薬剤師のスキルアップ 更新日:2023.12.25公開日:2023.04.28 薬剤師のスキルアップ

調剤管理料とは?2022調剤報酬改定で新設加算の点数や算定要件をご紹介

文:テラヨウコ(薬剤師ライター)

2022年4月の調剤報酬改定では、新たに「調剤管理料」が設定されました。調剤管理料の新設は調剤における対人業務を評価するためです。調剤管理料には、これまで調剤料や薬剤服用歴管理指導料に含まれていた評価の一部が入ります。また、医療のオンライン化を推進するためにマイナンバー活用時の加算も新設されました。
 
今回の記事では、薬局薬剤師に向けて調剤管理料について解説し、重複投薬・相互作用防止加算や調剤管理加算、電子的保健医療情報活用加算をご紹介します。また、それぞれで算定できる点数や算定要件の一覧表をまとめました。

1.調剤管理料とは

2022年施行の令和4年度調剤報酬改定では、これまでに調剤技術料と薬学管理料に振り分けられていた評価が見直され、いくつかの算定が廃止・新設されました。
 
調剤管理料は、調剤料を廃止して新たに作られた加算です。これまで調剤料として評価されていた処方内容の薬学的分析、調剤設計などと、これまで薬剤服用歴管理指導料として評価されていた薬歴の管理などに関わる業務の評価として新設されました。これまでの薬局薬剤師は、薬を正しく調剤するという対物業務が中心でしたが、これからは患者さんの背景に注目した対人業務をさらに重視する狙いがあると考えられます。
 
続いて、これまでの薬局業務の流れと、これからの薬局業務の流れのポイントを調剤報酬改定の観点から解説します。薬局業務は、主に次の7つのステップで構成されています。

 

ステップ1:患者情報の分析・評価
ステップ2:処方内容の薬学的分析
ステップ3:調剤設計
ステップ4:薬剤の調製・ピッキング
ステップ5:最終監査
ステップ6:薬の交付・服薬指導
ステップ7:調剤録・薬歴

 

これまでは、「ステップ1.患者情報の分析・評価」から「ステップ5.最終監査」までが薬剤料の対象でした。しかし、改定後は「ステップ1. 患者情報の分析・評価」から「ステップ3.調剤設計」までを調剤管理料で評価すると定められています。ここでは、お薬手帳や薬歴などに基づいて適切な処方内容であるかという分析や、必要に応じて疑義紹介や処方変更した上での調剤設計など患者さん主体の業務です。

さらに、「ステップ4. 薬剤の調製・ピッキング」と「ステップ5. 最終監査」は薬剤調製料の対象となります。こちらは薬を正しく準備するという薬剤主体の業務です。
 
また、「ステップ6. 薬の交付・服薬指導」については、これまでの薬学管理料から服薬管理指導料へ変更となりました。さらに、薬剤使用状況などの継続的な把握・指導を行うことで、アドヒアランスの向上をサポートするよう求められています。
 
一連の変化を詳しく知りたい方は、厚生労働省のサイトをご覧ください。
 
2022年調剤報酬改定のポイントや、改定によって薬剤師が気を付けるべきことについては、「調剤報酬改定とは? 2022年度(令和4年)の改定ポイントと新設・変更項目の解説」で詳しく解説しています。

2.調剤管理料のポイント

2022年の調剤報酬改定で新設された調剤管理料ですが、これまでの調剤料と似ている点や、まったく新しい内容の加算もあります。それぞれの算定要件や点数について確認していきましょう。

 

2-1.調剤管理料の点数と算定要件の一覧表

新設された調剤管理料の要件や算定上限、点数は以下のとおりです。これまでに別の区分で加算されていたものの他、まったく新しい加算内容もあります。比較しながらチェックしてみましょう。

 

■調剤管理料の調剤報酬点数表(2022年4月1日施行)

調剤管理料の調剤報酬点数表

参考:日本薬剤師会「調剤報酬点数表(令和4年4月1日施行)」をもとに作成

 

これまでの調剤料と同様に、内服薬は処方日数が伸びるほど、点数が増えていくシステムです。改定によって調剤料が調剤管理料と薬剤調製料に分かれましたが、薬剤調製料は日数に関わらず一律となったため、調剤管理料で調整する目的と考えられます。

しかし、点数が上がる処方日数のラインは改定前と同じではありません。そのため内服薬の点数は、処方日数によっては改定前よりも多くなる場合もあれば、少なくなるパターンもあります。調剤報酬計算の際はご注意ください。

 

2-2.重複投薬・相互作用防止加算とは

重複投薬・相互作用防止加算は、これまでは薬剤服用歴管理指導料に含まれていた加算です。点数に変わりはありませんが、調剤管理料内の加算へと位置づけが変わりました。色が異なる箇所は、改正後の変更点です。

 

■重複投薬・相互作用防止加算 改定前後の比較

重複投薬・相互作用防止加算 2022年改定前後の比較表

参考:日本薬剤師会「調剤報酬点数表(令和4年4月1日施行)」をもとに作成
※色分け部分は、2022年調剤報酬改定の変更点

 

2-3.調剤管理加算とは

調剤管理加算は、今回の改定で新設された加算です。複数の病院から6種類以上の内服薬が処方されている患者さんが、初めて薬局を利用するときや、2回目以降でも処方内容が変更された場合に実施する必要な薬学的分析に対して評価します。
 
複数の医療機関に通って多くの処方薬をもらっていると、ポリファーマシーによる副作用発現やアドヒアランスの低下につながりかねません。調剤管理加算が新設された目的は、患者さんが服用している薬を薬剤師が正しく把握し、適切な医療を提供することだと考えられます。

 

■調剤管理加算の点数と要件

調剤管理加算の点数と要件

参考:日本薬剤師会「調剤報酬点数表(令和4年4月1日施行)」をもとに作成

 
🔽ポリファーマシーについて詳しく解説した記事はこちら

 

2-4.電子的保健医療情報活用加算とは

電子的保健医療情報活用加算も、今回の改定で新設された加算の一つです。保険薬局でオンライン資格確認システムを通じて患者さんの薬剤情報または特定健診情報などを取得し、その情報を活用すると評価されます。

具体的には、マイナンバーカードを利用して服用薬の情報などを取得し、それに基づいた薬学的分析の上で調剤・服薬指導を行ったときに算定できます。電子的保健医療情報活用加算の算定は月1回までなので、月に複数回の来局がある患者さんについては重複算定しないように注意が必要です。

 

■電子的保健医療情報活用加算の点数と要件

電子的保健医療情報活用加算の点数と要件

参考:日本薬剤師会「調剤報酬点数表(令和4年4月1日施行)」をもとに作成

 

また、算定の際は次の施設基準を満たす必要があります。事前にチェックしておきましょう。

 

■電子的保健医療情報活用加算の施設基準
(1)療養の給付及び公費負担医療に関する費用の請求に関する省令(昭和51年厚生省令第36号)第1条に規定する電子情報処理組織の使用による請求を行っていること。
(2)健康保険法第3条第13項に規定する電子資格確認を行う体制を有していること。
(3)電子資格確認に関する事項について、当該保険薬局の見やすい場所に掲示していること。

出典:令和4年度調剤報酬改定の概要(調剤)|厚生労働省保険局医療課

3.薬剤調製料、服薬管理指導料との違い

今回の改定では、調剤料の一部が調剤管理料と薬剤調製料に、薬剤服用歴管理指導料の一部が調剤管理料と服薬管理指導料に分けられました。名称も似ているため、混同しやすいかもしれません。これらの加算の違いについて確認しておきましょう。

 

3-1.調剤の対人業務は調剤管理料、対物業務は薬剤調製料

今回の調剤報酬改定における主軸の一つに、「薬剤師業務を対物中心から対人中心への転換」を促進する目的があります。これまで調剤料に含まれていた調剤業務のうち、対人業務は調剤管理料、対物業務は薬剤調製料の管轄となりました。評価をそれぞれ分けることで、より対人業務へ重きを置いた薬局業務を進める狙いがあると考えられます。

 
🔽薬剤調製料について詳しく解説した記事はこちら

 

3-2.薬剤の調製前は調剤管理料、調製後は服薬管理指導料

調剤管理料と服薬管理指導料で行う業務内容は、どちらも対人業務です。この2つの違いは、どのタイミングでの業務を行うかによります。
 
薬剤調製の前に、患者さんの情報を集めて薬学的分析・評価などを行うのは調剤管理料の管轄です。一方で、薬剤調製が終わって、患者さんへの服薬指導や薬の交付後の継続的な服薬状況などの把握・指導は服薬管理指導料の評価対象となります。

 
🔽服薬管理指導料について詳しく解説した記事はこちら

このように、いつ行った対人業務かによって加算の対象が変わってくるのがポイントです。薬剤調製の前と後の対人業務それぞれを重視することで、より患者さん一人一人に合った医療提供を目指せると考えられます。

4.調剤管理料導入で、さらなる“患者さん重視”の医療へ

これまでは、薬を正しく作って患者さんへお渡しするという薬剤(対物)を中心とした業務が行われてきました。しかし、患者さんのさまざまな背景や医療ニーズの変化に伴い、より患者さん(対人)に注目した調剤・服薬指導が求められています
 
また、オンライン資格確認システムといったICTを活用した業務への評価が新設されるなど、薬局での医療提供の手段についても日々変わってきています。これからは薬の知識や調剤技術だけでなく、患者さんとのコミュニケーションも大切にした、より良い医療を提供できる薬剤師を目指しましょう。

 
🔽調剤報酬改定に関連する記事はこちら








執筆/テラヨウコ

薬剤師。3人兄弟のママ。大学院卒業後、地域密着型の調剤薬局に勤務。大学病院門前をはじめ、内科・婦人科・皮膚科・心療内科・皮膚科門前などで多くの経験を積む。15年の薬剤師歴ののち独立して薬剤師ライターへ。健康や医療、美容に関する記事を執筆。休日は温泉ドライブや着物でのおでかけが楽しみ。

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