薬系73大学で遠隔授業対応~岩手医科大は「対面」を継続
新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、全国の薬系大学73大学でオンライン授業の実施に移行していることが、本紙の調べで明らかになった(表参照)。感染者が唯一出ていない岩手県の岩手医科大学のみ対面授業を維持していたが、ほぼ全ての大学がオンライン授業への対応を迫られた格好だ。約4割の大学では学生に臨時奨学金等を給付し、通信環境の整備を支援していることも分かった。緊急事態宣言の解除を受け、奥羽大学は22日から対面授業を再開。その他多くの大学でも6月から感染対策を講じた上で対面授業を開始する方針を表明しており、新しい生活様式による「ニューノーマル」時代の6年制薬学教育の模索が始まりそうだ。
新型コロナウイルスの感染拡大は、薬系大学の新学期の授業開始にかつてない大きな影響をもたらした。特に4月に政府が緊急事態宣言を全国に発令したことで、新学期の授業開始は今月の大型連休明けに持ち越されることになり、混乱に拍車がかかった。
本紙の調べでは、岩手医大を除く73大学がオンライン授業を実施または予定していることが分かった。多くは接続テストなどを実施した上で、学生が自宅でオンライン授業を受講する形をとっている。授業開始日は大学によって幅が見られるが、緊急事態宣言の発令を受け、大型連休明けに移行した大学がほとんどであった。実際、4月からオンライン授業を開始した大学がある一方で、摂南大学はきょう25日、松山大学は28日からの開始を予定している。
オンライン授業の実施期間も、大学によってバラツキがあることが分かった。緊急事態宣言期間中の今月中までとする大学が多かったが、大阪大学は夏学期まで、徳島文理大学は7月末、鈴鹿医療科学大学も7月15日までと長期化を予定している大学も見られた。ただ、緊急事態宣言の解除に伴い、情勢は変わる可能性がある。
オンライン授業の実施にはパソコンや通信など様々な環境整備が必須となるが、私立大学を中心に約4割(32大学)が受講環境を整備するため臨時奨学金等の給付を決めたことも明らかになった。
北海道医療大学、新潟薬科大学、明治薬科大学、東京薬科大学、昭和薬科大学、帝京大学、名城大学、摂南大学、福山大学など、学生1人当たり一律5万円の給付が20大学と最も多く、北海道科学大学、日本大学、高崎健康福祉大学、大阪大谷大学、立命館大学など8大学では一律3万円を給付。愛知学院大学では10万円の遠隔授業受講支援を実施していた。
その他、国公立大学や一部私立大学を中心に、ノートパソコンやモバイルWiFiルーターの無償貸与を行っている大学も多く、初めての取り組みとなるオンライン授業の円滑な実施に向け、大学側もあらゆる対応を行っている実態も浮かび上がった。
一方、感染者ゼロの状況が続いている岩手県では、岩手医大が状況に応じてオンライン授業に切り替えることを前提に、対面授業を実施していた。青森大学も「三密」を回避した上で、一部対面授業に対応していることが分かった。
首都圏、北海道を除く全国各地域で緊急事態宣言が解除されたことを受け、6月からは多くの大学で対面授業が再開されそうだ。当面は、各大学とも感染防止対策を講じた上で状況を見ながらの対応としているが、実習や演習などが多く、薬剤師国家試験も控える薬系大学で新学期の開始時期を先送りした影響は非常に大きい。
今後、しばらくはオンライン授業と対面授業の並行が求められるのは必至で、混乱の中でいかにカリキュラムを実施して学生への影響を最小限に抑えるか、各大学の工夫が問われることになる。
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出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
薬事日報社の調査によりますと、全国の薬系大学73大学が新型コロナウイルス感染症の拡大を受けてオンライン授業の実施に移行しているそうです。オンライン授業の実施にはパソコンや通信など様々な環境整備が必須となりますが、私立大学を中心に約4割(32大学)が受講のための通信環境整備のために臨時奨学金等の給付を決めたことも明らかになっています。一方、感染者ゼロの状況が続いている岩手県では、岩手医大が状況に応じてオンライン授業に切り替えることを前提に、対面授業を実施。青森大学も「三密」を回避した上で、一部対面授業に対応していることが分かりました。多くの大学で6月から感染対策を講じた上で対面授業開始の方針を表明しており、新しい生活様式による「ニューノーマル」時代の6年制薬学教育の模索が始まりそうです。