インタビュー 公開日:2022.02.28 インタビュー

健康サポート薬局・りんご薬局立花店の取り組み事例は?目指したきっかけや心構えを聞きました

東武亀戸線の東あずま駅ほど近く。近隣に大小の医療機関があり、高齢者でも徒歩で来局しやすく、ひとりでも目が届く広さをポイントに2013年に独立開業したりんご薬局 立花店は、商店街の一角に店舗を構える約33平方メートルの小さな薬局です。厚労省の要件が定まる以前から在宅や栄養相談などに取り組んできた、勝野先生にお話を伺いました。

 

本記事は株式会社ネクスウェイが提供する「医療情報おまとめ便サービス」特集2018年3月号P7-8「この地域のためにわたしにできること“薬ありき”から“相談したくなる場所”へ りんご薬局立花店インタビュー」を再構成したものです。

お話を聞いたのは……
 

<2016年10月健康サポート薬局受理>
東京都 りんご薬局 立花店
東京都墨田区立花2-25-7
https://meron-net.shop/ds/ringo-ph

病気の方に限らず親しまれるために地域交流や丁寧な品揃えに努めました

Q.健康サポート薬局を目指したきっかけは? また届出、受理に至るまでの過程を教えてください。

勝野先生 2013年のオープン当初から目指すべき薬局の形を模索していました。病気の人しか用事のない処方箋調剤だけの薬局ではなく、病気の発症前も治療後も通える薬局にしたいなと。とはいえ、薬局は気軽に入りにくいので、まずは地域の方に親しんでもらえる場所を目指そうと思い、町内会に入ったり、近所でお買い物をしたりして交流を広げ、まずは自分が地域の一員になることを心がけました。

りんご薬局 立花店 勝野 純子先生

OTCの品揃えも全く分からなかったので、問屋さんから48薬群の推奨品目をご紹介いただくことから始めました。サプリメントや健康食品も必要ですし、医療機関に囲まれた街で高齢者も多いので、食事療法が必要な方への健康管理食や衛生材料などの需要も予測しながら、スーパーやドラッグストアとの差別化を考慮して、使いやすさや使用感などにこだわった商品を取り揃えました。
 
陳列スペースが限られるため、少しでも見やすく、数多く配置できるよう壁に吊り下げて並べる工夫もしています。さらに、点眼の苦手な患者さんが来れば点眼補助具も必要だろうと、利用者の声を取り入れて少しずつ増やしていったんです。内装は薬局をいくつも手掛けている設計士さんに相談しながらフルオーダーしました。2組の患者さんを個別に対応できるようにカウンターを分け、幅や奥行き、パーテーションの形状なども他の患者さんの目線が届きにくいように個人情報保護を意識して設計しました。


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在宅や服薬指導など、改めてかかりつけ薬局の必要性を感じます

Q.高齢者が多い町とのことですがそこで求められている活動とは?

勝野先生 現在は非常勤の3人の薬剤師とともに、かかりつけの患者さんを約10人、在宅を15~20人担当しています。特に老老・認認世帯や独居が多い地域なので在宅の需要が高く地域包括ケアシステムや近隣の医療機関と情報交換し患者さんを紹介し合いながら対応しています。
 
高齢者は内科と眼科と整形外科…など複数の診療科の薬を飲んでいることが多いので、かかりつけでの服薬指導の必要性を感じますね。
 
また「りんごCAFE」と題して定期的にイベントを開催しています。毎回薬に特化しているわけではなく、夏の脱水や秋の不眠、冬のインフルエンザ予防など生活に密着したテーマで企画しています。今はデイサービスの職員の方による体操30分を含め1回1時間程度で、開催日はお正月以外は毎月第一月曜日と決めています。



月に1回開催される「りんごCAFE」。継続するためには準備に負担がかからないよう、手軽に入手できるツールを使うなどの工夫も大事。

 

平均すると参加者は10人前後ですが、以前、地域包括支援センターの依頼で行った「認知症サポーター養成講座」の時は30人以上集まりましたよ。告知は自作チラシの配布が主なのですが、それを商店街の方が各店に貼ってくれたり、参加者が口コミで広めてくれたりして、本当に有り難いですよね。



商店街のチラシに空きスペースができた時は、サービスで「りんごCAFE」の告知などの情報を掲載してもらえることもあるそうです。

 

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楽しみながら地域の健康に寄与する活動を続けることが大事です

Q.健康サポート薬局としての今後の課題や心構えとして必要なことはありますか?

勝野先生 街も商店街も高齢化しますから、これからは高齢者が元気に歩く機会を作ることが大切です。高齢者が楽しくお買い物できれば足も使い、町も潤うので理想的ですよね。そこで、商店街の方とともに地域の交流スペースを借り、街とコラボしたカフェをはじめました。ドクターの講演やお肉屋さんのおいしい焼豚の作り方などさまざまな企画がとても好評です。私も一度かかりつけ薬局の大切さを講演させていただきました。こうした試みは珍しいようで行政にも注目されはじめています。



取材の間にも、処方箋を持たない“ご近所さん”が多数訪れました。OTCのほか、腎臓内科の門前薬局のため低タンパクの食品も需要があるようです。

 

今後の課題は「継続」ですね。良い時ばかりではないし、すぐに集客できるわけでもない、健康サポート薬局の活動を通じて、地域がどれだけ健康になったかが分かるバロメーターのようなものもないですから、楽しみながら続けることが大事じゃないかと思います。周知に頑張りすぎて調剤業務が疎かになっては本末転倒ですしね。個人的には、栄養士さんと栄養摂取や調理に関する相談にも応じていくなど、小さな薬局だからこそできることに取り組みながら認知促進に努めていきたいと思っています。


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小規模スペースを有効利用し、患者さんの需要に対応
 

注射剤の混注が必要な方のために薬局内にクリーンベンチを設置。高カロリー輸液は細菌感染が心配なので、一週間分を2回に分けて作ってお届けしています。OTCはなるべく小包装のものを採用。例えば風邪薬なら、2日分ほど試してもらい、それでも良くならなければ受診勧奨するという方針にしています。

 

 

出典:株式会社ネクスウェイ「医療情報おまとめ便サービス」特集2018年3月号