薬剤師のスキルアップ 更新日:2024.04.05公開日:2023.12.13 薬剤師のスキルアップ

薬剤師の平均年収はいくら?男女別・年代別・都道府県別データを紹介

文:篠原奨規(薬剤師)

薬剤師の平均年収がいくらくらいかご存じでしょうか? 平均年収と自身の年収を比較することで、働き方に見合った年収をもらえているかが分かるでしょう。場合によっては、もっと年収アップを目指せる可能性が見えてくるかもしれません。この記事では、薬剤師の平均年収を男女別・年齢別・都道府県別・業種別に解説するとともに、現役の薬剤師が年収をアップさせるためのポイントやコツ、薬剤師の将来性についても解説します。

1.薬剤師の平均年収

厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、薬剤師の平均年収は577.9万円(「きまって支給する現金給与額」×12カ月+「年間賞与その他特別給与額」の小数点第二位以下を四捨五入)と報告されています。
 
一方、国税庁「令和4年分 民間給与実態統計調査」によると、給与所得者(薬剤師含む)の平均年収は458万円でした。調査年度は異なるものの、薬剤師は比較的年収の高い職業と言えるでしょう。
 
年収とは、一般的に所得税や社会保険料など各種控除をする前の、年間総支給のことです。毎月支払われる定期給与と一時金として支払われる賞与を合算することで、自身の年収が分かります。
 
参照:令和5年賃金構造基本統計調査 結果の概況|厚生労働省
参照:令和4年分 民間給与実態統計調査|国税庁

2.薬剤師の男女別の平均年収

厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、男性の薬剤師の平均年収は622.56万円でした。一方、女性の薬剤師の平均年収は542.78万円で、男性の薬剤師の方が年間で約80万円高い収入になっていることが分かります。
 
同調査における、薬剤師の男女別の平均年収は以下のとおりでした。

 

薬剤師の男女別平均年収
性別 平均年収 平均月収 平均年齢
男性 622万5,600円 45万1,000円 41.0歳
女性 542万7,800円 39万1,200円 39.7歳

※月収は「きまって支給する現金給与額」、年収は「きまって支給する現金給与額」×12カ月+「年間賞与その他特別給与額」で算出

3.薬剤師の年齢別の平均年収

「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、薬剤師の平均年収は男女ともに20代、30代、40代、50代と、おおむね年齢に比例して上がる傾向にあります。
 
60代以降については、企業によっては60歳で定年となり、以降はパートなどに勤務形態が変化するために、平均年収が下がっていることが考えられます。薬剤師の年齢や勤務形態も年収を左右する要因と言えるでしょう。
 
同調査における、薬剤師の年齢別の平均年収は以下のとおりでした。

 

薬剤師の年齢・男女別平均年収
年齢 男性平均年収 女性平均年収
20~24歳 398万2,800円 334万2,400円
25~29歳 478万2,000円 467万1,300円
30~34歳 571万7,300円 536万8,800円
35~39歳 692万2,600円 578万7,900円
40~44歳 650万6,500円 589万7,900円
45~49歳 746万200円 526万1,800円
50~54歳 710万2,800円 675万1,600円
55~59歳 763万3,300円 695万7,700円
60~64歳 589万1,500円 559万8,300円
65~69歳 504万4,700円 716万2,900円
70歳~ 470万8,200円 546万4,400円

※年収は「きまって支給する現金給与額」×12カ月+「年間賞与その他特別給与額」で算出

 
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3-1.新卒薬剤師の平均年収

「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、新卒薬剤師の初任給の目安となる「経験年数0年目の所定内給与額」は、30.68万円でした。
 
時間外手当(残業代)などは含まない金額のため、あくまで参考ではありますが、賞与などは考慮せず単純に12カ月分にすると、新卒薬剤師の平均年収は368.2万円と計算できます。

 
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4.薬剤師の都道府県別の平均年収

「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、薬剤師の平均年収が最も高い都道府県は広島県で、最も低いのは徳島県でした。
 
両者を比較すると、240万円以上の差があります。薬剤師の年収相場は、勤務先の地域・都道府県によっても異なると言えるでしょう。
 
同調査における、エリア別、都道府県別の薬剤師の平均年収は以下のとおりです。

 

薬剤師の都道府県別平均年収(北海道・東北地方)
都道府県 平均年収 平均月収 平均年齢
北海道 524万5,500円 38万4,400円 40.3歳
青森 498万6,200円 37万2,100円 35.8歳
岩手 517万9,100円 36万3,700円 38.7歳
宮城 672万6,000円 46万1,000円 42.7歳
秋田 680万4,500円 47万8,300円 41.2歳
山形 614万9,100円 41万9,600円 41.7歳
福島 551万1,800円 37万7,600円 39.7歳

 

薬剤師の都道府県別平均年収(関東地方)
都道府県 平均年収 平均月収 平均年齢
茨城 520万7,500円 38万3,100円 36.4歳
栃木 586万9,900円 40万4,700円 38.4歳
群馬 606万3,000円 43万7,800円 44.8歳
埼玉 516万8,500円 38万1,700円 38.9歳
千葉 591万4,400円 41万7,100円 45.4歳
東京 588万7,800円 42万3,200円 36.5歳
神奈川 598万3,600円 43万5,900円 39.3歳

 

薬剤師の都道府県別平均年収(中部地方)
都道府県 平均年収 平均月収 平均年齢
新潟 509万5,500円 34万9,500円 36.7歳
富山 583万2,600円 43万1,500円 44.4歳
石川 593万1,700円 45万3,700円 45.0歳
福井 598万8,000円 41万2,200円 44.3歳
山梨 612万9,500円 42万6,500円 34.2歳
長野 548万2,700円 39万2,100円 42.1歳
岐阜 560万3,800円 38万8,000円 44.7歳
静岡 552万1,100円 40万4,700円 37.8歳
愛知 611万5,900円 46万800円 44.4歳

 

薬剤師の都道府県別平均年収(近畿地方)
都道府県 平均年収 平均月収 平均年齢
三重 627万3,500円 46万2,100円 46.5歳
滋賀 552万1,700円 39万6,600円 41.4歳
京都 499万7,300円 36万5,500円 36.0歳
大阪 606万7,100円 42万6,900円 39.3歳
兵庫 595万400円 43万7,400円 38.4歳
奈良 529万300円 36万5,800円 36.8歳
和歌山 581万4,700円 37万9,300円 40.1歳

 

薬剤師の都道府県別平均年収(中国地方)
都道府県 平均年収 平均月収 平均年齢
鳥取 630万2,700円 41万1,100円 44.6歳
島根 600万100円 42万3,200円 41.1歳
岡山 603万9,700円 47万9,600円 41.1歳
広島 705万9,500円 46万4,200円 46.5歳
山口 602万6,900円 41万7,400円 43.3歳

 

薬剤師の都道府県別平均年収(四国地方)
都道府県 平均年収 平均月収 平均年齢
徳島 463万7,100円 33万9,500円 40.2歳
香川 604万9,400円 41万3,300円 45.3歳
愛媛 588万6,800円 42万7,800円 47.7歳
高知 491万2,100円 31万9,200円 37.2歳

 

薬剤師の都道府県別平均年収(九州・沖縄地方)
都道府県 平均年収 平均月収 平均年齢
福岡 596万8,800円 44万8,400円 41.0歳
佐賀 612万6,900円 44万3,300円 41.9歳
長崎 586万4,600円 39万9,500円 41.8歳
熊本 499万1,800円 37万4,800円 34.8歳
大分 561万9,800円 37万2,900円 42.8歳
宮崎 578万4,500円 44万6,100円 44.3歳
鹿児島 644万4,800円 44万2,100円 45.7歳
沖縄 561万7,500円 40万6,500円 39.5歳

※月収は「きまって支給する現金給与額」、年収は「きまって支給する現金給与額」×12カ月+「年間賞与その他特別給与額」で算出

 

薬剤師の平均年収が高い都道府県ランキング
順位 都道府県 平均年収
1位 広島 705万9,500円
2位 秋田 680万4,500円
3位 宮城 672万6,000円

 
🔽 全国の薬剤師年収ランキングを紹介した記事はこちら

5.薬剤師の業種別の平均年収

5-1.病院・薬局・製薬会社で働く薬剤師の平均年収

厚生労働省「第24回医療経済実態調査」によると、一般病院の薬剤師の平均年収は568.9万円、保険薬局の一般薬剤師の平均年収は486.4万円でした。
 
参照:第24回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告 -令和5年実施-|厚生労働省
 
また、厚生労働省「職業情報提供サイト(日本版O-NET) job tag」によると、「医薬情報担当者(MR)」の平均年収は578.3万円となっています。
 
参照:医薬情報担当者(MR)|職業情報提供サイト(日本版O-NET) job tag
 
薬剤師とMRの年収は調査データが異なるため、あくまで参考値ではありますが、病院薬剤師や薬局の一般薬剤師と比べると、企業(MR)の年収はやや高い金額になっています。
 
MR(医薬情報担当者)は病院や薬局勤務の薬剤師と比べて、年次の昇給額が大きい傾向にあり、自身の成果によってインセンティブが出ることもあるため、働き方によっては高い年収が期待できるでしょう。
 
また、同じ薬局薬剤師の中でも、管理薬剤師と一般薬剤師では、平均年収に約250万円の差が見られました
 
各業種における薬剤師の平均年収は以下のとおりです。

 

薬剤師の業種別平均年収
業種 平均年収
病院薬剤師 568.9万円
薬局 管理薬剤師 734.9万円
薬剤師 486.4万円
企業(MR) 578.3万円

※病院・薬局の年収は「第24回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告 -令和5年実施-|厚生労働省」を参照(小数点第二位以下四捨五入)
※企業(MR)の年収は「医薬情報担当者(MR)|職業情報提供サイト(日本版O-NET) job tag」を参照

 
🔽 病院薬剤師について詳しく解説した記事はこちら

 
🔽 薬局薬剤師について詳しく解説した記事はこちら

 
🔽 MRについて詳しく解説した記事はこちら

 

5-2.公務員薬剤師の平均年収

国家公務員として病院などで働く公務員薬剤師の給料(俸給)は「医療職俸給表(二)」が適用されます。
 
人事院「令和5年国家公務員給与等実態調査」の結果における「医療職俸給表(二)」の平均俸給額31万3,583円の12カ月分と、令和5年人事院勧告におけるボーナス支給月数の年間4.5カ月分を合算すると、平均年収は517.4万円になります。
 
参照:人事院規則九―八(初任給、昇格、昇給等の基準)|e-Gov法令検索

参照:令和5年国家公務員給与等実態調査報告書|人事院
参照:令和5年 人事院勧告|人事院

 
🔽 公務員薬剤師について詳しく解説した記事はこちら


6.薬剤師が年収を上げるには?

薬剤師の方の中には、現状の年収では満足していない方もいるでしょう。年収をアップさせるためのポイントについてお伝えします。

 

6-1.薬剤師の認定資格や専門資格を取得する

認定資格や専門資格の取得により、手当等が発生することを見込んだ年収アップが期待できます。例えば、研修認定薬剤師の資格は、国が推進しているかかりつけ薬剤師になるための要件となっています。資格を取得し、かかりつけ薬剤師になることができれば、年収交渉に有利に働くでしょう。
 
🔽 かかりつけ薬剤師について詳しく解説した記事はこちら


 
また「専門医療機関連携薬局」の認定要件として専門資格を持つ薬剤師の配置が必要であることから、認定を目指す薬局では専門薬剤師に対して手当を支給する薬局もあります。専門資格は容易に取得できるものではありませんが、年収アップに向けて挑戦してみるのもよいでしょう。
 
参照:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律(令和元年法律第63号)の概要|厚生労働省

 

6-2.管理薬剤師などの管理職を目指す

管理薬剤師をはじめとする管理職になると、大幅な年収アップを実現できる可能性があります。先に紹介した、業種別の平均年収からも分かるとおり、薬局で働く一般薬剤師の平均年収は486.4万円である一方、管理薬剤師の平均年収は734.9万円と大きな差が見られます。
 
管理薬剤師になると、通常の薬剤師業務に加えて管理業務も行うため負担は大きくなりますが、経験を積むことで自身のスキルアップにもつながります。マネジメントスキルを身に付けて、エリアマネージャーや薬局長などのキャリアアップができれば、さらなる年収アップも期待できます。管理職に興味があり、年収アップを目指しているなら、積極的に上長に相談してみてはいかがでしょうか。

 
🔽 管理薬剤師について詳しく解説した記事はこちら

 

6-3.年収が高い職場へ転職する

今の職場での年収アップが難しいようなら、思い切って転職を検討するのも一案です。求人先の求める人材とマッチして年収交渉がうまくいけば、今よりも高い年収をもらえる可能性があります。
 
面接の時には「管理薬剤師の経験がある」「在宅医療の知識が豊富」など薬剤師としての経験やスキルを積極的にアピールしましょう。
 
初めての転職で不安な場合は、転職エージェントを利用するのがおすすめです。自身の希望に合った転職先を探してくれたり、履歴書の書き方や面接のポイントについて丁寧に教えてもらえたりとさまざまなサポートを受けられます。

7.薬剤師に将来性はある?

国家資格を必要とする薬剤師であっても、将来安泰とは言い切れません。例えば、近年では業務の効率化のために調剤機器を導入し、薬剤師が行っていた調剤業務の一部を調剤機器に置き換える薬局が増えつつあります。機械化やAI技術の発展により、薬剤師に求められる役割や仕事内容は今後変化していくでしょう。
 
厚生労働省が策定した「患者のための薬局ビジョン」では、薬剤師としての役割発揮に向けて、対物業務から対人業務への働き方の変化が求められています。対人業務を積極的に行い、かかりつけ薬局・かかりつけ薬剤師として患者さんに貢献するには、薬や病気に関する専門知識やコミュニケーションスキルが必要です。
 
これらの知識やスキルを身に付けるために、専門書や啓発書を読んだり、研修や学会に参加したりして、自己研鑽を続けていきましょう。
 
参照:薬剤師の需給調査|厚生労働省
参照:「患者のための薬局ビジョン」~「門前」から「かかりつけ」、そして「地域」へ~ を策定しました|厚生労働省

 
🔽 薬剤師の将来性について詳しく解説した記事はこちら

8.スキルを高め、年収アップに向けて行動しよう

薬剤師は一般の給与取得者と比べて、高い年収を得やすい傾向にあります。とはいえ、性別や年齢、業種、勤務先の都道府県によって年収に差が出るため、一概には言えません。パートやアルバイトと、正社員でも給与は異なるため、勤務形態にもよるでしょう。
 
これから年収アップを目指したい場合には、認定資格や専門資格を取得したり、管理職を目指したり、転職を検討したりするなど、取り組めることから始めてみましょう。
 
働き方に見合った年収を得るためにも、日々のスキルアップを続けながら、患者さんや地域社会に貢献できる薬剤師を目指しましょう。

 
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執筆/篠原奨規

2児の父。調剤併設型ドラッグストアで勤務する現役薬剤師。薬剤師歴8年目。面薬局での勤務が長く、幅広い診療科の経験を積む。新入社員のOJT、若手社員への研修、社内薬剤師向けの勉強会にも携わる。音楽鑑賞が趣味で、月1でライブハウスに足を運ぶ。

  

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