【薬薬連携で成果】副作用報告で3割禁忌に~地域患者の安全性が向上
東海大学大磯病院薬剤科と平塚中郡薬剤師会が外来患者の医薬品服用後の安全性を確保するため、地域の薬薬連携によって有害事象を収集した結果、薬局薬剤師による報告の約30%が病院のマスタ入力で禁忌に設定されたことが分かった。外来患者の入院前に禁忌となる薬が登録されていることになり、患者の安全性が大きく向上する成果となった。DPP4阻害剤による類天疱瘡の副作用を重症化前に発見できた例もあり、薬剤師が地域の患者を守っていることが裏付けられた格好だ。
薬薬連携によって有害事象を収集する独自の「平塚中郡薬剤師会方式」は、2017年7月から運用を開始した。報告数は今年7月までに613件に達し、報告率は29.63%と約3割に上った。前東海大大磯病院の鈴木優司薬剤科長(現東海大病院薬剤部次長)は「保険調剤を行っていない薬局もあることを考えると、大きな成果」と語る。
昨年7月までのデータでは、平塚中郡薬剤師会の会員135薬局から479件の有害事象が収集され、144件が東海大大磯病院に報告された。そのうち、約3割に当たる48件については同院のマスタ入力で禁忌に設定され、さらに6件は製薬企業による詳細調査につながった。
鈴木氏は「薬局から提供された有害事象を製薬企業が詳しく分析することにより、有害事象の質向上につながるのではないか」と期待感を示す。その上で、「一番のポイントは、薬局からの有害事象報告をきっかけにした禁忌設定だと思う。外来患者に使ってはいけない医薬品を登録できるので、入院になった場合の安全性が高まる」と強調する。
前望星大磯薬局薬局長の飯塚敏美氏(現望星築地薬局薬局長)は「薬局にとって有害事象報告は、服薬中の電話確認、その後の服薬期間中のフォローアップにも活用でき、様々な応用にも使えるという手応えを感じている」と実感を語る。
DPP4阻害剤による類天疱瘡の副作用を、重篤化する前に発見できた事例もあった。薬局薬剤師がしっかり皮膚症状を見て患者に指摘し、皮膚科の受診を促したことが早めの発見につながった。
薬薬連携によって、「医薬関係者の副作用報告ガイダンス骨子」に盛り込まれた医療機関との連名報告も実現した。具体的には、β遮断薬「ビソプロロール錠」の服用により、肝機能が上昇する有害事象を薬局で把握。検査値が不明のため、病院薬剤師に相談し、医師の了解を得て連名で報告したというもの。その結果、病院のマスタ入力でビソプロロール錠は禁忌に設定された。
鈴木氏は「連名報告は、われわれの取り組みが成熟した証だと思う。薬局薬剤師は在宅患者とも接しており、幅広い情報を収集できる可能性がある。地域で患者を守るという改正薬機法に則った活動になるのではないか」との考えを示す。
飯塚氏も「患者に薬の説明をするだけでなく、有害事象の可能性について話をすると納得が得られ、かかりつけ薬剤師に発展する。そういうメリットもあることを薬局薬剤師に感じてほしい」と訴えている。
また、平塚中郡薬剤師会方式では、「有害事象ヒアリングシート」を医薬品卸のMSを経由して製薬企業に伝えるユニークな仕組みを構築した。MSの活用について、鈴木氏は「製薬企業のMRが減少する中、有害事象が発生したときに誰が対応するかと言えば、薬局を訪問できている医薬関係者はMSしかいない」と指摘。飯塚氏も「MSが伝達してくれるのは薬局としても助かる。MRと訪問頻度も違うし、MSを活用することで薬局の負担もだいぶ減る」とメリットを語る。
18年度の副作用報告総件数は7万2847件に上るが、年間244件報告された平塚中郡での取り組みが全国の保険薬局5万9000軒に広がると仮定すると、10万件以上の有害事象が報告される計算になる。
鈴木氏は、「薬剤師が有害事象を止めて、しっかり連携して医師にフィードバックし、患者を守っていることを数字で示せれば、本当の意味で薬剤師の底力をアピールできるのではないか」と今後の広がりに期待をかけている。
<この記事を読んだ方におすすめ>
「アンサングシンデレラ」を病院薬剤師と薬局薬剤師で大激論! 薬剤師の本音とは?
出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
2017年7月から運用スタートした薬薬連携により、有害事象を収集する独自の「平塚中郡薬剤師会方式」の成果が見られています。東海大学大磯病院薬剤科と平塚中郡薬剤師会が外来患者さんの医薬品服用後の安全性を確保するため、地域の薬薬連携によって有害事象を収集した結果、薬局薬剤師による報告の約30%が病院のマスタ入力で禁忌に設定されたことが判明しました。外来患者さんの入院前に禁忌薬が登録されることになり、患者さんの安全性が大きく向上する成果となります。昨年7月までのデータで、平塚中郡薬剤師会の会員135薬局から479件の有害事象が収集され、144件が東海大大磯病院に報告されました。そのうち、約3割に当たる48件については同院のマスタ入力で禁忌に設定され、さらに6件は製薬企業による詳細調査につながっています。