薬剤師のスキルアップ 更新日:2024.07.26公開日:2024.05.23 薬剤師のスキルアップ

地域支援体制加算とは?算定要件や2024年度改定のポイントを解説

文:秋谷侭美(薬剤師ライター)

2024年度の診療報酬改定で、「地域支援体制加算」が見直されました。かかりつけ機能に係る薬局の評価を見直す観点から、地域支援体制加算の要件を強化し、点数が変更されています。今回は、地域支援体制加算の概要や点数、実績要件と施設基準を解説するとともに、届出や地域支援体制加算に関するQ&Aをお伝えします。

目次

1.地域支援体制加算とは?

地域支援体制加算とは、地域医療に貢献する薬局を評価するために設けられた調剤基本料の加算項目です。2024年の診療報酬改定では、一定の機能を備える薬局の体制を評価するため、以下の観点で見直されています。

 

● 地域医療に貢献するためのかかりつけ機能
● かかりつけ機能を推進するための要件

 

地域医療に貢献するには、来局する患者さんだけを対象にするのではなく、医療機関や高齢者施設との連携、在宅医療への取り組みなど、地域に根付いた活動が必要です。
 
加えて、医療機関を受診していない地域住民が気軽に健康相談ができる体制を整え、周知することも求められます。

 

1-1.地域支援体制加算見直しの背景

政府は2015年10月に「患者のための薬局ビジョン」を発表し、「2025年までに、すべての薬局がかかりつけ薬局としての機能を持つこと」、さらに、「薬剤師の業務を対物中心から対人中心にシフトしていくこと」を目標としています。
 
参照:「患者のための薬局ビジョン」~「門前」から「かかりつけ」、そして「地域」へ~ を策定しました|厚生労働省
 
これまで薬剤師は、医師が交付した処方箋のチェック機能となる役割を果たしてきました。薬物治療の安全性や有効性が向上するよう、患者さんの服用薬を一元的かつ継続的に把握した上で、処方チェックや丁寧な服薬指導を実施しています。残薬調整やジェネリック医薬品の利用率などの向上によって、医療費削減にも貢献してきました。
 
一方で、患者さんは受診した医療機関の近くにある薬局で調剤を受けることもあり、場合によっては、在住地での薬局利用ができていないケースもあります。また、薬剤師は対物中心の業務を行っていた経緯があることから、「十分に薬局の役割が発揮されていない」「患者さんの負担に見合うサービスを提供できていない」「医薬分業のメリットが感じられない」といった指摘もありました。
 
さらに、薬歴の記録をすることなく薬剤服用歴管理指導料を算定していた事案や、薬剤師の資格を持たない人が軟膏剤の混合を行っていた事案が発生し、薬剤師や薬局のあり方が大きく問われました。
 
こうした状況から、より薬剤師や薬局が本来の役割を果たせるよう「患者のための薬局ビジョン」が策定されました。2016年度、2018年度、2020年度、2022年度と行われた診療報酬改定では、「患者のための薬局ビジョン」の実現に向けて、その都度、薬剤師や薬局のあり方が明確化されています。
 
2024年度の診療報酬改定では薬局や薬局薬剤師に対して、かかりつけ機能や地域医療への貢献のさらなる強化を求めており、調剤基本料に加算される地域支援体制加算については、かかりつけ機能をより充実させることが評価につながるよう見直されました。
 
🔽 調剤基本料について解説した記事はこちら

2.地域支援体制加算の2024年度改定による変更点

2024年度の診療報酬改定では、やや複雑だった算定要件(実績要件・施設基準)が整備され、より明確な算定要件に改定されました。
 
実績要件については、調剤基本料1を算定している薬局は地域支援体制加算が算定しやすいよう実績回数を緩和しているのに対して、調剤基本料1以外を算定する薬局は2022年度の診療報酬改定とほとんど同じ実績要件を課しています。
 
施設基準については、2022年度の改定で実績要件としていた「1薬局当たりの年間回数」の項目の一部が施設基準に移行され、地域支援体制加算を算定するすべての薬局に求められる項目となりました。要件が重複していた以下については、実績要件に統合されています。

 

● 服薬情報等提供料の実績
● 薬剤師認定制度認証機構が認証している研修認定制度等の研修認定を取得した保険薬剤師が地域の多職種と連携する会議への出席回数

 

地域支援体制加算の区分については、2022年度の診療報酬改定と同様に4区分ですが、それぞれの算定点数は減点されます。また、緊急避妊薬の取扱いや、一般用医薬品や要指導医薬品等の販売、薬局敷地内禁煙やたばこ販売禁止などの要件が新設されました。次項から、地域支援体制加算の変更点について詳しく見ていきましょう。
 
🔽 2024年度調剤報酬改定について解説した記事はこちら

3.地域支援体制加算の点数

2024年度診療報酬改定では、地域支援体制加算1~4がそれぞれ7点ずつ減点されています。

 

■地域支援体制加算の算定点数
区分 点数
2024年度 2022年度
地域支援体制加算1 32点 39点
地域支援体制加算2 40点 47点
地域支援体制加算3 10点 17点
地域支援体制加算4 32点 39点

参照:令和6年度調剤報酬改定の概要【調剤】|厚生労働省

 

地域支援体制加算は、特別調剤基本料Bを算定する薬局は算定できません。特別調剤基本料Aを算定する薬局は、算定点数の100分の10に相当する点数を算定します。
 
🔽 特別調剤基本料について解説した記事はこちら

4.地域支援体制加算の算定要件①実績要件

2024年度の診療報酬改定でも、2022年度と同様に算定区分ごとに実績要件を定めていますが、2022年度と比較して分かりやすく明確な要件となっています。

 

■地域支援体制加算の実績要件
要件 2024年度 2022年度
調剤基本料1 調剤基本料1以外
夜間・休日等の対応実績 40回以上 400回以上 400回以上
麻薬の調剤実績 1回以上 10回以上 10回以上
重複投薬・相互作用等防止加算等の実績 20回以上 40回以上 40回以上
かかりつけ薬剤師指導料等の実績 20回以上 40回以上 40回以上
外来服薬支援料1の実績 1回以上 12回以上 12回以上
服用薬剤調整支援料の実績 1回以上 1回以上 1回以上
単一建物診療患者が1人の在宅薬剤管理の実績 24回以上 24回以上 24回以上
服薬情報等提供料に相当する実績 30回以上 60回以上 60回以上
小児特定加算の算定実績 1回以上 1回以上 なし
薬剤師認定制度認証機構が認証している研修認定制度等の研修認定を取得した保険薬剤師が地域の多職種と連携する会議への出席 1回以上 5回以上 5回以上

参照:令和6年度調剤報酬改定の概要【調剤】|厚生労働省

 

調剤基本料1を算定する薬局は、実績要件が多くの項目で緩和されているのに対して、調剤基本料1以外を算定する薬局は2022年度の要件と同様の実績数を満たすよう改定されています。
 
また、2024年度の改定では、「小児特定加算の算定実績」が実績要件に追加されました。

 

4-1.地域支援体制加算1

地域支援体制加算1の算定点数は32点です。調剤基本料1を算定している薬局が、「かかりつけ薬剤師指導料等の実績」を含む3つ以上の実績要件を満たすことで算定できます。

 

4-2.地域支援体制加算2

地域支援体制加算2の算定点数は40点で、調剤基本料1を算定している薬局が8つ以上の実績要件を満たすことで算定できます。

 

4-3.地域支援体制加算3

地域支援体制加算3の算定点数は10点です。調剤基本料1以外を算定している薬局が、「かかりつけ薬剤師指導料等の実績」「単一建物診療患者が1人の在宅薬剤管理の実績」を含む3つ以上の実績要件を満たすことで算定できます。

 

4-4.地域支援体制加算4

地域支援体制加算4の算定点数は32点です。調剤基本料1以外を算定する薬局が、8つ以上の実績要件を満たすことで算定できます。

 

4-5.改定による経過措置

すでに地域支援体制加算を算定している場合、今回の改定で追加・変更となった要件については、2024年8月末日まで経過措置が適用されます。経過措置を適用する薬局は、2023年8月1日から2024年7月末についての新基準に基づく実績を、2024年9月2日(最初の開庁日)までに届け出ることになります。
 
なお、2024年6月から調剤基本料の区分が変更になる場合は、変更区分での経過措置が適用されます。

 

参照:疑義解釈資料の送付について(その1)令和6年3月28日|厚生労働省

 

4-6.実績要件の詳細

地域支援体制加算の実績要件には、詳細な要件が定められている項目があります。詳しく見ていきましょう。

 

参照:特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて|厚生労働省

参照:調剤報酬点数表に関する事項|厚生労働省

 

4-6-1.「単一建物診療患者が1人の在宅薬剤管理の実績」について

情報通信機器を用いた場合の算定回数を除いた以下の指導料・指導費を算定した場合にカウントできます。

 

● 在宅患者訪問薬剤管理指導料
● 在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料
● 在宅患者緊急時等共同指導料
● 居宅療養管理指導費
● 介護予防居宅療養管理指導費

 

これらは、在宅協力薬局として連携した場合や同等の業務を行った場合も実績回数として含めることができます。ここでの「同等の業務」とは、在宅患者訪問薬剤管理指導料で規定される患者1人当たりの同一月内の算定回数の上限を超えて訪問薬剤管理指導業務を行った場合を指します。
 
🔽 在宅患者訪問薬剤管理指導料について解説した記事はこちら


 
🔽 居宅療養管理指導費について解説した記事はこちら

 

4-6-2.「薬剤師認定制度認証機構が認証している研修認定制度等の研修認定を取得した保険薬剤師が地域の多職種と連携する会議への出席」について

当該保険薬局当たりの直近1年間の出席回数を実績とします。それ以外については、薬局における直近1年間の処方箋受付回数1万回当たりの実績とし、1万回未満の場合は、処方箋受付回数1万回とみなしてカウントします。

 

4-6-3.「服薬情報等提供料に相当する実績」について

服薬情報等提供料に相当する実績とは、以下が挙げられます。

 

● 服薬管理指導料及びかかりつけ薬剤師指導料の特定薬剤管理指導加算2
● 調剤後薬剤管理指導料
● 服用薬剤調整支援料2
● かかりつけ薬剤師指導料を算定している患者に対し、服薬情報等提供料の算定に相当する業務を実施した場合

 

ただし、特別調剤基本料Aを算定している薬局は、厚生労働大臣が定める医療機関へ情報提供を行った場合は実績回数としてカウントできないこととされています。
 
🔽 服薬情報等提供料について解説した記事はこちら

 

4-6-4.かかりつけ薬剤師包括管理料に関する業務のうち実績回数に含められるものについて

かかりつけ薬剤師包括管理料を算定すると、地域支援体制加算に必要な実績となる以下のような薬学管理料が算定できませんが、実績回数としてはカウント可能です。

 

● 麻薬管理指導加算
● 重複投薬・相互作用防止等加算
● 在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料
● 外来服薬支援料
● 服用薬剤調整支援料
● 服薬情報等提供料

 

上記の薬学管理料に該当する業務を行った場合には、該当業務の実施回数を、地域支援体制加算を算定するのに必要な実績回数としてカウントすることが可能です。ただし、かかりつけ薬剤師包括管理料に関する業務を算定回数に含める場合は、薬剤服用歴等に詳細を記載するなど、業務を実施した記録を残す必要があります。
 
🔽 かかりつけ薬剤師指導料・包括管理料について解説した記事はこちら

 

4-6-5.在宅移行初期管理料について

在宅移行初期管理料は、地域支援体制加算の実績要件に含まれないと、疑義解釈資料で明記されています。実績要件をカウントする場合は注意しましょう。
 

参照:疑義解釈資料の送付について(その1)令和6年3月28日|厚生労働省

5.地域支援体制加算の算定要件②施設基準

2024年度の診療報酬改定では、地域支援体制加算の施設基準は11項目に分けられ、項目によっては細かく施設基準が設定されています。ここでは、地域支援体制加算の施設基準について、薬局の設備や体制、服薬指導などの要件を詳しく見てみましょう。

 

■地域支援体制加算の施設基準
(1)地域医療に貢献する体制を有することを示す実績
(2)地域における医薬品等の供給拠点としての対応
(ア)十分な数の医薬品の備蓄、周知(医療用医薬品1200品目)
(イ)薬局間連携による医薬品の融通等
(ウ) 医療材料及び衛生材料を供給できる体制
(エ)麻薬小売業者の免許
(オ)集中率85%超の薬局は、後発品の調剤割合70%以上
(カ) 取扱う医薬品に係る情報提供体制
(3)休日、夜間を含む薬局における調剤・相談応需体制
(ア)一定時間以上の開局
(イ)休日、夜間の開局時間外の調剤・在宅業務に対応できる体制
(ウ)当該薬局を利用する患者からの相談応需体制
(エ)夜間・休日の調剤、在宅対応体制(地域の輪番体制含む)の周知

(4)在宅医療を行うための関係者との連携体制等の対応
(ア)診療所又は病院及び訪問看護ステーションと円滑な連携
(イ)保健医療・福祉サービス担当者との連携体制
(ウ)在宅薬剤管理の実績 24回以上
(エ)在宅に係る研修の実施

(5)医療安全に関する取組の実施
(ア)プレアボイド事例の把握・収集
(イ)医療安全に資する取組実績の報告
(ウ)副作用報告に係る手順書を作成
(6)かかりつけ薬剤師の届出
(7)管理薬剤師要件
(8)患者ごとに服薬指導の実施、薬剤服用歴の作成
(9)研修計画の作成、学会発表などの推奨
(10)患者のプライバシーに配慮、椅子に座った状態での服薬指導
(11)地域医療に関連する取組の実施
(ア)一般用医薬品及び要指導医薬品等(基本的な48薬効群)の販売
(イ) 健康相談、生活習慣に係る相談の実施
(ウ)緊急避妊薬の取扱いを含む女性の健康に係る対応
(エ)当該保険薬局の敷地内における禁煙の取扱い
(オ)たばこの販売禁止(併設する医薬品店舗販売業の店舗を含む)

※(4)ウ:薬局当たりの年間の回数

 

2022年度の診療報酬改定では、地域支援体制加算の算定要件として「1薬局当たりの年間回数」を定めた項目がありました。

 

■2022年度の地域支援体制加算・算定要件「1薬局当たりの年間回数」
① 麻薬小売業者の免許を受けていること
② 在宅薬剤管理の実績 24回以上
③ かかりつけ薬剤師指導料等に係る届出を行っていること
④ 服薬情報等提供料の実績 12回以上
⑤ 薬剤師認定制度認証機構が認証している研修認定制度等の研修認定を取得した保険薬剤師が地域の多職種と連携する会議に1回以上出席

 

2024年度の診療報酬改定において、①、②、③は施設基準の要件とされ、④、⑤については、実績要件と統合されています。また、集中率85%以上の薬局の「後発品の調剤割合」についての要件が50%から70%へ変更されました。その他の変更点について詳しく見ていきましょう。

 

5-1.薬局体制の周知に関する要件

地域支援体制加算を算定する薬局は、以下のような施設に対して、休日や夜間など開局時間外に調剤や在宅業務に対応できる体制を整えていることを周知するよう求められています。

 

● 地域の行政機関
● 医療機関
● 訪問看護ステーション
● 福祉関係者

 

これは地域医療の確保を目的としたものです。救急医療の対策の一環として、輪番制に参加している場合も含まれます。ただし、年に1回当番として輪番に参加する場合は要件を満たしません。形式的に参加するものではなく、地域医療が十分に確保できるよう定期的な休日・夜間対応が求められています。
 
薬局の体制については、自局や同一グループで十分に周知することに加え、地域の行政機関や薬剤師会などを通して行っていることが求められます。市町村や地区単位での整理・周知に加え、定期的な更新が必要なため、行政機関や薬剤師会などと連携して対応するようにしましょう。周知する項目としては、休日・夜間に対応できる薬局の「名称」「所在地」「対応できる時間帯」「連絡先」などが挙げられます。

 

参照:疑義解釈資料の送付について(その2)令和6年4月12日|厚生労働省
参照:疑義解釈資料の送付について(その3)令和6年4月26日|厚生労働省

 

5-2.薬局間連携による医薬品の融通

薬局間での医薬品の融通は、以前から行っている薬局もあるでしょう。薬局間が連携して医薬品の融通を行うことを評価の対象としたのは、医薬品の安定供給を目的としています。

 
地域支援体制加算を算定する薬局は、地域の薬局に対して在庫状況の共有をするとともに、医薬品の融通を行う必要があります。

 

5-3.地域医療に関連する取り組み

地域医療に関連する取り組みとして、以下の要件が新設されました。

 

● 一般用医薬品及び要指導医薬品等(基本的な48薬効群)の販売
● 緊急避妊薬の取扱いを含む女性の健康に係る対応
● 当該保険薬局の敷地内における禁煙の取扱い
● たばこの販売禁止(併設する医薬品店舗販売業の店舗を含む)

 

一般用医薬品や要指導医薬品の販売については、48薬効群の医薬品すべてを薬局で常備する必要があります。薬局での販売体制を整えることが目的のため、ドラッグストアを併設している薬局の場合、ドラッグストア部門で一般用医薬品や要指導医薬品の備蓄し、必要に応じて来局者へ販売するといった対応でも差し支えないとされています。
 
緊急避妊薬については、適切に応需・対応し調剤を行う体制を整える必要がありますが、届出の際の調剤実績は不要です。オンライン診療による調剤を行うことも想定できるため、緊急避妊薬の調剤に関する研修を受講していることが望ましいとされています。
 
地域支援体制加算における「たばこ」については、健康増進法たばこ事業法で定義された以下のものです。

 

● 葉たばこが含まれる「製造たばこ(喫煙用・かみ用・かぎ用)」
● 製造たばこ以外のもので、喫煙用に販売されているもの

 

地域支援体制加算は地域医療への貢献に対する評価であるため、上記の定義に当てはまらない喫煙器具においても、適切に対応するよう求められています。

 
参照:疑義解釈資料の送付について(その1)令和6年3月28日|厚生労働省

6.地域支援体制加算の届出

2022年度の診療報酬改定では、地域支援体制加算の施設基準に係る届出は3種類ありました。2024年度からは事務手続きの簡素化・効率化のため、地域支援体制加算の届出様式が見直されます。
 
地域支援体制加算の届出については、2つの書類が必要です。1つは施設基準に関するもの、1つは実績要件に関するものです。各書類には記載上の注意事項があるため、届出に記載する際はよく確認するようにしましょう。
 
また、2024年度の診療報酬改定から調剤基本料等の届出時期などが変更になります。従来は前年3月から当年2月末までの実績をもとに、当年4月の最初の開庁日までに届出ることで、当年4月1日から算定可能とされていました。今後は、前年5月1日から当年4月末までの実績をもとに、当年6月の最初の開庁日までに届出ることで、当年6月1日から算定可能となります。
 
2024年6月1日より新たな施設基準にもとづき算定する場合は、2023年5月1日から2024年4月末までの期間の実績をもとに、2024年6月3日(最初の開庁日)までに届出を行います。

7.地域支援体制加算に関するQ&A

地域支援体制加算の届出や算定を正しく行うには、各区分の要件について理解する必要があります。ここでは『保険調剤Q&A 令和4年版』(日本薬剤師会・編)や「特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」(厚生労働省)に記載されている内容をQ&A形式で紹介します。

 

7-1.地域支援体制加算の施設基準である「地域の多職種と連携する会議」とは、どのような会議ですか?

「地域の多職種と連携する会議」とは、地域支援体制加算の実績要件の項目の1つに記載されているもので、次のような会議が該当するとされています。

 

● 市町村または地域包括支援センターが主催する地域ケア会議 ※1
● 介護支援専門員が主催するサービス担当者会議 ※2
● 地域の多職種が参加する退院時カンファレンス

※1 介護保険法第115条の48で規定されているもの
※2 指定居宅会議支援等の事業の人員及び運営に関する基準(平成11年厚生労働省令第38号)第13条第9号で規定されているもの

 
参照:介護保険法|e-Gov法令検索
参照:指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準|e-Gov法令検索
 

7-2.「地域の多職種と連携する会議」は非常勤の薬剤師が参加しても含められますか?

非常勤の薬剤師が参加したものも含められます。ただし、複数の薬局に所属する薬剤師の場合、実績として含められるのは1カ所の薬局のみとされています。

 

7-3.開局時間「週45時間以上開局」の規定について、祝日を含む週の開局時間はどのように考えますか?

地域支援体制加算の施設基準における開局時間は、「平日は1日8時間以上、土曜日または日曜日のいずれかの曜日には一定時間以上開局し、かつ週 45 時間以上開局していること」と定められています。
 
祝日の考え方としては、国民の祝日に関する法律に規定する休日と、1月2日、3日、12月29日、30日、31日が含まれる週以外の週の開局時間で要件を満たすかを判断することとされています。
 
参照:国民の祝日に関する法律|e-Gov法令検索

 

7-4.開局時間について「土曜日または日曜日のいずれかの曜日に一定時間以上開局」とあるが、「一定時間以上」とは具体的に何時間必要ですか?

地域支援体制加算の開局時間の要件については、地域住民のために必要な時に調剤や相談に応じられる体制を取っていることを評価したものです。そのため、具体的な開局時間は定められていません。
 
開局時間については、算定要件を満たすことを目的に開局することは避け、地域の医療機関や患者さんの需要に対応できるよう設定することとされています。

 

7-5.患者さんのプライバシーへの配慮とは、具体的にどのような対応が必要ですか?

治療に関する情報は患者さんのプライバシーに関わるため、会話のやり取りが他の患者さんに聞こえないように配慮する必要があります。
 
複数のカウンターがある薬局では、両サイドをパーティションで区切るといった対応が考えられます。待合室とカウンターの距離が短い場合には、十分な距離が取れるよう椅子の配置を工夫することも必要です。

 

7-6.連携する薬局の要件である「近隣」に定義はありますか?

地域支援体制加算の施設基準では、「24時間調剤・在宅対応体制の整備」が求められており、単独または近隣の保険薬局と連携することで要件を満たすこととされています。
 
この場合における「近隣」については、薬局間の距離等は定められておらず、「地域における患者さんの需要に対応できること等が必要」とされています。

 

7-7.調剤従事者等の資質向上のための研修とはどういった研修が含まれますか?

施設要件として、「調剤従事者等の資質の向上を図るため、研修実施計画を作成し、当該計画に基づき研修を実施すること」と定められており、この研修には次のものが該当します。

 

● 地域の薬剤師会による研修
● 研修認定薬剤師制度の対象学会やセミナー

研修時間や講師については規定がありませんが、研修に使用した資料は必要に応じて参照できるよう保存・管理することが求められています。

8.地域医療に貢献してかかりつけ機能の充実を

地域支援体制加算の算定要件から、薬局や薬剤師は患者さんが24時間いつでも相談できるよう、薬や健康の専門家であることが求められています。加えて、積極的に多職種と連携を取り、地域で患者さんの健康をサポートする必要があります。
 
政府が掲げる「患者のための薬局ビジョン」を今一度確認し、求められる薬剤師像・薬局像に沿った活動を行うことで、今後の改定にも対応できる体制を整えましょう。

 
🔽 調剤報酬に関連する記事はこちら







参考URL

令和6年度診療報酬改定について|厚生労働省

 

書籍

■日本薬剤師会・編『保険調剤Q&A 令和4年版』(じほう、2022年)


執筆/秋谷侭美(あきや・ままみ)

薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。

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