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「薬価維持制度」の導入提案~岡田会長「革新薬は実勢価改定除外」【日本製薬工業協会】

薬+読 編集部からのコメント

8月30日、日本製薬工業協会の岡田安史会長(エーザイ)は、特許期間中の「薬価維持制度」の導入を提案しました。ドラッグラグの再燃が懸念され始めている革新的新薬を日本から創出するためとし、具体的な見直し項目は日本製薬団体連合会保険薬価研究委員会と詰める方針を示しました。

日本製薬工業協会の岡田安史会長(エーザイ)は8月30日に都内で記者会見し、ドラッグラグの再燃が懸念され始めている革新的新薬を日本から創出するため、特許期間中の「薬価維持制度」の導入を提案した。新薬の中でも「新規性、医療ニーズが極めて高い新薬」を対象にする。岡田氏は、制度構築について「5年も6年も制度の設計にかかるという認識は持っていない」と述べ、早急に着手する必要性を示唆した。また、現行薬価制度の根幹である市場実勢価改定方式に問題意識を表明。「抜本的見直しを検討すべき時期に来ている」と述べた。今後、日本製薬団体連合会保険薬価研究委員会と詰めるとして、具体的な見直し項目は説明しなかった。

 

岡田氏は、国内医薬品市場の課題について、▽日本の製薬産業がバイオ薬開発など新規モダリティの創薬研究開発で世界に遅れを取っていること▽ベンチャーの経済的、制度的支援が手薄▽医療費抑制の調整弁として薬価引き下げに偏重▽特許期間中の新薬に対する薬価引き下げ介入▽それらよる市場縮小傾向▽そのための日本の開発投資の優先順位の下落――を挙げ、解決の必要性を強調。その解決に向け、革新的新薬を生み出すための創薬エコシステムや研究開発税制拡充などによる国の支援の必要性を指摘した。

 

イノベーション創出支援策をベースにした新たな薬価制度として、特許期間中の新規性、医療ニーズが極めて高い新薬を対象にした薬価維持制度を提案した。現行の新薬創出等加算のように一定条件下で改定を猶予するのではなく、実勢価改定の対象から除外する仕組みで、薬価算定プロセスに評価の透明性と妥当性を高める仕組みを導入する。

 

薬価収載前に企業が「価値評価希望書」に基づき当該薬の価値を説明し、第三者機関が客観的に妥当性を評価した「評価報告書」(仮称)を作成し、公開する。

 

新薬がもたらす介護負担の軽減や労働生産性の向上など有効性、安全性、治療費以外の価値も価格に反映する仕組みにしたいとしている。同機関の評価に基づき薬価算定を行い、市場拡大再算定の対象からは除外するが、効能変化再算定、用法用量変化再算定は適用されるとしている。収載から一定期間後に、当該薬の収載時点の臨床上の位置づけなどを再評価し、薬価を見直す。

 

岡田氏は、薬価維持制度案にかかる財源について、「新薬の中でのメリハリが必要」と述べ、医薬品全体、公的保険のカバー範囲の見直しのほか、新薬内の財源移動も念頭にあることを明らかにした。

 

その上で、市場実勢価方式に言及。「制度疲労を起こしている」との認識を示したほか、改定頻度の高まりで下落が加速し、新薬アクセス、安定供給に影響が出て市場の魅力低下につながっていると指摘した。

 

さらに、薬価と市場実勢価の差から生じる薬価差には透明性と妥当性に課題があるとした上で、「薬価差が国民負担となっていることも踏まえ、現行の市場実勢価に基づく改定方式の抜本見直しを検討すべき時期に来ている」と説明した。具体的な内容は薬価研と詰め、その内容は厚生労働省の「流通・薬価制度に関する有識者検討会」で説明したいとの意向を示した。

 

そのほか、国民皆保険の持続性確保に向け、給付と負担、応能負担などの課題について議論していく必要性を指摘し、「議論を国が進めることに強く賛同する」と表明した。全世代社会保障構築会議の議題にしてほしい意向かは明確にしなかった。

 

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出典:薬事日報

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