薬剤師の業務は患者さんだけでなく医療関係者にも意外と知られていないもの。それを表した実例として著者が挙げるのが、医師や看護師が主人公のドラマは存在するのに薬剤師のドラマはないという事実。「つまり『薬剤師の仕事は、皆に感動を与えない』ということになる」と著者は危惧します。これは社会全体の問題であるとして、その解決策をまとめたものが本書です。
著者がくりかえし強調しているのは、薬剤師が業務のなかで感動体験を得られるようになることと、若手の憧れとなるような薬剤師の存在の必要性です。これはどのような職業でも同じかもしれません。仕事のなかで「やってよかった」と思えるような感動体験をすることや、自分もそうなりたいと思える魅力的な先輩に出会うことは、大きなモチベーションとなるはずです。そのような強いモチベーションを持ってこそ、大変な仕事でも続けることができるし、そのやりがいを後輩に伝えることができるはずです。
また、これから薬剤師を目指す高校生にも読みやすいように、薬剤師資格についての基本的な解説や用語説明も掲載されています。将来を担う若い世代に配慮した構成には、後進を育てることに力を注ぐ著者ならではの思いやりを感じます。そして、堅苦しい話だけではなく、気軽に読めるコラムも充実。「トホホ薬剤師」という失敗談を集めたコーナーでは、薬剤師なら思わず笑ってしまうような「あるある」というエピソードが掲載されています。薬剤師としての働き方・生き方について改めて考えてみたい人は必読の1冊です