薬剤師の実務に知識を結びつけるのは意外と難しいもの。気がつくと目の前の業務に追われ、学生時代に学んだ知識などすっかり忘れてしまった……という方も多いのではないでしょうか。そもそも、なぜ今さら化学構造式を学び直さなくてはならないのかと疑問に思うかもしれません。しかし、これからの薬剤師には患者さんに「より新しい情報」を提供することが求められていると著者はいいます。
最近は、添付文書の内容を患者さん自身がインターネットで調べることが容易になりました。薬局での処方時に薬の説明をすると「そんなのもう知っているよ」と言われてしまうことも少なくないとか。予備知識をもって薬局を訪れる患者さんの対応はますます多くなり、薬剤師はとても神経を使うことになります。
たくさんの情報があふれている今、情報に惑わされ、不安を感じている患者さんはたくさんいます。そのような不安に対して薬剤師ができることは、専門知識に基づいた、より高度な情報の提供ではないでしょうか。添付文書に書かれている内容をそのまま説明するのではなく、専門家として一歩進んだ知識が提供できれば、それは患者さんにとって大きな安心感になるはずです。さらに、薬剤師と患者さんとの信頼関係づくりにもつながるのではないでしょうか。
本書では、医療現場でよく使われる処方薬を例に挙げ、その化学構造式を読み解くための考え方が具体的に紹介されています。また、医薬品だけでなくトクホ製品の化学構造式が紹介されていたり、化学構造式を読むことで国家試験問題を解く方法が解説されていたりと読み物としても楽しむことができます。図解やイラスト、実際の添付文書からの抜粋なども多く、化学構造式に苦手意識がある人や、もうすっかり忘れてしまったという人でも読みやすくまとめられた1冊です。