- 1.調剤報酬の「医療情報取得加算」とは?
- 1-1.医科診療報酬の「医療情報取得加算」とは?
- 1-2.医療DX推進体制整備加算との違いとは?
- 2.医療情報取得加算1・2の算定要件と点数
- 3.医療情報取得加算の施設基準
- 3-1.オンライン資格確認とは?
- 3-2.運用開始日の登録とは?
- 3-3.医療情報取得加算に関する情報を掲載するウェブサイトの具体例
- 4.医療情報取得加算を算定するときの注意点
- 4-1.患者さんの薬剤情報等が格納されていなかった場合は医療情報取得加算2を算定する
- 4-2.マイナンバーカードが使用できなかった場合は医療情報取得加算1を算定する
- 4-3.算定できないタイミングでも必要な薬剤情報等を取得・活用して調剤を行う
- 4-4.医療情報取得加算1の算定後6カ月以内に同加算2は算定できない
- 4-5.同一患者さんが複数の医療機関の処方箋を持参した場合に医療機関ごとの算定はできない
- 5.医療情報取得加算を正しく理解して算定しよう
1.調剤報酬の「医療情報取得加算」とは?
調剤報酬の「医療情報取得加算」とは、オンライン資格確認を導入している薬局が、患者さんの情報を十分に活用して調剤することなどを評価したものです。患者さんが来局時に専用の機械を使用してマイナンバーカードを提示することで患者情報が取得できます。
2024年度の調剤報酬改定により、従来の「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」から名称が変更されました。2023年4月からオンライン資格確認等システムの導入が原則義務化されたことを踏まえて、評価のあり方についても、体制整備に係る評価から診療情報の取得・活用に係る評価へと見直されています。
また、医療情報取得加算は、医科診療報酬においても見直されています。ここでは、医科診療報酬の「医療情報取得加算」について解説するとともに、医療DX推進体制整備加算との違いについてお伝えします。
参照:令和6年度調剤報酬改定の概要【調剤】|厚生労働省
🔽 2024年度調剤報酬改定について解説した記事はこちら
1-1.医科診療報酬の「医療情報取得加算」とは?
医科診療報酬の「医療情報取得加算」も調剤報酬と同様に、オンライン資格確認の導入により、患者さんの診療情報を活用して質の高い診療を行う体制を評価した加算です。医科診療報酬における「医療情報取得加算」は、以下の4区分あります。
区分 | 点数 | |
---|---|---|
初診時(月1回) | 医療情報取得加算1 | 3点 |
医療情報取得加算2 | 1点 | |
再診時(3カ月に1回) | 医療情報取得加算3 | 2点 |
医療情報取得加算4 | 1点 |
調剤報酬の「医療情報取得加算」と同じく、2024年度の医科診療報酬改定で「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」から名称が変更され、再診時にオンライン資格確認により患者さんの診療情報を取得した場合やほかの医療機関から患者情報の提供を受けた場合についても評価の対象となりました。
参照:令和6年度診療報酬改定の概要(医科全体版)|厚生労働省
参照:医科診療報酬点数表に関する事項|厚生労働省
1-2.医療DX推進体制整備加算との違いとは?
医療DX推進体制整備加算は、オンライン資格確認を行う体制に加え、電子処方箋や電子カルテ情報共有サービスを導入するといった医療DXに対応する体制を評価するものです。医療情報取得加算と医療DX推進体制整備加算の主な違いは以下のとおりです。
医療情報取得加算 | 医療DX推進体制整備加算 | |
---|---|---|
区分 | 1または2 | なし |
点数 | 3点または1点 | 4点 |
算定頻度 | 6カ月に1回 | 月1回 |
また、医療情報取得加算は調剤管理料の加算であるのに対し、医療DX推進体制整備加算は調剤基本料の加算である点も異なります。
🔽 医療DX推進体制整備加算について詳しく解説した記事はこちら
2.医療情報取得加算1・2の算定要件と点数
医療情報取得加算の算定要件と点数は、以下のとおりです。
区分 | 算定要件 | 点数 | 算定頻度 |
---|---|---|---|
医療情報取得加算1 | 施設基準を満たす薬局で調剤を行った場合 | 3点 | 6カ月に1回 |
医療情報取得加算2 | 1であってオンライン資格確認により患者さんに関わる診療情報を取得等した場合 | 1点 |
医療情報取得加算を算定する薬局は、以下について薬局内への掲示と、原則としてウェブサイトへの掲載を行い、必要に応じて患者さんへ説明することとされています。
● 処方箋を受け付けた患者さんについては、診療情報や薬剤情報などの情報を取得し、活用して調剤を行うこと
なお、医療情報取得加算を算定する薬局は、患者さんのアレルギー歴や副作用歴、ジェネリック医薬品への変更の意向、疾患に関する情報、併用薬、服薬状況、体調変化などについて、患者さんから聞き取りを行い、薬歴等に記載することとされています。
参照:調剤報酬点数表に関する事項|厚生労働省
3.医療情報取得加算の施設基準
医療情報取得加算の施設基準は、以下のとおりです。
2. オンライン資格確認を行うための体制
3. 以下の事項を薬局の見やすい場所に掲示
4. 3の掲示事項について、原則ウェブサイトに掲載
ウェブサイトへの掲載については、「2025年5月31日までの間に限り、基準を満たしているものとみなす」とする経過措置が設けられています。
なお、医療情報取得加算については、地方厚生(支)局長に届出を行う必要はありません。算定要件や施設基準を満たすことで算定できます。
参照:特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて|厚生労働省
3-1.オンライン資格確認とは?
オンライン資格確認とは、安全・安心で質の高い医療を提供するための医療DXの基盤となる仕組みのことです。日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会の三師会は、医療機関や薬局でのオンライン資格確認の導入を進め、医療機関の間で情報共有することで、患者さんがよりよい医療を受けられる環境づくりや事務コストの削減などを目指しています。
オンライン資格確認等システムを利用することで、以下のようなメリットがあります。
● 資格過誤によるレセプト返戻が削減できる
● 来院・来局前に保険資格の有効・無効を確認できる
● 患者さんが保険者へ限度額適用認定証等を申請しなくても限度額情報を取得できる
● 診療情報・薬剤情報や特定健診等の情報を把握できる
● 災害時に診療情報・薬剤情報や特定健診等の情報を確認できる
● 重複投薬等を発見できる
● 電子版お薬手帳と連携できる
ただし、資格確認の対象となる証類は、保険者がシステム管理をしている以下のものです。
● 国民健康保険被保険者証
● 後期高齢者医療被保険者証
自治体が管理している公費負担や地方単独事業に伴う証類については、検討段階となっています。
参照:オンライン資格確認の導入について(医療機関・薬局、システムベンダ向け)|厚生労働省
参照:オンライン資格確認の導入で事務コストの削減とより良い医療の提供を~データヘルスの基盤として~【医療機関・薬局の方々へ】|厚生労働省
3-2.運用開始日の登録とは?
医療情報取得加算を算定するためには、「医療機関等向け総合ポータルサイト」にて、運用開始日を登録する必要があります。
登録が完了したら、実際に運用を開始した日から算定可能となり、特別な手続きなどは必要ありません。
参照:医療情報・システム基盤整備体制充実加算の取扱いに関する疑義解釈資料の送付について(その1)令和4年9月5日|厚生労働省
4.医療情報取得加算を算定するときの注意点
医療情報取得加算1・2を算定するときの注意点について、2022年度、2024年度の疑義解釈資料を参考にまとめました。詳しく見ていきましょう。
4-1.患者さんの薬剤情報等が格納されていなかった場合は医療情報取得加算2を算定する
オンライン資格確認等システムを通じて患者情報の取得を試みたものの、情報が格納されていなかった場合、医療情報取得加算2を算定します。ただし、薬剤服用歴等にその旨を記載することとされています。
参照:医療情報・システム基盤整備体制充実加算の取扱いに関する疑義解釈資料の送付について(その1)令和4年9月5日|厚生労働省
4-2.マイナンバーカードが使用できなかった場合は医療情報取得加算1を算定する
マイナンバーカードが破損していたり、利用者証明用電子証明書が失効していたりすることで、マイナンバーカードが使用できなかった場合は、医療情報取得加算1を算定します。患者さんが薬剤情報等の取得について同意しなかった場合も、医療情報取得加算1を算定します。
参考:医療情報・システム基盤整備体制充実加算の取扱いに関する疑義解釈資料の送付について(その1)令和4年9月5日|厚生労働省
4-3.算定できないタイミングでも必要な薬剤情報等を取得・活用して調剤を行う
医療情報取得加算は6カ月に1回の算定となるため、6カ月を待たずに来局する患者さんについては、医療情報取得加算が算定できないタイミングで調剤をすることになるでしょう。そういった場合についても、必要な薬剤情報等を取得・活用して調剤を実施し、薬剤服用歴等に取得・活用した旨を記載しなくてはいけません。
参考:医療情報・システム基盤整備体制充実加算の取扱いに関する疑義解釈資料の送付について(その1)令和4年9月5日|厚生労働省
4-4.医療情報取得加算1の算定後6カ月以内に同加算2は算定できない
医療情報取得加算1を算定後、6カ月以内に同加算2を算定することはできません。また、医療情報取得加算2についても同様に、6カ月以内に同加算1の算定は不可とされています。
参考:医療情報・システム基盤整備体制充実加算の取扱いに関する疑義解釈資料の送付について(その1)令和4年9月5日|厚生労働省
なお、2024年度改定前の名称「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」で算定していた場合についても、医療情報取得加算1または2が算定できるのは6カ月を経過した後になります。
参考:疑義解釈資料の送付について(その1)令和6年3月28日|厚生労働省
4-5.同一患者さんが複数の医療機関の処方箋を持参した場合に医療機関ごとの算定はできない
1人の患者さんから複数の医療機関の処方箋を同時に受け付けた場合、医療機関ごとに医療情報取得加算を算定することはできません。患者さん1人につき6カ月に1回限り算定可能です。
参考:疑義解釈の送付について(その4)令和6年5月10日|厚生労働省
5.医療情報取得加算を正しく理解して算定しよう
オンライン資格確認は2023年4月から導入が原則義務付けられているため、医療情報取得加算1をすでに算定している薬局は多いのではないでしょうか。政府は旧保険証を原則廃止する方針であることから、薬局や薬剤師も患者さんへマイナ保険証の活用を促すことが求められています。その上で、医療情報取得加算2の算定に向けて積極的に取り組みましょう。
🔽 調剤報酬に関連する記事はこちら
薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。
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