第53回 鶴原伸尚 先生
近年、かかりつけ薬局が地域の患者さんの服薬情報の一元的管理を行い、医療費の適正化に寄与することが求められています。多剤・重複投薬の防止や残薬解消への取り組み、患者さんの薬物療法における安全性・有効性を保つなど、地域のなかで薬剤師が活躍する機会はますます増えるでしょう。
今回は「地域に根差した薬局」の薬剤師として患者さんに寄り添い、健康維持や改善に貢献している鶴原伸尚先生にお話をうかがいました。全5回のシリーズです。
当薬局では繁忙期は薬剤師3名体制としていますが、その時期以外は薬剤師2名体制で、内訳は正社員1名、パート1名です。外来処方箋の受付枚数は繁忙期は100枚超、それ以外の時期はおおむね70枚ほどです。
少人数で外来調剤業務が忙しくても、在宅医療を実践するために当薬局で行っている工夫が3つあります。
①オート化を進めて効率化をはかる
当薬局では処方箋のレセコンへの打ち込み時間はほとんどかかりません。二次元バーコードを活用しているためです。二次元バーコードを利用することによって、処方箋はキーボード操作をほとんどせずに処方内容がレセコンへ入力されます。
バーコードの情報はレセコンと連動した分包機にも送られますから、薬剤師が散剤や水剤を調剤する前に、分包機へ患者情報・薬剤情報などを入力する手間も省くことができます。
また、調剤録の確認にかかる時間の短縮も可能です。バーコードから処方箋の内容を読み込めば、一から手入力する場合とは異なり人的なケアレスミスはほとんど起こらないためです。調剤録と処方箋を隅々まで突き合わせチェックすることに比べると、かなり短い時間で確認することができます。
さらに水剤や散剤の調剤についても、自動で調剤してくれる機器を導入しています。
②在宅医療は自転車で訪問できる範囲に限定する
当薬局では訪問する地域は徒歩、あるいは自転車で訪問できる範囲である“1km圏内”としています。
訪問可能な地域を近隣のみで区切った理由の1つは、当薬局には遠方からの患者さんがほとんどおらず、遠方へ訪問するケースがないこと。2つ目は、「一人ひとりの患者さんに向き合える薬局」という当薬局の根本となる姿勢を実践し続けるためには、遠方への訪問が難しいと判断したためです。こうすることで、移動にかかる時間も最低限に抑えることができています。
③無理にルーティン化を考えない
きちんとしたルーティンを組めるようになってからでないと、在宅医療は開始できないと思っている人は多いのではないでしょうか。ところが、実際には、訪問時間は先方の都合で変更されることが多くありますし、薬局薬剤師側の都合で変更して頂くこともあります。しかし、この点については、患者さんと薬剤師の信頼関係を元に始める在宅医療なので、大きな問題とはなりません。当薬局の場合には、パートさんが複数入れるときに、訪問するように調整しています。
このように当薬局では自分たちができることを、無理のない範囲で最大限に実践しています。そうすることで、外来調剤業務と在宅医療業務を両立させています。
患者さんから頼りにされる薬局薬剤師を目指し、患者さんへの医療機関の紹介、ノルディックウォークの普及を行う。在宅医療などの取り組みを通し、薬剤師と患者さんの間に「ありがとう」の言葉が飛び交う薬局として、地域医療に貢献している。