薬学生のためのお役立ちコンテンツ 更新日:2024.09.06公開日:2023.11.30 薬学生のためのお役立ちコンテンツ

薬剤師国家試験の合格率は?過去~2024年の合格率の推移を紹介

文:秋谷侭美(薬剤師ライター)

2025年「第110回薬剤師国家試験」については、マイナビ薬剤師の国家試験概要ページでも詳しい情報を紹介しています!

 

2024年に実施された第109回薬剤師国家試験の合格率を、新卒(ストレート)・既卒別、大学別、男女別といった切り口で紹介します。6年制がスタートしてからの合格率の推移や、合格点(ボーダー)の推移、合格基準などについてもまとめました。また、薬剤師国家試験に合格するためには、膨大な試験範囲を満遍なく勉強しなければならないため、勉強方法を工夫する必要があるでしょう。薬学生に向けて、薬剤師国家試験の勉強のコツについても解説します。

1.第109回薬剤師国家試験(2024年)の合格率

第109回薬剤師国家試験は、2024年2月17、18日に実施され、同年3月19日に合格発表がありました。受験者の総数は13,585名で、うち合格者は9,296名、合格率は68.43%でした。新卒と既卒、男女での合格率は以下のとおりです。

男女
全体 68.43% 64.92% 70.59%
6年制新卒 84.36% 84.45% 84.31%
6年制既卒 42.42% 38.05% 45.52%
その他 43.87% 38.58% 51.76%

参照:第109回薬剤師国家試験の結果について|厚生労働省

 
新卒の方が既卒に比べて合格率が高くなっています。また、男女の合格率に大きな差がないことがわかります。
 
なお、「その他」に含まれる受験生は、旧4年制を卒業した人や、外国の薬学校を卒業している人または新4年制に入学した人の中で認定基準を満たした受験資格認定者が該当します。以下で紹介する「その他」についても、同様の受験生を指しています。

 

🔽 2024年「第109回薬剤師国家試験」の結果を詳しく紹介した記事はこちら

 

🔽 2025年「第110回薬剤師国家試験」の情報をまとめた記事はこちら

2.第109回薬剤師国家試験(2024年)の大学別合格率

第109回薬剤師国家試験における国立大学、公立大学、私立大学それぞれの薬剤師国家試験の合格率は以下のとおりです。

全体 国立 公立 私立
6年制新卒 84.36% 90.04% 90.74% 83.71%
6年制既卒 42.42% 57.14% 36.36% 42.28%
その他 43.87% 70.45% 66.67% 20%

参照:第109回薬剤師国家試験の結果について|厚生労働省

 

新卒や既卒の合格率については国公私立の大きな差はありませんが、「その他」の合格率については国立大学、公立大学が68%前後の合格率であるのに対し、私立大学は20%と低い合格率となっています。
 
続いて、大学別の合格率について、設立主体別に詳しく見ていきましょう。

 

2-1.国立大学の合格率

薬学部のある国立大学は全国で14大学あります。それぞれの合格率は以下のとおりです。

国立大学 全体 6年制 その他
新卒 既卒
北海道大学 90.32% 90% 100% 0%
東北大学 82.14% 90% 100% 57.14%
千葉大学 89.36% 90% 0% 85.71%
東京大学 89.47% 100% 0% 87.5%
富山大学 79.17% 90.74% 50% 33.33%
金沢大学 93.33% 94.44% 100% 80%
京都大学 75% 83.33% 50% 50%
大阪大学 78.79% 95.65% 28.57% 66.67%
岡山大学 83.33% 88.89% 60% 0%
広島大学 90.38% 92.5% 83.33% 83.33%
徳島大学 83.87% 92.31% 33.33% 75%
九州大学 78.26% 87.1% 20% 80%
長崎大学 85.37% 96.97% 50% 0%
熊本大学 78.87% 78.85% 87.5% 72.73%

参照:第109回薬剤師国家試験 大学別合格者数|厚生労働省

 

国立大学は、新卒の合格率が90%を超えています。また、東京大学の「新卒」や北海道大学、東北大学、金沢大学の「既卒」は合格率100%でした。

 

2-2.公立大学の合格率

薬学部を有する公立大学は、全国に3大学あります。それぞれの合格率は以下のとおりです。

公立大学 全体 6年制 その他
新卒 既卒
岐阜薬科大学 80.27% 87.1% 47.37% 25%
静岡県立大学 83.84% 89.53% 14.29% 83.33%
名古屋市立大学 87.69% 94.64% 28.57% 100%
山陽小野田市立
山口東京理科大学
94.06% 94.06% 0% 0%

参照:第109回薬剤師国家試験 大学別合格者数|厚生労働省

 

公立大学の合格率も、新卒は90%前後となっており、非常に高い合格率と言えるでしょう。

 

2-3.私立大学の合格率

薬学部を有する私立大学は、全国に56大学あります。それぞれの合格率は以下のとおりです。

私立大学 全体 6年制 その他
新卒 既卒
北海道医療大学 72.95% 76.92% 71.76% 0%
北海道科学大学 64.41% 76.42% 50% 0%
東北医科薬科大学 70.75% 83.91% 46.38% 0%
城西大学 55.11% 69.74% 38.14% 0%
東邦大学 80.77% 91.63% 47.89% 0%
北里大学 84.84% 87.31% 72.34% 66.67%
慶應義塾大学 81.87% 86.67% 47.37% 50%
昭和大学 84.49% 87.57% 58.82% 0%
昭和薬科大学 77.47% 83.11% 61.64% 0%
東京薬科大学 79.12% 87.25% 57.38% 25%
東京理科大学 74.55% 90.28% 43.33% 50%
日本大学 69.55% 84.39% 46.15% 0%
星薬科大学 80.63% 86.99% 57.35% 83.33%
明治薬科大学 82.21% 89.73% 50% 55.56%
帝京大学 68.9% 86.38% 30.56% 100%
新潟薬科大学 55.43% 76.12% 43.59% 0%
北陸大学 52.38% 75% 36.47% 0%
名城大学 95.63% 98.64% 82.14% 0%
京都薬科大学 84.82% 87.19% 65% 0%
大阪医科薬科大学 79.88% 89.45% 55.56% 0%
近畿大学 85.06% 94.7% 53.66% 100%
摂南大学 76.21% 82.24% 53.7% 0%
神戸学院大学 72% 86.08% 53.91% 0%
神戸薬科大学 79.47% 84% 67.11% 0%
武庫川女子大学 60.08% 76.43% 40.2% 16.67%
福山大学 58.71% 73.58% 42.55% 0%
徳島文理大学 45.87% 94.29% 22.97% 0%
第一薬科大学 38.68% 90.63% 27.46% 0%
福岡大学 81.25% 90.64% 59.52% 0%
就実大学 45.67% 76.74% 29.76% 0%
九州保健福祉大学 59.02% 88.64% 42.31% 0%
青森大学 33.33% 65% 23.44% 0%
日本薬科大学 41.89% 83.33% 24.73% 0%
城西国際大学 51.19% 83.64% 35.4% 0%
千葉科学大学 30.95% 39.62% 25.35% 0%
帝京平成大学 52.49% 74.47% 36.87% 50%
武蔵野大学 85.71% 90.52% 75% 0%
広島国際大学 43.26% 51.61% 36.71% 0%
奥羽大学 38.28% 43.22% 32.58% 0%
国際医療福祉大学 86.13% 97.08% 44.44% 0%
愛知学院大学 76.7% 92.59% 51.47% 0%
金城学院大学 74.77% 86.51% 57.95% 0%
同志社女子大学 69.68% 78.07% 46.34% 0%
崇城大学 74.85% 88.18% 48.08% 0%
高崎健康福祉大学 62.7% 81.82% 32.65% 0%
横浜薬科大学 50.7% 93.51% 31.59% 0%
大阪大谷大学 49.24% 64.29% 38.05% 0%
松山大学 50.37% 77.78% 26.39% 0%
長崎国際大学 62.75% 75.29% 47.06% 0%
岩手医科大学 46.09% 71.79% 34.83% 0%
医療創生大学 83.82% 87.1% 50% 0%
姫路獨協大学 36.03% 52.63% 33.33% 0%
兵庫医科大学 63.39% 84.42% 48.11% 0%
安田女子大学 56.3% 66.67% 37.5% 0%
鈴鹿医療科学大学 51.35% 66.23% 35.21% 0%
立命館大学 80.36% 88.61% 60.61% 0%

参照:第109回薬剤師国家試験 大学別合格者数|厚生労働省

 

私立大学の合格率は、新卒が39%~98%、既卒が22%~82%と大学によって差があることが分かります。「その他」の合格率が0%の大学も見られました。

3.過去の薬剤師国家試験の合格率の推移

2012年から2024年までの薬剤師国家試験の合格率の推移を見てみましょう。

 

薬剤師国家試験の合格率の推移
試験回(年) 全体 6年制 その他
新卒 既卒
第109回
(2024年)
68.43% 84.36% 42.42% 43.87%
第108回
(2023年)
69.00% 84.86% 44.05% 36.65%
第107回
(2022年)
68.02% 85.24% 40.75% 39.26%
第106回
(2021年)
68.66% 85.55% 41.29% 36.14%
第105回
(2020年)
69.58% 84.78% 42.67% 36.10%
第104回
(2019年)
70.91% 85.50% 43.07% 33.72%
第103回
(2018年)
70.58% 84.87% 47.00% 32.58%
第102回
(2017年)
71.58% 85.06% 50.83% 30.21%
第101回
(2016年)
76.85% 86.24% 67.92% 34.29%
第100回
(2015年)
63.17% 72.65% 53.12% 18.69%
第99回
(2014年)
60.84% 70.49% 39.85% 13.24%
第98回
(2013年)
79.10% 85.09% 67.52% 14.09%
第97回
(2012年)
88.31% 95.33% 38.19%

 

参照:厚生労働省「試験回次別合格者数の推移」をもとに作成

 

2012年に実施された第97回薬剤師国家試験は、2006年に6年制がスタートし、その卒業生が初めて国家試験を受けた年です。全体の合格率は、第97回が88%、第98回が79%と高い合格率で推移しましたが、続く第99回、第100回では約60%とやや低い合格率となりました。
 
第101回以降は、おおむね一定の合格率となっており、全体の合格率が約70%、新卒(ストレート)が約85%で推移しています。

4.過去の薬剤師国家試験の合格点(ボーダー)の推移

薬剤師国家試験の合格点は、平均点と標準偏差を用いた相対基準により設定されます。

 

また、必須問題は「全問題への配点の70%以上」かつ「構成する各科目の得点がそれぞれ配点の30%以上」という基準も満たす必要があり、第104回からは後述する禁忌肢の基準も導入されています。

 

相対基準による合格基準が導入された2016年から2024年までのボーダー(合格点)の推移は以下のとおりです。

 

薬剤師国家試験の合格点の推移(345点換算)
試験年 合格点
第109回
2024年
210点
第108回
2023年
235点
第107回
2022年
217点
第106回
2021年
215点
第105回
2020年
213点
第104回
2019年
225点
第103回
2018年
217点
第102回
2017年
217点
第101回
2016年
223点

 

合格点は年度ごとの試験の難易度によって変動があるものの、210点台~230点台(345点換算)で推移していることが分かります。

5.薬剤師国家試験の合格基準と禁忌肢

薬剤師国家試験合格を目指すには、合格基準を把握しておく必要があります。また、絶対に間違ってはいけない禁忌肢についても確認しておきましょう。それぞれ詳しくお伝えします。

 

5-1.合格基準

「薬剤師国家試験のあり方に関する基本方針」では、薬剤師国家試験の合格基準について以下のように示されています。
 
参照:薬剤師国家試験のあり方に関する基本方針|厚生労働省

 

● 問題の難易を補正して得た総得点について、平均点と標準偏差を用いた相対基準により設定した得点以上であること
● 必須問題について、全問題への配点の70%以上で、かつ、構成する各科目の得点がそれぞれ配点の30%以上であること

 

必須問題については毎年同じ基準となっていますが、得点については試験ごとに異なります。第109回薬剤師国家試験(2024年)では、以下の合格基準を満たす必要がありました。

 

● 全問題の得点が420点以上
● 必須問題について、全問題への配点の70%以上で、かつ、構成する各科目の得点がそれぞれ配点の30%以上
(注)配点は1問2点(688点満点)

 
🔽 薬剤師国家試験の合格基準について詳しく解説した記事はこちら

 

5-2.禁忌肢とは

2016年2月4日に公示された「薬剤師国家試験のあり方に関する基本方針」では、禁忌肢について以下のように記載されています。

 

薬剤師には、医療人としての高い倫理観と使命感が求められることにかんがみ、薬剤師として選択すべきでない選択肢(いわゆる「禁忌肢」)を含む問題について、導入することとする。


 

禁忌肢は第104回(2019年)から採用されており、以下のような誤った知識を持つ受験生を判断するために導入されています。

 

● 公衆衛生に甚大な被害を及ぼすような内容
● 倫理的に誤った内容
● 患者に対して重大な障害を与える危険性のある内容
● 法律に抵触する内容

 

ただし、禁忌肢については、マークミスや問題文の読み間違えといった偶発的な理由で、薬剤師の適性がある受験生が不合格とならないよう配慮して作成することが原則となっています。

6.薬剤師国家試験の勉強のコツ

薬剤師国家試験は膨大な試験範囲のため、短期的な勉強では十分に対策をすることが難しいでしょう。効率的かつ効果的に試験対策を行うためにも、勉強のコツを知ることは大切です。ここでは、薬剤師国家試験の勉強のコツについてお伝えします。

 

6-1.出題範囲を把握して対策を考える

薬剤師国家試験の勉強を始める前に、まずやっておきたいのは、出題範囲を把握することです。分野ごとの出題数や必須問題の割合などを把握することで、効率的に勉強に取り組めるでしょう。

科目 必須問題 一般問題
(理論問題・実践問題)
物理、化学、生物 15問 45問
衛生 10問 30問
薬理 15問 25問
薬剤 15問 25問
法規、制度、倫理病態、薬物治療 15問 25問
法規、制度、倫理 10問 20問
実務 10問 85問
出題総数 90問 255問

参照:薬剤師国家試験のあり方に関する基本方針|厚生労働省

 

薬理、薬剤、病態、薬物治療といった医薬品に関する分野は、ボリュームが大きく、必須問題の割合も高い傾向にあります。この分野は、薬剤師が医療現場で働く時に必要とされるもので、他の分野の問題を解く際にも役立つ内容です。しっかりと理解を深めておく必要があるでしょう。
 
また、どの分野も満遍なく理解を深めなければなりませんが、やみくもに全てを進めてしまうと、かえって時間がかかりがちです。勉強を始める順番を決めて、効率的に学習しましょう。例えば、問題数や必須問題の割合が高い分野の中でも、自身の得意分野、不得意分野などを考えながら、点数を積み重ねられるよう戦略的に学習できるよう計画を立てることが大切です。

 

6-2.過去問を繰り返し解く

薬剤師国家試験では、過去10年の試験問題から約20%の類似問題が出題されます。繰り返し出題される過去問は、薬剤師になる上で必要な知識と言えるものです。しっかりと理解しておきましょう。
 
また、過去問を繰り返し解くことで、試験問題全体の流れや出題傾向が分かるだけでなく、自身の弱点を把握できます。さらに、繰り返しの中で、正しい回答が分かるようになったなど、自身の成長に気が付く機会にもなるでしょう。長期間、受験勉強を続けることへのモチベーションにもつながるため、過去問を繰り返し解くことはおすすめです。
 
ただし、過去10年分の過去問を何度も繰り返し解くのは、非常に時間がかかります。1年前後の長いスパンで学習計画を立てる必要があるでしょう。

 
▶ 薬剤師国家試験の過去問はこちら

 

6-3.必須問題の対策をする

前にもお伝えしたとおり、必須問題は合格基準があります。そのため、合格基準をクリアできるよう対策をとる必要があるでしょう。また、必須問題は基礎的な内容が中心となっています。自身の得意分野、不得意分野を把握するためにも、まずは数年分の必須問題を解くのがおすすめです。
 
必須問題に取り組むことで知識の基盤作りにつながり、一般問題を解くのにも役立つでしょう。合格基準をクリアし、一般問題の正解率を高めるためにも、必須問題の対策をすることは重要です。

 
🔽 薬剤師国家試験の勉強法について詳しく解説した記事はこちら

7.計画的な勉強で薬剤師国家試験の合格を目指そう

薬剤師国家試験の合格率は、大学や男女などに関わらず、新卒の方が既卒に比べて合格率が高い傾向にあります。薬学生は社会人と比較すると学習時間を確保しやすいため、できる限り新卒での国家試験合格を目指すのがよいでしょう。
 
また、薬剤師国家試験の試験範囲はとても膨大なため、長期的な学習計画を立てるのがおすすめです。自身の弱点や強み、試験の傾向を把握して、計画的に勉強を進めながら、薬剤師国家試験の合格を目指しましょう。

 
🔽 薬剤師になる方法について詳しく解説した記事はこちら


執筆/秋谷侭美(あきや・ままみ)

薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。