薬剤師のスキルアップ 公開日:2023.02.27 薬剤師のスキルアップ

薬剤調製料とは?2022調剤報酬改定で新設加算の算定要件や点数を解説

文:テラヨウコ(薬剤師ライター)

2022年4月の調剤報酬改定では、これまでの加算の一部が廃止されて新しい加算が設定されました。その一つが「薬剤調製料」です。また、よく似た名前の「調剤管理料」も新たに追加されています。薬剤調製料が新設された背景には、薬剤師の対人・対物業務に対する評価の見直しが関わっています。本記事では、保険薬局に勤める薬剤師に向けて、薬剤調製料について解説するとともに、調剤管理料との違いや自家製剤加算の変更点を紹介します。また、内服薬・屯服薬・外用薬別の算定要件と点数を一覧表にまとめました。

1.薬剤調製料とは

2022年の調剤報酬改定とともに新設された薬剤調製料ですが、そもそもなぜ新たに作られたのでしょうか。また、これまでの調剤料とはどのような違いがあるのでしょうか。ここでは、薬剤調製料が新設された背景と調剤料からの変更点をご紹介します。

 

1-1.調剤料に代わって新設された薬剤調製料

薬局で薬を調剤したときに発生する調剤報酬は「調剤技術料」「薬学管理料」「薬剤料」「特定保険医療材料料」の4つから成り立っています。これまで調剤技術料の内訳は調剤基本料と調剤料でしたが、今回の改定で調剤基本料と薬剤調製料へ変わりました
 
薬剤調製料の中には、錠剤を半錠に分割する際などに加算できる自家製剤加算や散剤、軟膏剤の計量混合調剤加算などが含まれています。一方で、これまで調剤料の中に含まれていた一包化に対する加算が、薬学管理料の中の「外来服薬支援料」に組み込まれるなど、単なる点数の増減にとどまらない全体的な見直しが行われました。

 

1-2.2022年調剤報酬改定のポイント

今回の調剤報酬改定のポイントは大きく分けると3つです。まずは、薬局薬剤師業務をこれまでの対物中心から対人中心への転換を推し進めること。次に、薬局の機能と効率性に応じた評価への見直し。そして、在宅業務や情報通信技術であるICT活用の推進です(厚生労働省「令和4年度調剤報酬改定の概要」より)。
 
これまでは、処方箋を受け取ってから薬を正しく準備するまでと、調剤録の作成が調剤料によって評価されていました。しかし調剤業務のうち、対人業務に関わる部分は別に評価する必要性があるとされ、薬剤調製料と調剤管理料の2つに分けられました。

 

調剤業務の評価を対人(調剤管理料)と対物(薬剤調製料)に分けることで、薬局薬剤師の対物(薬)中心の業務を対人(患者さん)へ転換しようという狙いです。
 
続いて、これまでの薬局業務の流れと、これからの薬局業務の流れの要点を調剤報酬改定の視点から解説します。厚生労働省の令和4年度調剤報酬改定の概要に、詳しい図解が載っているので気になる方はご覧ください。
 
薬局業務は、処方箋を受け付けた後以下のステップで構成されています。

 

①お薬手帳や薬歴などに基づく患者情報の分析・評価
②処方内容の薬学的分析
③調剤設計
④薬剤の調製・ピッキング
⑤最終監査
⑥薬の交付・服薬指導
⑦調剤録・薬歴の作成

 

これまでは、⑥薬の交付・服薬指導⑦薬歴の作成は主に薬学管理料、それ以外は主に調剤料で評価されていました。
 
しかし、調剤報酬改定後は、①患者情報の分析・評価②処方内容の薬学的分析③調剤設計は調剤管理料で、④薬剤調製・ピッキング⑤最終監査は薬剤調製料の対象となります。また、⑥薬の交付・服薬指導に加えて、服薬状況などの継続的なチェックへの評価は服薬管理指導料の管轄です。

 

そして、調剤管理料と服薬管理指導料で行った業務の内容を、それぞれ⑦調剤録・薬歴に記録するよう定められました。

 
🔽2022年度調剤報酬改定について詳しく解説した記事はこちら

2.薬剤調製料のポイント

新たに設定された薬剤調製料ですが、これまでの調剤料と似ているところもあれば変更点もあります。色付けしているところが今回の改定で変更された点なので、チェックしてみてください。

 

2-1.薬の種類別の算定要件と点数の一覧表

内服薬、屯服薬、浸煎薬、湯薬、注射薬、外用薬、内服用滴剤における薬剤調製料の算定要件と点数の一覧表は以下のとおりです。内服薬以外は算定要件・点数ともに、以前の調剤料から変更はありません。黄色の下線部分は、2022年調剤報酬改定の変更点です。

 

■薬剤調製料の算定要件と点数

薬剤調製料の算定要件と点数

出典:日本薬剤師会「調剤報酬点数表(令和4年)」をもとに作成
※黄色の下線部分は、2022年調剤報酬改定の変更点

 

 

また、改定前における内服薬の調剤料は処方日数によって異なっていました。しかし、改定後の薬剤調製料では日数にかかわらず一律で24点となっています。改定前の点数と比べると、全体的に点数が下がっていることが分かります。

 

■改定前・改定後の点数

薬剤調製料の改定前・改定後の点数

 

出典:日本薬剤師会「調剤報酬点数表(令和2年)」および「調剤報酬点数表(令和4年)」をもとに作成
※黄色の下線部分は、2022年調剤報酬改定の変更点

 

2-2.錠剤を分割したときの加算の変更点

これまでは割線がある錠剤を分割する場合」のみ取れていた自家製剤加算が、改定後は「錠剤を分割する場合」へと変更され、割線がある錠剤のみという限定がなくなりました。また、自家製剤加算の点数は、以前は20点/7日だったものが、2022年改定では実質4点/7日へと変更になっています。

 

■錠剤分割時の加算

薬剤調製料の錠剤分割時の加算

 

出典:日本薬剤師会「調剤報酬点数表(令和2年)」および「調剤報酬点数表(令和4年)、厚生労働省「別添3 調剤報酬点数表に関する事項(令和2年)」および「調剤報酬点数表 別表第三(令和4年)をもとに作成
※黄色の下線部分は、2022年調剤報酬改定の変更点

 

 

要件の改定によって、これまで自家製剤加算を取れなかった錠剤の分割も、自家製剤加算を取れるようになりそうです。その一方で点数は下がるため、調剤報酬計算の際はしっかり確認しましょう。

 

2-3.一包化に対する加算が調剤技術料から薬学管理料へ移動

今までは一包化を行うと、調剤技術料内の調剤料に設定された一包化加算で計算されていました。しかし、2022年改定後は薬学管理料における内容が変更された外来服薬支援料2で算定します。

 

点数は変わりませんが、算定にあたって①そのままでは薬の服用が困難な患者さんに対して②医師の了解を得て③必要な服薬指導を行うことが追記されました。薬の一包化への技術料ではなく、なぜ一包化が必要なのかを明確にし、アドヒアランスを向上させるサポートへの評価と考えられます。こちらも黄色の下線部分は、2022年調剤報酬改定の変更点です。

 

■一包化加算と外来服薬支援料2

一包化加算と外来服薬支援料2

 

出典:日本薬剤師会「調剤報酬点数表(令和4年)」をもとに作成
※黄色の下線部分は、2022年調剤報酬改定の変更点

 
🔽外来服薬支援料2(一包化加算)について詳しく解説した記事はこちら

3.薬剤調製料と調剤管理料の違い

今回の改定で薬剤調製料と似た名前の「調剤管理料」が新設されました。ここでは、2つの加算の特徴をご紹介します。また、薬剤調製料・調剤管理料が関わる内服薬の点数が、処方日数によって改定前後でどのように変化するのか見てみましょう。

 

3-1.薬剤調製料は対物業務、調剤管理料は対人業務への評価

薬剤調製料は「調剤技術料」に含まれており、薬剤のピッキングや調製、監査に対する技術的な加算です。つまり、薬剤主体(対物)の調剤業務への評価とされています。

 

一方で、調剤管理料は「薬学管理料」に含まれ、お薬手帳の確認やジェネリック医薬品希望の有無、薬歴に基づく薬学的分析・評価をはじめ、処方内容の薬学的分析、調剤設計に対する加算です。こちらは患者さん主体(対人)の調剤業務への評価として作られました。
 
それぞれの業務に対して細かく評価を分けることで、より患者さんに重きを置いた調剤・服薬指導を実施できるようにすることが目的だと考えられます。

 
🔽調剤管理料について詳しく解説した記事はこちら

 

3-2.改定前に比べて内服薬の調剤報酬は減るのか

これまで内服薬の調剤料は、処方日数が伸びるほど点数が増えていました。しかし、新設された薬剤調製料では一律に24点と定められています。そのため「長期処方では、これまでよりも点数が低くなってしまうのではないか」という懸念を抱く場合もあるでしょう。
 
下表は、内服薬の処方日数別に、改定前の調剤料と、改定後の薬剤調製料・調剤管理料の加算を比較したものです。細かい違いを確認しておきましょう。

 

■内服薬の調剤報酬点数

内服薬の調剤報酬点数

 

出典:日本薬剤師会「調剤報酬点数表(令和2年)」」および「調剤報酬点数表(令和4年)」をもとに作成
※黄色の下線部分は、2022年調剤報酬改定の変更点

 

このように、改定前後で点数が上がる処方日数のラインが異なります。そのため処方日数によっては以前よりも調剤報酬が増えたり、反対に減ったりする場合が出てきます。

4.調剤報酬改定で薬剤師が気をつけること

今回の調剤報酬改定では、今まで以上に対人業務が重視されています。正しく薬を渡すことはもちろん、患者さんの背景を考えた「より患者さんに寄り添った薬局業務」を意識する必要があります。

 

また、調剤報酬が改定されると、自己負担金が変わったことに気が付いて尋ねてくる患者さんもいるでしょう。あいまいな回答は患者さんの不信感や不安につながるため、薬局や薬剤師側がしっかり説明できるように調剤報酬を理解することが大切です。

5.調剤調製料を理解して正しく算定しよう

薬剤調製料と調剤管理料が新設された背景には、医療ニーズの変化があります。これまでは、薬局薬剤師は薬を正しく渡すという対物業務が重視されてきました。しかし、今後はより患者さん一人ひとりに向き合った調剤・服薬指導も大切とされる時代です。これからの薬剤師には、薬のプロフェッショナルという専門性と患者さんとのコミュニケーション能力を兼ね備えた存在になっていくことが求められるでしょう。

 
🔽調剤報酬に関連する記事はこちら








執筆/テラヨウコ

薬剤師。3人兄弟のママ。大学院卒業後、地域密着型の調剤薬局に勤務。大学病院門前をはじめ、内科・婦人科・皮膚科・心療内科・皮膚科門前などで多くの経験を積む。15年の薬剤師歴ののち独立して薬剤師ライターへ。健康や医療、美容に関する記事を執筆。休日は温泉ドライブや着物でのおでかけが楽しみ。

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