薬剤師として働きながら、育児や家庭も大事にしたい。ワークライフバランスを重視する薬剤師の働き方とは? 現役ママ薬剤師蓬原菜々さんが復職や働き方に関する本音を語ります!
Vol.2
アメリカの薬局事情「リフィル処方せん」とは?
目次
ピンチ! 娘の咳喘息発作
出産を経て外資系製薬会社を退職した蓬原菜々さん。
薬剤師のキャリアを一時中断し、夫の転勤で幼子を連れて米国メリーランド州で暮らすことに…。
コホッコホッ、ゴホンゴホン
(やがて)おぇ~、げぇげぇ…
アメリカに着いて2週間――。
ある夜、風邪をこじらせた娘が激しく咳き込み、嘔吐しはじめました。
こんなときに限って、夫は出張で不在。誰も知り合いがいない地で、咳で苦しむ娘を見ながら「お願いベッドでは吐かないで…」と、どこか冷静な自分と、じりじりと更けていく夜に焦る自分がいるのでした。
不安な一夜が明け、翌朝娘を連れて予約不要で診てもらえるクリニック、ライトタイムメディカルに駆け込みました。 診察を終え、無事に薬が処方されて、ホッ。
娘の咳喘息の発作は治まったけれど、「もう二度とこんな緊急事態はイヤ!」
「発作の予防薬が欲しい…」
こうしてアメリカの薬局とのお付き合いが始まりました。
薬のお替りが自動!?アメリカ式薬局
娘を連れて小児科を受診してリフィル処方せんをもらい、咳喘息の発作に備えて薬を受け取ることになりました。
驚いたのは、このリフィル処方せん。リフィルとは、詰め替え・差し替えのような意味合いで、1枚の処方せんで、医師の指定した回数までは診察なしで、薬局から薬を受け取れるものなのです。
薬が切れるころに薬局から自動音声で電話がかかってきて、「次の薬の用意ができました」と、機械の音声が流れます。
毎回処方せんは必要ないなんて、日本では考えられません。薬のおかわりが自動で用意されて出てくるような感じなのです。薬局へ薬を取に行くと、紙袋に入った毎度おなじみの薬が棚に用意されていて「ハイどうぞ」と薬剤師さんから渡されるのでした。
予防接種ついでに打ってく?
アメリカの薬局でさらに驚いたのが、予防接種。
アメリカでは、インフルエンザの予防接種がとても身近。「フルショット」と呼ばれ、病院のほか、薬局やスーパーマーケットの薬販売コーナーでも接種できるのです。
娘が風邪で医者にかかったとき、「風邪は心配いらないよ。じゃあ今日はついでにフルショットしてく?」まるで“おまけ”のような気軽な感じで予防接種を提案されるのでした。
「病気で受診している子供に予防接種を提案するの?」と疑問に思いながらも、また病院に来る煩わしさを思った母は、「はいお願いします」と、即決。
別室に移動し、「じゃあ、打ちますね」と、看護師さんがひと刺し。
注射はあっけなく終了したのでした。
当然娘は「風邪できたのになんで注射? ひどい! イヤ~!!」と、怒り心頭でした。
注射をするのが医師ではなく看護師なのも驚きましたが、娘の腕にまるでダーツを突き刺すように注射針をブスッと垂直に…。看護師の友人いわく、「日本ではもうやらない方法だよね」。
アメリカの医療機関では本当に驚きの連続でした。
米国生活終了。復職への不安
アメリカでは、娘の喘息発作にはじまり、子供たちの送迎、学校のボランティア活動…。車社会のアメリカでは運転できないと話にならないため、苦労して運転免許を取得…と思ったら後続車に突っ込まれて事故に巻き込まれる始末。
あまりに目まぐるしい日々で、当時は薬剤師として働きたいという余裕がありませんでした。
そんな私が、復職を考えはじめたのはアメリカから帰国後、1年を過ぎたころ。
40歳という年齢も気がかりでした。
ママ薬剤師菜々さんの本音川柳
「お薬の おかわり 自動のアメリカ式」
電話で薬の用意が告げられるリフィル処方せん、薬局やスーパーで予防接種ができるなど、アメリカの医療事情を目の当たりにし、驚きの連続の菜々さんでした。次回はママ薬剤師の「復職への道」をお届け予定。お楽しみに!