医療

病薬連携で緊急入院半減~COPDの症状増悪防ぐ

薬+読 編集部からのコメント

2013年12月から京都大学病院薬剤部の処方医と病院薬剤師と、地域の薬局薬剤師が連携し、外来に通院する喘息やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)患者さんの吸入指導などに取り組んだ結果、緊急入院の割合を半減できたことが判明しました。患者さんに合った最適な吸入薬を、適切な手技で途切れず使い続けられるよう支援した結果、連携前は2.4%だったCOPD患者さんの緊急入院割合が1年後には1.2%に減少し、4年後も1.0%と低値を維持していたことが明らかになっています。2020年度調剤報酬改定で「吸入薬指導加算」が新設されており、薬局薬剤師の業務は評価されています。病院薬剤師が行う外来患者さんへの吸入指導業務も今後、診療報酬での評価が望まれています。

■多額の医療費削減効果も

京都大学病院薬剤部が地域薬局と連携して外来に通院する慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の吸入指導などに取り組んだ結果、緊急入院の割合を半減できたことが分かった。同院では、2013年12月から処方医と病院薬剤師、地域の薬局薬剤師が連携し、喘息やCOPD患者の教育や吸入指導を行ってきた。患者に合った最適な吸入薬を、適切な手技で途切れず使い続けられるよう支援した結果、連携前は2.4%だったCOPD患者の緊急入院割合が1年後には1.2%に減少し、4年後も1.0%と低値を維持していたことが明らかになった。


同院の医師は、COPDや喘息患者に新たに吸入デバイスを処方した場合や患者の吸入手技に不安を感じた場合に「吸入指導依頼箋」を発行する。

 

指導依頼箋を受け、病院薬剤師はデバイスごとに説明内容や評価ポイントを標準化した吸入指導評価表に基づき、薬剤部内で平均20分かけて練習用吸入器を用いた指導を行う。その上で、必要に応じて医師にデバイスの変更を提案する。

 

その後、院外処方箋を受けた薬局薬剤師が吸入手技を再度確認し、不十分な手技を指導。病院と薬局それぞれの薬剤師が記入した評価表をFAXで病院に送信し、医師に状況を伝える。薬局から病院への返信率は約60%で、約6割の患者が出向く近隣11薬局に限ると返信率は90%近くに達する。

 

以前は、吸入薬の指導を外来看護師が担当していたが、コントロール不良症例が散見される状況にあった。状況を改善したいと考えた医師から依頼を受け、薬剤部は13年12月、病院薬剤師にとどまらない薬局薬剤師を含めた連携体制を構築した。近隣薬局の薬剤師を対象に年数回講習会を開き、医師の処方意図を説明。吸入デバイスの操作方法や補助器具の活用法を学んでもらった。

 

その結果、喘息患者では変化が認められなかったものの、COPD患者では症状の増悪によって緊急入院した割合が半減。特に軽症患者で緊急入院の割合が減少した。

 

薬剤部の杉本充弘氏は、「患者が適切な吸入手技や治療の必要性を理解した。楽になったからと自己判断で薬をやめる患者も減り、効果的な吸入治療を継続して行えるようになったことが大きい」と語る。

 

薬局薬剤師からのフィードバックも奏効している。薬局から返信された評価の約9割は「問題なし」だったが、「吸入前の息の吐き出し忘れ」「吸入後の息止めの理解不足」など、手技の不備や治療の理解不足に関する報告は全体の3.5%を占めていた。

 

副薬剤部長の米澤淳氏は「医師からは『薬剤師に直接吸入指導をしてもらえるので助かる。指導結果のフィードバックは診療に役立つ』とのコメントを得ている」と話す。

 

患者のQOL向上に加え、医療費を抑制する効果も見込まれる。06年の東京都老人医療センター呼吸器科の報告によると、COPD急性増悪による平均入院費用は69万円。今回の結果をもとに国内に530万人いるCOPD患者の緊急入院率を半減させた場合、日本全体で医療費は約475億円減少すると推計できるという。

 

前京都大学病院教授・薬剤部長の松原和夫氏(和歌山県立医科大学教授・病院薬剤部長)は「急性増悪を起こせば入院しなければならないし、非常に多くの医療費がかかってしまう。この取り組みによって、患者負担と医療費の負担が減ることを客観的な数値で示したかった」と振り返る。

 

20年度調剤報酬改定で「吸入薬指導加算」が新設され、薬局薬剤師の業務は評価された。病院薬剤師が行う外来患者への吸入指導業務も今後、診療報酬での評価が望まれている。

 

薬剤部では近年、吸入デバイスを新たに処方した場合だけでなく、2回目以降も継続的に薬局薬剤師が評価を行う体制に改めた。

 

米澤氏は「継続的にきちんと吸入することが病態の進行抑制にも影響する。病院薬剤師が全てに関わるのは難しい。薬局を含めた地域での継続的なチーム医療の実践を今後も続けたい」と話している。

 

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出典:薬事日報

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