1.薬剤師で「年収1000万円以上」を目指すのは10人に1人?
厚生労働省が公開している「薬剤師の需給動向把握事業」報告書(2021年3月31日)によると、薬局もしくは医療機関で働く薬剤師のうち、「理想的な年収」が「1000万円以上」と回答したのは約10%でした。
薬局に従事する薬剤師、医療機関に従事する薬剤師の理想的な年収についての調査結果は、それぞれ以下のとおりです。
理想的な年収 | 薬局勤務 | 医療機関勤務 |
---|---|---|
200万円未満 | 7.2% | 0.6% |
200~300万円未満 | 3.9% | 0.6% |
300~400万円未満 | 6.7% | 3.4% |
400~500万円未満 | 7.3% | 10.2% |
500~600万円未満 | 14.5% | 21.2% |
600~700万円未満 | 21.9% | 22.4% |
700~1000万円未満 | 29.5% | 30.6% |
1000万円以上 | 8.9% | 11.0% |
薬局勤務・医療機関勤務ともに、最も回答数が多かった理想の年収は「700~1000万円未満」でした。
2.薬剤師で年収1000万円は可能?
厚生労働省が公開している「薬剤師の需給動向把握事業」報告書(2021年3月31日)によると、薬局もしくは医療機関に勤務する薬剤師のうち、年収1000万円以上の割合は約2%(1928人中39人)でした。
薬局に従事する薬剤師、医療機関に従事する薬剤師の年収状況(2019年における総支給額)は、それぞれ以下のとおりです。
年収 | 薬局勤務 (1585人) |
医療機関勤務 (343人) |
||
---|---|---|---|---|
人数 | 割合 | 人数 | 割合 | |
200万円未満 | 203人 | 12.8% | 6人 | 1.7% |
200~300万円未満 | 116人 | 7.3% | 11人 | 3.2% |
300~400万円未満 | 146人 | 9.2% | 40人 | 11.7% |
400~500万円未満 | 221人 | 13.9% | 102人 | 29.7% |
500~600万円未満 | 343人 | 21.6% | 88人 | 25.7% |
600~700万円未満 | 284人 | 17.9% | 38人 | 11.1% |
700~1000万円未満 | 235人 | 14.8% | 56人 | 16.3% |
1000万円以上 | 37人 | 2.3% | 2人 | 0.6% |
数は少ないものの、1000万円以上の年収を得ている薬剤師は一定数いることから、薬剤師として年収1000万円は不可能ではないといえます。
ただし、上記のとおり、年収1000万円以上の薬剤師はごく一部です。国税庁「令和5年分民間給与実態統計調査-調査結果報告-(第16表)」によると、1年を通じて勤務した給与所得者のうち、年収1000万円を超える人の割合は約5.5%であることから、日本全体で考えても年収1000万円以上を稼げる人はごくわずかであることが分かります。
また、薬局で働く薬剤師の方が、医療機関で働く薬剤師よりも、年収1000万円以上の割合が高くなっています。
2-1.薬剤師の平均年収はいくら?
厚生労働省の「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、薬剤師の平均年収は577.9万円(「きまって支給する現金給与額」の12カ月分と「年間賞与その他特別給与額」を合算し、小数点第二位以下を四捨五入)でした。
ただし、薬剤師の年収は、性別や年齢などによって相場が異なります。年齢を重ねるほど年収が上がりやすく、定年前後を境に下がりやすくなるのが一般的でしょう。また、女性はライフステージによって働き方を変えるケースも多いため、女性の方が男性より平均年収が低くなる傾向にあります。
同調査では、男女別や年齢別、都道府県別のデータについても報告されています。薬剤師の平均年収について詳しく知りたい方は、次の記事をご覧ください。
🔽 薬剤師の年収について解説した記事はこちら
3.薬剤師が年収1000万円を稼ぐには?
ここでは、薬剤師が年収1000万円を稼ぐための方法として、3つの具体例を紹介します。ただし、勤め先の方針や経営状況、環境などによっては、年収1000万円を達成するのは難しい可能性があり、必ず1000万円を稼げる訳ではないことに留意しましょう。
3-1.管理薬剤師を目指す
管理薬剤師は一般の薬剤師と比較して、平均年収が高い傾向にあります。厚生労働省「第24回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告-令和5年実施-」によると、薬局で働く一般薬剤師の平均年収は486.4万円だったのに対して、管理薬剤師の平均年収は734.9万円でした。
そのため、まずは管理薬剤師を目標とし、その後の昇給・昇進などを経て年収1000万円を目指すという方法が考えられます。
3-2.大手製薬会社や外資系企業に転職する
大手の製薬会社や外資系企業は給与水準が高い傾向にあります。また、医療関連の企業であれば、薬剤師としての知識や経験を生かす機会もあるでしょう。そのため、製薬企業のMRや外資系企業のCRAなどに転職して、年収1000万円を目指すのもひとつの方法といえます。
ただし、MRやCRAは、MR試験を受けたり、GDPについて勉強したりする必要があるでしょう。今までと全く異なる業種に転職する場合には、新しい知識を身に付けなければならないことも念頭に置いておきましょう。
🔽 MRについて解説した記事はこちら
🔽 CRAについて解説した記事はこちら
3-3.独立開業する
独立開業をするのも、年収1000万円を目指す方法です。薬剤師の独立開業は、自分の理想とする薬局を実現できる上に、医療業界は比較的景気の影響を受けにくいとされているので、安定した利益を得られる可能性もあるでしょう。
また、会社を経営することになるため、薬物治療だけでなく、医療や経営に関する法律、保険制度などへの深い知識を得られます。医師や薬剤師に加えて、経営者とのつながりもできるため、さまざまな人脈を作れるでしょう。
ただし、当然ながら事業がうまくいく保証はなく、トラブルが起こった場合には自身で解決しなければなりません。独立開業をするのであれば、そういった責任やリスクを背負う覚悟が必要です。
🔽 薬剤師の独立開業について解説した記事はこちら
4.薬剤師の年収アップのポイント
前述のとおり、年収1000万円を目指すのであれば、薬剤師としてのスキルアップやキャリアアップが大切です。ここでは、薬剤師が年収アップを実現するためのポイントについてお伝えします。
4-1.実務経験・勤続年数を重ねる
まずは、薬剤師としての実務経験を積み、スキルアップを目指すことが挙げられます。薬剤師としてのスキルを高めることで、職場で任される業務が増えるでしょう。自身の評価につながるため、昇給・昇進により年収アップが望めます。
また、勤続年数を重ねることで、着実に年収を上げやすくなります。勤続年数によって昇給率が決まる企業の場合、長く勤めるほど年収アップが期待できるでしょう。
4-2.資格を取得する
認定薬剤師や専門薬剤師などの資格取得を目指すのも、年収アップの方法です。企業によっては、資格手当を設けているところもあります。
また、資格を取ることで、担当する業務の幅が広がる可能性があります。社内で勉強会を開いたり、新人薬剤師の教育担当になったりすることで、人事考課の評価アップや給料の手当付与なども期待できます。そういったひとつひとつの積み重ねで実績と信頼を得ることは、昇給・昇進にもつながるでしょう。
4-3.マネジメントスキルを身に付ける
年収1000万円を目指すのであれば、薬剤師としての業務だけでなく、管理職としてのマネジメントスキルを身に付けることが求められるでしょう。薬局長やエリアマネージャー、本社勤務など、さらに上の役職を目指すことで年収アップが望めます。
関連企業や社内スタッフなど、さまざまな人との関わりを持つ立場になると、コミュニケーション能力や調整能力も必要です。マネジメントスキルを含め、薬剤師業務以外のスキルも求められる点は留意しておきましょう。
4-4.副業で収入を増やす
薬剤師の仕事と並行して副業を行い、トータルで1000万円以上の年収を目指すのもひとつの方法です。薬剤師ができる副業には、以下のようなものがあります。
● ブログやサイトの運営
● ドラッグストアや薬局での兼業
● YouTuber
● 個人投資家
ライター業や翻訳業など、薬剤師としての知識を生かせる副業にチャレンジするのも良いでしょう。最近では、ブログやWebサイト、SNS、YouTubeなどで医療関連の情報発信をする薬剤師も増えてきました。
薬剤師が副業する上で注意したい点は、「就業規則で副業が禁止されていないか」「管理薬剤師を任されていないか」「公務員薬剤師ではないか」といった点です。状況によっては副業ができない可能性があるため、就業規則などを確認するようにしましょう。
🔽 薬剤師の副業について解説した記事はこちら
4-5.給料の高い求人を探す
なるべく早く年収アップを目指したいのであれば、給料の高い求人を探すという選択肢もあるでしょう。年収1000万円の求人はなかなか見つけられないかもしれませんが、現時点より高い年収の求人はあるかもしれません。
ただし、同じ業種で給料の高い求人は、給料が高い理由を確認しておく必要があります。業績が良いといった理由以外にも、「交通の便が悪い」「勤務時間が長い」「休日が少ない」「社員の入れ替わりが激しい」など、何かしらのマイナス要因があるかもしれません。
未経験の業種に転職するのであれば、モデルケースとして示されている給与とは相場が異なる可能性もあります。求人応募の際はあらかじめ給料体系や、給与が高い理由を確認しておくと安心です。
また、前述のとおり、年収アップを目指すのであれば、勤続年数を重ねることも大切です。現職との職場環境を比較し、どちらが長く勤続できるのかをよく考えてから転職先を決めるといいでしょう。
5.薬剤師が年収1000万円を目指すなら
一般的な薬局薬剤師や病院薬剤師にとって、年収1000万円はとても狭き門です。年収1000万円を目指すのであれば、管理薬剤師、薬局長、エリアマネージャーなどへと、順を追って役職を持つ立場に昇進していく必要があるでしょう。
あるいは、平均年収の高い業種や企業に転職するのも年収1000万円を目指す方法です。ただし、今までの経験が生かされる職場でない場合、すぐに転職や年収アップが実現できるとは限りません。
いずれにしても、薬剤師として経験を重ねることが大切です。年収1000万円を目指すのであれば、独立開業や副業なども視野に入れつつ、自身に合った働き方を検討する必要があるでしょう。
薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。
あわせて読みたい記事