- 1.無菌製剤処理加算とは?
- 1-1.無菌製剤処理加算の対象薬剤
- 1-2.2024年度調剤報酬改定による変更点
- 2.無菌製剤処理加算の算定要件・点数
- 2-1.無菌製剤処理加算の点数
- 2-2.無菌製剤処理加算の算定要件
- 3.無菌製剤処理加算の施設基準
- 4.無菌製剤処理加算の届出
- 5.麻薬注射剤を無菌製剤処理した際に算定できる麻薬関連の加算
- 5-1.麻薬を無菌製剤処理後、服薬指導を行った場合
- 5-2.麻薬を含む無菌製剤処理を行い、無菌製剤処理加算イまたはロを算定した場合
- 6.無菌調剤室を共同利用する際の注意点
- 6-1.無菌調剤室を共同利用する際に取り交わす契約書
- 6-2.共同利用する無菌調剤室の要件
- 7.無菌製剤処理加算を算定するために
1.無菌製剤処理加算とは?
無菌製剤処理加算とは、無菌製剤処理に関する業務を評価するための薬剤調製料の加算です。無菌製剤処理とは、無菌室やクリーンベンチ、安全キャビネットなどの無菌環境下で無菌化した器具を使って、無菌的な製剤を行うことを指しています。
🔽 薬剤調製料について解説した記事はこちら
ここでは、無菌製剤処理加算の対象薬剤と、2024年度の診療報酬改定による変更点を見ていきましょう。
1-1.無菌製剤処理加算の対象薬剤
無菌製剤処理加算の対象薬剤は、中心静脈栄養法用輸液、抗悪性腫瘍剤、麻薬に関する注射剤です。
ただし、無菌製剤処理加算の対象となる抗悪性腫瘍剤については、悪性腫瘍などに対して使用する細胞毒性のある注射剤として厚生労働大臣が指定した医薬品(「医薬品等副作用被害救済制度の対象とならない医薬品等(平成16年厚生労働省告示第185号)」に掲げる医薬品など)です。
1-2.2024年度調剤報酬改定による変更点
2024年度の診療報酬改定における無菌製剤処理加算の主な変更点としては、「麻薬の注射薬を無菌的に充てんし製剤する場合」も無菌製剤処理加算の算定対象となったことが挙げられます。
参照:令和6年度診療報酬改定の概要【調剤】|厚生労働省
「終末期在宅における訪問薬剤師の業務量調査」で、麻薬の無菌調製において希釈をしないケースが25%以上あったことが明らかになっています(2022年4月~2023年3月)。
参照:調剤について(その2) 2023年11月8日|厚生労働省
本改定では、麻薬を希釈せず充てんする業務についても適正に評価するため見直されました。点数に変更はありませんが、薬剤の種類ごとにイ・ロ・ハの区分が設けられています。
区分 | 薬剤の種類 | 算定要件 |
---|---|---|
イ | 中心静脈栄養法用輸液 | 2以上の注射薬を混合して中心静脈栄養法用輸液を無菌的に製剤する場合 |
ロ | 抗悪性腫瘍剤 | 抗悪性腫瘍剤を含む2以上の注射薬を混合して(生理食塩水等で希釈する場合を含む)抗悪性腫瘍剤を無菌的に製剤する場合 |
ハ | 麻薬 | 麻薬を含む2以上の注射薬を混合して(生理食塩水等で希釈する場合を含む)無菌的に麻薬を製剤する場合または麻薬の注射薬を無菌的に充てんして製剤する場合 |
🔽 2024年度調剤報酬改定について解説した記事はこちら
2.無菌製剤処理加算の算定要件・点数
続いて、無菌製剤処理加算の算定要件と点数について詳しく見ていきましょう。
2-1.無菌製剤処理加算の点数
無菌製剤処理加算の点数は、以下のとおりです。
区分 | 薬剤の種類 | 点数 | |
---|---|---|---|
6歳以上 | 6歳未満 | ||
イ | 中心静脈栄養法用輸液 | 69点 | 137点 |
ロ | 抗悪性腫瘍剤 | 79点 | 147点 |
ハ | 麻薬 | 69点 | 137点 |
上記のように、無菌製剤処理加算は薬剤の種類や年齢によって算定点数が異なります。
2-2.無菌製剤処理加算の算定要件
無菌製剤処理加算の算定要件について見ていきましょう。
区分 | 薬剤の種類 | 算定要件 |
---|---|---|
イ | 中心静脈栄養法用輸液 | 2以上の注射薬を混合 |
ロ | 抗悪性腫瘍剤 | 2以上の注射薬を混合 (生理食塩水等での希釈を含む) |
ハ | 麻薬 | ● 2以上の注射薬を混合 (生理食塩水等での希釈を含む) ● 麻薬の注射薬を無菌的に充てん |
ただし、無菌製剤処理を行わない調剤であって、患者さん自身が投与時に混合する場合は、無菌製剤処理加算は算定できません。
また、無菌製剤処理加算は、以下について製剤した場合に、1日につき1回に限り主たるものの点数のみが算定できます。
● 組み合わせて1つの注射剤として製剤した場合
例えば、同じ日に使用する中心静脈栄養法用輸液と抗悪性腫瘍剤を製剤した場合や、中心静脈栄養法用輸液、抗悪性腫瘍剤または麻薬のうち、2つ以上を合わせて1つの注射剤として無菌製剤処理を行った場合などは、いずれかの点数1つを算定することになります。
参照:調剤報酬点数表に関する事項|厚生労働省
参照:疑義解釈資料の送付について(その1)平成26年3月31日|厚生労働省
3.無菌製剤処理加算の施設基準
無菌製剤処理加算の施設基準は以下のとおりです。
● 無菌製剤処理を行うための以下の設備を備えていること(※)
○ 無菌室
○ クリーンベンチ
○ 安全キャビネット
※無菌調剤室を共同利用する場合は、この限りでない
無菌製剤処理加算の施設基準における無菌調剤室とは、薬局に設置された高度な無菌製剤処理を行える「作業室」を指しています。
無菌調剤室の共同利用において、ほかの部屋と分けられていない場所に設置されているクリーンベンチや安全キャビネットといった設備を共同利用することは薬機法で認められていません。
参照:疑義解釈資料の送付について(その1)平成26年3月31日|厚生労働省
なお、無菌調剤室を共同利用する際の費用は、両者で決めることとされています。
参照:特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて|厚生労働省
4.無菌製剤処理加算の届出
無菌製剤処理加算を算定するためには、地方厚生局などに届出を行わなければなりません。届出書と添付書類を用意しましょう。
無菌製剤処理加算の添付書類には、以下の項目を記載します。
● 無菌処理施設・設備
● 無菌調剤室提供薬局の名称と所在地
無菌処理施設・設備については、「1 無菌室」「2 クリーンベンチ」「3 安全キャビネット」に丸をつけて選択した上で、以下を記載します。
● 空気清浄度、集塵効率など
● 台数など
● 無菌製剤処理用器具、備品などの一覧
他薬局の無菌調剤室を使用して無菌製剤処理加算を算定する場合は、無菌製剤処理加算の届出書添付書類に無菌調剤室提供薬局の名称と所在地を記載するとともに、無菌調剤室提供薬局と交わした契約書などの写しを添付して、あらかじめ地方厚生局などに届け出なければなりません。
参照:特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて|厚生労働省
5.麻薬注射剤を無菌製剤処理した際に算定できる麻薬関連の加算
麻薬注射剤を無菌製剤処理した際には、要件を満たすことで算定できる麻薬関連の加算があります。
加算の種類 | 加算の概要 |
---|---|
麻薬加算 | 麻薬を無菌製剤処理した場合は、無菌製剤処理加算(ハ)を算定するとともに麻薬加算が算定可能 |
麻薬管理指導加算 | 麻薬の服用・保管状況などについて必要な管理、説明、指導などを行った場合には、麻薬管理指導加算が算定可能 |
麻薬注射剤を無菌製剤処理した際に、麻薬加算や麻薬管理指導加算を算定できるケースについて詳しく見ていきましょう。
🔽 麻薬加算について解説した記事はこちら
🔽 麻薬管理指導加算について解説した記事はこちら
5-1.麻薬を無菌製剤処理後、服薬指導を行った場合
施設基準の届出を行った薬局で麻薬を無菌製剤処理した場合、無菌製剤処理加算と麻薬加算が算定できます。
さらに、患者さんや家族などに対し、麻薬の服用・保管状況などについて、必要な薬学的管理や指導などを行った場合は、麻薬管理指導加算が算定可能です。
参照:疑義解釈資料の送付について(その1)平成26年3月31日|厚生労働省
5-2.麻薬を含む無菌製剤処理を行い、無菌製剤処理加算イまたはロを算定した場合
麻薬を含めた無菌製剤処理で、中心静脈栄養法用輸液または抗悪性腫瘍剤の無菌製剤処理加算(イまたはロ)を算定した場合、麻薬加算も合わせて算定することができます。
さらに、麻薬についての必要な薬学的管理や指導などを行った場合は、無菌製剤処理加算と麻薬加算に加えて、麻薬管理指導加算が算定可能です。
参照:疑義解釈資料の送付について(その1)平成26年3月31日|厚生労働省
6.無菌調剤室を共同利用する際の注意点
無菌調剤室を共同利用する際には、無菌調剤室を提供する薬局と提供される薬局がお互いに契約書を交わす必要があります。
また、共同利用する無菌調剤室については要件が定められています。ここでは、無菌調剤室を提供する薬局を「無菌調剤室提供薬局」、提供される薬局を「処方箋受付薬局」として、無菌調剤室を共同利用する際の注意点をお伝えします。
6-1.無菌調剤室を共同利用する際に取り交わす契約書
前述したとおり、無菌調剤室を共同利用する際は、無菌調剤室提供薬局と処方箋受付薬局の間で共同利用に関して必要な事項を記載した契約書を事前に取り交わしておくこととされています。契約書には、少なくとも以下の内容について記載する必要があります。
● 無菌製剤処理に係る事故などが発生した場合の報告体制を定めておくこと
6-2.共同利用する無菌調剤室の要件
共同利用する無菌調剤室については、以下の要件を満たすものとされています。
● 室内の空気清浄度は、無菌製剤処理を行う際に常時ISO14644-1に規定するクラス7以上を担保する設備であること
● 無菌製剤処理を行うための器具や機材などが十分に備えられていること
なお、無菌製剤処理を行える設備だったとしても、ほかの部屋と仕切られていない場合は、無菌調剤室として認められません。
無菌調剤室の共同利用の留意点や運用については、「薬事法施行規則の一部を改正する省令の施行等について(平成24年8月22日薬食発0822第2号)」で明記されています。無菌調剤室を共同利用する場合は確認しておきましょう。
参照:薬事法施行規則の一部を改正する省令の施行等について(平成24年8月22日薬食発0822第2号)|厚生労働省
7.無菌製剤処理加算を算定するために
無菌製剤処理加算を算定するためには、算定要件や施設基準を把握し、設備を整える必要があるでしょう。他薬局の設備を利用する場合であっても、無菌調剤室を使用する際のルールについて学ぶことが大切です。加えて、中心静脈栄養法用輸液や抗悪性腫瘍剤、麻薬の注射薬を混合するための知識も不可欠でしょう。安全に薬物治療を行うためにも、無菌製剤処理のルールや薬剤の知識を深める必要があります。
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薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。
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