薬剤師会

【兵庫県薬など学術大会】地域密着「患者中心がカギ」~10年後の薬剤師像討議

薬+読 編集部からのコメント

兵庫県の薬剤師会や病院薬剤師会、薬系5大学が主催する連携学術大会が神戸市内で開かれ、薬局薬剤師、病院薬剤師、薬系大学教員、薬学生などが「10年後の薬剤師像」をテーマに討議を繰り広げました。

兵庫県の薬剤師会や病院薬剤師会、薬系5大学が主催する連携学術大会が15日に神戸市内で開かれ、10年後の薬剤師像をテーマに討議を繰り広げた。登壇した薬局薬剤師は今後、地域密着や健康サポート機能の提供が重要になると指摘。病院薬剤師は、個々の生活に寄り添った患者中心の薬物療法を支援する役割が求められると語った。薬系大学の教員は、薬剤師の研究活性化に向けて大学との連携が重要と訴えた。

兵庫県内で薬局3店舗を運営する足立有佑真氏(人丸薬局)は、中小薬局を取り巻く環境の変化として、診療報酬改定における評価の厳格化やオンライン服薬指導や電子処方箋の拡大、Amazonファーマシーの進出、ドラッグストアの調剤事業推進などを提示。

 

厳しい環境の中で中小薬局が存在感を発揮するためには、「地域にいかに密着したサービスを提供できるか。かかりつけ機能や健康サポート機能をいかに提供できるか」がポイントになると語った。

 

一方、「デジタルネイティブ世代が増え、オンライン診療の割合は増えるのではないか」と述べ、ニーズにいち早く対応するために「DX化を取り入れる必要がある」と投げかけた。

 

病院薬剤師の立場から曽和鮎美氏(伊丹恒生脳神経外科病院薬剤部長)は、「患者一人ひとりの生活に寄り添い、多職種チームによる薬物療法の中心となることが今後の薬剤師業務の根幹になる」と語った。

 

同院は80床で、薬剤師数は常勤4人、パート1人。病棟薬剤業務実施加算を算定している。入院患者の多くは高齢で、認知症やせん妄のリスクが高い。

 

患者中心のケア実践に活用しているのが高齢者総合機能評価(CGA)。2024年に日本老年医学会が発出したCGAに基づく診療・ケアガイドラインに沿って患者を多角的に把握している。

 

曽和氏は「CGAを行うことで生活状況の全般的把握と、さらに詳しい確認を行うためのヒントが得られる」と述べ、新規処方時もCGAを踏まえて患者の生活背景を考慮することで「本当に患者にとってこの処方が妥当かということを評価できる」と話した。

 

薬系大学の立場から福島恵造氏(神戸学院大学薬学部臨床薬学部門講師)は、病院や薬局の学会発表経験が約5割にとどまることから、「薬剤師の研究活動が活発かというと難しい。今後の薬剤師の研究活動の低下や停滞が危惧される」と指摘。

 

若手薬剤師の研究能力育成に向けて「大学との協働が重要」と強調し、同大学と神戸市立医療センター中央市民病院の間で締結した教育・研究協力協定の成果を紹介した。

 

薬学生の立場から藤岡未有氏(兵庫医科大学薬学部5年次生)は、将来は「患者さん、地域の人、医師、コメディカルから、医療や薬について困ったら私に聞こうと思ってもらえる薬剤師になりたい」と言及。単なる調剤の担い手ではなく、患者主体の薬物治療や健康増進に貢献するなど「新しい価値観を創出する薬剤師になることも目指している」と話した。

 

濱宏仁氏(武庫川女子大学薬学部臨床薬学教育研究センター教授)は、医師業務の薬剤師へのタスクシフトが進む中、薬系大学は「医療従事者の養成機関にならなければならない」と私見を提示。

 

現状の実務実習期間では短いとし、5年次に仮免許を与えて1年間の研修を行い、修了すると本免許を交付するという枠組みを提案した。

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出典:株式会社薬事日報社 

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