薬学生のためのお役立ちコンテンツ 公開日:2024.04.02 薬学生のためのお役立ちコンテンツ

薬剤師になるには?資格の取り方・なるための方法・仕事内容を解説

文:篠原奨規(薬剤師ライター)

薬剤師は医薬品に関する専門的な知識を有していることが認められた国家資格であり、薬剤師になるには国家試験に合格する必要があります。しかし、薬剤師国家試験は受験に条件があり、正しく理解しておかないと学校選びを誤ってしまうかもしれません。今回は、薬剤師になるために知っておきたい資格取得までの流れや、大学選びの注意点、薬剤師国家試験の合格率などについて解説します。また、薬剤師を目指す中学生や高校生が今のうちからできることもお伝えします。

1.薬剤師とは?

薬剤師とは、医薬品に関する専門知識を生かして、薬の調剤(適切な量や内容の医薬品を準備する作業)や管理、患者さんへ薬の説明を行う薬学の専門家です。
 
病院や薬局で行う「調剤業務」が主な業務ですが、処方箋を持参した患者さんの薬を確認・準備して渡すというだけではありません。
 
医師が発行した処方箋を精査し、併用薬や副作用歴などの患者さんの情報をもとに処方内容を確認した上で、問題があれば医師に問い合わせ(疑義照会)を行います。
 
処方内容に問題がなければ、処方箋通りに薬を調合し、患者さんの状態を確認したり、薬の説明をしたりする服薬指導を行います。
 
また、勤務先の薬局によっては、地域に貢献する活動として、健康講座を開催することもあります。その他、かかりつけ薬剤師として24時間体制で患者さんの支援を行うこともあるでしょう。
 
参照:薬剤師|厚生労働省職業情報提供サイト job tag(日本版O-NET)

2.薬剤師になるには

薬剤師になるには、薬剤師国家試験に合格し、薬剤師資格を取得する必要があります。国家試験を受けるには、薬学の正規の課程を修めなければなりません。そのため、薬剤師になりたい場合、薬学部がある大学に進学する必要があります。
 
参照:薬剤師国家試験|厚生労働省
 
つまり、薬剤師を目指す場合、大学選びから薬剤師への道が始まるのです。続いて、薬学部入学から薬剤師資格を取得するまでの流れを解説します。

 

2-1.薬学部がある大学に入学する

2023年度時点で、日本国内には77大学・79学部の薬学部があります(国公立:19大学・19学部 私立:58大学・60学部)。一般入試の学力検査で出題される科目は、大学によって違いはあるものの、主に数学や化学、生物、物理、英語などです。
 
ただし、「大学入学共通テスト」を利用して受験する場合には、国語や地歴・公民など幅広く勉強しておく必要があるでしょう。また、一部の大学では一般入試以外に、総合型選抜(AO入試)や推薦型入試を設けているところもあります。

 

2-2.6年制の薬学部を卒業する

2006年度より学校教育法が改正され、6年制薬学部を卒業することが薬剤師国家試験の受験要件となりました。薬学部には4年制と6年制がありますが、薬剤師になるには原則として6年制の薬学部を卒業する必要があります
 
4年制の薬学部では、主に薬の研究や開発について学び、卒業後は製薬会社に就職するケースがあります。しかし、4年制では薬剤師国家試験の受験条件を満たすことはできないため、薬剤師を目指す場合には注意が必要です。
 
続いて、6年制の大学で学ぶことや、試験までの一般的な流れを見てみましょう。

 

2-2-1. 1~3年次:基礎知識を学ぶ

1~2年次には薬学を理解するための基礎知識を学びます。化学や生物など薬の仕組みや人体の構造について理解を深めながら、病院や薬局、研究所への早期体験実習を通じて、医療従事者としての心構えを身に付けます。
 
また、3年次になると免疫学や薬理学など専門分野の講義が増え、より実践的な知識を身に付けるための実習型講義も始まります。

 

2-2-2. 4年次:薬学共用試験を受ける

4年次の後期には薬学共用試験を受験します。薬学共用試験に合格しないと、5年次の実務実習を行うことができません。
 
参照:薬学共用試験について|薬学共用試験センター
 
薬学共用試験には、知識を評価する客観試験CBTと、技能や態度を評価するOSCE(客観的臨床能力試験)の2種類があり、試験に合格し、薬学に関する知識や技能が一定水準以上であることが認められると、実務実習に進めます。

 

2-2-3. 5年次:実務実習を行う

5年次になると、病院と薬局で、それぞれ11週間ずつの実務実習を行います。資格取得後、薬剤師としてすぐに活躍できるように、実務実習は参加・体験型の実習となっています。
 
参照:病院・薬局実務実習調整機構(支部)の役割|薬学教育協議会
 
実務実習指導薬剤師のもと、医療現場で調剤業務や服薬指導を体験し、薬剤師としての知識や態度、技術を身に付けます。

 

2-2-4. 6年次:卒論執筆・国家試験対策を行う

6年次には、卒業に向けて配属された研究室で卒論を作成します。同時に毎年2月頃に実施される薬剤師国家試験へ向けて、試験対策を行う必要があります
 
大学によっては、国家試験対策に特化した授業科目を開講していたり、国家試験の過去問題の解答や解説書を用意していたりします。

 
🔽 薬剤師国家試験の勉強法を解説した記事はこちら

 

2-3.薬剤師国家試験に合格する

薬剤師になるための最終関門となるのが、国家試験です。薬学部を卒業した上で薬剤師国家試験に合格する必要があります。続いて、薬剤師国家試験の概要や合格率について解説します。

 

2-3-1. 薬剤師国家試験とは?

薬剤師国家試験は、必須問題90問、一般問題255問(薬学理論問題105問、薬学実践問題150問)の計345問で構成される選択式の試験です。
 
「物理・化学・生物」「衛生」「薬理」「薬剤」「病態・薬物治療」「法規・制度・倫理」「実務」の7科目が出題されます。年に一度、例年2月に行われ、9都道府県(北海道、宮城県、東京都、石川県、愛知県、大阪府、広島県、徳島県、福岡県)に試験会場が設置されます。

 
🔽 2024年の第109回薬剤師国家試験について解説した記事はこちら

 

2-3-2. 薬剤師国家資格の合格率と合格基準は?

2024年に行われた第109回薬剤師国家試験の合格率は68.43%(受験者数13,585名、合格者数9,296名)でした。ここ数年の合格率は、おおよそ70%前後で推移しています。

 
🔽 薬剤師国家試験の合格率を解説した記事はこちら

 

合格基準については以下の通りです。

 

● 問題の難易を補正して得た総得点について、平均点と標準偏差を用いた相対基準により設定した得点以上であること

● 必須問題について、全問題への配点の70%以上で、かつ構成する各科目の得点がそれぞれ配点の30%以上であること


(参照:薬剤師国家試験のあり方に関する基本方針|厚生労働省

 

また、公衆衛生に甚大な被害を及ぼすような内容や倫理的に誤った内容、患者に対して重大な障害を与える危険性のある内容、法律に抵触する内容など、誤った知識がないかを判断するために禁忌肢が出題されます。
 
先述した合格基準に加えて、第109回薬剤師国家試験では、禁忌肢を選択した問題数が2問以下であることが合格する条件となっています。

 
🔽 薬剤師国家試験の合格基準を解説した記事はこちら

 

3.薬剤師の就職先と仕事内容

薬剤師国家試験に合格した後、薬剤師として働く主な就職先と、それぞれの仕事内容や特徴を紹介します。

 

3-1.病院

病院では、調剤や服薬指導、病棟業務などを担当します。中でも病棟業務は、病院薬剤師しか経験できない業務です。
 
入院患者さんに対して薬の飲み方や効果、副作用などを説明する仕事で、医師や看護師など医療スタッフと患者さんの情報を共有しながら、患者さんが安全かつ効果的に治療を受けられるように支援します。
 
他の就職先と比べて、より医師に近い場所で働けるため、医療の専門知識が身に付きやすい環境にあります。

 
🔽 病院薬剤師の仕事内容を解説した記事はこちら

 

3-2.調剤薬局

調剤薬局とは、病院などで診察を受けた患者さんから処方箋を受け取り、指示された薬を患者さんに渡す役割を持つ薬局です。調剤薬局に勤務する薬剤師は、医師が発行した処方箋をもとに調剤するのが主な仕事です。
 
他に飲んでいる薬や副作用の有無、その他の病気など患者さんの体調や病歴、現状に関する情報を聞き取り、指示された薬の内容が適切かをチェックした上で、正しい薬を患者さんにお渡しします。
 
定期的に同じ薬を服用している患者さんは毎月のように薬局に来るため、患者さんとの信頼関係を築きやすくなります。
 
近年、薬局に勤務する薬剤師は、薬の扱いだけでなく、対人業務を強化するように求められています
 
患者さんから服用状況を聞き取ったり、服薬支援をしたりするためのコミュニケーション力が必要となるでしょう。

 
🔽 薬局薬剤師の仕事内容を解説した記事はこちら

 

3-3.ドラッグストア

ドラッグストアの薬剤師は、地域の人の健康に関する悩みや不安を解消するために市販薬やサプリメントを提案・販売します。
 
病気に関する患者さんの訴えを聞き取って適切な市販薬を販売したり、場合によっては病院への受診勧奨を行ったりします。さまざまな悩みを持った方から相談を受けるため、幅広い専門知識を必要とするでしょう。
 
また、ドラッグストア内に調剤薬局を併設しているところもあります。その場合、調剤薬局の仕事も行います。

 
🔽 ドラッグストア薬剤師の仕事内容を解説した記事はこちら

 

3-4.製薬会社

製薬会社では、薬剤師としての知識を生かしながら、研究や開発、営業など、さまざまな部門で活躍します。
 
例えば、医薬情報担当者(MR)は自社の薬が安全かつ効果的に使用されるように、医師や薬剤師などの医療従事者に医薬品情報を提供し、臨床現場において情報収集を行います。
 
医薬品に関するさまざまなデータや論文を収集した上で情報提供を行うため、高い情報処理能力やプレゼンテーション能力が求められます。
 
MR以外にも、医薬品の研究や開発に携わる仕事は医療の発展に貢献できるため、大きなやりがいを実感できるでしょう。
 
参照:医薬情報担当者(MR) |厚生労働省職業情報提供サイト job tag(日本版O-NET)

 
🔽 MRの仕事内容を解説した記事はこちら

 

4.薬剤師になりたい人のよくある質問

最後に、薬剤師になりたい方のよくある質問に対してQ&A形式でお答えします。

 

4-1.薬剤師になるには費用がいくらかかる?

同じ薬学部であっても、国公立大学と私立大学では学費が大きく異なります。文部科学省の資料によると、2021年度における国立大学の入学料は28万2,000円、年間の授業料は53万5,800円でした。
 
公立大学においても入学料は住まいの住所地によって違いはあるものの、入学料、年間授業料ともに国立大学とそれほど大きな差はありません。
 
一方で私立大学の場合、1年次にかかる学費は161万2,300円~258万7,300円(2021年度)と国公立大学に比べて学費が多くかかってしまいます。
 
学費以外にも、通学にかかる交通費や教科書代などが必要です。費用の支払いが困難な場合には、奨学金制度や大学ごとの特待生制度の活用を検討してみましょう。

 
🔽 薬学部の学費について解説した記事はこちら

 

4-2.4年制薬学部を卒業してから薬剤師になるには?

上述したように、4年制薬学部を卒業しても薬剤師国家試験の受験資格を得られません。4年制薬学部の在学中であれば、6年制薬学部に編入して薬剤師を目指す方法があります。しかし、4年制薬学部を卒業後、しばらく経ってから薬剤師を目指す場合、6年制薬学部へ再度入学する必要があるでしょう。
 
参照:6年制薬学部への編入学・転学部について|文部科学省
 
ただし、2006年4月1日~2018年3月31日の間に大学へ入学している方は、以下の要件を満たすことで薬剤師国家試験の受験資格を得られます。

 

● 4年制薬学課程を卒業していること。
※早期卒業(飛び級)している場合は不可。

● 薬学の修士課程又は博士課程を修了していること。かつ、2年以上在学していること(1)。

● 6年制薬学課程の卒業に必要な単位を修得すること。
※実務実習を履修する大学の6年制薬学課程卒業に必要な単位を修得すること。
※大学に入学してから12年以内に、全ての単位を修得すること。

● 実務実習は専念して履修すること。
※4年制薬学課程在学中及び(1)の要件となる修士課程又は博士課程在学中に、実務実習を履修することはできません。


(出典:平成18年度4月1日以降に4年制の薬学課程に入学した方|厚生労働省

 

4-3.社会人や主婦・主夫から薬剤師になるには?

社会人や主婦・主夫の方が薬剤師になる場合も、先述した通り6年制薬学部を卒業し、薬剤師国家試験に合格する必要があります
 
大学を卒業するまで最低でも6年間はかかること、年間授業料が50万円~250万円程度かかることを考慮すると、かなりハードルの高いチャレンジとなるでしょう。
 
試験に向けた勉強や実習などに要する時間を考えると、働きながら薬剤師を目指すのは大変です。薬剤師になるまでの道のりをシミュレーションし、薬剤師資格を取得するまでにかかる時間や費用について、家族などに相談しておく必要があるでしょう。

 

4-4.海外の薬学校を卒業したら日本で薬剤師になれる?

海外の薬学校を卒業している、もしくは海外で薬剤師資格を取得している方が日本の薬剤師国家試験を受験するためには、書類審査によって以下の要件を満たしていることを認定される必要があります。

 

● 外国薬学校の修業年数等:
薬学校の入学資格:高等学校卒業以上(修業年数12年以上)
薬学校の教育年限:6年以上(但し、教育制度によっては、実務実習期間等を考慮する)

● 年齢:24 歳に達していること

● 教育環境:教育の質、教員数等が日本の大学とほぼ等しいと認められること

● 当該国の政府の判断:上記の教育環境が、教育施設の所在する国の法令において担保されていること

● 薬学校における授業時間等:
卒業に必要な授業時間:5,580時間以上(但し、教育制度によっては、薬学校在学時以外の履修時間を考慮する)
専門科目の授業時間等:4,200時間以上で、かつ一貫した教育を受けていること(但し、教育制度によっては、薬学校在学時以外の履修時間を考慮する)。また、このうち、約半年以上、国内と同等の実務実習が含まれていること

● 専門科目の成績:良好であること

● 日本語能力:日本の中学校及び高等学校を卒業していない者については、日本語能力試験1級の認定を受けていること


(出典:外国薬学校卒業者等の薬剤師国家試験受験資格認定の取り扱いについて|厚生労働省

 

書類審査にあたって、多くの書類を用意する必要があるため、事前に確認しておきましょう。

 

4-5.中学生や高校生のうちからできることは?

薬剤師を目指す場合、中学生や高校生のときに授業で学ぶ内容は、薬学部の勉強でも役立ちます。特に英語や理系科目である数学、化学、物理は、薬学部のある大学の一般入試に必要となることも多いため、積極的に勉強しましょう。
 
また、文部科学省が提供する「薬学教育モデル・コア・カリキュラム」によると、薬剤師として求められる基本的な資質・能力として、「コミュニケーション能力」が挙げられています。
 
参照:薬学教育モデル・コア・カリキュラム 令和4年度改訂版|文部科学省
 
中学生や高校生のうちから学校生活や部活動などを通じて、周囲の人とのコミュニケーションを積極的に行い、コミュニケーション能力を身に付けておくのもおすすめです。
 
薬剤師として働くときに患者さんや医師、看護師とのコミュニケーションをスムーズに行うのに役立つでしょう。

5.薬剤師になるには、6年制薬学部に入学することが最初の一歩

薬剤師になるには、6年制薬学部に入学する必要があります。薬学部では、薬学共用試験や実務実習などを通じて、薬剤師が身に付けるべき知識や技能、態度を学びます。6年次の2月に薬剤師国家試験を受験し、合格すれば、薬剤師として働くことが可能です。中学生や高校生のうちから勉強に励むことで薬学部に進学しやすくなるでしょう。また早い段階から、薬剤師に求められる「コミュニケーション能力」を身に付けておくとよいでしょう。


執筆/篠原奨規

2児の父。調剤併設型ドラッグストアで勤務する現役薬剤師。薬剤師歴8年目。面薬局での勤務が長く、幅広い診療科の経験を積む。新入社員のOJT、若手社員への研修、社内薬剤師向けの勉強会にも携わる。音楽鑑賞が趣味で、月1でライブハウスに足を運ぶ。

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