2014年に在宅医療の推進を主眼とした調剤報酬改定が行われたことにより、在宅医療に参入する薬局は増えつつあります。在宅医療での薬剤師の役割は、単に「薬を配達する」ことではありません。患者さんのお宅に足を運ぶことによって、薬局のカウンターで話をするだけではわからなかったことが見えてくる場合もあるでしょう。
本書ではその一例として、規定通りの服薬ができない、初期の認知症患者さんの自宅を薬剤師が訪問したときのエピソードが紹介されています。本人の許可を得て家の中を調べたところ、いろいろな場所から飲んでいない薬袋が見つかりました。このとき初めて、この患者さんは薬をしまった場所を忘れてしまうため、適切な服薬ができなかったことがわかりました。
外来に訪れた患者さんの服薬状況を確認する場合は患者さんの申告が情報源となりますが、それだけでは見えないこともあります。その点、在宅医療は生活状況も含めて患者さんの状態を正確に把握でき、患者さんにとっても薬剤師にとっても意義があるといえるでしょう。
このガイドでは、在宅医療に参入するための具体的なノウハウも詳細に紹介されています。在宅医療に携わる医師や在宅医療を必要としている患者さんと、どのように知り合うのか。また多職種との連携方法、情報提供書や薬学的管理指導計画書を書く際のポイント、訪問時の駐車許可手続きの方法まで、在宅医療についての情報が網羅されています。在宅医療に携わっている、あるいは、これから携わりたいと考えている薬剤師には、これらの情報が大いに役立つのではないでしょうか。
患者さんにしっかりと寄り添ってサポートしていくことが重要なのは、薬局での業務でも在宅医療でも同じです。そのためにはゆとりを持って患者さんと接し、ミスやトラブルを事前に防ぐ環境を整えることが大切。そんな、理想的な薬局の環境づくりにも活躍する1冊です。