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50代薬剤師でも転職できる? 必要なスキルと転職を成功させるコツ 文:松岡マイ(薬剤師ライター、研修認定薬剤師)

過去の経験を活かせる職場をさがし、柔軟に考えることが大事

50代は、子育てなどのライフイベントが落ち着き、自分の体力に沿うように働き方を見直したいと考える薬剤師も多いでしょう。ただ、経験は充分にあっても、50代の薬剤師が転職できるのかどうか不安に感じるかもしれません。今回は、50代薬剤師が転職を成功させるために必要なスキルや経験について、具体例を交えながら紹介します。

1. 50代薬剤師の転職理由

50代は体力の衰えを感じやすく、これまでと同様の働き方がつらく感じる時期でもあります。またライフイベントが落ち着き、定年後の生き方を考え始める時期でもあることから、自身にとって有効な働き方を考える機会が増えるかもしれません。50代薬剤師はいったいどのような理由で転職を検討するのでしょうか。

 

1-1. 子育てが落ち着いた

50代の薬剤師は、子どもが成長し独立することで、自身の時間に余裕ができたと感じる方が多いのではないでしょうか。そんなライフスタイルの変化とともに、働き方を見直す機会が増えるでしょう。とくに薬剤師の約6割が女性ですから、それまで結婚、出産、子育てなどをきっかけにパート勤務や時短勤務を選択してきた方も多いと思います。ライフスタイルに合わせて働く時間をおさえてきた薬剤師が、正社員を希望して転職を考えるケースはよく聞かれます。

 

1-2. 定年後も働き続けるため

一般企業や公務員として働いている薬剤師の場合、定年後も継続して働ける職場への転職を希望する方が多いようです。50代のうちから余裕をもって転職活動を始めることで、選択肢も広がります。実際に筆者が勤務していた薬局でも、製薬会社から転職してきた50代の薬剤師がいました。このように定年後のライフスタイルや収入のことを考え、長く働き続けられる職場を探したい人も多いようです。

 

1-3. 体力面の負担を減らすため

体力の衰えを感じやすい50代では、肉体面での負担がきつくなってくる年代です。長時間労働や夜勤、24時間体制の医療現場での勤務などの働き方を続けることが難しいと感じるようになるのではないでしょうか。残業や夜勤のない職場への転職やパート勤務など、勤務先の業態や勤務体系を見直すタイミングでもあります。

2. 50代薬剤師が転職市場で求められるスキル・経験

薬剤師は国家資格を備えた専門職であり、また全国的に人材難に陥っていることから転職先を見つけやすい職種です。しかし、50代という年齢や体力面などで勤務環境に限界があることから、転職できるのかと懸念もあるのではないでしょうか。ここでは、50代薬剤師が転職を成功させるために必要なスキルや経験を確認してみましょう。

 

2-1. 50代薬剤師に最低限必要なスキル・経験

50代の薬剤師にはどのようなことが期待されるのでしょうか? まずは、最低限備えていたいスキルや経験を確認しましょう。

 

・調剤経験

50代薬剤師の転職では、求人数が比較的多い調剤薬局やドラッグストアが狙いやすい業態です。そのため、基本的な調剤業務やピッキング作業の経験は必須といえます。これまでMRや研究職などに従事し、調剤経験がない場合には、転職時にその旨を伝えて研修がある職場を選ぶとよいでしょう。

 

・管理薬剤師など役職の経験

50代薬剤師には管理能力やマネジメント経験も期待されます。管理薬剤師など、他のスタッフや職員のリーダーとなった経験があると、応募できる転職先も広がります。さらに、管理職として転職すれば年収アップも期待できます。

 

・PCや機器類の基本的な操作

年齢が上がるとともに、新たな機器の操作方法を覚えるのには時間がかかります。近年、調剤薬局では電子化が進み、電子薬歴や分包機などの電子機器や、水剤分注機や調剤監査システムなどが導入されている薬局もあります。これらの機器を扱った経験があり、対応に慣れていることは転職時のアピール材料になります。もしも電子機器類の操作に慣れていない場合は、研修のある職場に応募するといった工夫が必要です。

 

2-2. 50代薬剤師が優遇されるスキル・経験

上記で紹介したのは「最低限」必要なスキルですが、ここではさらに踏み込み、「持っているとより優遇されるスキルや経験」を見ていきましょう。

 

・研修認定薬剤師や認定実務実習指導薬剤師などの資格

50代薬剤師には「若い人材を育てられる」スキルが歓迎されます。「研修認定薬剤師」のように、新人教育に携わることができる資格を保有していると、転職先の大きな強みになります。資格は、学ぶ姿勢を見る基準のひとつともいえるため、機会があれば取得しておくことをおすすめします。また「認定実務実習指導薬剤師」の資格を保有していると、他の薬剤師にできない業務ができるため、アピールポイントになります。

 

・専門的な知識

小児科や産婦人科といった専門科の門前薬局などで働いた経験があると、転職先でも重宝される可能性が高まります。そのほか、「漢方薬・生薬認定薬剤師」や「在宅療養認定薬剤師」など、調剤薬局やドラッグストアなどで生かせる専門的な資格も強みとなります。

 

・分包機・電子薬歴などのスムーズな操作

転職経験のある50代薬剤師から、「分包機・電子薬歴などの機器類の操作」に最初につまずいたという話をよく聞きます。分包機・電子薬歴などの基本的な操作ができることは安心材料となりますが、さらにスムーズに取り扱いができるのは大きな強みといえます。電子機器を使用する業務を迅速かつ円滑に行える薬剤師は転職先でも優遇されるでしょう。

3. 50代薬剤師の転職成功ポイント

続いて、50代薬剤師が転職に成功した具体例を紹介しましょう。実際に転職を成功させた薬剤師たちの経験談をもとに、転職を有利に進めるポイントをまとめました。

 

3-1. 過去の知識・経験が活かせる職場を選ぶ

50代薬剤師が転職をする際、若い世代と最も差をつけられるのは「スキルや経験値」ではないでしょうか。専門科目や在宅医療などの現場経験や知識は、年齢を重ねるほどに磨かれていくものです。これまで身につけたスキルを活かせる職場への転職なら、待遇や役職が上がる可能性もあります。筆者の知り合いの50代の薬剤師も、漢方薬についての知識を活かし、漢方専門薬剤師として転職を成功させました。

 

3-2. 雇用形態にこだわらない

50代からの転職は、若い年代の薬剤師よりも選択肢が狭まります。そのため、キャリアや転職先にできるだけ柔軟な選択肢を持つことが大切です。「正社員」に対する特別なこだわりがないのであれば、契約社員やパート、アルバイトなどの勤務形態も視野に入れて転職先候補の幅を広げると良いでしょう。

 

3-3. 謙虚な姿勢を忘れない

転職先では管理薬剤師が20代~30代である可能性もあります。年下の上司のもとで働くことに、プライドが邪魔をして抵抗を感じる人もいるかもしれません。ですが、どんな環境であれ、謙虚な姿勢や学ぶ意欲を忘れてはなりません。どんなに知識やスキルがあったとしても、常に初心にかえって対応できる柔軟性が大切です。年齢を重ねても学び続ける姿勢をアピールするとともに、業務に対して真摯に取り組むモチベーションを保ちましょう。

4. 50代薬剤師の転職失敗例・注意すべきポイント

上記で紹介したように転職に成功する薬剤師がいる一方で、失敗してしまう薬剤師もいます。転職に失敗してしまう50代薬剤師には特徴がありますので、注意するべき3つのポイントを見ていきましょう。

 

4-1. 役職や収入へのこだわりが強い

「管理職につきたい」「正社員として働きたい」「ある程度満足できる収入も欲しい」など、理想の働き方を求めすぎてしまうと、転職先の選択肢が少なくなります。こだわりを持つことは大切ですが、転職活動を現実的に進めるためにも「どこまでなら譲歩できるか?」を突き詰めて考えることが大切です。自分が求める条件を整理しきれない中で、短期間で転職しようと求める条件とは異なる転職先へ決めてしまうと、モチベーションが低下する要因にもなります。まずは、勤務時間や年収など、求める条件に優先順位をつけ、自分のなかで折り合いをつけてから、焦らずに転職活動を行いましょう。

 

4-2. 未経験の職場への転職

筆者の知り合いの50代薬剤師のなかに、未経験で調剤薬局に転職して不満を感じている人がいました。薬剤のピッキングに必要な棚の把握や電子機器類の操作といった調剤業務は、研修を受けても、すぐにこなせるようになるとはかぎりません。過去の経験や慣れに左右されるため、新しい仕事内容や環境には一定の時間が必要であることを理解したうえで転職活動を進めましょう。もちろん、新しいことに挑戦したいという意欲はすばらしいものですが、未経験の仕事にはこうした困難がつきまといます。なるべくスムーズに業務に慣れたい方はこれまでの経験を活かせる転職先を選択することをおすすめします。

 

4-3. 年下の上司との人間関係

上述したように、50代での転職となると年下の上司のもとに配属される可能性が高くなります。上司だけでなく、同僚も自分より若い世代が多いかもしれません。年下の先輩からの指示や指導に、プライドが邪魔をして不満を感じてしまえば、転職先での勤務も長続きしないでしょう。どんな環境であっても、コミュニケーションを円滑にし、素直に対応できる柔軟さが求められます。

5. 50代薬剤師の平均年収はいくら?

50代で転職を考える理由はさまざまですが、年収アップも理由のひとつです。50代の薬剤師の平均年収は他の職種と比べて高いのでしょうか、それとも低いのでしょうか? 500人の現役薬剤師に聞いたマイナビ薬剤師の調査国税庁「民間給与実態統計調査」(平成30年分)のデータをもとに比較してみましょう。

 

両者のデータを比較すると、男女ともに50代の薬剤師は他の職種よりも平均年収が高い傾向にあります。とくに女性の平均年収の差は顕著で、2倍近く差が開いています。薬剤師は専門職であるため、出産・子育てを経ても正社員として復職しやすいことに加え、パート勤務やアルバイトであっても他職種より高水準の時給を得られていることが影響していると考えられます。

 

■50代薬剤師と他職種の平均年収比較

  男性 女性
50代薬剤師 約711万円 約595万円
50代労働者全体 約684万円 約310万円

(薬剤師の平均年収はマイナビ薬剤師の調査を参照、労働者全体の平均年収は国税庁「民間給与実態統計調査」平成30年を参照)

 

6. 50代薬剤師が年収を上げるコツ

それでは、50代の薬剤師が年収を上げる転職をするためにはどのような条件が必要でしょうか? 以下のようなポイントを意識して応募先を検討してみてはいかがでしょうか。

 

・管理職として転職し、役職手当による年収アップを見込む

・経験を活かせる分野で、年収の高い職種に絞って転職する

・長く働ける職場を選び、勤続年数を伸ばすことによる年収アップを見込む

 

すでに解説したとおり、50代薬剤師は管理職経験が重視される傾向にあります。管理職経験がある場合は自身の経験を活かして役職につき手当を増やすと年収アップが期待できます。また、年収が高い傾向にある調剤薬局やドラッグストアなどの職種に絞るのもひとつの手です。専門科目の知識や取得資格などがあればアピールするとよいでしょう

 

また、一般的に勤続年数が長いほど年収も高くなる傾向があるため、昇給率の良い転職先で勤続年数を伸ばすことができれば生涯年収の増加につながります。定年後も長く働き続けたい人は、昇給率も確認することをおすすめします。直接応募先に聞きづらい場合は、転職エージェントを介して確認するという方法もあります。

7. 人生経験を活かしてより良い働き方をめざそう

50代薬剤師の転職では、謙虚な姿勢が大切です。これまでの知識や経験を活かすことは大切ですが、業務の進め方や過去の職場の慣習などに固執してしまうと、転職先でも不満を感じてしまい自分自身が苦しむことになります。年下の上司や同僚との関係も気楽にとらえながら、コミュニケーションを楽しむことが大切です。50代ならでは人生経験を活かしながら、より良い働き方となるような職場への転職を成功させましょう!


執筆/松岡マイ

薬剤師。研修認定薬剤師。京都薬科大学卒業。地元のドラッグストア就職後、ストレス性の顔面神経麻痺となる。その後、自身の働き方について考え直し、派遣薬剤師兼ライターとして、沖縄や北海道の調剤薬局・ドラッグストアなど全国各地で働く。内科、整形、耳鼻咽喉科、総合病院の門前薬局などで働いた経験や、自身の働き方・転職について記事を執筆。趣味は旅行で、トラベルライターとしても活動。

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