薬剤師のスキルアップ 更新日:2024.01.16公開日:2021.10.21 薬剤師のスキルアップ

特定薬剤管理指導加算2とは?算定要件や算定できないケースを解説

文:秋谷侭美(薬剤師ライター)

2020年度の診療報酬改定では、従来の特定薬剤管理指導加算に加えて、「特定薬剤管理指導加算2」が新設されました。いわゆるハイリスク薬への対応で算定する従来の特定薬剤管理指導加算は、「特定薬剤管理指導加算1」となっています。今回は、新設された特定薬剤管理指導加算2について1との違いを解説するとともに、算定要件や施設基準、算定するための注意点などをお伝えします。

1. 特定薬剤管理指導加算2とは

特定薬剤管理指導加算2は、抗悪性腫瘍剤を注射した患者さんに処方された抗悪性腫瘍剤などの服薬管理を行い、患者さんの体調や服用をサポートした場合に算定できます。

 

1-1.特定薬剤管理指導加算1との違い

特定薬剤管理指導加算2は、抗悪性腫瘍剤を投与している患者さんを対象としているのに対し、特定薬剤管理指導加算1は免疫抑制剤や不整脈用剤、てんかん剤など厚生労働省が定める「特に安全管理が必要な医薬品」について薬剤の管理や指導などを行った場合に算定できます。

 

特定薬剤管理指導加算2と異なり、医師への文書による報告義務はありません。特定薬剤管理指導加算1は、処方せん受付1回につき1回に限り、指導内容を薬歴に残すことで算定できます。

 

なお、同一の処方内容にも関わらず処方の都度に特定薬剤管理指導加算1を算定している場合は、特に指導が必要な内容を重点的に行い、薬歴に残しておかなければなりません。

 

特定薬剤管理指導加算1と2は対象が異なるため、併算定が可能です(2020年診療報酬改定時の「疑義解釈資料送付について」による)。具体的には、特定薬剤管理指導加算2の算定対象となる患者さんが、特定薬剤管理指導加算1の算定対象となる薬剤を処方された場合、適切な指導を行うことで特定薬剤管理指導加算1と2の両方を算定できます。

 

1-2.特定薬剤管理指導加算2の新設で薬剤師に期待されること

抗悪性腫瘍剤を投与しているがん患者さんのなかには、重い副作用などによって治療の継続を断念してしまうケースも見られます。そのため、症状によって投与量をコントロールしたり、副作用を緩和するために制吐剤などを使用したりすることは、治療を継続するうえで大切なことです。
 

入院中の化学療法であれば、あらゆる症状に対して医師や薬剤師などが細かくチェックし、随時処方変更をすることが可能でしょう。しかし、退院後も治療継続する患者さんや入院せずに治療を開始する患者さんは、次回受診時まで、体調や治療などについて相談をする機会がほとんどありません。

 

服用後、数日経過してから副作用が現れたり、治療や生活などに不安を感じたりすることもあるため、いつでも相談ができる医療従事者が必要です。患者さんにとって相談しやすい環境を整えることは、重大な副作用の発現にいち早く気が付いたり、服薬コンプライアンスの向上につながったりするため、患者さんの安全確保と治療効果の向上が期待できます。

 

外来で化学療法を受ける患者さんがいることから、医師や病院薬剤師に代わって、調剤薬局の薬剤師が患者さんの症状や副作用をモニタリングすることはとても重要です。今まで以上に調剤薬局の薬剤師は、外来がん治療を受ける患者さんの薬物治療をサポートすることが求められています。


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2. 特定薬剤管理指導加算2の算定要件、施設基準および対象患者

特定薬剤管理指導加算2は、連携充実加算を届け出ている医療機関で抗悪性腫瘍剤を「注射」している患者さんに対して、抗悪性腫瘍剤や制吐剤などの調剤を行った場合、要件を満たすことで算定できます。算定要件や施設基準、対象患者さんについて詳しく見ていきましょう。

 

2-1. 算定要件

特定薬剤管理指導加算2の算定要件は以下です。

 

<特定薬剤管理指導加算2の算定要件>
・患者さんのレジメンを確認し服薬指導を行う。
・電話などで服薬状況などを確認する。
・上記の内容を踏まえて医療機関に文書で情報提供する。

 

レジメンとは、抗がん剤や輸液、制吐剤などの支持療法について、時系列で示した治療計画のことです。なお、プロトコールは一般的に「治験実施計画書」を指し、治験を目的としてデザインや方法、統計学的考察、組織について記述した文書ですので、レジメンと混同しないように注意しましょう。

患者さんがレジメンを持参していなかった場合でも、医療機関のホームページなどで確認可能です。特定薬剤管理指導加算2の算定対象となる患者さんは、連携充実加算を届け出ている医療機関を受診しています。

 

連携充実加算を算定するための施設基準の1つに、ホームページなどで化学療法のレジメンをいつでも閲覧できるようにしておくことが定められています(日本病院薬剤師会「令和2年度診療報酬改定における主要改訂項目」より)。患者さんが持参していない場合でもレジメンを確認してから、服薬指導を行うことが可能です。

 

服薬指導後は、患者さんや家族から、電話などで抗悪性腫瘍剤や制吐剤などの服用状況や副作用の有無などを聞き取り、医療機関に情報提供した場合に算定できます。情報提供した内容は、文書の写しの添付や内容の要点を薬歴に残さなければなりません。また、患者さん1人につき同一月に2回以上の情報提供を行った場合でも算定は月1回のみとなります。


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2-2. 施設基準

特定薬剤管理指導加算2を算定するための施設基準は4つあります。

 

<特定薬剤管理指導加算2を算定するための施設基準>
1、保険薬剤師としての勤務経験を5年以上有する薬剤師が勤務していること
2、会話のやりとりが他の患者さんに聞こえないようパーテーション等で区切られた独立したカウンターを有するなど、プライバシーに配慮していること。
3、麻薬及び向精神薬取締法(昭和28年法律第14号)第3条の規定による麻薬小売業者の免許を取得し、必要な指導を行うことができる体制が整備されていること。
4、保険医療機関が実施する抗悪性腫瘍剤の化学療法に係る研修会に当該保険薬局に勤務する薬剤師の少なくとも1名が年1回以上参加していること。

(厚生労働省「個別改定項目について」をもとに作成)

 

施設基準1によると、届出時点で5年以上の勤務経験をもつ薬剤師が勤務しなければなりません。ただし、医療機関の薬剤師として勤務経験が1年以上ある場合は、1年を上限として勤務経験に含められます。

 

がん治療に関する相談や指導は、非常にプライベートで繊細な内容です。患者さんによっては、他人の目が気になり、相談できないこともあるでしょう。そのため、患者さんのプライバシーに配慮した相談環境が整えられているかどうかが施設基準2に定められています。

 

抗悪性腫瘍剤を使用する患者さんは、麻薬や向精神薬を併用することも少なくありません。そのため、麻薬小売業者の免許を取得し、必要な指導を行うことができる体制が整備されていることが施設基準3に定められています。

 

施設基準4では、特定薬剤管理指導加算2を算定する調剤薬局に勤める常勤薬剤師が、医療機関が実施する抗悪性腫瘍剤の化学療法に係る研修会に、年1回以上参加しなければならないと定められています。研修会の実施情報は、化学療法のレジメンと同様、医療機関のホームページなどで確認できます。

医療機関が実施する研修会への参加は、施設基準を満たすためだけでなく、スキルアップの観点からもいい機会になります。定期的に参加すれば、医療機関と調剤薬局のつながりも作りやすくなり、今まで以上に連携して患者さんの薬物治療に取り組むことができるでしょう。

 

なお、施設基準の届出は、地方厚生局などのホームページにある指定様式を使用する必要があります。4つの基準を満たしている旨を記載し、管轄している地方厚生局などへ届け出ましょう。

 

 

2-3. 特定薬剤管理指導加算2の対象患者

連携充実加算を届け出ている医療機関で、抗悪性腫瘍剤を「注射」した患者さんのうち、抗悪性腫瘍剤や制吐剤などの支持療法で使用する薬剤を処方された患者さんが対象となります。


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3. 特定薬剤管理指導加算2を算定するためには

特定薬剤管理指導加算2を算定するタイミングは、医療機関への情報提供後に、患者さんが処方せんを持参して来局した時です。この時、持参する処方せんの医療機関に指定はありません。
 

服用状況の確認は、電話もしくはテレビ電話を利用してリアルタイムの音声通話によって行うよう定められています。メールやチャットなどを補助的に活用すること自体は問題ありませんが、メールやチャットだけでの確認による算定は認められていませんので、念頭に置いておきましょう。

また、患者さんの服用状況を確認した際に、重大な副作用を発現している可能性が示唆された場合は、速やかに医療機関に連絡するよう指導を行ったり、受診を勧めたりするなどの対応を行う必要があります。あらかじめ医療機関と緊急時の対応方法や連絡先などについて共有しておくと、患者さんの緊急時に対応できるため安心です。


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4. 特定薬剤管理指導加算2が算定できないケース

かかりつけ薬剤師指導料と薬剤服用歴管理指導料1、2、3を加算している患者さんに対しては算定可能ですが、かかりつけ薬剤師包括管理料や薬剤服用歴管理指導料4、在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定している患者さんには算定できません。

 

また、特定薬剤管理指導加算2は抗悪性腫瘍剤などの調剤を行った調剤薬局が算定を行います。そのため、抗悪性腫瘍剤などの調剤をしていない患者さんから、治療や症状に関する相談を受けたとしても算定できません。

 

加えて、服薬情報等提供料との併算定も基本的にはできません。ただし、ほかの医療機関や診療科で処方されている薬剤の情報を得た場合は、抗悪性腫瘍剤などを処方している医療機関以外の医療機関へ情報提供した時に限り、特定薬剤管理指導加算2と服薬情報提供料が算定できます。

 

5. 特定薬剤管理指導加算2で使用する報告書の書き方

報告書の様式などに決まりはありません。しかし、横浜南共済病院のように施設によっては独自のフォーマットを用意しているところもあります。報告書を提出する際は、あらかじめ医療機関のホームページや薬剤部などでフォーマットの有無を確認しましょう。

 

情報提供を行う頻度の高い医療機関がある場合は、事前に記載事項などの確認をとってから情報提供書のフォーマットを作成すれば、医療機関と調剤薬局の双方が使用しやすい報告書になるでしょう。

6. 化学療法を受けるがん患者さんのQOL向上を目指して

がん治療では、治療効果を高めながら副作用を抑えるためのサポートを行うことで、患者さんのQOLが向上します。調剤薬局の薬剤師は、患者さんが安心して薬物治療に取り組むためにも、積極的に医師や医療機関と関わりながら、医療への貢献度を高めていきましょう。


執筆/秋谷侭美(あきや・ままみ)

薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。

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