敷地内薬局が算定する特別調剤基本料Aは、2022年度、2024年度に続き、2026年度調剤報酬改定でも見直しが行われました。本記事では、敷地内薬局の解禁から特別調剤基本料Aが設けられるまでの過程や、ルールの抜け道とされていた除外規定についてお伝えするとともに、敷地内薬局のメリット・デメリット、特別調剤基本料Aの点数・算定要件、減算項目などについても解説します。

- 1.敷地内薬局とは?
- 1-1.敷地内薬局の解禁から「特別調剤基本料A」の新設まで
- 1-2.2026年からルールの抜け道となっていた除外規定が廃止に
- 2.敷地内薬局のメリット
- 2-1.患者さんのメリット
- 2-2.薬局のメリット
- 3.敷地内薬局のデメリット
- 3-1.患者さんのデメリット
- 3-2.薬局のデメリット
- 4.敷地内薬局が算定する「特別調剤基本料A」とは?
- 4-1.特別調剤基本料Aの点数と施設基準
- 4-2.特別調剤基本料Aの加算項目
- 5.敷地内薬局に関するQ&A
- 5-1.敷地内薬局と医療モール型薬局の違いとは?
- 5-2.敷地内薬局と門前薬局の違いとは?
- 5-3.今後、敷地内薬局の撤退が進むという見方がある理由とは?
- 6.敷地内薬局への評価の動向に注目しよう
1.敷地内薬局とは?
敷地内薬局とは、医療機関の敷地内にある調剤薬局のことで、病院敷地内薬局、構内薬局などとも呼ばれます。
2016年以前は、敷地内薬局の開設が禁止されていました。ここでは、敷地内薬局の解禁から「特別調剤基本料A」が新設されるまでの経緯と、ルールの抜け道となっていた除外規定について解説します。
1-1.敷地内薬局の解禁から「特別調剤基本料A」の新設まで
従来は「保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則(薬担規則)」の中で、保険薬局と保険医療機関は「一体的な構造」であってはならないとされていました。そのため、2016年9月までは、敷地内薬局の開設が禁止されていました。
しかし、2016年10月から一体的な構造の解釈が変更となり、敷地内薬局が解禁されます。2018年度調剤報酬改定では、敷地内薬局に対する評価として特別調剤基本料(10点)が新設され、2019年には消費税改定があったことで点数が11点に見直されました。その後は、2020年度調剤報酬改定では9点、2022年度改定では7点と、点数が引き下げられています。
改定ごとに算定点数は低くなったものの、敷地内薬局の損益率は2022年度調剤報酬改定後も増加傾向にあり、医療機関の敷地内薬局の新設が相次いでいました。そこで、2024年度改定では新たな区分を設け、敷地内薬局は原則として特別調剤基本料A(5点)を算定することとなりました。
参考:「保険医療機関及び保険医療養担当規則の一部改正等に伴う実施上の留意事項について」の一部改正について|厚生労働省
参考:個別事項について(その3)敷地内薬局|厚生労働省
1-2.2026年からルールの抜け道となっていた除外規定が廃止に
2020年度調剤報酬改定で敷地内薬局の適用範囲が拡大された際に、従来から存在していた医療モールへの配慮として「薬局が所在する建物内に診療所がある場合は対象外」という除外規定が設けられました。
しかし、この除外規定がルールの「抜け道」として利用され、建物内に診療所を誘致し「医療モール内薬局」となることで、特別調剤基本料Aの算定を回避するケースが散見されるとの指摘がありました。
参考:2025年10月24日 中央社会保険医療協議会 総会 第622回議事録|厚生労働省
厚生労働省が公開している「個別事項について(その3)敷地内薬局」によると、医療機関と特別な関係にあって処方箋集中率が50%以上であるにもかかわらず、特別調剤基本料Aを算定していない薬局数は、特別調剤基本料Aを算定している薬局数の2倍以上あったとされています。
そこで、2026年度調剤報酬改定により、薬局と同一の建物内に診療所がある場合は特別調剤基本料Aを算定しない旨の除外規定は削除されることとなりました。
参考:令和8年度診療報酬改定の概要【調剤】|厚生労働省
2.敷地内薬局のメリット
調剤報酬における敷地内薬局への評価は厳しいものとなっていますが、患者さんや薬局などにとって、敷地内薬局にはさまざまなメリットがあります。
2-1.患者さんのメリット
敷地内に薬局があれば、患者さんの移動時間の短縮につながります。車いすを使っている人や小さな子どもを連れている人などにとって、移動の負担が軽減されるのは大きなメリットでしょう。
調剤基本料が低く、算定できる加算も限られるため、他の薬局と比較して医療費が安くなることがあり、経済的負担の軽減にもつながる可能性があります。
2-2.薬局のメリット
医療機関と薬局との距離が近いと、コミュニケーションをこまめに取ったり、治療方針や患者さんの情報を共有・連携したりしやすくなります。
薬局と病院が合同で勉強会を行うといった機会があれば、さまざまな知識や経験を習得しやすく、薬局薬剤師と医師・病院薬剤師の交流にもつながる点はメリットです。
3.敷地内薬局のデメリット
敷地内薬局への評価が厳しい背景には、患者さんがかかりつけ機能を持ちにくいという点が挙げられます。また、調剤基本料が低い点は薬局経営におけるデメリットといえるでしょう。
3-1.患者さんのデメリット
敷地内薬局は、同じ敷地内にある医療機関を受診した患者さんが来局する傾向にあります。複数の医療機関を受診している患者さんの場合、利便性を考えると、特定の敷地内薬局をかかりつけ薬局とするケースは多くないかもしれません。
かかりつけ薬局を持たず、処方箋をもらった医療機関ごとに異なる薬局を利用する場合、服用薬を一元・継続管理してもらいにくい点はデメリットといえます。
3-2.薬局のデメリット
政府はかかりつけ機能を充実させ、地域医療に貢献することを薬局に求めていることもあり、敷地内薬局が算定する特別調剤基本料は、通常の調剤基本料と比べて低く設定されています。
また、算定できる加算項目や薬学管理料も限定されており、経営面において一定のデメリットがあるといえるでしょう。
4.敷地内薬局が算定する「特別調剤基本料A」とは?
特別調剤基本料にはA・Bの区分があり、特別調剤基本料Aは一定要件を満たした敷地内薬局などが算定するものです。
4-1.特別調剤基本料Aの点数と施設基準
特別調剤基本料Aの算定点数は5点となっています。調剤基本料に係る届出を行っている薬局のうち、以下のいずれかの要件を満たす薬局が算定します。
● 同一敷地内においてオンライン診療受診施設を設置しているもの。ただし、医療法第30条の4第1項に規定する医療計画におけるへき地に所在する薬局に設置されている場合を除く。
参考:特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて|厚生労働省
4-2.特別調剤基本料Aの加算項目
特別調剤基本料Aの加算項目には、減点や算定できないものがあります。詳しく見ていきましょう。
4-2-1.減点される加算項目
特別調剤基本料Aを算定する場合、以下の加算項目については、それぞれの点数の100分の10に相当する点数となります。
● バイオ後続品調剤体制加算
● 在宅薬学総合体制加算
4-2-2.算定できない加算項目
以下の薬学管理料については、特別な関係を有する医療機関に対して情報提供を行っても算定できません。
● 吸入薬指導加算
● かかりつけ薬剤師訪問加算
● 外来服薬支援料1
● 服用薬剤調整支援料2
● 調剤後薬剤管理指導料
● 服薬情報等提供料
連携強化加算については、特別な関係を有する医療機関が、外来感染対策向上加算または感染対策向上加算の届出を行っている場合、算定できません。
4-2-3.使用薬剤料の算定制限
特別調剤基本料Aを算定する薬局は、1処方につき7種類以上の内服薬の調剤を行った場合には、所定点数の100分の90に相当する点数を算定します。内服薬については、以下のルールがあります。
(ロ)錠剤、カプセル剤については、1銘柄ごとに1種類と計算する。
(ハ)散剤、顆粒剤、液剤、浸煎薬および湯薬については、1銘柄ごとに1種類と計算する。
(ニ)(ハ)の薬剤を混合して服薬できるよう調剤を行ったものについては、1種類とする。
(ホ)同じ医療機関の異なる診療科の処方箋を複数同時に受け付けた場合、内服薬の「種類」については、それぞれの処方箋の内服薬の「種類」を合計して計算する。
参考:調剤報酬点数表|厚生労働省
参考:調剤報酬点数表に関する事項|厚生労働省
5.敷地内薬局に関するQ&A
敷地内薬局に関するQ&Aを紹介します。
5-1.敷地内薬局と医療モール型薬局の違いとは?
敷地内薬局とは、一般的に医療機関と同じ敷地内にある薬局のことを指しています。一方、医療モール型薬局は、同じ敷地内または建物内に複数の医療機関がある薬局のことです。
厚生労働省が公開している「個別事項について(その3)敷地内薬局」によると、医療モールは大きく分けて二つの種類があります。一つは敷地内に複数の戸建てクリニックが並ぶ「ビレッジ型」、もう一つは同じ建物内に複数の医療機関が入居する「ビル型」です。
5-2.敷地内薬局と門前薬局の違いとは?
門前薬局とは、特定の医療機関のすぐ近くにある薬局のことです。主にその医療機関からの処方箋を扱います。
その性質上、門前薬局と敷地内薬局は近い特徴を持つといえますが、2026年度調剤報酬改定で新設された門前薬局等立地依存減算は「特別調剤基本料Aを算定していない薬局」が対象となっており、敷地内薬局とは区別されています。
参考:令和8年度診療報酬改定の概要【調剤】|厚生労働省
5-3.今後、敷地内薬局の撤退が進むという見方がある理由とは?
2022年度、2024年度の調剤報酬改定に続いて、2026年度改定でも敷地内薬局に対する評価は厳しいものとなりました。
敷地内薬局は医療機関の敷地内に立地しているため、その医療機関からの処方箋への対応が中心となり、かかりつけ薬剤師・薬局としての機能を持ちにくいこと、薬局としての独立性を十分に確保できない場合があることなどが課題とされています。
参考:個別事項について(その3)敷地内薬局|厚生労働省
参考:病院の敷地内に所在する薬局に関する調査について|厚生労働省
そのため、今後の調剤報酬改定においても敷地内薬局は厳しく評価される可能性があり、状況によっては撤退を選択する企業が増えることが考えられるでしょう。
6.敷地内薬局への評価の動向に注目しよう
2024年度診療報酬改定に続き、2026年度改定においても、敷地内薬局への評価は厳しいものとなりました。依然として多くの薬局が立地に依存した経営を行っている現状が指摘されており、このままでは地域への移行も十分に進まない可能性があります。次回以降の改定でも敷地内薬局に対して厳しい評価が続く可能性があるため、今後の動向に注目していく必要があるでしょう。

薬剤師ライター。病院・薬局で幅広い診療科を経験。現在は2児の子育てをしながら、Webライターとして活動中。専門的な資料や情報をわかりやすくかみ砕き、現場のリアルに寄り添う言葉で伝えることを大切にしている。同じ薬剤師として、日々の悩みやモヤモヤに共感しながら、少しでも役立つヒントや気づきを届けられるように試行錯誤中。
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