1.薬剤調製料とは
薬剤調製料とは、2022年度の調剤報酬改定で新設された調剤技術料です。調剤料の廃止に伴い、従来は調剤料として評価されていた薬剤調製や取り揃え・監査業務の評価として新設されました。
調剤料の見直しは、対物業務や対人業務を適切に評価することを目的に行われたものです。薬剤調製料は対物業務を評価する項目となっています。
参照:令和4年度調剤報酬改定の概要(調剤)|厚生労働省
1-1.2024年度調剤報酬改定のポイント
2024年度の調剤報酬改定では、薬剤調製料について、以下の加算項目が見直されました。
● 無菌製剤処理加算
● 自家製剤加算
● 嚥下困難者用製剤加算
薬剤師の業務内容が対物業務と対人業務のどちらに該当するのかということに加え、算定項目自体の必要性についても見直されています。
2022年度に続き、2024年度の診療報酬改定でも複数の算定項目が見直されているため、しっかりと変更点を把握しておきましょう。
1-1-1.在宅患者調剤加算
薬剤調製料の在宅患者調剤加算で評価されていた業務は、「調剤基本料」の在宅薬学総合体制加算1、2(新設)で評価されるようになり、在宅患者調剤加算は廃止となりました。
🔽 在宅薬学総合体制加算について解説した記事はこちら
1-1-2.無菌製剤処理加算
無菌製剤処理加算は、算定要件に「麻薬の注射薬を無菌的に充填し製剤する場合」が加わりました。
1-1-3.自家製剤加算
自家製剤加算は「薬価収載品が供給不足により調剤に必要な数量が確保できなかった場合」にも算定可能となり、近年の医薬品の供給不足に配慮した改定となっています。
1-1-4.嚥下困難者用製剤加算
嚥下困難者用製剤加算は、薬剤調製行為の評価を整理する観点から廃止となりました。
参照:令和6年度調剤報酬改定の概要【調剤】|厚生労働省
🔽 2024年度調剤報酬改定について解説した記事はこちら
2.薬剤調製料の算定要件・点数
内服薬、屯服薬、浸煎薬、湯薬、注射薬、外用薬、内服用滴剤における薬剤調製料の算定要件と点数は以下のとおりです。
種類 | 算定要件 | 点数 |
---|---|---|
内服薬 | 1剤につき、3剤分まで | 24点 |
屯服薬 | 処方箋受付1回につき | 21点 |
浸煎薬 | 1調剤につき、3調剤分まで | 190点 |
湯薬 | 1調剤につき、3調剤分まで | (イ)7日分以下:190点 (ロ)8~28日分 (1)7日分まで:190点 (2)8日分以上:10点/1日分 (ハ)29日分以上:400点 |
注射薬 | 処方箋受付1回につき | 26点 |
外用薬 | 1調剤につき、3調剤分まで | 10点 |
内服用滴剤 | 1調剤につき | 10点 |
それぞれの算定要件について詳しく見ていきましょう。
2-1.内服薬
内服薬の薬剤調製料は、内服用滴剤とそれ以外の内服薬とで算定点数が異なります。ここでは、内服用滴剤以外の内服薬について解説します。
内服薬は、1剤につき24点を算定します。内服薬における1剤の考え方は、以下の点について留意しましょう。
● 「食直前」は「食前」とみなす
上記のケースであっても、以下の場合は別剤として算定できます。
● 内服用固形剤(錠剤、カプセル剤、散剤等)と内服用液剤の場合
● 内服錠とチュアブル錠または舌下錠等のように服用方法が異なる場合
なお、同一有効成分で同一剤形の薬剤が複数ある場合は、その数に関わらず1剤とします。
また、内服薬の薬剤調製料は、処方箋受付1回につき、4剤以上ある場合は3剤としてカウントします。
ただし、浸煎薬や湯薬を同時に調剤した場合には、浸煎薬または湯薬の調剤数を内服薬の剤数に含めます。
2-2.屯服薬
屯服薬は、調剤した剤数や回数に関わらず、処方箋受付1回につき21点を算定します。
2-3.浸煎薬
浸煎薬とは、薬局で生薬を浸煎し、液剤として調製したものです。浸煎薬は日数に関わらず1調剤につき190点を算定します。処方箋受付1回につき4調剤以上ある場合は、3調剤まで算定可能です。
ただし、内服薬または湯薬を同時に調剤した場合には、内服薬については剤数を、湯薬については調剤数を浸煎薬の調剤数に含めます。
2-4.湯薬
湯薬とは、薬局で2種以上の生薬(粗切、中切または細切したもの)を混合調剤し、煎じる量ごとに分包したものを指します。湯薬は1調剤につき投薬日数に応じた点数を算定します。
浸煎薬と同様に、処方箋受付1回につき4調剤以上ある場合は、3調剤まで算定可能です。ただし、内服薬または浸煎薬を同時に調剤した場合には、内服薬については剤数を、浸煎薬については調剤数を湯薬の調剤数に含めます。
2-5.注射薬
注射薬の薬剤調製料は、調剤数や日数に関わらず、処方箋受付1回につき26点を算定します。
注射薬は、在宅医療における自己注射などを目的とした薬剤に限り支給可能です。
2-6.外用薬
外用薬の薬剤調製料は、処方箋受付1回につき3調剤まで、投与日数に関わらず1調剤につき10点を算定できます。
トローチは外用薬として算定し、同一有効成分で同一剤形の薬剤が複数ある場合は、その数に関わらず1調剤としなければなりません。
2-7.内服用滴剤
内服用滴剤とは、1回量が1から数滴と非常に少ない内服用の液剤のことです。スポイトや滴瓶などで分割使用するものを指します。
内服用滴剤は、投与日数に関わらず1調剤につき10点を算定します。
参照:調剤報酬点数表に関する事項|厚生労働省
3.薬剤調製料の加算項目
薬剤調製料の加算項目には、以下のようなものがあります。
● 麻薬・向精神薬・覚醒剤原料・毒薬加算
● 自家製剤加算
● 計量混合調剤加算
● 時間外等加算
● 夜間・休日等加算
それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
3-1.無菌製剤処理加算
無菌製剤処理加算は、無菌室やクリーンベンチ、安全キャビネットなどの無菌環境で、無菌化した器具を使用して無菌的な製剤を行うことで算定できる薬剤調製料の加算項目です。
無菌製剤処理加算は、1日分ごとに次の点数を加算できます。
要件 | 点数 |
---|---|
2以上の注射薬を混合して、中心静脈栄養法用輸液を無菌的に製剤する | 69点 (6歳未満の乳幼児:137点) |
抗悪性腫瘍剤を含む2以上の注射薬を混合して無菌的に製剤する | 79 点 (6歳未満の乳幼児:147 点) |
麻薬を含む2以上の注射薬を混合して無菌的に麻薬を製剤する、または麻薬の注射剤を無菌的に充填して製剤する | 69点 (6歳未満の乳幼児:137点) |
ただし、無菌製剤処理を伴わない調剤であって、患者さんが施用時に混合するものは、無菌製剤処理加算は算定できません。
🔽 無菌製剤処理加算について解説した記事はこちら
3-2.麻薬・向精神薬・覚醒剤原料・毒薬加算
麻薬等加算(麻薬加算、向精神薬加算、覚醒剤原料加算、毒薬加算)は、それぞれ1調剤につき以下の点数を加算します。
種類 | 点数 |
---|---|
麻薬 | 70点 |
向精神薬 | 8点 |
覚醒剤原料 | 8点 |
毒薬 | 8点 |
上記は、品目数や投薬日数に関係なく算定できますが、薬剤成分の含有量が麻薬等の取り扱いとなる規制含有量に満たない場合は算定できません。
なお、内服薬のほか、屯服薬、注射薬、外用薬についても加算可能です。
🔽 麻薬・向精神薬・覚醒剤原料・毒薬加算について解説した記事はこちら
3-3.自家製剤加算
自家製剤とは、販売されている医薬品の剤形では患者さんの薬物治療が難しい場合に、医師の指示に基づき、以下のような対応を行うことを指します。
● 主薬を溶解して点眼剤を無菌に製すること
● 主薬に基剤を加えて坐剤とすること
そのため、既製剤を小分けする場合や、薬局に在庫がないために薬価基準に収載されている薬剤と同一剤形および同一規格の製剤を調製した場合などは、自家製剤に該当しません。
ただし、医薬品の供給上の問題で、必要な薬剤数を確保できない場合は、自家製剤として扱うことができます。自家製剤加算の点数は以下のとおりです。
種類 | 点数 |
---|---|
【内服薬】 錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、エキス剤 |
20点(7日分ごと) |
【屯服薬】 錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、エキス剤 |
90点 |
【内服薬・屯服薬】 液剤 |
45点 |
種類 | 点数 |
---|---|
錠剤、トロ-チ剤、軟・硬膏剤、パップ剤、リニメント剤、坐剤 | 90点 |
点眼剤、点鼻・点耳剤、浣腸剤 | 75点 |
液剤 | 45点 |
自家製剤加算は、投薬量や投与日数などに関わらず1調剤につき加算します。内服薬については投与日数が7日、またはその端数を増すごとに20点を算定します。
なお、予製剤を使用する場合や錠剤を分割する場合は、上記の点数の100分の20に相当する点数を算定し、自家製剤加算を算定した場合は計量混合調剤加算が算定できません。
🔽 自家製剤加算について解説した記事はこちら
3-4.計量混合調剤加算
計量混合調剤とは、2種類以上の医薬品を計量・混合して、内服薬または屯服薬、外用薬を調剤することです。
計量混合調剤加算は、投薬量や投与日数に関わらず1調剤につき以下の点数を加算できます。
種類 | 点数 |
---|---|
液剤 | 35点 |
散剤または顆粒剤 | 45点 |
軟・硬膏剤 | 80点 |
計量混合調剤加算についても自家製剤加算と同様に、予製剤を使用する場合は100分の20を算定します。
3-5.時間外等加算
時間外等加算には、時間外加算、休日加算、深夜加算があります。それぞれの加算割合は以下で、重複して算定することはできません。
加算 | 基礎額に対する割合 |
---|---|
時間外加算 | 100分の100 |
休日加算 | 100分の140 |
深夜加算 | 100分の200 |
基礎額には、調剤基本料、薬剤調製料、無菌製剤処理加算、調剤管理料が含まれます。ただし、以下の加算項目は基礎額に含まれません。
● 自家製剤加算
● 計量混合調剤加算
● 重複投薬・相互作用等防止加算
● 調剤管理加算
● 医療情報取得加算
時間外加算や深夜加算を算定した場合は、薬剤服用歴等に処方箋の受付時間を記載しなければなりません。
時間外加算や休日加算、深夜加算の対象となる時間帯の標準は以下とされています。
加算 | 時間帯 |
---|---|
時間外加算 | ● 午前8時前と午後6時以降 ● 休日加算の対象となる休日以外の日で薬局の休業日 |
休日加算 | ● 日曜日 ● 国民の祝日 なお、1月2・3日、12月29・30・31日は休日として取り扱う |
深夜加算 | ● 午後10時から午前6時までの間 |
ただし、上記の時間帯であっても、各加算の要件を満たさない場合は時間外等加算を算定できません。
🔽 時間外等加算について解説した記事はこちら
3-6.夜間・休日等加算
夜間・休日等加算の対象となるのは、薬局が表示する開局時間内における以下の時間帯です。処方箋受付1回につき40点が算定できます。
● 休日加算の対象となる休日
なお、土曜日は午後1時から加算可能です。ただし、時間外等加算の要件を満たす場合には、夜間・休日等加算ではなく、時間外等加算を算定しなければなりません。
薬局の外側と内側に夜間・休日等加算を算定する日や受付時間帯を掲示し、算定した場合には処方箋の受付時間を患者さんの薬剤服用歴等に記載する必要があります。
4.薬剤調製料と調剤管理料の違い
薬剤調製料は「調剤技術料」に含まれており、薬剤のピッキングや調製、監査に対する技術的な加算です。つまり、薬剤主体(対物)の調剤業務への評価とされています。
一方で、調剤管理料は「薬学管理料」に含まれ、お薬手帳やジェネリック医薬品の希望有無の確認、薬歴に基づく薬学的分析・評価をはじめ、処方内容の薬学的分析、調剤設計に対する加算です。こちらは患者さん主体(対人)の調剤業務への評価として設けられました。
それぞれの業務に対して細かく評価を分けることで、より患者さんに重きを置いた調剤・服薬指導を実施できるようにしています。
参照:令和4年度調剤報酬改定の概要(調剤)|厚生労働省
🔽 調剤管理料について解説した記事はこちら
5.薬剤調製料を理解して正しく算定しよう
薬局薬剤師の業務は、薬を正しく渡すという対物業務から、患者さん一人ひとりに向き合った調剤・服薬指導を行う対人業務にシフトしています。これからの薬剤師は、薬のプロフェッショナルという専門性と患者さんとのコミュニケーション能力を兼ね備えた存在になっていくことが求められるでしょう。
🔽 調剤報酬に関連する記事はこちら
薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。
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