薬剤師のスキルアップ 更新日:2024.11.15公開日:2024.08.28 薬剤師のスキルアップ

調剤管理加算とは?算定要件・点数や算定例を分かりやすく解説

文:秋谷侭美(薬剤師ライター)

調剤管理加算は、2022年度の診療報酬改定で、薬局薬剤師の対人業務の評価体系を見直すために、調剤管理料の加算として新設されました。本記事では、調剤管理加算の算定要件や点数、施設基準について解説するとともに、算定時の注意点や算定例についてお伝えします。

1.調剤管理加算とは?

調剤管理加算とは、調剤管理料に設けられた加算です。複数の医療機関から6種類以上の内服薬が処方されている患者さんに対して、必要な薬学的管理を行った場合に算定できます。
 
多剤併用による薬物治療を行っている患者さんは、ポリファーマシーのリスクがあります。安全に薬物治療を続けるためにも、より丁寧な薬学的分析・管理が必要です。調剤管理加算は、薬剤師によるポリファーマシー対策の取り組みを評価する加算といえるでしょう。

 
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2.調剤管理加算の点数

調剤管理加算(イ・ロ)の点数は以下のとおりです。

 

■調剤管理加算の点数
算定タイミング 点数
初めて処方箋を持参した場合 3点
2回目以降に持参した処方箋の内容に変更・追加があった場合

参照:調剤報酬点数表|厚生労働省

 

調剤管理加算は2区分あり、加算点数は同じです。それぞれの算定要件、施設基準を満たすことで、処方箋受付1回につき上記の点数を算定できます。

3.調剤管理加算の算定要件

調剤管理加算を算定するためには、対象となる患者さんの要件と、薬剤師が対応しなければならない業務があります。それぞれについて詳しく見ていきましょう。

 

3-1.対象となる患者さんの要件

対象となる患者さんは、受診する医療機関数や内服薬の種類などの要件を満たす必要があります。

 

■調剤管理加算の対象患者さんの要件
  要件
受診する医療機関数 2カ所以上
内服薬の種類数 6種類以上
算定タイミング ● 初めて処方箋を持参した場合
● 2回目以降に持参した処方箋の処方薬に変更または追加があった場合

 

調剤管理加算は、2カ所以上の医療機関を受診し、6種類以上の内服薬が処方されている患者さんが対象です。
 
なお、初めて処方箋を持参した場合とは、薬剤服用歴等に患者さんの記録が残っていない、または残っていても3年以上前の場合のことです。
 
参照:疑義解釈資料の送付について(その1)令和4年3月31日|厚生労働省

 

3-2.算定要件となる薬剤師の業務

薬剤師は、患者さんやその家族などに対して、重複投薬や相互作用、副作用などの有無を確認した上で、以下の情報に基づいて服用状況などを一元的に把握しなければなりません。

 

■一元的な把握に必要な情報を得るために活用する資料など
● お薬手帳
● オンライン資格確認等システムを活用した診療情報
● 薬剤情報などの情報
● 薬剤服用歴等
● 直接患者さん、またはその家族などから収集した服薬状況等の情報 など

 

患者さんに関するさまざまな情報を一元的に管理し、必要な薬学的分析を行った上で、薬剤服用歴等に記録を残さなければなりません。また、得られた情報をもとに、必要に応じて処方医へ情報提供を行うこととされています。
 
参照:調剤報酬点数表に関する事項|厚生労働省

4.調剤管理加算の施設基準になっている「服用薬剤調整支援料」とは?

調剤管理加算の施設基準は、「過去1年間に1回以上、服用薬剤調整支援料を算定した実績がある薬局」です。ここでの「1回以上の算定実績」とは、直近の算定日の翌日から翌年の同月末日までの間の実績を指します。
 
例えば、2024年5月20日に服用薬剤調整支援料を算定した場合、2024年5月21日から2025年5月末日までの間は、調剤管理加算の施設基準を満たします。なお、調剤管理加算は、施設基準を満たしていればよく、地方厚生局などに届出を行う必要はありません。
 
参照:特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて|厚生労働省
 
服用薬剤調整支援料には1と2があり、それぞれ算定要件や施設基準が異なります。1・2ともに、6種類以上の内服薬が処方されている患者さんに対して、医師へ処方内容に関する提案を行った場合に算定できます。
 
調剤管理加算を算定するのであれば、服用薬剤調整支援料1・2について理解しておく必要があるでしょう。ここでは、服用薬剤調整支援料1・2の概要についてお伝えします。

 

4-1.服用薬剤調整支援料1とは?

服用薬剤調整支援料1は、4週間以上服用を継続している内服薬が6種類以上ある場合に、服薬アドヒアランスや副作用の可能性などを検討した上で、処方医に減薬の提案を行い、処方される内服薬が2種類以上減少した状態が4週間以上継続した場合に125点を算定できます。なお、施設基準は定められていません。
 
服用薬剤調整支援料1について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
 

 

4-2.服用薬剤調整支援料2とは

服用薬剤調整支援料2は、複数の医療機関から内服薬が合わせて6種類以上処方されている患者さんについて、患者さんや家族などの求めに応じて、重複投薬などの解消のための取り組みを行った場合に算定できます。
 
服用薬剤調整支援料2はさらに2区分に分かれており、「過去1年以内に重複投薬などの解消に係る実績を持つ」場合は110点を算定し、それ以外については90点を算定します。
 
服用薬剤調整支援料2について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
 

5.調剤管理加算の算定における注意点

調剤管理加算を算定するのであれば、内服薬としてカウントできるもの・できないものや、副作用の可能性を検討する際に参考にする資料について把握しておくことが大切です。
 
また、2回目以降に処方箋を持参した患者さんに対して調剤管理加算を算定する際にも、注意点があります。それぞれについて詳しく見ていきましょう。

 

5-1.内服薬の種類とカウント方法

調剤管理加算は、内服薬であればどれでもカウントできるわけではありません。調剤管理加算における内服薬は、以下のものが該当します。

 

■算定時にカウントできる内服薬の種類
● 錠剤
● カプセル剤
● 散剤
● 顆粒剤
● 液剤

 

上記の内服薬について、1銘柄ごとに1種類としてカウントします。内服薬の種類に屯服薬は含められないため、カウントする際は注意しましょう。

 

5-2.副作用の可能性の検討

調剤管理加算の算定にあたっては、患者さんの服用薬について、副作用の可能性を検討する必要があります。服用薬の副作用については、以下の資料を参考にすることとされています。

 

■服用薬の副作用を検討する際に使用する資料

 

副作用の可能性を検討することは、薬剤師の重要な業務のひとつです。上記の資料を参考に検討しましょう。

 

5-3.「2回目以降に処方箋を持参した場合」のルール

2回目以降に処方箋を持参した場合で、調剤管理加算が算定できるのは、「薬局で調剤している内服薬」について処方内容が変更または追加された場合です。内服薬の種類が変わった場合、または内服薬の種類が1種類以上増えた場合に算定できます。
 
ただし、先にも述べたように、最終来局日が3年以上前である患者さんについては、薬剤服用歴等が残っていたとしても「初めて処方箋を持参した場合」に該当します。最終来局日が3年以上前の場合、変更または追加の有無に限らず、複数の医療機関から6種類以上の内服薬が処方されていると、調剤管理加算の算定が可能です。

6.調剤管理加算の算定例

調剤管理加算の算定にはさまざまなケースがあります。そのため、算定できるかどうか迷うこともあるでしょう。ここでは、疑義解釈に記載されている調剤管理加算の算定例を紹介します。

 

6-1.同時に複数の医療機関の処方箋を受け付けた場合

複数の医療機関から合わせて6種類以上の内服薬を処方されている患者さんから、同時に複数の処方箋をまとめて受け付けた場合、処方箋ごとに調剤管理加算を算定することはできません。同時に受け付けた場合は、調剤管理加算は1回のみの算定となります。
 
参照:疑義解釈資料の送付について(その1)令和4年3月31日|厚生労働省

 

6-2.同一医療機関の複数診療科から6種類以上の内服薬が処方されている場合

総合病院などを受診している患者さんの中には、同一医療機関で複数の診療科を受診している人もいます。そういった患者さんは、受診する診療科が多いほど、服用薬も多くなる傾向にあるため、調剤管理加算の対象となりやすいでしょう。しかし、同一病院で複数診療科を受診しているケースでは、調剤管理加算は算定できないことになっています。
 
参照:疑義解釈資料の送付について(その1)令和4年3月31日|厚生労働省

 

6-3.「内服薬の変更」と判断できるケース

2回目以降に来局された患者さんについては、内服薬の変更または追加によって調剤管理加算が算定できます。ここでの「内服薬の変更」とは、調剤している内服薬と異なる薬効分類の有効成分を含む内服薬に変更された場合を指します。同一薬効分類の有効成分を含む配合剤や内服薬以外の薬剤に変更した場合については、内服薬の変更に含めないとされています。
 
参照:疑義解釈資料の送付について(その1)令和4年3月31日|厚生労働省

7.患者さんの薬物治療をサポートしよう

調剤管理加算は、6種類以上の内服薬を服用する患者さんが安全に薬物治療を継続できるよう、服用薬を管理することを評価する加算です。
 
また、調剤管理加算には、服用薬剤調整支援料の算定実績が求められています。調剤管理加算の算定要件や施設基準から、副作用や相互作用などへの早期対応に加え、有害事象が起こらないようポリファーマシーや重複投薬などの解消に取り組むことへの期待がうかがえます。
 
患者さんが薬物治療を安全に受けられるよう、薬剤師には職能を十分に発揮することが求められているでしょう。

 
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執筆/秋谷侭美(あきや・ままみ)

薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。