- 1.調剤後薬剤管理指導料(加算)とは?
- 2.調剤後薬剤管理指導料(加算)の2024年度改定における主な変更点
- 2-1.糖尿病患者さんの調剤後フォローに対する評価の見直し
- 2-2.慢性心不全患者さんが新たな対象に
- 3.調剤後薬剤管理指導料の点数
- 4.調剤後薬剤管理指導料の算定要件
- 4-1.医師の指示または患者さんの求めが必要
- 4-2.電話などによる確認が原則
- 4-3.医療機関への文書による情報提供と求められる対応
- 5.調剤後薬剤管理指導料を算定するタイミング
- 6.調剤後薬剤管理指導料が算定できないケース
- 6-1.調剤と同日に電話確認したケース
- 6-2.同時に算定できない薬学管理料
- 7.調剤後薬剤管理指導料で薬剤師に求められること
- 8.糖尿病治療や慢性心不全治療を安心安全に行うために
1.調剤後薬剤管理指導料(加算)とは?
調剤後薬剤管理指導料とは、対象患者さんが治療薬を適正に使用できるよう、医療機関と薬局が連携してサポートを行った場合に算定できる薬学管理料です。2024年度の診療報酬改定で、服薬管理指導料の「調剤後薬剤管理指導加算」の廃止と共に新設されました。
2024年度の改定では、糖尿病薬の範囲が拡大し、新たに慢性心不全患者さんも対象に加わっています。なお、調剤後薬剤管理指導料を算定するためには、地域支援体制加算の届出を行わなければなりません。
🔽 地域支援体制加算について詳しく解説した記事はこちら
2.調剤後薬剤管理指導料(加算)の2024年度改定における主な変更点
2024年度の診療報酬改定では、糖尿病薬の対象範囲が拡大されたことに加え、慢性心不全の患者さんに対しても要件を満たすことで算定が可能になります。ここでは、2024年度の診療報酬改定における調剤後薬剤管理指導料(加算)の主な変更点についてお伝えします
2-1.糖尿病患者さんの調剤後フォローに対する評価の見直し
従来の調剤後薬剤管理指導加算の施設基準では、対象となる薬剤がスルフォニル尿素系製剤(SU剤)とインスリン製剤に限定されていましたが、2024年度の改定からは「糖尿病用剤」と変更されています。
糖尿病の薬物治療は、適切な服薬やインスリン投与、食習慣・運動習慣などによる血糖コントロールが不可欠です。薬剤師の介入は、低血糖時の対処や継続的な服薬をサポートし症状悪化を防ぐのに効果的です。
2-2.慢性心不全患者さんが新たな対象に
慢性心不全患者さんを対象とした調剤後薬剤管理指導料2は、薬局薬剤師による服薬サポートが症状の悪化や再入院の予防につながると期待されたことから、2024年度改定で新設されました。
慢性心不全の患者さんにとって、複数の薬剤を正しく服用することは症状コントロールの面で不可欠です。しかし、入院中はうまくコントロールできていても退院後に服薬管理が正しく行えず、症状悪化により再入院するケースも少なくありません。
薬剤師が定期的な服薬管理や指導を行うことで、副作用出現時や症状悪化時に早期の段階で気づき、医療機関と連携を取れるようになるでしょう。薬剤師は、長期にわたる慢性心不全の管理において重要な役割を果たします。
参照:令和6年度診療報酬改定の概要【調剤】|厚生労働省
参照:個別改定項目について|厚生労働省
参照:第28回日本医療薬学会年会 シンポジウム14 多職種で心不全患者を支える|J-STAGE
🔽 2024年度調剤報酬改定について詳しく解説した記事はこちら
3.調剤後薬剤管理指導料の点数
調剤後薬剤管理指導料は、地域支援体制加算の届出を行っている薬局の薬剤師が、調剤後に患者さんに必要な薬学的管理指導などを行い、結果を文書によって医療機関へ情報提供した場合に算定できます。調剤後薬剤管理指導料の区分ごとの点数と対象患者さんは以下です。
区分 | 点数 | 対象患者 |
---|---|---|
調剤後薬剤管理指導料1 | 60点/月1回 | ● 糖尿病用剤が新しく処方された患者さん ● 糖尿病用剤の用法・用量の変更があった患者さん |
調剤後薬剤管理指導料2 | 60点/月1回 | ● 心疾患による入院歴があり、作用機序が異なる複数の治療薬の処方を受けている慢性心不全の患者さん |
慢性心不全の対象となる患者さんについては、日本循環器学会と日本心不全学会が作成する最新の「急性・慢性心不全診療ガイドライン」等を参照することとされています。
参照:ガイドラインシリーズ|日本循環器学会
参照:ステートメント・ガイドライン|日本心不全学会
4.調剤後薬剤管理指導料の算定要件
調剤後薬剤管理指導料は、以下のような算定要件が定められています。
■調剤後薬剤管理指導料の算定要件
② 医師の指示等および患者等の求めに応じて、
③ 調剤後に電話などで、その使用状況や副作用の有無などを患者さんに確認するといった薬学的管理指導を行い、
④ その結果などを医療機関に文書で情報提供する
4-1.医師の指示または患者さんの求めが必要
調剤後薬剤管理指導料を算定するには、医師などの指示または患者さんの求めが必要です。
医師から指示を受けるケースとして、退院時共同指導実施時などで保険医療機関や医師から依頼を受けたり、電話などで直接指示を受けたりする場合が挙げられます。
患者さん本人や家族などから希望されるケースでは、薬剤師がその必要性を認めた上で医師の了解を得た場合に、調剤後薬剤管理指導料を算定できます。
4-2.電話などによる確認が原則
使用状況や副作用の有無などの確認は、電話などの情報通信機器を使用して、患者さんや家族などに確認することを原則としています。電話などを用いることについて、あらかじめ患者さんから了承を得ましょう。
なお、電子メールで一斉送信するといった一方的な情報発信については、継続的服薬指導を実施したことにはなりません。患者さん一人ひとりに対して丁寧な対応をする必要があります。
電話などによる確認で、体調変化などの情報を得た場合には、医療機関へ情報提供するとともに、必要に応じて患者さんへ医療機関の受診を促すこととされています。
🔽 電話で服薬指導をする際の注意点を詳しく解説した記事はこちら
4-3.医療機関への文書による情報提供と求められる対応
医療機関へ情報提供する内容は、服薬や副作用の状況だけでなく、処方医などが得たい情報を提供しなければなりません。あらかじめ医療機関と連携して情報収集する内容を確認しておく必要があるでしょう。
また、体重の増減や塩分・水分の摂取状況など、薬学的管理に関係する情報についても積極的に収集することが望ましいとされています。
糖尿病薬や慢性心不全の薬剤以外の薬剤などによる副作用が疑われる場合であっても、医療機関や医師へ情報提供を行うなど、患者さんの安全を最優先した行動を取るようにしましょう。
参照:調剤報酬点数表に関する事項|厚生労働省
🔽 医師とのコミュニケーションのポイントについて解説した記事はこちら
5.調剤後薬剤管理指導料を算定するタイミング
調剤後薬剤管理指導料を算定するタイミングは、医療機関に対して情報提供を行い、その後、患者さんが処方箋を持参した時です。持参する処方箋に制限はありませんので、情報提供を行った医療機関以外の処方箋でも算定可能です。
糖尿病や慢性心不全と関係のない処方箋に対して調剤後薬剤管理指導料が算定されるケースもあるので、患者さんによっては明細書を確認した際に不信感を抱くかもしれません。あらかじめ、調剤後薬剤管理指導料を算定するタイミングを伝えておくことで患者さんも安心できるでしょう。
参照:疑義解釈資料の送付について(その1) 令和2年3月31日|厚生労働省
6.調剤後薬剤管理指導料が算定できないケース
調剤後薬剤管理指導料の算定の可否は、電話のタイミングや他の薬学管理料の算定状況によって異なります。ここでは、調剤後薬剤管理指導料が算定できないケースについて見ていきましょう。
6-1.調剤と同日に電話確認したケース
調剤後薬剤管理指導料は、調剤日と同日に電話確認を行った場合、算定できないことになっています。調剤から数日経過することで、副作用や症状の変化が処方変更によるものであるかを確認しやすくなるからです。調剤から一定期間空けることで情報量が増え、安全に薬物治療を行うための指導・管理ができるようになるでしょう。
また、調剤後に服薬状況の確認があることは、患者さんにとってもメリットがあります。例えば、一定期間服薬することで、医薬品の服用に対する悩みや不安などが明確になりやすいでしょう。電話確認の時に気になることを相談することもできます。次の来局を待たずに薬物治療の相談ができるのは患者さんのメリットといえます。
6-2.同時に算定できない薬学管理料
調剤後薬剤管理指導料は、以下を算定している患者さんには算定できません。
● 服薬情報等提供料(調剤後薬剤管理指導料の算定に関わる医療機関への情報提供時)
● 特別調剤基本料Bを算定する薬局
● 特別調剤基本料Aを算定する薬局のうち、特別な関係を有する医療機関に情報提供を行った場合
なお、2024年度改定で、「かかりつけ薬剤師指導料」を算定する患者さんが要件を満たすことで、調剤後薬剤管理指導料を算定できることになりました。
参照:調剤報酬点数表に関する事項|厚生労働省
🔽 かかりつけ薬剤師指導料・包括管理料について詳しく解説した記事はこちら
7.調剤後薬剤管理指導料で薬剤師に求められること
調剤後薬剤管理指導料は、治療薬を適正に使用して、安全安心な薬物治療を行うことを目的としています。薬剤師が服薬管理のサポートをすることで、アドヒアランスの向上だけでなく、体調変化の早期発見や症状悪化の予防などが期待できるでしょう。
糖尿病の治療において、低血糖の出現頻度や服薬コンプライアンスは症状コントロールのためにとても大切なポイントです。慢性心不全においては、服薬アドヒアランスや生活習慣が、症状悪化に影響します。
薬剤師による丁寧な服薬サポートが、糖尿病患者さんや慢性心不全患者さんのQOL向上につながります。調剤後も医療機関と連携してしっかりとサポートを行いましょう。
🔽 アドヒアランスについて詳しく解説した記事はこちら
8.糖尿病治療や慢性心不全治療を安心安全に行うために
糖尿病や慢性心不全の治療は、薬物治療だけでなく生活習慣や食生活の管理も治療効果に影響を与えます。そのため、薬剤師が調剤後に、服薬状況やトラブルを確認し、セルフケアの必要性を伝えることは、症状悪化による再入院・再治療の回避につながるでしょう。
調剤後薬剤管理指導料は、地域支援体制加算を算定する調剤薬局が要件であることから、薬剤師の地域包括ケアシステムの参画が求められているとも捉えられます。地域医療に根付いた活動を行うことで医療人としての役割を果たし、さらに地域住民から求められる薬剤師を目指したいものです。
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薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。
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