コロナ禍前を凌ぐ好決算~国際品牽引も日本は低調
武田薬品、第一三共、アステラス製薬、エーザイの国内上場大手製薬4社の2022年3月期決算が13日に出揃った。4社とも増収、武田薬品を除く3社が営業増益だった。コロナ禍前の19年度実績を凌ぐ勢いを見せ、各社とも成長軌道に乗せた。牽引したのはグローバル戦略品。しかし国内業績は、薬価改定の影響などで低い伸びか減収と対照的だった。薬価改定のあった22年度もその傾向が続く見通し。日本市場の魅力、投資優先度の低下を懸念する声が上がっている。コロナ後の事業モデルの変革も迫られている。決算の数字の裏で、今後の成長に大きな課題を突き付けられている(表参照)
グローバル製品の伸長で2桁増収と際立った成長を見せたのは武田薬品。トップ製品の潰瘍性大腸炎・クローン病治療薬「エンティビオ」(日本名「エンタイビオ」)は22%増の5218億円となり、成長を牽引。ADHD治療薬「バイバンス」(日本名「ビバンセ」)は20%増の3271億円。注力する希少疾患領域は3%増の6112億円に上った。営業減益は、前年度にあった事業売却益がなく研究開発費の増加によるもので、ネガティブな内容ではない。
アステラス製薬は、前立腺癌治療薬「イクスタンジ」の勢いが加速。全世界売上高が5000億円を突破し、22年度は6000億円超を計画する。過活動膀胱治療薬ミラベグロン(日本名「ベタニス」)は1723億円と堅調に推移する。22年度業績は約11%の増収予想だ。
第一三共は、抗癌剤「エンハーツ」がほぼ倍増。抗凝固薬「エドキサバン」(日本名「リクシアナ」)も2000億円を突破し、売上高を再び1兆円台に乗せた。22年度は10%増を計画するのも「エンハーツ」の倍増見込みが大きい。
エーザイは、抗癌剤「レンビマ」が4割増と2000億円目前。21年度業績の17%増収はライセンス収入が上乗せされた結果で、22年度は反動で減収予想だが、同剤などグローバル戦略品の成長の勢いは続く。
一方、国内売上は武田を除き低迷。アステラスは長期収載品の減少などで7%減。第一三共はグローバル2製品は好調だが、プロトンポンプ阻害剤(PPI)「ネキシウム」の販売提携が終了した影響でほぼ横ばい。エーザイは、疼痛治療剤「リリカ」が後発品登場で約7割減、抗癌剤「トレアキシン」の提携終了、薬価改定などで8%減と、各社とも振るわなかった。
出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
5月13日、国内上場大手製薬4社(武田薬品、第一三共、アステラス製薬、エーザイ)の2022年3月期決算が出揃いました。4社とも増収、武田薬品を除く3社が営業増益となり、コロナ禍前の2019年度実績を凌ぐ勢いを見せ、各社とも成長軌道に乗せました。グローバル戦略品が牽引したものの国内業績は、薬価改定の影響などで低い伸びか減収と対照的でした。薬価改定のあった2022年度もその傾向が続く見通しとなっています。