薬剤師のスキルアップ 公開日:2024.07.25 薬剤師のスキルアップ

服薬情報等提供料とは?1・2・3の算定要件・点数と算定例を解説

文:秋谷侭美(薬剤師ライター)

2024年度の改定で、算定要件が見直された服薬情報等提供料。歯科医師や介護支援専門員への情報提供についても、要件を満たすことで算定できる旨が明記されました。本記事では、2024年度調剤報酬改定における変更点や、服薬情報等提供料1・2・3の算定要件・点数を解説するとともに、算定前の事前準備、算定例と算定タイミングなどをお伝えします。加えて、服薬情報等提供料の算定に必要なトレーシングレポートや、地域支援体制加算における服薬情報等提供料に相当する業務についても紹介します。

1.服薬情報等提供料とは

服薬情報等提供料とは、薬剤師が調剤後も患者さんの服用薬や服薬状況といった情報を把握し、医療機関への情報提供によって医薬品の適正使用を推進することを評価したものです。医療機関と調剤薬局が連携して患者さんの薬物治療をサポートすることを目的としています。
 
服薬情報等提供料の算定要件と疑義照会の違いは、緊急性が異なる点です。疑義照会は、処方箋について「確認しなければ調剤が行えない」と判断される場合に実施されるのに対し、服薬情報等提供料は「治療に役立つ情報」の提供について評価します。

 
🔽 疑義照会について解説した記事はこちら

 

1-1.2024年度調剤報酬改定における変更点

2024年度の調剤報酬改定では、服薬情報等提供料1・2・3の算定要件について一部変更があり、服薬情報等提供料2は3つに区分されました。

 

■2024年度調剤報酬改定における主な変更点
区分 変更点
服薬情報等提供料1・2・3 ● 歯科医師への情報提供も対象
● 処方箋を発行していない医療機関の医師または歯科医師へ情報提供した場合は、必要に応じて処方箋を発行した医療機関の医師または歯科医師にも情報提供する
服薬情報等提供料1・2 ● 単に確認された残薬の状況を記載するだけでなく、その後の残薬が生じないために必要な内容を併せて記載する
服薬情報等提供料2 ● イ・ロ・ハの区分新設
(イ)保険医療機関に必要な情報を文書により提供した場合
(ロ)リフィル処方箋に基づく調剤後、処方医に必要な情報を文書により提供した場合
(ハ)介護支援専門員に必要な情報を文書により提供した場合

 

2024年度改定では、歯科医師や介護支援専門員へ情報提供することで服薬情報等提供料が算定できることが明記されました。服薬情報等提供料2については、患者さんや家族への情報提供に関する要件が削除されています。
 
参照:令和6年度診療報酬改定の概要【調剤】|厚生労働省

 
🔽 2024年度調剤報酬改定について解説した記事はこちら

2.服薬情報提供料の算定要件と点数

服薬情報等提供料の算定点数は以下のとおりです。

 

■服薬情報等提供料の点数
区分 点数
服薬情報等提供料1 30点
服薬情報等提供料2 20点
服薬情報等提供料3 50点

参照:調剤報酬点数表|厚生労働省
 
服薬情報等提供料を算定するためには、医療機関へ以下の内容を情報提供することとされています。

 

■情報提供の内容
1.患者さんの服用薬と服薬状況
2.患者さんに行った服薬指導の要点
3.服用期間中の患者さんの状態変化など、自覚症状がある場合は原因の可能性となる薬剤の推定
4.患者さんが容易にまたは継続的に服用できるための技術工夫等の調剤情報

 

3については、服用薬の副作用であるかを分析して服薬指導を行い、分析結果と指導内容について情報提供します。副作用の分析については、厚生労働省の「重篤副作用疾患別対応マニュアル」などを参考にするのが望ましいとされています。なお、4については、疑義照会などでは算定できません
 
また、服薬情報等提供料の算定には、以下の共通するルールがあります。

 

■服薬情報等提供料の算定に関するルール
● 患者さん1人につき、同一月に2回以上服薬情報等の提供を行った場合においても、月1回のみの算定とする。
● 複数の医療機関の医師、歯科医師に情報提供を行った場合は、当該医療機関の医師、歯科医師ごとに月1回に限り算定できる。
● 処方箋を発行していない医療機関の医師、歯科医師に情報提供を行った場合は、必要に応じて処方箋を発行した医師、歯科医師に同様の情報提供すること。この場合においては、当該医療機関の医師、歯科医師ごとに月1回に限り算定できる。

 

続いて、服薬情報等提供料1・2・3の算定要件について詳しく見ていきましょう。

 

2-1.服薬情報等提供料1の算定要件

服薬情報等提供料1は、医師から以下の内容について情報提供の求めがあった場合に、患者さんの同意を得た上で、文書により情報提供を行うことで月1回に限り算定できます

 

■服薬情報等提供料1における情報提供の内容
1.患者さんの服用薬と服薬状況
2.患者さんに行った服薬指導の要点
3.服用期間中の患者さんの状態変化など、自覚症状がある場合は原因の可能性となる薬剤の推定

 

また、服薬情報等提供料1は、算定するケースについて具体的に定められています。3つのケースについて見ていきましょう。

 

■服薬情報等提供料1を算定する3つのケース
ケース1 医療機関から患者さんの服用薬について残薬の報告の求めがある場合
ケース2 分割調剤やリフィル処方箋による調剤について、2回目以降の調剤時に患者さんの服薬・体調等の状況を情報提供した場合
ケース3 入院前の患者さんの服用薬について情報提供した場合

 

ケース1については、患者さんの残薬状況を確認し、残薬がある場合にはその理由と残薬が生じないための対策などを記載します。情報提供後も継続して服薬状況の把握をしなければなりません。
 
ケース2については、以下の事項を含めて情報提供します。

 

● 残薬の有無
● 残薬が生じている場合はその量および理由
● 副作用の有無
● 副作用が生じている場合はその原因の可能性がある薬剤の推定

 

ケース3については、基本的には自薬局で調剤している薬剤や、服用中のOTC・サプリメントなどの情報提供を行うことになります。他薬局や院内で調剤された服用薬については、把握している範囲で情報提供するとよいでしょう。

 

2-2.服薬情報等提供料2の算定要件

服薬情報等提供料2は、薬剤師が患者さんの服薬状況などを薬学的に分析し、薬学的管理に必要な情報を文書で情報提供した場合に月1回に限り算定できます
 
3区分の算定要件はそれぞれ異なり、いずれも残薬については残薬状況に加え、残薬が生じないための対策などを記載し、情報提供後も継続的に服薬状況の把握をすることとされています。

 

■服薬情報等提供料2の算定要件
区分 算定要件
医療機関に必要な情報を文書により提供した場合
リフィル処方箋に基づく調剤後、処方医に必要な情報を文書により提供した場合
介護支援専門員に必要な情報を文書により提供した場合

 

服薬情報等提供料2のイ・ハについては、患者さんの同意を得た上で、以下の内容を情報提供した場合に算定します。

 

■服薬情報等提供料2のイ・ハにおける情報提供の内容
1.患者さんの服用薬と服薬状況
2.患者さんに行った服薬指導の要点
3.服用期間中の患者さんの状態変化など、自覚症状がある場合は原因の可能性となる薬剤の推定
4.患者さんが容易にまたは継続的に服用できるための技術工夫等の調剤情報

 

服薬情報等提供料2のイについては、処方箋を発行した医療機関だけでなく、歯科医療機関に対して他医療機関の処方の服薬状況などを情報提供した場合も算定対象となります。
 
服薬情報等提供料2のハについては、介護支援専門員を持つ要介護または要支援の認定を受けた患者さんにおいて、居宅療養管理指導を同一月に算定していない場合に算定可能です。介護支援専門員から情報提供の求めがあった場合にも、要件を満たすことで算定できます。
 
🔽 居宅療養管理指導について解説した記事はこちら


 
介護支援専門員への情報提供については、「多職種連携推進のための在宅患者訪問薬剤管理指導ガイド」の別添の報告書様式や薬学的評価シートを参考にしましょう。
 
なお、介護支援専門員へ情報提供した場合であって、処方箋を発行した医療機関の医師や歯科医師へ同様の情報提供をした場合には、服薬情報等提供料2を別に算定できます。

 

2-3.服薬情報等提供料3の算定要件

服薬情報等提供料3は、入院を予定している患者さんについて医療機関から情報提供の求めがあった場合、患者さんの服薬状況等を一元的に把握し、文書により情報提供することで3月に1回に限り算定できます。入院予定の医療機関以外から入院前の患者さんについて情報提供の求めがあった場合にも、服薬情報等提供料3が算定可能です。
 
服薬情報等提供料3については、情報提供の内容について以下のように定められています。

 

■服薬情報等提供料3における情報提供の内容
● 受診中の保険医療機関、診療科等に関する情報
● 服用中の薬剤の一覧
● 患者の服薬状況
● 併用薬剤等の情報

 

服薬情報等提供料3を算定するためには、自薬局に加えて、他薬局や院内で調剤された薬剤についても把握しなければなりません。
 
参照:調剤報酬点数表に関する事項|厚生労働省

3.服薬情報等提供料の算定前に行うこと

トラブルなく情報提供するためには、患者さんの情報を提供することについての医師や医療機関の理解や、患者さんの同意を得る必要があります。ここでは、服薬情報等提供料を算定する前の事前準備について見ていきましょう。

 

3-1.医師・医療機関の理解を得る

近隣のクリニックや医師へ情報提供を行う場合は、事前に理解を得るようにしましょう。説明なしに医療機関へ情報提供の文書を送ると、対応に戸惑ってしまうかもしれません。
 
総合病院などの大きな病院の中には、調剤薬局からの情報提供を薬剤部が取りまとめていたり、情報提供文書のテンプレートを用意していたりするところもあります。
 
医療機関のホームページを確認し、情報提供する上でのルールを確認しましょう。ホームページに掲載されていない場合は、薬剤部に確認するのがおすすめです。

 

3-2.患者さんの同意を得る

情報提供等提供料の算定要件には、患者さんの同意が含まれています。しかし、調剤薬局によっては、その都度患者さんへ同意を得るのではなく、薬局内の掲示などにより個人情報の取扱いについて同意を得ていると判断するケースがあるかもしれません。
 
参照:医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンスについて(通知) IV.医療・介護関係事業者の義務等 9.個人データの第三者提供(法第27条)|厚生労働省
 
患者さんが医療機関を受診したときに、薬剤師にしか話していない情報が医師にまで伝わってしまうと分かれば、患者さんと薬剤師との信頼関係が崩れる可能性があります。
 
情報提供の必要性があると判断した場合は、患者さんへ理由を説明し同意を得ておくと、その後のトラブル防止につながるでしょう。

4.服薬情報等提供料の算定の可否と算定タイミング

服薬情報等提供料には、同一月内または同時に算定できる薬学管理料とできない薬学管理料があります。ここでは、それぞれについて詳しくお伝えするとともに、服薬情報等提供料の算定タイミングを解説します。

 

4-1.服薬情報等提供料と同一月内に算定できる薬学管理料

同一月内に服薬情報等提供料との算定が認められている薬学管理料は以下のとおりです。

 

■同一月内に服薬情報等提供料との算定が認められている薬学管理料
● 服薬管理指導料
● 調剤管理料の加算
  1.重複投薬・相互作用等防止加算
  2.調剤管理加算
  3.医療情報取得加算
● 服薬管理指導料の加算
  1.麻薬管理指導加算
  2.特定薬剤管理指導加算1・2・3
  3.乳幼児服薬指導加算
  4.小児特定加算
  5.吸入薬指導加算
● 外来服薬支援料1・2
● 服用薬剤調整支援料1・2
● 調剤後薬剤管理指導料1・2
● 経管投薬支援料

 

ただし、以下の薬学管理料の算定に係る医療機関への情報提供については、服薬情報等提供料が算定できないことになっています。

 

● 特定薬剤管理指導加算2
● 吸入薬指導加算
● 服用薬剤調整支援料2
● 調剤後薬剤管理指導料1・2

 

同一月内に上記の薬学管理料を算定する場合は、情報提供先の医療機関や情報提供の内容を確認するようにしましょう。

 
🔽 薬学管理料について解説した記事はこちら

 

4-2.服薬情報等提供料と同時算定ができない薬学管理料

服薬情報等提供料は、以下の薬学管理料を算定している患者さんに対して算定できません。

 

■服薬情報等提供料と同時算定ができない薬学管理料
● かかりつけ薬剤師指導料
● かかりつけ薬剤師包括管理料
● 在宅患者訪問薬剤管理指導料
● 在宅患者オンライン薬剤管理指導料
● 在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料
● 在宅患者緊急オンライン薬剤管理指導料
● 在宅患者緊急時等共同指導料

 

また、特別調剤基本料Aを算定している薬局は、不動産取引などの特別な関係がある医療機関へ情報提供を行った場合も算定できません。特別調剤基本料Bを算定している薬局も算定不可です。

 
🔽 特別調剤基本料について解説した記事はこちら

 

かかりつけ薬剤師指導料とかかりつけ薬剤師包括管理料は、処方箋受付ごとに残薬の確認などを行い、状況によって処方医に対して情報提供に努めることと定められています。そのため、同等の業務を行う服薬情報等提供料は算定できません。

 
🔽 かかりつけ薬剤師指導料・かかりつけ薬剤師包括管理料について解説した記事はこちら

 

また、在宅患者訪問薬剤管理指導料や在宅患者オンライン薬剤管理指導料などについても、同様に医師への報告義務があるため、服薬情報等提供料は算定できません。

 
🔽 在宅患者訪問薬剤管理指導料について解説した記事はこちら

 

4-3.服薬情報等提供料の算定タイミング

服薬情報等提供料2は薬剤師の判断で行うことから、算定タイミングは患者さんの次回来局時となっています。
 
ただし、情報提供した医療機関以外の処方箋を受け付けた日や、処方箋を受け付けていない日、服薬管理指導料を算定していない場合でも、要件を満たすことで算定できます。
 
なお、服薬情報等提供料1・2・3は、それぞれ同一月に1回算定することが可能です。ただし、同一情報を同一医療機関へ情報提供した場合は算定できません。
 
参照:疑義解釈資料の送付について(その3)令和4年4月11日|厚生労働省
参照:日本薬剤師会・編『保険調剤Q&A 令和4年版』Q167・Q168、平成16年度診療報酬改定に係る疑義解釈(じほう、2022年)

5.服薬情報等提供料の算定例

服薬情報等提供料の算定経験がない薬剤師の中には、どのような情報を医師に提供したらよいのか迷ってしまう方もいることでしょう。
 
ここでは、服薬情報等提供料の算定例についてお伝えします。

 

5-1.一包化の提案

一包化を提案するのであれば、一包化することで患者さんのコンプライアンスの向上が望めると判断した根拠を記載しましょう。「飲み忘れがある」「服用している薬の数が多い」「シートから錠剤を取り出しにくい」など状況を記載し、一包化の提案を行います。

 
🔽 外来服薬支援料2(一包化加算)について解説した記事はこちら

 

5-2.副作用報告

明確に副作用と判断するのが難しく緊急性が低い症状は、電話で直接医師に伝えるのに躊躇するものです。そういった場合には文書を使って医師へ情報提供しましょう。
 
患者さんから詳しく症状を聞き取り、「重篤副作用疾患別対応マニュアル」を参考にして情報提供を行います。

 

5-3.用法変更の提案

食習慣や生活習慣は、朝食を食べる習慣のない人、夕食と就寝の時間がほとんど変わらない人、夜勤がある人など、患者さんによってさまざまでしょう。
 
患者さんの食習慣や生活習慣について情報提供するとともに、朝食後と夕食後の薬を夕食後にまとめたり、夕食後と寝る前の薬を寝る前にまとめたりするといった用法変更の提案をすることで、服薬情報等提供料の算定が可能です。

 

5-4.残薬調整の提案

医療機関へ残薬調整の提案をすることも服薬情報等提供料の算定につながります。この場合、残薬の報告だけでなく、残薬が生じないための対策についても報告書に記載しましょう。
 
薬剤名だけでなく錠数や日数など記載しておくと、医師が処方箋を交付する際に残薬調整がしやすくなります。

 
🔽 医師に処方提案を行うときのポイントを解説した記事はこちら

 

5-5.生活状況の報告

患者さんによっては、医療費を抑えるために受診を控えていることがあります。経済的な理由で受診控えをしているといった情報を得た場合には、患者さんの生活状況を伝えるとともに、後発医薬品への切り替えで自己負担を抑えるなどの提案をしましょう。医師が処方薬を見直すきっかけになるかもしれません。

6.服薬情報等提供料の算定に必要なトレーシングレポート(服薬情報提供書)とは

医療機関への情報提供で交付する文書はトレーシングレポート(服薬情報提供書)と呼ばれており、厚生労働省が提示するトレーシングレポートのフォーマットは2種類あります。
 
ここでは、トレーシングレポートのフォーマットや作成ポイント、具体例について見ていきましょう。

 
🔽 トレーシングレポートの書き方を解説した記事はこちら

 

6-1.基本となるトレーシングレポートのフォーマット

厚生労働省が提示する基本的なトレーシングレポートのフォーマットには以下のような項目が記載されています。

 

■患者の服薬状況等に係る情報提供書の記載項目
● 患者情報
● 情報提供の概要
● 処方薬情報
● 併用薬剤等の情報(OTCやサプリメントを含む)
● 処方薬剤の服薬状況と指導内容
● 患者さんや家族などからの情報(副作用の恐れがある症状、薬剤服用に関する意向など)
● 薬剤に関する提案
● その他

参照:患者の服薬状況等に係る情報提供書|厚生労働省
 
また、聖路加国際病院京都第一赤十字病院など、独自にトレーシングレポートのフォーマットを指定している医療機関もあります。
 
情報提供書を作成する際には、事前に医療機関のホームページを確認し、指定のフォーマットがない場合は、厚生労働省が作成したトレーシングレポートを活用するとよいでしょう。

 

6-2.入院前の患者さんを対象としたトレーシングレポートのフォーマット

入院前の患者さんを対象としたトレーシングレポートのフォーマットには、以下の項目が記載されています。

 

■入院前の患者の服薬状況等に係る情報提供書の記載項目
● 患者情報
● 特記事項
● 受診中の医療機関、診療科などに関する情報
● 服用中の薬剤一覧
● 医師の指示による入院前中止薬と自己調節している薬
● 患者の服薬状況(服薬管理者、留意点、退院時の処方の際にお願いしたいこと)
● 併用薬剤情報(OTCやサプリメントを含む)
● その他

参照:入院前の患者の服薬状況等に係る情報提供書|厚生労働省
 
入院前の患者さんの服薬情報を医療機関から求められた場合は、一元的に把握することが求められているため、自薬局で調剤している薬剤だけでなく、他薬局で調剤された薬剤やOTC、サプリメントについての情報提供も行う必要があります。
 
加えて、退院時の処方でお願いしたいことを記載することも求められています。医師や病院薬剤師が、退院後の生活を具体的にイメージできるよう工夫して記載しましょう。

 

6-3.トレーシングレポートの作成ポイント

トレーシングレポートは、有益な情報を簡潔に分かりやすく、要点を絞って作成することが大切です。
 
まずは、情報提供書の作成時に意識しておきたいポイントを見ていきましょう。

 

6-3-1.情報提供を行う目的が伝わるように記載する

トレーシングレポートを作成する前に、何を医師へ伝えたいのかを明確にし、どのような対処法があるのかまで考えてから作成するようにしましょう。何が書いてあるのか一目で分かるように記載することも大切です。
 
特に、トレーシングレポートの概要欄には、何についての情報提供なのか分かるよう簡潔に記載することで、医師は内容を把握しやすくなります。
 
また、患者さんの言葉なのか、薬剤師の意見であるのかが分かるように、項目を分けて記載することで、医師は処方の変更または継続の判断がつきやすいでしょう。
 
長文になると内容を把握しづらくなるため、患者さんが話した内容をそのまま記載せず、簡潔にまとめることも重要です。

 

6-3-2.根拠をもとに提案する

トレーシングレポートは、明確な根拠をもとに提案という形で記載するようにしましょう。医師への指示と受け取られてしまうような表現は避け、次回処方時に役立つ情報を提供するように心がけることが大切です。
 
特に、処方提案を行う場合は、医師が判断しやすいように、患者さんの状況や根拠となる情報などを簡潔にまとめて記載するようにしましょう。
 
薬剤師の経験に基づく提案は、根拠があいまいで判断が難しくなるため、添付文書やインタビューフォーム、ガイドラインなどに基づいて提案するのがポイントです。

 

6-3-3.薬剤師として患者さんの治療に役立つと判断できる情報を記載する

服薬指導を行っていると、患者さんから「先生には言っていない」「薬が余っている」「じつは飲んでいない」「困っている」といった情報を得ることがあります。
 
患者さんから聞き取った情報の中で医師が把握していない内容について、治療に役立つと判断できるものは、患者さんへ同意を得た上で、積極的に報告していきましょう。

 
🔽 服薬指導について解説した記事はこちら

 

加えて、患者さんの医師には伝えにくい困りごとを報告するのも大切です。緊急性は低いものの、治療において重要な情報を得た場合は、情報提供することで患者さんのコンプライアンス向上が期待できます。

7.地域支援体制加算の算定要件における「服薬情報等提供料に相当する実績」とは

地域支援体制加算の算定要件には、「服薬情報等提供料に相当する実績」が含まれています。服薬情報等提供料に相当する実績とは、服薬情報等提供料1・2・3のほかに以下のものを指しています。

 

■服薬情報等提供料に相当する実績
● 特定薬剤管理指導加算2
● 吸入薬指導加算
● 調剤後薬剤管理指導料
● 服用薬剤調整支援料2
● かかりつけ薬剤師指導料、またはかかりつけ薬剤師包括管理料を算定している患者に対し、服薬情報等提供料の算定に相当する業務を実施した場合

 

いずれも、文書で情報提供した場合に、服薬情報等提供料に相当する実績としてカウントできます。
 
参照:特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて|厚生労働省

 
🔽 地域支援体制加算について詳しく解説した記事はこちら

8.服薬情報等提供料は薬剤師として気になった情報を医師に伝えるツール

従来は服薬指導を通して気になった情報を得たとしても、緊急性の低さから医師に直接伝えることなく、次回受診時に患者さんから医師に伝えるよう促すにとどめていた薬剤師もいることでしょう。服薬情報等提供料は、治療効果の向上が期待できる情報を医師に提供するためのツールと言えます。薬局薬剤師は医療機関や医師へ積極的にコンタクトを取り、情報提供を心がけましょう。

 
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執筆/秋谷侭美(あきや・ままみ)

薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。

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