薬剤師の働き方 公開日:2024.04.11 薬剤師の働き方

病院薬剤師の仕事内容とは?薬局薬剤師との違いや年収について解説

文:秋谷侭美(薬剤師ライター)

病院では医師、薬剤師、看護師、作業療法士、理学療法士など、さまざまな職種が連携しながら患者さんの治療にあたっています。病院薬剤師は、薬物治療に携わりつつ、チーム医療の一員として専門性の高さを生かせる仕事です。今回は、病院薬剤師の仕事内容や薬局薬剤師との違いのほか、平均年収や役割、魅力、やりがいなどを解説します。求められるスキルや知識、向いている人、向いていない人についてもお伝えします。

1.病院薬剤師の仕事内容

病院薬剤師の仕事は、通常の調剤業務に加えて、以下のように多岐にわたります。具体的な仕事内容を見ていきましょう。

 

● 調剤業務
● 注射調剤業務
● がん化学療法
● 病棟業務
● 救命救急業務
● 治験業務
● 院内製剤業務
● 医薬品情報業務

 

1-1.調剤業務

病院薬剤師の調剤業務では、処方鑑査や疑義照会などを行います。調剤薬局との違いは、調剤終了後に与薬カートへのセットなどを行い、病棟まで処方薬を届ける点でしょう
 
内服薬を自己管理している患者さんの場合には薬剤師から患者さんに、看護師などが服薬管理をしているケースでは病棟に処方薬を届けるなど、病院のルールに従って行います。

 

1-2.注射調剤業務

注射薬の調剤も病院薬剤師の仕事です。内服薬と同様、院内処方箋に従って注射薬の調剤を行います。
 
注射薬の中には投与直前に混合しなければならないものがあったり、汚染を防止するための手技があったりするなど、注射薬ならではの知識が必要です。病院薬剤師は用法用量、薬効などの基本的な知識に加え、注射薬を扱うための十分な知識も求められます。
 
なお昨今では、注射薬の調剤や混合の機械化が進んでいます。患者さんごとに自動で注射薬をカートにセットする機械や、配合禁忌や相互作用などのチェック後、アンプルピッカーと呼ばれる調剤機器によってオートメーションで注射薬の混合を行う機械があります。
 
より慎重な対応が求められる調剤が自動化されることで、薬剤師の負担軽減だけでなく、抗がん剤の混合による曝露防止などが期待できます。

 

1-3.がん化学療法

がんの治療は分子標的薬や副作用の少ない化学療法剤の開発、副作用支援薬などの進歩によって、入院をともなう治療だけでなく外来での対応も進んでいます。患者さんにとって有効で安全ながん治療を行うためには、薬剤師の参画が欠かせません。
 
病院薬剤師は、レジメン(抗がん剤治療の計画書)のチェック、処方提案、抗がん剤調製、治療薬の説明や副作用モニタリングなどを行います
 
がんの治療を受ける患者さんは、非常に大きな心理的・社会的な不安を抱えているため、病院薬剤師は、患者さんの気持ちに十分に配慮した上でのコミュニケーションが求められます。

 

1-4.病棟業務

病院薬剤師は、医師や看護師などの他職種と連携しながら、入院患者さんへの服薬指導や病棟の薬剤管理などを行い、患者さんの治療に参画します
 
患者さんの入院時には、カルテや薬歴などから基本的な情報を得たあと面談を行い、持参薬、服用中の市販薬、健康食品、アレルギー歴、副作用歴などをチェックします。
 
退院時には、自宅でも適切な薬物治療が継続できるように、用法用量や薬効、副作用などの説明を患者さんや家族に行います。お薬手帳や文書などに必要事項を記載し、かかりつけ医や保険薬局が治療経過などを把握できるように記録を残すのも大切な仕事です。
 
また、調剤室や病棟などの薬剤管理や衛生管理も大切な業務のひとつです。調剤室の薬剤や病棟にストックしてある薬剤、救急カートの使用期限の確認と在庫管理、消毒薬の使用期限や希釈濃度のチェック、手洗い指導などの衛生管理などを行います。
 
薬剤管理や衛生管理は、それぞれの担当者が決まっていたり、病棟担当者が行ったりと、病院によって対応が異なります。

 

1-5.救命救急業務

救命救急の担当薬剤師は、患者さんの状態に合わせて、注射薬の鑑査や麻薬などの管理、治療薬物のモニタリング、持参薬の確認などを行います
 
患者さんと会話できない場合もあるため、患者さんの家族へのヒアリングなどから、併用薬や既往歴、考えられるリスクなどを推測し、適切な薬剤を提案できるスキルが必要です。
 
また、救急外来では、重症患者さんが搬送されてくる確率が高いため、高度な医療知識と迅速で正確な判断が求められます。救命救急業務を担当する薬剤師は、その場の状況に合わせた臨機応変な対応が必要です。
 
救急認定薬剤師の資格取得など、救急医療に関する深い知識を習得することで、中毒物質の特定や医師への処方提案といった積極的なサポートができるでしょう。

 

1-6.治験業務

治験とは、薬を国に申請する際に必要なデータを得るための臨床試験のことで、病院薬剤師が関わる業務のひとつです。治験は、医薬品の臨床試験実施基準に関する省令(Good Clinical Practice:GCP)のもとで行われ、倫理的で科学的な試験が適正に実施できるように規制されています。
 
治験業務は、院内の薬剤師が行う場合とSMOに委託する場合があり、治験業務へのかかわり方は病院によって異なります。治験業務担当の病院薬剤師は、治験薬の管理や治験実施計画書(プロトコル)通りに行われているかなどの確認が主な業務です。
 
治験薬の中には、治療薬のない疾患を対象としているものもあり、新薬の開発に携わることにやりがいを感じられることもあるでしょう。

 

1-7.院内製剤業務

院内製剤とは、病院内で薬剤師が調製する薬剤のことです。診断や治療をするのに必要な薬剤の中には、使用したい濃度が販売されていなかったり、安定性を維持するのが難しかったりするものがあります。そういった薬剤について、薬剤師が必要に応じて調製を行うのが院内製剤業務です。院内製剤には次のようなものがあります。

 

● 経口で服薬できない患者さんに坐薬を作る
● 試薬を使って軟膏を作る
● 小児用に点眼液を希釈する
● 苦みの強い薬に単シロップを加えて飲みやすくする

 

患者さんの状態や治療内容に合わせて、さまざまなニーズに対応するために、病院では院内製剤が調製されています。

 

1-8.医薬品情報業務

医薬品情報業務とは、医薬品の情報を扱う業務のこと。DI(Drag Information)業務とも呼ばれています。主な業務には、次のようなものがあります。

 

● 院内からの問い合わせ対応
● 採用している医薬品の使用量・使用法・効果・副作用などの情報を収集・発信
● 病院内で新規に採用する医薬品についての書類作成
● 採用薬をジェネリック医薬品へ変更する際に必要な情報の収集

 

医薬品情報業務では、医師や薬剤師、看護師などの医療従事者からの、適応症や値段、適応外使用、点滴の速度や配合変化、飲み合わせといった問い合わせに対応します。
 
また、医薬品に関する情報を収集し、発信するのが、医薬品情報業務の大きな役割です。採用している医薬品について副作用情報などを収集した場合には、院内や製薬企業に発信します。
 
新規で採用する医薬品やジェネリック医薬品については、基本情報はもちろんのこと、院内で併用されると予想される医薬品との相互作用や類似薬との違いなどを製薬企業などに確認してから書類を作成します。
 
ほかにも、院内で共有する情報誌を作成するなど、医薬品情報業務では医薬品に関するさまざまな情報を扱う業務を担うことがあります。

2.病院薬剤師と薬局薬剤師の違い

薬局薬剤師は院外処方箋の調剤を行うのに対し、病院薬剤師は院内処方箋に従って薬を調剤します。病院薬剤師と薬局薬剤師は調剤を行う点は同じですが、取り扱う薬剤やその他の業務に違いがあります。

 

2-1.取り扱う薬剤の違い

調剤薬局と異なるのは、取り扱う薬剤の種類です。錠剤やパップ剤、散剤や軟膏といった調剤薬局でも扱う薬剤に加えて、病院でしか使用できない注射薬などを扱うこともあります。
 
また、病院の規模や診療科にもよりますが、病院と薬局で取り扱う薬剤に違いがあることから、用意されている設備が異なる場合があります。
 
病院では、調剤棚や分包機などといった機器はもちろん、注射調剤用のクリーンベンチや抗がん剤調剤用の安全キャビネットなどの特殊な設備も、診療内容に応じて用意されています。取り扱う薬剤によって扱う機器が異なるのも病院薬剤師と薬局薬剤師の違いでしょう。

 

2-2.役割や業務内容の違い

病院薬剤師は、患者さんの状態を安定させるための薬物治療をサポートします。一方で、薬局薬剤師は、自宅や介護施設などで過ごす患者さんに対応するため、状態が落ち着いている患者さんがほとんどです。病院薬剤師と薬局薬剤師では対応する患者さんの状態に違いがあるため、役割や業務内容が異なります。
 
病院薬剤師の主な業務は、入院患者さんを対象にした調剤や服薬指導などです。病棟業務や救命救急業務、院内製剤業務といった、病院薬剤師ならではの業務を担います。患者さんが急変したり救命救急業務を担当したりする場合には、一刻をあらそう対応が求められることもあるでしょう。病院によっては治験業務があり、新薬開発に携われる機会もあります。
 
一方で、薬局薬剤師は、処方箋を持参した患者さんに対応するだけでなく、地域医療に貢献するという大きな役割があります。薬局に来局する患者さんや在宅医療を受ける患者さんに対して調剤や服薬指導を行います。
 
また、医事課が保険請求を行う病院薬剤師とは異なり、薬局薬剤師は保険に関する知識が不可欠です。緊急性の高い業務はそれほど多くありませんが、在宅医療を受ける患者さんの急変時などは、早めの対応を求められることもあるでしょう。

 
🔽 薬局薬剤師の仕事内容について解説した記事はこちらら

3.病院薬剤師の平均年収

厚生労働省中央社会保険医療協議会が発表した「第24回医療経済実態調査報告(令和5年実施)」によると、一般病院で常勤職員として働く薬剤師の平均年収は約569万円でした。一方、保険薬局で働く管理薬剤師の平均年収は約735万円、薬剤師は約486万円となっています。
 
病院薬剤師は、保険薬局で働く薬剤師より平均年収が高いと示されていますが、病院薬剤師の平均年収は管理職を含めたものです。役職の有無によって平均年収は異なるでしょう。
 
地域や病院の規模によっても年収は異なるため、病院薬剤師への就職・転職を考えている場合には、応募先の求人の条件を確認しましょう。

 
🔽 薬剤師の平均年収について解説した記事はこちら

4.病院薬剤師に求められるスキルと知識

病院薬剤師に求められるスキルとして、薬の専門家としての高度な知識と経験に加え、チーム医療に参画するためのコミュニケーションスキルが挙げられます。具体的な例を挙げて見てみましょう。

 

4-1.最新の医療情報を得るといった情報収集スキル

日進月歩の医療業界では、常に新薬の開発や治療方法の研究が行われています。自ら積極的に最新情報を収集し、医師などと情報共有できるスキルは、チーム医療に参画する上でとても大切です。
 
積極的にチームへ関与するためにも、情報収集スキルは病院薬剤師に求められる能力のひとつといえるでしょう。

 

4-2.薬の専門家としての高度な知識

病院薬剤師は薬の専門家として高度な知識が求められるため、認定薬剤師や専門薬剤師といった資格の取得など、基礎知識や最新情報を得る努力が必要です
 
今以上に専門的な知識を習得したいのであれば、まずは認定薬剤師の資格取得を目指しましょう。研究の実績や後輩薬剤師の教育・指導の実績を積み重ねることで専門薬剤師としての認定資格を得られます。
 
病院薬剤師に求められる知識は、病院の診療科によって異なります。総合病院であれば、院内で扱う薬の知識はもちろん、診療科ごとの治療に関する知識も必要です。
 
一方、がん専門病院や糖尿病専門病院などの薬剤師は、病院自体の専門診療科を中心とした知識が求められます。

 

4-3.コミュニケーションスキル

チーム医療へ参画する機会もあり、業務を円滑に進めるためのコミュニケーションスキルも必須スキルといえます。具体的には傾聴力、雑談力、提案力、調整力などがあげられます。
 
相手の話を受け入れる姿勢で話を聞く「傾聴力」があれば、患者さんだけでなく、医療スタッフも安心して話ができる雰囲気を作れるでしょう。気楽に会話を続ける「雑談力」や、より良い医療を提供するための「提案力」、他職種の医療スタッフの業務に合わせて自身の業務を行う「調整力」などは基本のコミュニケーションスキルといえます。
 
普段からコミュニケーションの機会を増やせば、医療スタッフの業務や考え方などを把握できるだけでなく、良好な人間関係の構築につながるため、より円滑に業務を遂行しやすくなるでしょう。

 

4-4.状況に応じた臨機応変な対応力

病院薬剤師は、救急外来の患者さんや入院患者さんの急変時などに対応するケースがあるため、臨機応変な対応力が求められます。
 
また、患者さんや医療従事者とコミュニケーションを取る際にも相手の状況や心境に合わせた対応が求められるでしょう。急いでいたり、会話ができる心境やタイミングでなかったりする場合には、手短に話を済ませることが必要です。
 
会話の中で、じっくりと話が聞きたい、詳しい情報が知りたいといった相手の心境が見られれば、それに合わせた対応をしなければなりません。病院薬剤師は、その場の状況に応じた柔軟な対応力が求められます。

5.病院薬剤師に向いている人

病院薬剤師に向いている人として、臨床現場で経験を積みながらスキルアップを目指したい人や、他職種とコミュニケーションを取りながら医療に貢献したい人が挙げられます。詳しく見ていきましょう。

 

5-1.臨床現場で経験を積みながらスキルアップしたい人

病院薬剤師は、専門的なスキルを高めたい人や、勉強を続ける向上心がある人に向いているでしょう
 
病院では、さまざまな医薬品を扱っているため、薬の専門家としての幅広い知識を身につけられます。他職種とコミュニケーションを取る機会があるので、専門分野への深い理解やスキルを身につけることも可能でしょう。
 
また、病院は特定の診療科についてさまざまな症例を集められるため、認定薬剤師・専門薬剤師などの資格取得に必要な症例数をクリアしやすい環境が整っています。知識や経験を積み重ねてスキルアップをしながら、自身の働きで誰かの役に立ちたいと思える人に向いています。

 

5-2.他職種と連携しながら医療に貢献したい人

病院薬剤師は、他職種と連携しながら治療に携わります。患者さんとのコミュニケーションだけでなく、患者さんから得られた情報をもとに医師や看護師などの医療スタッフと患者さんの治療について意見交換することがあります。
 
また、患者さんや医師・看護師などの医療スタッフから質問や相談を受ける機会もあり、専門的な知識を生かしながらコミュニケーションを取る必要があります。こうしたやり取りのすべては患者さんの命に関わることです。責任をもって対応できる人は、病院薬剤師に向いているといえるでしょう。
 
加えて、病院で行われるカンファレンスでは、他職種の知識や考え方を知ることができる機会も少なくありません。あらゆる視点での意見や提案を見聞きすることで、疾患に対する知識や理解を深められるでしょう。自身が発言する機会もあるため、提案力など知識以外のスキルを高めていきたい人にも向いています。

 
🔽 薬剤師に向いている人について解説した記事はこちら

6.病院薬剤師に向いていない人

病院薬剤師に向いていない人には、体力に自信がない人やプライベートを重視したい人、コミュニケーションに苦手意識がある人が挙げられます。詳しく見ていきましょう。

 

6-1.体力に自信がない人

薬剤師は立ち仕事が多いため、ある程度の体力が必要です。特に病院では、病棟まで輸液を運ぶといった力仕事があったり、夜勤や当直業務があったりします。何度も階段の上り下りをして、病棟や薬剤部など行き来することもあるため、体力に自信のない人にとって厳しい環境かもしれません。
 
とはいえ、就職直後から輸液を大量に運んだり、夜勤や当直を任されたりといった機会は、それほど多くないでしょう。仕事に慣れながら、徐々に体力をつけていくことも可能です。体力に自信がない場合でも、必要以上に不安を感じることはないでしょう。

 

6-2.プライベートを重視したい人

プライベートを重視したい人は、就職先をよく検討する必要があります。病院によっては土日祝日に関係なくシフトを組んだり、夜勤や当直業務があったりするため、暦通りに休めないことも少なくありません
 
休日に開催される学会や勉強会に出席する場合には、ゆっくりとした休日を過ごせないこともあるでしょう。休日に予定が入ることが多い人や残業をしたくない人・できない人は、病院薬剤師として働くのが難しいかもしれません。
 
プライベート重視の人が病院への就職を考える場合は、休日や夜勤などの業務体制について確認する必要があるでしょう。

 

6-3.多職種とのコミュニケーションに苦手意識がある人

病院では、患者さんごとに医師や看護師、栄養士、理学療法士といった多職種の担当者がつき、連携しながら治療を進めます。そのため、治療に関する相談や報告がある場合には、それぞれの担当者とコミュニケーションを取らなければなりません
 
また、病棟担当の病院薬剤師は、担当する病棟が変わるごとに、新たに人間関係を構築する必要があります。薬剤部にも医療従事者やMRなどさまざまな人が訪れるため、初めて接する人と話す機会があるでしょう。コミュニケーションに苦手意識を持っている人にとって、最初は辛い環境かもしれません。
 
しかし、ある程度の期間、業務を行っていると、顔なじみが増え、気軽に話せる医療従事者も現れてくるはずです。徐々に慣れていくことで苦手意識を克服できるケースもあります。

7.病院薬剤師のやりがい

病院薬剤師はさまざまな院内業務に携わります。業務全体を通して、以下のようなやりがいを感じることができるでしょう。

 

7-1.患者さんのケアに深く携われる

病院薬剤師は医師に処方意図を直接聞けたり、カルテで治療方針や病状・検査結果だけでなく、看護師や理学療法士などそれぞれの記録を確認できたりします。
 
コメディカルスタッフからの情報も得られるため、患者さんの疾患や病状について深く理解したうえで、ケアに関われます。
 
より深く患者さんの状態を把握し、薬物治療に携われることがやりがいにつながります

 

7-2.チーム医療に携われる

病院薬剤師は、ICTや緩和ケアチームなど、多職種と連携しながら専門性を発揮できます。チーム医療に参画することで、医師や看護師、理学療法士などの医療スタッフと関わり、それぞれの職種の役割や専門性などを学べるのもモチベーションの向上につながります。チームとしての活動によって、コミュニケーションスキルの向上も期待できます。
 
ここで、病院におけるチーム医療について具体的な例を見ていきましょう

 

<病院薬剤師のチーム医療の例>

■NST(Nutritional Support Team:栄養サポートチーム)
低栄養状態になるケースや過栄養状態になるケースなど、特に管理が必要な患者さんに対し、医師、薬剤師、看護師、管理栄養士、臨床検査技師などの医療スタッフが連携し栄養支援を行う。病院薬剤師は栄養薬剤や輸液の提案、副作用の確認、栄養輸液・混合輸液の投与方法の管理、患者さん本人やご家族への説明などを実施する。

■ICT(Infection Control Team:感染対策チーム)
ICT(感染対策チーム)は、さまざまな感染症の発生や拡散を防止し、患者さんや家族、職員を守るための活動を行う。感染症の発生状況や院内検出病原体、抗菌剤の使用状況などの情報をチーム内で共有したり、手順通りに感染症対策が実施されているかを確認したりと、適切な運営を管理するのが主な業務。感染症に関する教育や感染対策マニュアルの作成、院内感染を防止する活動のほか、地域での感染症対策啓蒙のための説明会を開催するチームもある。

■緩和ケアチーム
主にがん患者さんが抱える痛みを和らげ、負担を減らすために連携する。身体的な負担をはじめ、不安や孤独などの心理的苦痛や仕事や家庭など社会的苦痛、人生の意味への問いや死への恐怖などについて、さまざまな評価を行いながら、投薬や処置、身体ケア、精神面でのフォローなどに取り組む。病院薬剤師は、医療用麻薬や消炎鎮痛剤、抗不安薬などの処方提案や、使用方法の説明などを担う。

■褥瘡対策チーム
寝たきりの患者さんに起こりやすい褥瘡(床ずれ)に対応する。褥瘡の原因はさまざまなため、複数の職種がかかわりながら予防や治癒の対策を立てる。病院薬剤師は、皮膚外用剤やドレッシング剤などが適正に使用されるように、実践や教育を行う。

 

7-3.病院ならではの新たな知識を吸収できる

病院では、医師の治療方針や看護師のケア方法、リハビリ、栄養管理などを直接見聞きできるため、薬剤師の仕事以外の知見を広げられるでしょう
 
また、薬剤師は、医師や看護師などから薬剤情報を求められることも少なくありません。問い合わせがあった際には、医薬品情報をしっかりと理解し情報提供する必要があります。
 
他職種からの問い合わせについて、インプット・アウトプットすることが自身のスキルアップにつながり、やりがいを感じられるでしょう。

 
🔽 薬剤師のやりがいについて解説した記事はこちら

8.病院薬剤師の魅力を知って、自分らしい働き方を考えよう

病院薬剤師は、さまざまな薬剤や医療機器を扱ったり、チーム医療を通して他職種の知見に触れたりする機会が多いという特徴があります。医師や看護師など他職種と議論を交わしながら、患者さんのケアに臨むことで、薬学以外の視点を学べるでしょう。薬剤師としての専門性を磨き、幅広く医療の知識を得ながら患者さんケアに貢献したい薬剤師にとって、病院薬剤師はやりがいのある魅力的な仕事ではないでしょうか。


執筆/秋谷侭美(あきや・ままみ)

薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。

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