ゼルヤンツに静脈血栓塞栓症~重大副作用で添付文書改訂
厚生労働省は22日、ファイザーのヤヌスキナーゼ阻害剤「トファシチニブクエン酸塩」(販売名:ゼルヤンツ錠)など10品目について、添付文書の「使用上の注意」を改訂するよう製造販売業者に指示した。
ファイザーのトファシチニブクエン酸塩(ゼルヤンツ錠5mg)では、重大な副作用の項に「静脈血栓塞栓症」を追記。効能・効果に関連する注意の項に、心血管系事象のリスク因子を有する患者に投与する際、他の治療法を考慮することを効能共通に記載する。
特定の背景を有する患者に関する注意の項には、「心血管系事象のリスク因子を有する患者」の項を新設。静脈血栓塞栓症の徴候と症状発現に関する注意および他の治療法を考慮し、特に10mg1日2回投与の必要性について慎重に判断することなどを追記する。
国内における直近3年間の副作用症例の集積状況を見ると、静脈血栓塞栓症の関連症例が6件報告され、うち、同剤との因果関係が否定できない症例はなかった。また、死亡例1件のうち、因果関係が否定できない症例もなかった。
ただ、心血管系事象のリスク因子を持つ50歳以上の関節リウマチ患者を対象とした海外臨床試験では、TNF阻害剤と比べて肺塞栓症および死亡リスクが高い傾向が示されたことから、専門家の意見を踏まえた上で、静脈血栓塞栓症を重大な副作用として注意喚起することなどが必要と判断した。
ファイザーのパーキンソン病治療剤「カベルゴリン」(カバサール錠0.25mg、同1mg)に関しては、重要な基本的注意の項に、トルコ鞍外に進展する高プロラクチン血性下垂体腺腫の患者に対する髄液鼻漏に関する注意喚起、視野障害が見られる高プロラクチン血性下垂体腺腫患者に対する視野障害の再発に関する注意喚起を追記する。
さらに、慎重投与の項の下垂体腫瘍がトルコ鞍外に進展し、視力障害などの著明な患者を「下垂体腫瘍がトルコ鞍外に進展し、視力障害などの著明な高プロラクチン血性下垂体腺腫の患者」に改訂する。
国内症例として髄液鼻漏の関連症例が3件認められたことなどから、添付文書の改訂が必要と判断した。
パーキンソン病治療剤の「ロピニロール塩酸塩」(レキップ錠、同CR錠=グラクソ・スミスクライン)、「プラミペキソール塩酸塩水和物」(ビ・シフロール錠、ミラペックスLA錠=日本ベーリンガーインゲルハイム)、「タリペキソール塩酸塩」(ドミン錠=日本ベーリンガーインゲルハイム)、「ロチゴチン」(ニュープロパッチ=大塚製薬)、「カベルゴリン」(カバサール錠=ファイザー)、「ブロモクリプチンメシル酸塩」(パーロデル錠=サンファーマ)、「ペルゴリドメシル酸塩」(ペルマックス錠=協和キリン)、「アポモルヒネ塩酸塩水和物」(アポカイン皮下注=協和キリン)については、重要な基本的注意の項に、薬剤離脱症候群(無感情、不安、鬱など)に関する記載を追記するほか、その他の副作用の項にも「薬剤離脱症候群」を記載する。
同疾患に関する国内、海外症例が集積したことや、ドーパミン受容体作動薬全体で薬剤離脱症候群について注意喚起することが必要と判断し、添付文書を改訂すべきとした。
日本ビーシージー製造の「乾燥BCGワクチン」(乾燥BCGワクチン経皮用・1人用)では、重大な副反応の項の全身播種性BCG感染症、骨炎、骨髄炎、骨膜炎を「BCG感染症」と改め、髄膜炎に関する記載を追記する。国内症例として結核性髄膜炎が1件確認されたことから、添付文書の改訂が適切とした。
出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
ファイザーのヤヌスキナーゼ阻害剤「トファシチニブクエン酸塩」など10品目について、厚労省は添付文書の「使用上の注意」を改訂するよう製造業者に指示を出しました。同剤については、重要な副作用の項に「静脈血栓塞栓症」を追記し、特定の背景を有する患者に関する注意の項には「心血管系事象のリスク因子を有する患者」の項を新設してあります。直近3年の副作用症例で問題は生じていませんでしたが、専門家の意見を踏まえた上で、静脈血栓塞栓症を重大な副作用として注意喚起することなどが必要と判断された模様です。