できるようになりました。在宅患者オンライン服薬指導と同様の算定要件で、月1回まで1回につき45単位が算定できます(厚生労働省「令和3年度介護報酬改定における改定事項について」より)。


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5.薬剤師に期待される在宅医療への介入

2020年の診療報酬改定では、地域支援体制加算の算定要件である在宅患者訪問薬剤管理指導料の実施回数が12回以上に増え、また、在宅患者緊急訪問薬剤師管理指導料の見直しなどもありました。在宅患者さんへのオンライン服薬指導に対しても指導料が新設されています。高齢化が広がるなか、今後は、今以上に薬剤師が在宅医療へ介入することが求められています。

近年の在宅患者訪問薬剤管理指導の実施状況は、増加傾向にあります。厚生労働省の資料「居宅療養管理指導の報酬・基準について(検討の方向性)」によると、薬局における在宅患者訪問薬剤管理指導料の算定回数は、2014年、2015年が15万回、2016年が20万回、2017年が24万回とほぼ横ばいです。しかし、居宅療養管理指導に関わる算定回数は、2014年が545万回、2015年が641万回、2016年が771万回、2017年が908万回と、大幅に増加しています。
 
2001年時の在宅患者訪問薬剤管理指導料は42万回、居宅療養管理指導が65万回であることを考慮すると、16年間で薬剤師による在宅医療の介入は大幅に進んでいるといえるでしょう。
 
内閣府のホームページによると、75歳以上の人口は2054年まで増加傾向が続くものと見込まれているようです。薬剤師による在宅医療への介入は、今後も必要とされると予想されます。


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6.在宅医療における薬剤師の役割

在宅医療に関する知識や経験は、これからの薬剤師が身につけておきたいスキルです。スキルアップのためにも、地域ごとに必要とされる医療の傾向について知っておく必要があるでしょう。加えて、在宅患者訪問薬剤管理指導料などの在宅医療に関わる診療報酬や介護報酬の知識も大切です。積極的に地域医療に貢献し、高齢者が住み慣れた地域で自立した生活を送れるようサポートできる薬剤師を目指しましょう。

 
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執筆/秋谷侭美(あきや・ままみ)

薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。

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