東洋医学には西洋医学とは異なる独自の理論があり、診察や薬の処方もその理論に基づいて行われています。西洋医学とは根本的な考え方が違うため、わかりづらいと感じている人も多いのではないでしょうか。また、「漢方薬は効かない」というイメージを抱いていたり、診断で使われる「証」「気」といった言葉に非科学的なものを感じてしまったりする人もいるかもしれません。このマンガに登場する二人の研修医も、最初は東洋医学や漢方にそのようなイメージを抱いています。そんな二人の疑問を、漢方薬のスペシャリストが解き明かしていくというのが本書のストーリーです。
西洋医学では病名に対してエビデンスを元に薬を処方するのが基本となりますが、東洋医学で漢方薬を処方する場合は、患者さんの症状をまとめた「証」に対して薬を処方します。そして、この「証」は、「病状」「病因」「病位」「病態」に分類され、それぞれを総合した判断が求められます。つまり、「病気」を診るのではなく、「患者さんそのもの」を診るというのが、東洋医学の考え方なのです。
また東洋医学の診察方法は「四診」といい、顔つきや体つき、皮膚や舌の状態を観察する「望診」、声の大きさや体臭から診察する「聞診」、患者さんの話を聞く「問診」、脈をはかったり、お腹に触れたりして診察する「切診」の4つに分類されています。これらの情報をあわせて判断することで、その患者さんの「証」をたて、それぞれの「証」に合わせた漢方薬の処方を行うことが大切だとされています。
東洋医学の理論は、専門用語や抽象的な考え方もあるため、どうしても取っつきづらさを感じてしまいますが、本書では難解な部分にはユーモラスなたとえが取り入れられたり、図解や表でポイントをまとめたりといった工夫がなされているので、身構えることなく学ぶことができます。また、巻末には用語や漢方薬名から引ける索引も用意されているので、辞典としても活用できそうです。
東洋医学や漢方は、身体の状態を総合的に診る医療。これらを学ぶことは、病気とは何か、人間の身体とは何かについて改めて考えるきっかけにもなるのではないでしょうか。また、患者さんの状態をじっくり観察することが基本となる東洋医学の考え方は、西洋医学に携わる医療者にとっても、患者さんとの関わり方を考えるうえで役立つはずです。