薬剤師国家試験は薬剤師なら誰もが必ず通った道。毎年、試験の難易度や合格率が話題になりますが、国試は“現役薬剤師”として基本的な知識を再確認するチャンス。橋村先生の解説で、国家試験の過去問を「おさらい」しましょう!
【過去問題】
初期臨床研修医に対し、緩和ケアチームのメンバーである薬剤師が、フェンタニル製剤の特長について講義をしている。
問280(実務)
フェンタニル及びフェンタニル製剤に関する説明として正しいのはどれか。2つ選べ。
- 1 フェンタニルは、腎機能が悪い患者には禁忌である。
- 2 フェンタニルは、がん性疼痛治療の他、全身麻酔にも用いられる。
- 3 フェンタニル貼付剤は、オピオイド導入に適する。
- 4 フェンタニル貼付剤を、ハサミ等で切って使用することは避ける。
問281(薬剤)
フェンタニル貼付剤に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
- 1 貼付部位の温度が上昇するとフェンタニルの吸収量が増大することがある。
- 2 吸収されたフェンタニルは、肝初回通過効果を受ける。
- 3 副作用発現時には貼付剤をはがすことで投与を中断できる。
- 4 急性の疼痛発作時にも有効である。
- 5 鎮痛効果は貼付部位周辺に限定される。
今回は2016年に行われた第101回の国試から、疾患によって取り扱い方が異なる薬剤についてご紹介します。
解説
問280
- 1:未変化体尿中排泄率は10%前後のため、腎機能低下患者への使用は禁忌ではありません。
- 3:導入には使用しません。オピオイド鎮痛剤から切り替えて使用することが原則です。
問281
- 2:貼付剤のため肝初回通過効果は受けません。
- 4:1日1回貼付剤は定常状態に達するまでに約4~5日間必要なため、急性期には使用できません。フェンタニル製剤を急性期に用いることができるのは、2013年に発売されたフェンタニルの舌下錠やバッカル錠といった速放製剤のみです。
- 5:効果は貼付部位限定ではなく全身に現れます。そのため、副作用の発現も全身管理することが必要です。
– 実務での活かし方 –
現在日本で発売されているフェンタニル製剤は、注射剤、貼付剤、口腔内粘膜吸収剤の3剤型があります。これら3剤型は、各々適応する症状が異なるのが特徴です。
その中で今回は、疾患によって調剤時の確認事項が異なる剤型として、貼付剤型を例にとってご説明します。
フェンタニル及びフェンタニルクエン酸塩の貼付剤型には2種類あります。1回の貼付で72時間鎮痛効果が持続する製剤(フェンタニル:デュロテップMTパッチ®)と1回の貼付で24時間鎮痛効果が持続する製剤(フェンタニル:ワンデュロパッチ®/フェンタニルクエン酸塩:フェントステープ®)です。両製剤とも、「中等度から高度の疼痛を伴う各種がんにおける鎮痛」への効能に加えて、2014年6月からは全規格で「中等度から高度における慢性疼痛における鎮痛」が効能追加となりました。
これによって、フェンタニルとフェンタニルクエン酸塩は、調剤する際に確認書を元にした調剤が求められます。厚生労働省から出ている重要通達ですので、以下で確認しておきましょう。
通達内容の概略
- 1 処方医師は製造販売業者の提供する講習を受講
- 2 製造販売業者は講習を終了した医師に確認書(医療用麻薬の取り扱いに関する注意事項等 有効期間1年)を発行
- 3 医師及び患者は処方時に互いに確認書に署名
- 4 確認書の内容を患者に説明した上で、医療機関と患者に交付
- 5 慢性疼痛の適応である患者は薬剤師に麻薬処方箋と共に確認書の提示をする。薬剤師は確認書の内容を確認した上で調剤、投薬。確認書が確認出来ない場合には、処方医師が講習を終了した医師であることを確認した上で調剤。いずれも確認できない場合は調剤を拒否する事ができる。ただし、がん性疼痛の患者が本剤を処方・使用するにあたっては医師は講習の受講の必要はなく、確認書も交付されない。
出典:「統合医療」に係る情報発信等推進事業
同一剤型であったとしても、麻薬調剤の手順だけではなく、異なる内容を確認しながら調剤しなければなりません。よく覚えておきましょう。