- 1.薬学管理料とは
- 2.薬学管理料の算定要件と点数
- ①調剤管理料
- ②服薬管理指導料
- ③かかりつけ薬剤師指導料
- ④かかりつけ薬剤師包括管理料
- ⑤外来服薬支援1、2
- ⑥服用薬剤調整支援料1、2
- ⑦服薬情報等提供料1、2、3
- ⑧在宅患者訪問薬剤管理指導料
- ⑨在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料
- ⑩在宅患者緊急時等共同指導料
- ⑪在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料
- ⑫経管投薬支援料
- ⑬退院時共同指導料
- 3.患者さんの希望で薬学管理料を算定できる・できないは選べる?
- 3-1.薬学管理料を算定しない場合、服薬状況と薬剤服用歴の確認は必要?
- 3-2.患者さんが医師や薬剤師の場合
- 3-3.患者さんから希望があった場合
- 4.薬学管理料算定で薬剤師が気を付けるポイント
- 5.患者さんに合わせた薬学管理料を算定しよう
1.薬学管理料とは
薬学管理料は、対人業務を評価して算定される診療報酬です。細かく項目が分かれており、それぞれ具体的な算定要件が決められています。また、薬学管理料にあたる各算定項目は、服薬指導を行う時点の患者さんの状態などを考えながら、患者さんにとって必要な情報やサポート内容をその都度判断し、算定するものです。そのため、薬剤師自身が患者さん個々について算定の可否を判断し、機械的に一律に算定しないこととされています。
2.薬学管理料の算定要件と点数
薬学管理料は全部で13項目あります。ここではそれぞれの算定条件について見ていきましょう。
①調剤管理料
処方箋受付1回につき、薬学服用歴の記録・管理をしたときに算定できる薬学管理料です。
内服用滴剤、浸煎薬、湯薬、頓服薬以外の内服薬は1剤につき以下のように算定し、3剤分まで算定できます。
● 8~14日分:28点
● 15~28日分:50点
● 29日分以上:60点
詳しくは以下のコラムをご覧ください。
🔽 調剤管理料について詳しく解説した記事はこちら
②服薬管理指導料
服薬管理指導料は、処方箋の受付1回につき、薬剤の情報提供と服薬指導を行った場合に算定します。
● 上記の患者以外の患者に対して行った場合:59点
● 特別養護老人ホ-ムに入所している患者に訪問して行った場合:45点
● 情報通信機器を用いた服薬指導を行った場合:
イ )原則3月以内に再度処方箋を提出した患者に対して行った場合:45点
ロ )イの患者以外の患者に対して行った場合:59点
詳しくは以下のコラムをご覧ください。
🔽 服薬管理指導料について詳しく解説した記事はこちら
③かかりつけ薬剤師指導料
かかりつけ薬剤師指導料は、かかりつけ薬剤師が処方医と連携して、服薬状況を一元的かつ継続的に把握し、服薬指導などを行った場合に76点を算定できます。
詳しくは以下のコラムをご覧ください。
🔽 かかりつけ薬剤師指導料について詳しく解説した記事はこちら
④かかりつけ薬剤師包括管理料
かかりつけ薬剤師包括管理料は、以下の要件を満たす患者さんを担当するかかりつけ薬剤師が、処方医と連携して服薬状況を一元的かつ継続的に把握し、服薬指導などを行った場合に291点を算定できます。
● 医科点数表における「地域包括診療料」または「認知症地域包括診療料」を算定
詳しくは以下のコラムをご覧ください。
🔽 かかりつけ薬剤師包括管理料について詳しく解説した記事はこちら
⑤外来服薬支援1、2
外来服薬支援には2つの区分があり、それぞれ算定要件が異なります。
● 外来服薬支援料2:
イ)42日分以下の場合 投与日数が7又はその端数を増すごとに34点を加算して得た点数
ロ)43日分以上の場合:240点
詳しくは以下のコラムをご覧ください。
🔽 外来服薬支援料について詳しく解説した記事はこちら
⑥服用薬剤調整支援料1、2
服用薬剤調整支援料には2つの区分があり、それぞれ算定要件が異なります。
● 服用薬剤調整支援料2:
イ)別に厚生労働大臣が定める施設基準を満たす保険薬局において行った場合:110点
ロ)イ以外の場合:90点
⑦服薬情報等提供料1、2、3
服薬情報等提供料には3つの区分があり、それぞれ算定要件が異なります。
● 服薬情報等提供料2:20点
● 服薬情報等提供料3:50点
詳しくは以下のコラムをご覧ください。
🔽 服薬情報提供料について詳しく解説した記事はこちら
⑧在宅患者訪問薬剤管理指導料
在宅で療養を行っている患者さんに対して、居宅へ訪問し必要な指導を行った場合に算定できる薬学管理料です。
● 単一建物診療患者が2人以上9人以下の場合:320点
● 上記以外の場合:290点
詳しくは以下のコラムをご覧ください。
🔽 在宅患者訪問薬剤管理指導料について詳しく解説した記事はこちら
⑨在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料
在宅訪問薬剤管理指導を実施している患者さんの急変などによって、主治医または主治医と連携する医師の求めにより、緊急訪問し必要な指導を行った場合、以下の算定点数を月4回に限り算定できます。
● 上記以外の場合:200点
⑩在宅患者緊急時等共同指導料
訪問在宅管理指導を実施している患者さんの急変などによって、主治医または主治医と連携する医師の求めにより共同カンファレンスに参加し、必要な指導を行った場合に月2回に限り700点を算定できます。
⑪在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料
在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料は、在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定している患者さんについて、重複投薬、相互作用の防止等の目的で疑義照会を行い、処方変更があった場合に算定します。
● 残薬調整に係るものの場合:30点
⑫経管投薬支援料
経管投薬支援料は、胃瘻または腸瘻による経管投薬または経鼻経管投薬を行っている患者さんに対して算定できる薬学管理料です。患者さんや家族、医療機関の求めに応じて行うもので、患者さんの同意を得た上で、簡易懸濁法を使った薬剤服用の支援を行った場合に、初回に限り100点を算定します。
⑬退院時共同指導料
退院時共同指導料は、入院中の患者さんが退院後に在宅で療養するために、入院している医療機関の医療従事者と共同で説明および指導を行った場合に、600点を算定できます。
🔽 退院時共同指導料について詳しく解説した記事はこちら
3.患者さんの希望で薬学管理料を算定できる・できないは選べる?
本来、薬学管理料は患者さんの希望に合わせて算定するものではありません。薬剤師の判断で算定するため、算定の有無は状況によって異なるでしょう。
しかし、まれに、自分で服薬管理しているという理由で、調剤管理料や服薬管理指導料の算定を拒否する患者さんがいます。薬代の節約を目的に、患者さんから申し出を受けた薬剤師もいるかもしれません。では、こうしたケースで薬学管理料を算定しない場合、服薬指導や薬歴の記載は行わなくてもよいのでしょうか。ここでは、薬学管理料の算定における疑問について、『保険調剤Q&A 令和4年度版』『保険薬局Q&A 令和4年度版』を参考に解説します。
3-1.薬学管理料を算定しない場合、服薬状況と薬剤服用歴の確認は必要?
保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則(以下、薬担規則)の第8条2(調剤の一般的方針)では、保険薬剤師による患者さんの薬剤服用歴の確認について以下のように記載されています。
薬担規則で定められている以上、服薬管理指導料の算定に関わらず、服薬状況と薬剤服用歴の「確認」は必須事項といえるでしょう。また、服薬状況の確認は服薬指導で、薬剤服用歴の確認は薬歴で行うのが一般的です。服薬管理指導料を算定しない場合にも、薬歴の記載は業務上、必要性が高いといえます。
参照:『保険調剤Q&A 令和4年度版』日本薬剤師会編 じほう刊
3-2.患者さんが医師や薬剤師の場合
患者さんが医師や薬剤師の場合、薬学管理料を算定するか判断に迷うかもしれません。『保険調剤Q&A 令和4年度版』(株式会社じほう)では、以下のようなQ&Aが記載されています。
A:「患者が医師や薬剤師だったという理由だけで、直ちに算定できないということはありませんが、当該患者に服薬指導の必要性があるか否かをどう判断したのかが重要です。」
医療従事者の専門外の疾患について処方されているケースでは、薬学管理料を算定しても問題ないが、保険請求の客観性を担保するという観点からも、取り扱いは注意しておく必要があると記載されています。また、薬学管理料を算定しなかった場合も、薬歴に記録を残すことを心がけることが必要です。
3-3.患者さんから希望があった場合
患者さんから服薬管理や情報提供は必要ないといわれたとしても、薬剤師として患者さんが安全に薬物治療を行うために薬学管理料にあたる業務が必要だと判断した場合には、業務を実施したうえで過不足なく算定することが求められています。
先にもお伝えしたように、調剤管理料や服薬管理指導料といった薬学管理料に関わる業務は、患者さんの希望に応じて行うものではありません。患者さんから希望があったとしても、薬物治療を安全に効果的に行うために必要なことであると患者さんへ説明し、納得してもらうことが大切です。
重複投薬や相互作用、薬物アレルギーなどの確認や薬剤情報提供などは、患者さんにとって必要なことであり、薬剤師の義務でもあります。薬剤師の実施が義務付けられた業務に対する点数であることを丁寧に説明し理解を求めるようにしましょう。
🔽 患者さんから希望があった場合について詳しく解説した記事はこちら
4.薬学管理料算定で薬剤師が気を付けるポイント
保険調剤の理解のためにでは、薬学管理料の算定に伴う留意点が示されています。一例を挙げると、「薬剤服用歴等については、処方せんの受付ごとに患者さんの情報を確認し、新しく得た情報と薬歴に記載されている情報を考慮して必要な服薬指導を行うこと」などです。薬剤服用歴等は、調剤報酬請求の根拠となる記録のため、指導後は速やかに完了させ、患者さんごとに保存・管理をしましょう。
また、薬剤服用歴等でよくある指摘事項として、以下のような項目が挙げられています。
● 副作用や病状の悪化に関する記録が記載されているにもかかわらず、「体調の変化」が「なし」や「不変」となっている。
● 「服薬指導の要点」の記載がない。
● 薬剤服用歴の記載が、次回来局日にまとめて行われている。
薬歴を残す際は、上記の内容に注意しましょう。
参照:保険調剤の理解のために|厚生労働省保険局医療課(WARP)
5.患者さんに合わせた薬学管理料を算定しよう
薬学管理料は患者さんの希望に合わせて算定するものではなく、薬剤師の判断で算定するものです。薬剤師は、患者さんに必要と判断する情報を提供し服薬指導を行う義務があり、薬学管理料はそうした業務に対する評価となります。薬剤師として、薬学管理料の各項目や算定要件を把握し、患者さんの状態に合わせて適切に算定するようにしましょう。
■ 保険診療における指導・監査|厚生労働省
■ 令和4年度診療報酬改定について|厚生労働省
■ 保険調剤の理解のために|厚生労働省保険局医療課(WARP)
■ 『保険調剤Q&A 令和4年度版』日本薬剤師会編 じほう刊
■ 『保険薬局Q&A 令和4年度版』日本薬剤師会監修・じほう編 じほう刊
薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。
あわせて読みたい記事